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LINEが世界を取る日! 森川亮社長が茂木健一郎に語った急成長の戦略(全2記事)

「起業するような人のニーズはズレている」 LINE森川亮社長が語った、世界を獲れるマーケティングとは?

世界ナンバーワン・プラットフォームを目指して急成長を続けるLINE株式会社社長・森川亮氏が、脳科学者・茂木健一郎氏のラジオ番組に出演。世界ナンバーワンを獲るために大事にしているという"プライド"を語った他、起業を目指す人へ向けてメッセージを送りました。

家族のやりとりから経営判断まで 広がるLINEコミュニケーション

茂木健一郎氏(以下、茂木):こんばんは。

森川亮氏(以下、森川):よろしくお願いします。

茂木:森川さん、髪型が何か似てますよね。

森川:よく「被ってる」と、お叱りを受けるんですけど(笑)。

茂木:まず、多くの方がご存知だと思うんですけども、LINEって、森川さんから改めて、どんなアプリですか?

森川:ひと言で言うと、「スマートフォンで最もコミュニケーションが楽しくなるアプリ」かなと思ってます。

茂木:実は私もヘビーユーザーでして。

森川:ありがとうございます。

茂木:これ、知っている方は知っていると思うんですけど、「スタンプ」というのがありましてですね、私は「巨人の星」とか「バカボンのパパ」とか「クマのプーさん」みたいなスタンプをよく使ってるんですが、森川さんはどんなスタンプがお好きですか?

森川:僕は一応、弊社のキャラクターである「ムーン」とか「コニー&ブラウン」あたりを使いながら、よく謝る場合が多いので(笑)。巨人の星の、飛雄馬君の謝るやつをすごく使ってます。ドラえもんの謝るやつとかも。

茂木:今お話いただいているように、スタンプっていうのがLINEの一つの特徴であるんですが、他にもいろんなね、翻訳機能もありますしね。

森川:そうですね。本当に中国人とか韓国人とかアメリカの方と、リアルタイムに通訳してくれるので便利ですね。

茂木:あと、速報性があるっていうか。

森川:ニュースとかお天気とか。

茂木:ですよね。それで、若い子を中心に人気なイメージがあるんですけど、たしか僕が最初にLINEって言葉を聞いたのは、高校生から教えてもらった時だったんですよ。

森川:そうですか。

茂木:どこかの高校に講演か何か行った時、「先生、LINEやってるの?」「LINEって何?」「アプリあるよ」って。彼らはもうLINEを一番早くに使い始めて、当時からお互いの連絡とかしてたんですけど。

森川:グループ作ってやり取りしてたりとか。

茂木:はい。ところが今、おじさんにも広がっちゃってて。

森川:そうですね、30代以上の方がかなり多いですね。50代の方も結構使ってます。

茂木:この番組にもちょっと来ていただいた、ホリエモンこと堀江貴文さんなんかは、経営判断をLINEでやっちゃってる。

森川:すごいですね。

茂木:って言ってました。だからいろんな会社の社長さんと、それこそ、資産いくらとか。じゃ、うちからこういうのを出す、みたいなのをLINEでやっちゃってるって言うんですよ。

森川:(笑)。そうですか。

茂木:僕も実は、緊急のディスカッションをLINEでやっちゃってるんですよ。

森川:そうですか。ありがとうございます。

茂木:LINEって高校生が仲間同士でいろいろチャットするみたいな使われ方から、それこそ、堀江さんみたいに経営者が経営判断のやり取りをしちゃうとか、あるいは我々が脳科学やってる時に議論するとか、すごくパーソナルなユースからヘビーデューティーなユースまで。すごいですね。

森川:そうですね、今はもう本当に、アンケート結果で「夫婦の関係が良くなった」とか、あとは孫とおじいちゃんおばあちゃんとか、そこまで広がってますね。

出口調査の仕組みを日本で初めて立ち上げた

茂木:今日は今注目のLINEを作った、中心人物の森川さんにいろいろお話を伺いたいんですけども。森川さんってのは、そもそもどういう方なのかってとこなんですが。ビジュアルはですね、本当、何と言うか、ミュージシャンみたいな感じですよね、経営者っていうよりは。髪の毛がモジャモジャで。

森川:くせ毛なんですよ。

茂木:そこが共通点で。ちょっと染めてます?

森川:ちょっと染めてます。失礼しました。

茂木:ブラウンというか、何ですかね。一目見て経営者っていうよりか、どっちかと言うと芸術家っぽい。

森川:時々オペラ歌手に間違えられる。

茂木:(笑)。森川さん実は、最初は日本テレビに入られたんですね。それから、ソニーに行って、転職を随分重ねてらっしゃる。

森川:3社目ですね、今の会社で。

茂木:LINEに入られて。

森川:もう10年になります。社長は7年やってますね。

茂木:転職はそれぞれどういうきっかけ、どんな思いで?

森川:僕はもともと、子どもの頃から音楽をやってまして、それこそ小さいころはピンク・レディーのバックコーラスとか、五木ひろしさんの武道館公演とか出てたりしてて。

茂木:えっ? 出てた!?

森川:はい。

茂木:プロじゃないですか、じゃ。

森川:あの、ま、小さいころですよ。

茂木:いやいや、え!? そうなんですか。ピンク・レディーのバックコーラス!?

森川:はい。NHKさんとかで出た時に、後ろで歌ったり踊ったりとかそういうのをやってまして。

茂木:僕、森川さんてLINEで天下取ったと思ってたんですけど、もう子どもの時に天下取ってたんですね。

森川:いや、天下取るなんてそんな大げさなもんじゃないです。歌が好きでやってたんですね。そこから楽器に転向して、ずっと楽器をやってきたんですけど、その中で、ちょうど僕たちの時代がアナログのシンセサイザーからデジタルのシンセサイザーが出るころで、これからエンターテイメントはコンピュータの時代になると思って、大学はコンピュータ工学を専攻したんです。

茂木:なるほど。

森川:音楽とコンピュータを融合させるようなことが出来るんじゃないかなと思って、テレビ局に入りました。

茂木:すごい動機ですね(笑)。

森川:音楽が好きで、そういうエンターテイメントの仕事がしたいなと思いまして。

茂木:テレビには何年くらいいらしたんですか?

森川:10年ほどいました。その時はただ、最初はコンピューターだけの仕事だったんですけど、コンピュータを使って番組を作ろうということで、出口調査の仕組みご存知ですか?

茂木:選挙の時の。

森川:はい。あれ、僕が日本で初めて立ち上げまして。

茂木:えーっ! 何と何と。

森川:それ20代の頃にやって。

茂木:今もう欠かせないものになってますよね。出口調査。ってことは、意外と初期の頃からベンチャー魂があったってことですよね。出口調査をやったりとか。

森川:何か新しいもので世の中を驚かせたいとか、そういう気持ちはありましたね。

茂木:特別な人ですか、やっぱり。森川さんは。

森川:いやいや、単にそういうのが好きだっただけで、最初はもう、別に儲かるものではないので。ただやりたい気持ちと、あとは周りが応援してくれたので、そこからテレビ局の中でも、新規事業の担当になりまして、それでインターネットとか衛星放送とか、海外展開とか、そういう事業を現場で引っ張ってきたというのが最初の日本テレビでの仕事です。

茂木:ということは、かなり順調だったように聞こえるんですが、何故、転職されてしまったんですか?

森川:順調だったかというと、例えばテレビ局でいうと、テレビじゃない仕事をすると、みなさんからお叱りを受けたりとか、そういうこともあったので、もう少しいろんな事業が出来る新しい環境に行きたいなと思って。そういう大企業の看板無く、新しい所でやりたいなということで、今の会社に入ったんですね。

茂木:ということは、番組聞いてらっしゃる方って、私も起業したいなって思ってる方いらっしゃると思うんですけど、やっぱり、今の森川さんのお話を伺っていると、普通に会社員として働いてて、起業しようかなっていうのをそこはかとない夢として持ってるっていうんじゃなくて、森川さんみたいに会社にいる時から新しいことを実際にやろうとして、いろいろ試みてる人のほうがいいんだね。起業するには。

森川:どうですかね。まあ僕の場合は、単純にいろんな良いものがあったので、それを活かしてもっと良いものを作りたいとか、やりたいという気持ちが強かったです。

茂木:いや、この「森川力」は注目ですね。

森川:いやいや(笑)。とんでもない。

茂木:森川さんはそういう風に柔らかくおっしゃるんですよね。自分で全部やってきたんじゃない、みたいなことをおっしゃるんだけど、でもやっぱり、同じ状況にいてもそれを活かせない方もいらっしゃると思うんで。森川さんの力って、何なんだろうなってことで、是非、この番組の中で明らかにできたら、リスナーにとってもすごく嬉しいんじゃないかなと思うんで。

森川:ありがとうございます。

何を求められているか、を正確に把握する大切さ

茂木:このLINE。世界取りそうですね。

森川:取りたいですよね。

茂木:日本発のWEBサービスで、世界取ってるのって今までないじゃないですか。

森川:そうですね、インターネット分野ではないですね。

茂木:ないですよね。だからこれ、出来たら日本で初めてですからね。

森川:そうですね。これは日本だけに限らず、アメリカ以外の人たちがみんな考えてることなんですよね。

茂木:今のところ残念ながら、GoogleにしてもtwitterにしてもYouTubeにしても、アメリカ発ですけど、ひょっとしたらアメリカ以外の国から出た、初めてのスタンダードになれたら素晴らしいですね。

森川:そうですね。ある意味、僕たちの会社って日本人だけじゃないので、グローバルチームとして世界ナンバーワンになる。それはシリコンバレーじゃない所から生まれたってところは、みんなプライドを持ってやってますね。

茂木:そんな森川さんに是非、ラジオネーム「北の丸」さんからのご質問ですね。この方は社会人になって3年目なんだけども、会社で上司や先輩にこき使われていて、うんざりして、相談したら「会社作れば?」って言われたと。それから本気になったんだけど、今、講習会に行って勉強してるっていうんですけど、これ、どうですか。どうしたらいいですか? 会社作る、起業を成功させる。

森川:そうですね、多分会社作るのは簡単だと思うんですよね。でも成功するのは大変ですよね。

茂木:今サラッと「大変です」って。

森川:(笑)。私もどちらかというと、成功より失敗のほうが数多くやってきたので、おそらく失敗ばかりだと思うんですよね。成功っていうのは、失敗の内のほんのひとつでしかなくて。なので、失敗しても大丈夫なようにある程度準備が必要かなと思います。

茂木:準備というのはどのようなことでしょうか。

森川:例えば、人材の面でもそうですし、もちろんお金の面でもそうですし。あとは、僕自身が思うのは、やりたいことも大事ですけど、何が求められているのかを正確に把握することのほうがもっと大事ですよね。

茂木:ここ、僕すごく興味あるんですが。ユーザーのニーズを正確に把握するって、「正確に」ってのがすごく気になるんですが。

森川:だいたい、起業しようと思う人は変わり者が多くてですね、その人が持ってるニーズって一般的じゃないんですよね。

茂木:良いこと言うなー。

森川:そういう人が「これ欲しいだろう」と思っても、普通の人は「ふーん」ってなる場合が一般的かなと思います。

茂木:いや僕は今、感動しました。僕、常々ね、若いヤツが相談しにきたら、自分の為にじゃなくて他人の為に何をするかを考えろと。そうすると、他人って10人、100人、1000人って増えていけばいくほど、いろんな人がいるから。他人の為にってことをやるって、実は、人間ってのはそもそもどういうものか、って。

「世の中にはどういう人がいて、何に悩んで、何を求めてるのかってわからないといけないんだよ」って、いつも言ってるんですけど。そういうことですよね、森川さんのおっしゃってるのはね。

森川:はい。結局、本当に欲しいもの以外は、時間もお金も使わないですからね。

茂木:うーん……。深いなー。

森川:いえいえいえ。

茂木:やっぱりLINEはそういう意味において、みんなが欲しいものだったってことですね。

森川:一番大きかったのは、「コミュニケーション取りたくない」って人は世界中にいない。それがシンプルなんですね、繋がるということなので。なので、一番大きいところに注目したってのがありますね。

スタンプが扉を開けた、誰も見たことのない世界

茂木:LINEの様々なベースの中でスタンプってのが、非常にユニークで。また、ブレークするきっかけだったと思うんですけど、あれはどういう発想から出てきたんですか。

森川:もともと日本でデコメとか絵文字というものがあって、それがおそらくモバイルのコミュニケーションに必要だろうと。ただそれがスマートフォンになった時にどうなるのか、っていう答えがスタンプだったんですよね。ちょっと表情も豊かで全身で気持ちを表現する、そういったものを出したというところですね。

茂木:僕すごく悔しい思いがあって、林修さんの「今でしょ」ってスタンプ。あれって期間限定のスタンプだったらしいですね。

森川:そうなんですよね。

茂木:あれ使ってる人見ると、すごく羨ましいんですよ。

森川:(笑)。

茂木:「今でしょ」って僕も使いたい。意外とそういう、希少なものとかも含めて、スタンプって楽しいですよね。

森川:そうですね。新しいものが出るとみなさん取りに行きますね。最初に出て、使って、「あ、そんなのあるんだ」って所がちょっと嬉しかったりするじゃないですか。

茂木:ちょっとプライドをくすぐられるというか。

森川:新しいアップルが出る時に並ぶような、そういう感覚。

茂木:あ、今そういう状態になってるんだ。じゃ、僕みたいにボーッとLINE使ってる人はダメだね。

森川:いやいや、別にダメとかそんなこと全然ないですよ。

茂木:LINEのスタンプ文化みたいなのが、アプリの利用を加速させると。そういうのって、最初立ち上げた時から見えてるものなんですか?

森川:仮説は立ててましたけど、まさかここまで広がるとは思っていなかったですね。LINE出した時には、スタンプ無かったですし。

茂木:逆に運営側から見て「え? LINEってこういう使われ方もしてるの?」みたいな意外なことってありました?

森川:とにかく最近は、ビジネスでの利用が多くなってますね。例えばある会社さんだと、会社の電話を全部やめて、LINEに統一したりとか。

茂木:えーっ? そうなんですか。

森川:あと、最近多いのは家族での利用ですね。家族で「今日の夕食なんですか?」ってお母さんが送って、パパが喜ぶ、みたいな。

茂木:簡単にグループが作れるってのがいいですよね。

森川:そうですね。そこだけで誰にも見えないコミュニケーションがとれるので、安心して話が出来るってのがありますね。

茂木:そういう意味で言うと、次の時代のコミュニケーションのインフラになる可能性ってのがすごく出てきてるような気がしますけども。ドキドキしますね、ここからは。

森川:そうですね。本当に誰も見たことがない世界が見れるかなと思うので、ある意味楽しみでもあるし、でも不安な時もありますよね。

起業したって好き勝手はできない

茂木:先ほどの、ラジオネーム北の丸さんのお話でもそうなんですけども、ポイントはきっと「誰かに使われちゃってるのがイヤだな」っていうことだったなと思うんですけど、そうすると(起業すると)自分で仕事を決めるっていうか。

これって、脳科学でいつも言ってるんですけど、「不確実性に向き合う」ってことだぞと。だから森川さんも毎日、不確実性に向き合ってらっしゃると思うんですが、どうですかそれ、楽しいですか?

森川:おそらく人に使われてると思った瞬間に、使われてるんだと思うんですよね。逆に人に価値を認めてもらえると思えば、それはまさに起業と同じようなことなので。場所が違うだけなんじゃないかなと思うんですけどね。

茂木:深い。森川さん今、すごいことおっしゃいましたね。ということは、普通の会社で普通に働いてても、人に使われてると思わなくて、価値を認めてもらうって考えを変えれば、そこで仕事の質が変わるってことですね。

森川:そうですね。結局、求められてるからこそ存在意義があって、それを高めたいから起業するのであれば、別に辞める必要はないんですよね。そこでもっと高めればいいだけの話なので。ちょっと堅いですか、すみません。

茂木:いやいやいや。素晴らしいと思います。というのは、多くの方が二者択一で、今の会社で使われ続けるか、起業するかって思うから、意外とそうすると背水の陣になっちゃって、苦しいじゃないですか。今のはあれですよね。会社にいる、そのままでも、考え方をちょっと変えればある意味、社内起業じゃないけど、自分自身の価値を高めることは出来るっていう。

森川:そうですね。まあ、目的は何かだと思うんですけどね。起業することが、いわゆる好き勝手やりたいってことであれば、それはまた難しい話だと思うんですよね。

茂木:そんな好き勝手できないですよね。

森川:はい(笑)。そうですよね。

茂木:ですよね。

森川:よっぽど山奥に籠って、1人で暮らしてるなら別ですけど。かえって難しかったりしますからね。

茂木:そうなんですか。

森川:例えば、まったくお互いに知らない人たちと価値を見いだすって、なかなか難しいと思うんですよ。そうすると、大きなことをやろうとすればするほど、自分を犠牲にしてでも周りを巻き込まないといけないですよね。

なので、起業を何の為にするかで違うと思うんですけど、何か新しいものを作ろうとか、大きな夢を仲間と叶えようと思うのであれば、単純にすぐ起業するというよりは、ちゃんとそういう能力なり自分のビジョンが明確でないと、かえってリスクが高いかなと思いますね。

茂木:起業することに憧れちゃうってことだと、ダメってことですよね。

森川:まあ、すごくリスクが高くて、本当にやりたいことが出来ない可能性が高いですよね。

茂木:むしろビジョンなり、スキルなり、仲間との繋がりなり、まずは足元を固めてからっていう。

森川:そうかな、とは思いますね。

茂木:北の丸さん、いかがだったでしょうか。今、日本発のインターネットのプラットフォームで、ひょっとしたら初めてスタンダード取るかもしれないっていう、非常に注目度の高いLINEをここまで大きくしてきた森川さんの言葉なんで、本当にこれは参考になると思うんで。是非北の丸さん、頑張ってくださいね。

森川:頑張ってください。

茂木:あの、社長になっても好き勝手できるわけじゃないんですよ!

森川:(笑)。

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