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クリエイター集団の底力を引き出すERPフロントウェアの威力(全1記事)

映像業界の働き方はどう変わる? 株式会社白組がTeamSpiritを導入した理由

2016年3月14・15日の2日間にわたって、勤怠管理や経費精算、工数管理等を一体化したERPを進化させるフロントウェアを展開する株式会社チームスピリットが「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション & アーキテクチャ サミット 2016」に出展。同社のサービスの活用事例として、株式会社白組・鈴木勝氏が「クリエイター集団の底力を引き出すERPフロントウェアの威力」をテーマに講演を行いました。鈴木氏は、TeamSpiritの導入によって改善した映像業界の働き方と作品づくりの仕組みを紹介しました。

クリエイター集団「白組」のTeamSpirit活用法

飛鋪武史氏(以下、飛鋪):みなさん、こんにちは。チームスピリットの飛鋪でございます。本日はセッションにご参加いただき、どうもありがとうございます。

本日は白組の鈴木様にご登壇いただきます。実は、白組さんには3年前からTeamSpiritを活用いただいております。

このあと作品集をご覧いただきますけれども、「この作品知ってる」という作品がほとんどなんじゃないかと思ってます。

白組さんのすごいところは、こういった素晴らしい作品を非常に少ないメンバーのクリエイターたちだけで制作しているというところなんですね。

このハイパフォーマンスなワークスタイルはどのように実現されているのかというところを、鈴木様にお話いただきたいと考えております。それでは鈴木様、どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木勝氏(以下、鈴木):みなさんの想像の中で「アーティスト」というとどうしても直感的で感覚的に物事をとらえているというイメージが強いと思うんですよね。

でも、コンピュータグラフィックスの世界画像処理の計算をはじめ、分析や解析などの計算を活用しています。自分の時間だけでなく、多くのコンピュータリソースを利用するので事前設計がとても重要です。頭の中で想像し、こういう結果を求めたいというのが描けてないと、なかなか自分の手足のようにツールを使うことができないところが難しい点でもあるんですよね。つまり、けっこう計算する力も必要。

逆に、お客さんが受ける印象は直感的で様々である。今いらっしゃるみなさんが全員同じイメージを持っているのはほとんどないですよね。一方では計算力、もう一方では直感的なフィードバックを相手にモノづくりをしていくのはなかなか大変なことだなと思います。

著名な映画監督が社員として在籍

白組は都内にスタジオとして、表参道の本社と調布スタジオ、三軒茶屋スタジオの3拠点で仕事をさせていただいています。

現在の社員数は186人で、常駐外注の方やプロジェクト固有に必要なスタッフなどが加わり、一般的な企業と同じような事務的な業務が発生します。

主なメンバーとして、社長の島村(達雄)から始まって、副社長の小川(洋一)。そして『ALWAYS 三丁目の夕日』、『永遠の0』で監督をしている山崎(貴)がいて、『friends もののけ島のナキ』『STAND BY ME ドラえもん』を山崎と共同で監督している八木(竜一)がいます。

そして「監督が社員である」というのもこの業界ではかなり珍しいと思います。各メンバーのプロフィールが弊社のホームページにもございますので是非ご覧いただければと思います。

社長の島村の写真に、手でなにか持ってると思うんですけれども、社長でありながらも、ずっと現役で制作しています。モノづくりに対してすごいみんな「おもしろい」と思う社員が多く、その一番の先頭に社長の島村がいます。

彼のパソコンは、現在Windows 8.1 Proを使っているのですが、もうじきWindows 10 Proにしようと思っています(笑)。Google for worksのGmailを使い、社内メッセンジャーを活用したりしています。手書きでも制作し、最新テクノロジーも楽しんで挑戦してくれるところも、弊社のおもしろいところかなと思ってます。

副社長の小川は多くのコマーシャル制作に携わってきました。また、社内の相談だけでなく外部の相談にも乗り、数多くの作品をこなしてきた人だからこそ、より良い物を作るために日々協力している感じが伝わってきます。

山崎は、VFXのイメージから「デジタルな人」という印象が強いかと思います。実はまだCGが一般的になる前に手でモノづくりをしていたところからスタートしているのもおもしろいところです。そんな人がコンピュータと出会い、コンピュータが成長する時代と共に歩んできたところに魅力が詰まっていると思います。

八木もまたアナログからスタートして、弊社にMacintoshが1台しかない時代からデジタルと触れ合っています。コンピュータで表現できる可能性が現れ、コンピュータが普及し、そして映像に利用できる時代を駆け抜けた監督たちが、世の中を引っ張ってくれていると実感できます。

「白組」の名前の由来

よく聞かれるのが『白組』の名前の由来。

最初に「白」は、今みなさんが触っているコンピュータはRGB(赤・緑・青)の組み合わせによって表現しています。赤緑青を加色していくことによって白を表示していて、すべての色を含みます。また、白いキャンパスは色を描ける土台となります。

また、様々な作品でCGやVFX、そしてアニメーションを表現するための舞台として「白」を選んでいます。

「組」は、例えば山崎が映画を撮ってるときは「山崎組」とチームの名前がつきます。プロフェッショナルな集合体を表す言葉としての「組」。

VFXからストップモーションアニメーションまで幅広くやる

弊社の歴史のなかで、どうしても「最先端」が目立ってしまうのですが、もちろん常に最先端を研究するだけでなく、実際に触って挑戦し続けています。ただ、伝統技術も残していこうよねと。

例えば、ミニチュアを作ってキャラクターを1コマずつ動かして撮るストップモーションアニメーションの撮影も行っています。キャラクターに金属の骨をいれポーズを固定して1コマずつ撮影するので、時間的な制約と設備的な面でやり続けるのはなかなか難しい。

実はそういう手作りの技術が、『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』にも活きてくる。実は3DCGアニメーションの『STAND BY MEドラえもん』でも使ってるんですよね。実はミニチュアの撮影を組み合わせて使っている。

うちの島村がよく言ってるんですけど、「なんのために映像を作ってるのか?」と考えたときに「単純に衣食住だけじゃなくて、なにか心の糧になるものを担当する仕事をしたいと。みんなに感動してもらうためにはどういうことをやったらいいんだろう?」というのを常に考えて様々な手法を挑戦する。

アニメ業界・アーティストの環境を良くする仕組み

さて、ここからはTeamSpiritの話をさせていただきたいと思います。

弊社のアーティストは正社員でもあるため、年間を通して大小様々なプロジェクトの中で一般的な会社と同じように業務的な作業もあります。

TeamSpiritを導入する以前は、各システムがそれぞれあり、日報のシステム、交通費の精算、稟議のシステムと別々のシステムで動いていたので、プロジェクトを紐付けしにくかった。やろうと思えば連携できるのですが、常に反映させていいくには、プロジェクト数がとても多く拠点も数箇所あるので複雑だった。複雑なところを改善したいというのが導入したきっかけですね。

紙のタイムカードからデジタルになって高速に集計できるようになりましたが、今度はプロジェクトとの関連をしっかり連携したくなってくる。細かくつけ過ぎるとスタッフは手間ですし、集計する側はデータが多くなり複雑化する。そんなことから、プロジェクトと工数や経費を紐付けるために、TeamSpiritを活用してみたいなと思って使い始めました。

実際に使ってみるとおもしろい発見もあり、各プロセスが分離されているととくに「却下する」ことがしにくかった。様々な種類のプロジェクトがあり、様々な形態で出力していくと、標準化するのは難しい。しかし、プロジェクトと連携していることで、いくつかのルートができ、一定のルールにのって「却下」「許可」共に素早く適切に判断できると意見がありました。

例えば、プロジェクトに合わせてスタッフのスタジオ移動が多いので、定期代の変更などが多い。ルールが明確化されたことで、今までに比べて、定期代の変更だけでなく、引っ越し先の変更など様々な手続きをアーティスト側から事前に申請してくるようになってきたのが良かった点です。

システムやレポートの煩雑さを改善

具体的にはSalesforceのレポートを活用しています。給与システムとの連携だけでなく、残業の状況の把握やプロジェクトの把握に活用しています。

レポートを活用することによって、情報の交通整備をしてできる限り見る範囲を少なくしてあげることが重要だと思っています。まだまだ、レポートの改善の余地はあると思いますし、Salesforce本体の機能の改善も楽しみにしています。

後もう1つ改善したいポイントがありまして、月次処理は月末に作業が混雑してしまうことを改善したい。

アーティストに求められる能力は感覚的だけではないと言う話をしましたが、効率化も日々考えているんです。毎日同じ値だった場合は同じことを繰り返すのは無駄に感じてしまう。「この1クリックをもっと効率的にする方法はないか?」と。「同じ処理だったらまとめて適用しておいて、修正部分だけ日々変更すれば、変更が少ない多くの人の月末確認の負荷が減らせるのはないか?」と。そういうリクエストを話し合ったりしています。

モノづくりのプロセス・時間配分を効率化

専門用語が多いですが、私たちのモノづくりのサイクルを可視化してみました。SEなどのシステム開発業務も似てると思うんですけど、企画があって、R&D(Research & Development)を行い、ストーリーボードとして絵やビデオにして流れを可視化してます。

ここからモデリング、アニメーション、ライティング、合成、編集という流れがあり、実際にクライアントに作品として納品されます。

作品の良し悪しは、感覚的な要素も大きいので事前の可視化やサンプルをなるべく早く出して決定の判断をしやすくしていく。なぜならば、私たちが作業で使うデータはものすごくでかいんですよね。例えば三軒茶屋スタジオで1ペタ以上のデータがあるんです。

データが大きいということは、コンピュータリソースもかなり使っている。データが大きくなってから、やり直すと作業がものすごく大変になる。作業をやり直すのは、データだけに止まらず、気持ちの面でも負担は大きい。

だからこそ、常に勤務状況を把握するのが映像作りのキーポイントになると思います。

弊社の場合他社に比べて、プロジェクト数も多いと言われます。1人のプロデューサーが準備中を含めて様々なプロジェクトを見ていて外部との連携も気にしている。TeamSpiritに登録しているプロジェクト数は数百を超える中で、如何に把握しやすくするかがポイントになってくると思います。

プロデューサーだけでなく、アーティスト側も複雑です。工数をつける上でメインの仕事をしながら、コンピュータが裏では別のプロジェクトの計算を行い、無駄なく時間を使うことができます。

ここで、TeamSpiritの割合で工数を入力する仕組みがとても良かった。もちろん、工数を時間で入力することも可能ですが、割合で入力することで実情に近い工数を数値に置き換えることができます。

コンピュータで計算している時間は、専用のツールによって可視化されていて、1日を振り返ることにも活用できるし、日々の作業の無駄を減らすことにも役立っている。何よりも自己管理できることがとても大切です。

管理する側・管理される側の時間管理

自己管理できると周りの人に気を配れる。「私がこの作業を今日中に終わらせないと、次に作業する人が困るよね」と。そうやって、少しずつ無駄な待ち時間を減らしていくことが、残業をなくすという単純な目標よりも大切です。

残業を管理するプロデューサーは情報が集約されていることで、限られた残業の中で早めに対処をすることができます。

管理する側も管理される側も相互に自己管理していこうというところが今回TeamSpiritを入れる理由の1つでした。

コンピュータリソースは費やせば費やすほど品質はどんどん良くなる。ただ、制限がないと無駄に使ってしまう人も増える。ポイントは自己管理ができているかどうかですね。

白組は、コンピュータもうまく活用するし、人とのコミュニケーションも大切にする。人の感覚に頼る部分も多いからこそ、工夫でカバーすると。

実際に私たちが使ってるTeamSpiritのスクリーンショットを持ってきました。割合で(時間を)入力し、月次の集計で見ると、入力した割合に対して、集計され可視化されているのが見ていただけると思います。

可視化によって、自分の作業の割合を振り返ることができる。「本当はもっとこっちのプロジェクトに割かないといけなかった」とか、「想定よりもこのプロジェクトで時間を費やしてしまった」と。振り返りやすくなっているのが重要なポイントです。

また、月の勤務状況もグラフによって可視化されていて、例えば、「最近、電車遅延が多かったな」「休憩する時間が遅かったな」「納品前で残業が急に増えた」実感しやすくなっている。

月次で集計したサマリーも見れるようになっています。

管理者はだらだらと残業させたいわけじゃなく、よりいい映像を作流ために時間配分を調整する。

納品前の最終段階はとても重要で微妙な差が結果を左右する。だからこそ、お互いに歩み寄り工夫する。

交通費もプロジェクトに紐付けられているので、どのプロジェクトへの紐付け確認だけで済む。情報が連携することによって、作業負担が減り、レポートを出せばプロジェクト管理者が把握できます。

このスクリーンショットでは、実際にプロジェクトと交通費が関連付けられている画面です。

精算を行う際にも、「これとこれとこれはこのプロジェクトで精算しますよ」と稟議と精算とプロジェクトが紐付けることもできます。

システムの肥大化を防ぐための整理

私たちは給与奉行を使っていて、Salesforceのレポート機能を使って書き出して、エクセルで整理して、給与奉行に渡しています。

連携処理には、各社いろんな考え方があると思います。大きなシステムに一度すべての情報を入力し、バッチ処理で段階を経て処理させています。私たちは、巨大なシステムにしてしまうと変更したり、新しいシステムに移行しにくかいと感じます。臨機応変に調整できるものが最適だと考えています。

これは人数規模にもよるかもしれないですけど、私たちはこういったところがTeamSpiritの気に入ってるところでもあります。

ざっくり計算ですが、150名ぐらいが2プロジェクトをやって、22日やると6600レコードぐらいあるので。これをただ単にエクセルで管理するのは大変です。

IoTじゃないですけど、すべての情報をサーバに投げるのではなく、ゲートウェイ的に一時フィルタリングしてから次のステップに渡してあげる事でスムーズな処理ができると思います。

整理することによってシステムが肥大化しないというのも、今後長期的な運用を考えるときにものすごく重要になってくるんじゃないかなと思います。

TeamSpiritを導入した3年間で変わったこと

まとめると、ばらばらだったシステムが1つにまとまったことによって、いろんな新しいチャレンジができそうだと感じています。処理方法や計算方法を変えてみて「実はこんなことで困ってたんだな」というのもやりながら気づいたりすることがあって。

気づいたことは、TeamSpiritにフィードバックして、「こういうことをやっていきたい」「こういうふうに改善したら、ほかのお客さんも便利なんじゃないか」と、自分たちだけでなく、新しいお客さんが増えたことを考えています。もちろん、もっといいアイデアがあれば、取り入れたいなと思っています。

どうしてもコスト削減に視点が行きがちですが、人が考える時間を増やすことがすごく重要です。システムが統一されてくると、担当者が責任を持てるようになり、「私それもできるから引き受けるよ」「次はこういう改善ができるよね?」と積極的になる。

導入前と導入後の変化の中で、各自が積極的に考え始めたというのが、何よりもうれしい結果だと思ってます。

飛鋪:鈴木さん、どうもありがとうございました。せっかくなので、1つだけご質問をさせていただきたいなと思ってます。

TeamSpiritを入れて活用していただいて3年ですけれども、入れる前とあとでどのくらい時間が減ったとか、作業時間や入力の時間で効率化が図れたとか、ざっくりでいいんですけど、そういうのってありますか?

鈴木:先ほどお話させていただいたように、従来は、いっぱいプロジェクトがあったのでかなりざっくり入力していた部分があって。意外とまとめて1ヶ月に全部入れるという人が多かったので、入力の手間としては正直ちょっと増えている部分もあるんですよ。

ただ、これを毎日みんながやることによって、「次のプロジェクト、幸せになるよね」とか「次になにかやるときに動きやすくなるんだったら、みんなでやっていこうよ」という。一人ひとりの小さい改革がものすごいパワーを生むなと思います。

飛鋪:ありがとうございます。鈴木さん、非常に貴重な講演をどうもありがとうございました。これで白組様の事例講演を終わりたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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