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経営者に訊く 是永大輔×玉乃淳(全1記事)

仕事の成果は「情熱×時間」アルビレックス新潟シンガポール・是永社長の経営哲学

サッカー解説者の玉乃淳が経営者の人生や仕事の哲学に迫る「経営者に訊く」。今回は、アルビレックス新潟シンガポールCEO・是永大輔氏のインタビューを紹介します。※このログはTAMAJUN Journalの記事を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

アルビレックス新潟シンガポール・是永社長のキャリア

玉乃淳氏(以下、玉乃):コレさん(是永社長)、ご無沙汰しております。いつも世界中を飛び回っていらっしゃるので、お会いするのに一苦労です。今日は、楽しみにしておりました。

是永大輔氏(以下、是永):確かに、自分でも目が覚めるとどこにいるかわからなくなることがある。

玉乃:今回の対談前に、コレさんがいろいろなメディアのインタビューに応じられているのを拝見しました。これまでメディアが伝えてきた、あのキャラは嘘ですよね。

本来はもっとフランクで親しみやすいキャラだと思うので、今回は惜しみなくコレさんの本当のキャラを全国に発信して行きましょう(笑)。

是永:なぜかビジネス系で取り上げていただくことが多いからね。ちょっと堅めにはなるよね。今回は「タマジュン」だから (笑)。

玉乃:ありがとうございます。実は現在の「社長・是永」はよく存じておりますが、社長就任以前の「コレナガ歴史」をあまり存じておりません。

是永:2002年に大学を卒業するときに、日本で日韓共催のワールドカップが開催されたんだよね。そのとき、「もしかしたら一生に一度の日本でのワールドカップなのに、会社勤めしていたら、試合が観れない!」って思って、普通に就職することをやめた。歴史的な瞬間に「デスクでエクセルつくらなきゃ」なんてイヤだった。

それで、たまたま求人があったサッカー専門の携帯サイトの会社でアルバイトを始めて、人手不足もあってそのサイト内でたくさんの記事を書かせてもらったんだよね。「バルセロナの強さの秘密」「注目の若手10人」とかいろいろ。

普通に考えたら、駆け出しの素人が記事を書くチャンスなんてないし、誰も読まないよね(笑)。それまで自分のホームページに趣味で書いていた独り言みたいなものでも多くの人が読んでくれて、喜んでくれて、かつ給料をもらえるのよ。「あら、これは楽しい!」って。

だから迷いなく24時間働いたんだよね。ほぼ会社に泊まりこみの日々でもまったく苦痛じゃない。日韓ワールドカップ開幕のタイミングでチームの人数も増えていって、アルバイトを始めて半年後に副編集長になって、その半年後には編集長になった。結局、その会社で5年間ほど働かせてもらった。

玉乃:コレさんも、社員としての社会人経験があるのですね?

是永:最後の数年は、1年の3分の1くらいは海外にいた。取材という名目で海外滞在。出張という名の旅行をしながらいろんなカテゴリのサッカーを観て、記事を書いたら給料がもらえる。そのときは、「なんでこんなに人生簡単なんだ!」と思った(笑)。

評価もしていただいて、ワールドカップの各国のチーム力分析とか書いたら、スポーツ紙の裏一面が自分の記事なったりする。楽しくて仕方ないよね。

競争したくないからオリジナリティを追求する

玉乃:コレさん、いつもサッカーの話をするとき、目をキラキラさせていますけれど、そもそもなんでそんなにサッカーが好きなんですか?

是永:うーん。サッカーを始めたのは小学校1年生。特別能力が高いわけではなかったので、プロになろうなんて思う瞬間がたったの一瞬もないサッカー人生だったな。

だから、サッカーだけで突っ走ってきたというよりは、オリジナリティを追求する人生を選んできたつもり。他人と同じことしていたら疲れちゃうじゃない。競争嫌いだしね。

他人との無益な競争は最もエネルギーを消費するし、妬みとか憎しみとか人間の嫌なところが見えるから嫌い。それで入学したのが、日本大学芸術学部・演劇学科。当時からブルーオーシャンを常に泳ごうと思っていた。ほとんど病気だよね。この支配からの卒業……。特別でありたい……。

玉乃:サッカー人のコレさんが、なぜゆえに(笑)。

是永:誰とも戦いたくなかった。だからオリジナリティを追求して、演技コース。わかる? 結果、授業では全身タイツ着て踊ってた。

玉乃:はははは。

是永:バレエやるわけよ。踊るほうね。つま先立ちの……ごめん、まったく興味ないのよ。授業に出たのは初日のみ。

玉乃:みんな特別視してくれましたか?

是永:ん? 誰も見てくれなかった。でも「卒業」は、ちゃんとしたよ。みんなに手伝ってもらって。それで卒業して10数年経つと、日大から入学式のスピーチを頼まれたわけ。

日本最大の大学の全学部の新入生とそのご家族だから、日本武道館で8,000人×3回だよ。ほとんどスティーブジョブスの世界だよね。こういうことがオリジナリティの果てにあるんだと思ったよ。

玉乃:ということは、サッカーは高校までで、やめちゃったんですか?是永:大学ではフットサルのサークルを立ち上げた。女子フットサルサークルも作って監督やったりもしてた。「監督」と呼んでもらいたくて……。自分としてもまあまあ天才的な閃きがあるプレーをするんだけど、あんまり人に見せないようにしていた。見られなかったら比較できない。つまり無敵。

玉乃・是永:ははははははは。

29歳、数千万円の赤字チームの社長に就任

玉乃:卒業されて、先ほどうかがった携帯サイトの会社で5年間働いたのち、なぜアルビレックス新潟シンガポールの社長に就任されたのですか? キッカケはあるのですか?

是永:もともと社長に就任する5年前からクラブは存在していたわけだけれど、一応サッカー業界にいたことでつながりがあって、「新社長探してるんですけど誰かいますか?」って聞かれて、2秒で即答した。「やるやる!」って。

引き受ける前は知らなかったけど、そのときは毎年数千万円の赤字を計上していたチームだった。このとき29歳。

実は、20歳のときに「10年後の自分」を100個くらい箇条書きにして紙に書いた。「海外に住んでいる」「日本と海外を往復している仕事をする」「FCバルセロナと仕事をしている」「サッカークラブの社長をしている」みたいな、当時海外旅行もしたことなかった落ちこぼれ大学生が書いた、荒唐無稽なこと。

けれども、仕事のことはほとんど叶った。叶っていないのは「20億円持っている」「フェラーリに乗っている」「広末涼子と結婚している」。他人とお金はコントロールできないことがわかった(笑)。

玉乃:それにしてもすごいですね。20歳の当時、描いた夢に多く登場する「海外」というキーワード。存分に夢が叶っていると言えますよね。常に世界中を飛び回っていますもんね。

是永:それもこれも「サッカー」だよね。 サッカーというスポーツは、世界中の人たちと簡単に結びつくことができるコミュニケーションツールだし、言語だと思う。サッカー関連の仕事で世界中を旅させてもらって幸せ。バルセロナだけでもこれまで80回は行っているからね。

玉乃:コレさん、日本では数少ないカジノオーナーでもありましたね。あのカジノ、その後どうですか?

是永:おかげさまで拡大しました。街の中心に移転してショッピングセンターの1フロアをぶち抜いて……。そんなに大儲けってわけではないんだけど(笑)。

好きなことしかやらないことにした

玉乃:コレさんのことをよく知らないと、「無謀にいろいろなことにチャレンジしまくっているな」なんて見られてもおかしくないですけれど、実際とても堅実な経営者ですもんね。クラブの収支も黒字化させて、健全な財務体質を維持させている。かわいいお嬢さまもいらっしゃる(笑)。無茶苦茶なキャラクターから想像つかない有能な青年実業家ですからね。

是永:好きなことしかやらないことにしたんだよね。嫌いなことをやっても効率が悪い。本当に好きなことだけに限りある時間を使うのが一番効率的だし、いくらやっても疲れない。

たとえそれが何であったって、好きなことに取り組むほうが成功の確率高いじゃない。ドラクエだったら24時間できたもんね。朝までやってもぜんぜん苦じゃなかった。そういうことを仕事にしなきゃとは常に思っている。仕事の成果って「情熱×時間」だからさ。

玉乃:あれ? これ、カメラ回っています?「情熱大陸」じゃないですよね? 

是玉:はははははは。

玉乃:確かにサッカーはグローバルなコミュニケーションツールですね。常々、海外へ出ることを推奨されているコレさんですが、「サッカー」というツールを持っていない人たちも海外へどんどん出るべきでしょうか?

是永:もちろん、答えは”YES”だよ。今後の日本は、若い世代が世界を巻き込むようなエネルギーを発していかないと。

これだけ人口が減っていって内需に限界がくると、どう考えても日本の経済は落ちていくわけだよね。だから外に活躍の場を求めなければならないし、外を巻き込んで日本に呼び込んでくるくらいの意気込みが本当に必要だと思うよ。

それとね、サバイブするには、自分だけのカタチを持たなければならないと思うんだよね。オリジナリティね。つまり、自分たちのアイデンティティを認識することから始まる。そして、明確に異質な比較対象がなければオリジナリティは見つけられない。

当然、その比較対象は多ければ多いほど好ましくて、いろんな世界を見ることが絶対に大切なことだと思う。だから明確に異質を肌で感じられる海外を推奨するんだよ。それで、それが若いときであればあるほどよい、絶対に。歳をとると常識と日常で目が曇って、発見の数が減るからさ。

アルビレックス新潟シンガポールに来る日本人の選手たちには 「ここがゴールじゃない!」と伝えている。サッカーは、日本の中がすべてじゃないし、もちろんシンガポールだけでもなくて、全世界がフィールドだよね。

彼らが例えばシンガポール経由でヨーロッパやほかのアジアの国でプレーしたり、アフリカに行ってプレーしたりということがあるわけで、それは間違いなく今後の人生においてプラスになると思う。

どんどん海外でチャレンジする日本人が増えて欲しいよね。バルセロナにウチが立ち上げたアルビレックス新潟バルセロナというアマチュアチームを卒業した日本人で、自分で会社を設立しちゃった人間もいるからね。その根底には、ほかのすべてを差し置いて「好き」「楽しい」という気持ちや感覚があるんだと思うよ。

「人生はサッカーのみ」スペイン人の特異な文化

玉乃:バルセロナですか、いいですね。スペインのハチャメチャな文化に触れることもできますしね。まったく働かない文化。「人生はサッカーのみ」みたいな異様な文化(笑)。

是永:平日は実家で脛をかじっているだけでまったく働かない彼らが、週末必死の形相でイエローカードをもらいながらサッカーを一所懸命やっている世界。それで、週末の試合が終わればまた実家に引きこもって、ひたすらニート生活を送るという……。「なんだこれは!?」と(笑)。

玉乃:ははははは。なかなか日本では考えられない光景ですもんね。

是永:なんというのかな? スペイン語で言うと「corazón(コラソン)」? この心や情熱はどこから来るの? これほどまでに人を熱狂させるスポーツって? そういうのは、一緒にやってみないとわからないよね。

スペイン人に学ぶとすれば、楽しいことで自分の時間を埋めないとダメだよってことかな。そうじゃないと、つまらないことが入ってきちゃう。ああ……すごくいいこと言っちゃったな、今。

玉乃:相当いいことを言われましたけど、それを仕事にするには……?

是永:それと、世の中のニーズと社会的価値が交わるところに答えがあると思う。いろんな楽しいトライを重ねて、そこから発見があって、楽しいことで時間を埋めるような人生を送っていたら、予想もしないような出会いや発見があってそれに世の中のニーズをミックスしていったのかもしれない。振り返ると。

サッカーチームの社長になりたくて、シンガポールに行ってチームを運営しているうちに、カジノ運営と出会ったり、社会貢献活動がシンガポールから表彰されたり、東南アジア各国でサッカーやチアのスクール始めたり……。たまたまビジネスが生まれることもあるし、とにかく「好き」「楽しい」が原動力。

そして「好き」なものは、誰にでも必ずこの世の中にある。だから行ってみて、触れて、感じることが大事。つまり「旅に出ろ」ということ。「好きなものが地球になかったら宇宙にある」って本気で思っている。

玉乃:まさかこれ、いつもいたる所で言われている決めセリフですか?

是永:そうそうそう。

玉乃・是永:ははははははは。

是永:でも、本当にそういうことだと思う。「好きなものがありません」とか、「夢がありません」とか、本当にもったいない。

好きなことを追求する旅は終わらない

玉乃:だからコレさん、旅を続けているんですね。今後の展望をお聞かせください。夢は広がるばかりでしょうか?

是永:好きなこと、興味をそそられることを徹底的にやるよ。だってやらないことがリスクだもん。すべてのビジネスには寿命があるから。自分から変わっていかないと。いろんな発見できるから楽しいし。

玉乃:何かすごい腑に落ちてきました。私事で恐縮なのですが、僕はあまりにも受け身の人生なんですよね。幼少期、サッカー上手かったじゃないですか、僕。だからオファーが勝手にくるんですよ。

そうすると、常に受け身になるんです。引退して、自分から何もアクション起こさないと、本当にただの人以下ですもん。

コレさんはサッカー下手だったじゃないですか。だから受け身であることなんてなくて、10年もの間、自らの力でグローバルな経営者として常に第一線でアクション起こして活躍を続けられるわけですね! あぁ、腑に落ちた。

是永:やっぱり歪んでるな(笑)。

玉乃・是永:はははははははははは。

是永:いやぁ、なぜ自分がこんなに世界に飛び出しているのか気づけた…。ありがとう(笑)。

玉乃:本日は本当にありがとうございました。最高に楽しかったです。

是永:こちらこそ。またシンガポールにもバルセロナにもいつでも遊びにおいで。

【是永大輔(これながだいすけ)プロフィール】1977年生まれ。日本大学芸術学部卒業。アルビレックス新潟シンガポール Chairman、アルビレックス新潟バルセロナ Presidentなどを務める。シンガポールでは親会社に頼らない独立採算経営へと舵を切り2008年の就任以降黒字経営を続け、売上規模も10倍へ拡大。またクラブハウスにカジノを併設するなどユニークな経営手法により事業を多角的に展開している。日本人の若い世代を対象に「未来予想図~今すぐ海外にでるべき7つの理由~」をテーマに積極的に講演活動にも取り組んでいる。

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