2024.10.10
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DMM亀山会長インタビュー(全1記事)
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おのなお氏(以下、おの):自分が18歳ということで10代に向けてメディアをやっているんですけど、今回は亀山さんの10代のころとかにもフォーカスをあてながらお話を聞けたらと思っています。
亀山敬司氏(以下、亀山):初めての10代のインタビューだね(笑)。といってもインタビューを受け出したのは最近なんだけどね。
おの:それは何か理由があるんですか?
亀山:ずっと目立たないで生きていこうと思ったんだけど(笑)。発信するといいことあるかなと思ってね。(発信しないと)みんながオレのことヤクザっていうからさ(笑)。そんなわけで、人と会ったり、顔は出さないけどインタビューは受ける方針に変えたのよ。
おの:それはいつごろからなんですか?
亀山:3、4年前かな。ITの同業者に会うとか、Awabarで学生と呑むとか、インタビュー受けだした。だから、みんな知り合ってそれくらいだよ。メディアに顔出したくないから写真とか撮っても「友だち限定公開にしろよ」って言ってる、顔出てもロクなことないしね(笑)。
おの:Newspicksで「19歳くらいから商売をやっていた」という記事を読んだんですが、きっかけはどんな感じだったんですか?
亀山:レンタルレコード屋をやろうと思ってアルバイトをしたんだけどね。300万円くらい貯めようと学校をやめたのが最初だったかな。
おの:学校に入るときは卒業資格を取ろうとして入学されたんですか?
亀山:いや、もともと税理士をめざしていて。資格だけ取ったらやめようと思ってた。でも、学校の先生に「これから税理士の資格とってもあまり仕事ないゾ」って言われて、仰天したよ。税理士ってバラ色のしごとだと思ってたから。「まぁ仕方ないな」と思って学校やめて、たまたま露天商売をやってる人と知り合ってやり方を教えてもらったところから商売が始まった。
おの:亀山さんの父親も商売をされてたと伺いました。影響は受けているんですか?
亀山:昔からオヤジの手伝いしてたからね。オヤジは喪服屋とか写真屋とか飲み屋、うどん屋、海の家とかいろんなことやってた。小学生のときは海の家を手伝ったりしてたよ。オレまだ小学生だったから、「アラ、可愛い子ががんばってる!」とかでみんな入ってきてくれて。オレ客引きうまかったのよ(笑)。だからオヤジも「お前行って来い!」みたいな感じでね。
おの:子どものころから商売人だったんですね!
亀山:そう。稼ぐのが楽しかったというか、お客さんが来るのがうれしかったね。カネや小遣いがどうこうではなかった。オヤジを見てたからオレも将来は商売やろうと思ってたんだけど、先生の一言がきっかけで始めようと(笑)。
おの:その後ピンク業界に入っていったんですね。親の反対とかはなかったんですか?
亀山:親がいろんなことやってたから、何やってもいいよって感じだった。だからビデオ屋の次はピンクやるって言っても「ああ、そうなんだ」って(笑)。
おの:ビジネスにおいて自分の根本にあるものってなんですか?
亀山:まあ、オフ会とかで趣味の話してても、お互いに損得もないどこか浅い感じで終わるじゃない。でも、ビジネスっていうのはお互いに利害がある。社長と従業員の間でも、業者や得意先の間でも、損得の打算関係があるじゃない。でも、その中でもお互いが必要で付き合ってる。だから利害のない友達付き合いよりも、ちょっと本質的な付き合いができるんだよね。
もしオレが従業員の給料を上げたらとりあえず損になるんだけど、それで社員のモチベーションが上がり仕事を成し遂げてくれたら結果としてオレが得をするわけじゃない。
同じ人間関係でもビジネスを通すと、助け合いとか奪い合いとか、良いとこも醜いとこも含めていろんな人間関係がある。その中で信頼関係が結べるってのが面白いと思うんだよ。例えて言うなら、「サザエさん」も面白いし「ウシジマくん」も面白いみたいな感じで混ざってるのがいいよね。ほら、自分も、高校生のときと社会人のときってどこか違うだろ?
おの:そうですね。オレの場合は180度くらい変わりました(笑)。
亀山:だろ(笑)。学生のころの友だちなんていうのは利害がないから、ピュアな関係だよな。だけど、リアルな関係っていうのは社会の方にあるわけさ。本質的な部分っていうのはすごい面白いよね。
おの:なるほど、亀山さんにとって面白さってなんですか?
亀山:誰かの世話になって生きている奴と、自分で稼ぎながらその中で楽しんでる奴ってちょっと違うじゃない。ボランティアとかすごくいいことだと思うんだけど、でも、それって誰かの寄付で成り立ってたりするじゃない。そうじゃなくて自分たちがビジネスできるようになって、利益が生まれる仕組みをつくったうえで社会貢献するほうが面白いよね。
例えば学校とかもそうかも。先生という視点なら理想の教育だけ考えればいいかもしれないけど、学校には先生の給料とかも含め、永続的に運営される仕組みも必要になってくる。
ちょっと極端かもしれないけど、理想的なことをしたいなら、自分で自活しなくちゃいけないわけ。理想的なことをしていても誰かのお金でやってたら、その人に「終わりね」って言われたら終わっちゃうからね。
おの:亀チョクって亀山さん自身がお金をだして、面白いことをやってるわけですよね? どんな思いで見てるんですか?
亀山:自分でアイデア出なくなってきたから、いろんな人にアイデアをプレゼンしてもらってるの。そのなかでビビッと来たものには「お金出すからカタチにしてみてよ」と。まぁ、仕事のやり方を変えたってことだよね。
おの:いつごろから始めたんですか?
亀山:4年くらい前からかな。50歳になったら煮詰まっちゃったんだよね。それまで自分でアイデアを出して自分でやるっていう感じだったんだ。もちろん社内の人たちもいろいろ考えてくれていたんだけど、基本的にはオレが舵を切ってスタッフについてきてもらってた。
でも、50にもなると何も思いつかなくなったんだよね。「SNSって何? LINEって何?」ってなっちゃったから、そろそろオレも裏に回って亀仙人になろうかなと思って(笑)。
悟空とかを助けながら、「アイツはオレが育てたんだ!」って自慢する方が面白いかなと。そんなわけで亀チョクをつくったのよ。「メインはお前がやれ、オレは裏でアドバイスするから」って言ってアイデアをサポートするカタチに変えた。
おの:ちなみに亀チョクには今まで何人くらいの持ち込みがあったんですか?
亀山:100〜200人いたと思う。採用したのは50人くらい。でも、今残ってるのは10人くらいかな。
おの:そうなんですね。亀チョクの決め手ってなんですか?
亀山:まずは話のテンションが合うことかな。頭良さそうでも愛嬌がないと一緒に仕事しても楽しくないよね。あとプラン以前にできる奴と思えるかだね。アイデアだけを募集してるわけじゃないからさ。
プランを説明されても「自分の積んできたキャリアでそれできるの?」って聞いて「それは今からなんです」って言われると、「絵に描いた餅じゃないか!」ってなるわけよ。それよりも「自分の経験値からこういったことができて、こういうネットワークがあるからやれます!」っていうと任せてみたくなるよね。
でも多くが勘違いしていて、アイデアが面白ければやれると思ってる。もちろん社員ならアイデアだけでもほめるけど、亀チョクはそうじゃなくて「オマエがやれよ!」って募集だから。
おの:提案してくるのはどの世代が多いんですか?
亀山:大体30代、40代かな。10代、20代だと流石に一部署をまとめるっていうのはナシだな。やっぱ経験値とかがモノを言うし。キミが面白いアイデアを持っていたとしても、「今すぐやれるか?」って言ったらむずかしいだろ?
おの:いや〜どうですかね。必ずしもそんなことはないと思いますけどね。
亀山:アイデアがあっても、ビジネスまで持ってくのはむずかしいんだよ。若い人たちが持ってるのは一部の能力だけってことが多いよ。オレが求めているのはアイデアをカタチにして収益をあげること。
例えば、「SNSでの発信力があるのでお客さん集められます!」っていう子がいるけど、「集めてどうするの?」っていう話だから。そこからはビジネス的な経験が必要だよ。一部の能力だけなら新卒でも持ってる奴はけっこういる。でも、彼らも最初は先輩の下に入っていろんな経験を積みながらビジネス全体を動かせるようになって、やがて一部署を任されるわけ。ウチも亀チョク以外はそうだよ。
社員は時間をかけて教育はするけど、亀チョクは別枠だから、完成品を求めてる。プランが通れば権限を与えてウチの社員やお金を預けるんだから、経験値だったり、実績だったりが必須だよ。いきなり数億の金を預けることもあるわけだからさ、能力と勢いだけじゃ無理だね。
おの:だから、30代、40代になるわけですね(納得)。今まで支援した中で一番若い人でも30代とかなんですか?
亀山:いや実は20代もいた(笑)。だけど、うまくまとめられなかったかな。
おの:アイデアはIT系に偏っていたりするんですか?
亀山:そんなことはないよ。農業系とか介護系とかもあったし、葬儀屋みたいなのもあった。コンテナで野菜を作ってたこととかあるよ(笑)。あまり売れなくてダメになっちゃったけど。
おの:それを踏まえたうえで聞いてみたいのが、今の若い人たち、自分も含めてですけど、ITに偏ってる人たちが増えているじゃないですか。何か思うことあったりしますか?
亀山:みんな楽しそうだなって(笑)。今は技術とか持ってプレゼンすると、いろんな人がお金出してくれるじゃない。昔はそういう仕組みがなかった。信用金庫とかで「お金貸してください!」って言って、親とか、親戚に保証人になってもらってお金集めるところから始まったよね。自己破産覚悟でビジネスやってる人が多かった。
でも、今はアプリとか作って売上なくても「トラフィックあります!」とか言うとお金出してくれるとこあるでしょ。その中で100人に1人くらい大きな結果出すからみんな投資しちゃう。飲食店やりたいとか建築やりたいとか言っても誰もお金ださないでしょ。でもITには投資する。だからITにいる奴らは恵まれてるよね。
おの:逆にそういったところへ投資したいと思わないんですか?
亀山:うん。マイナー投資はしようとは思わないな。投資っていうのは極端なこと言うと金だけだして株公開したら儲かっちゃったって感じ。まぁギャンブル的な色合いが濃いよね。オレは投資家じゃないから、やっぱ実業家のほうが楽しいんだよね。
亀チョクもそうだけど一緒にビジネスを作ってくから楽しいわけ。もちろんメインは彼らだけど、さっきも言ったように「まだまだじゃの〜」って言いながら広告の戦略だったりとか、売上を立たせる方法だったりとか、営業的なこととか、財務の知識とかそういうのをやりとりするのが好きなの。
5パーセント、10パーセントの株をもってても発言権がないし、当たるも八卦当たらぬも八卦だよね。お金出すだけならお金持ちがだせばいいだけの話じゃない。それよりも中でやったほうが、いろんなリソースを無制限に与えられるし、将来性があると感じたら独断で追加資金も与えられる。
ふつうスタートアップとかだったら最初のフェーズで一定の資金集めて、次はある程度のフェーズまでいかないとお金が出ないとかそんな感じでしょ。追加でなかったら終わりとか普通にあるわけさ。あまり長い目で見てくれる人がいないんだよね。
投資家は起業家を教育しようと思ってるわけじゃない。彼らの興味はどんなリターンが生まれるかって方に向いてるわけだから。でも、それじゃできない事業もあると思うんだよ。
例えば、ウチの場合だと、DMM英会話は「数年は黒字化しなくていいから会員数をどんどん増やして1位になれ!」って始めた。社内プロジェクトなら広告費や人件費が経費で落ちるから、節税メリットで1.5倍くらい多く投資できるし、他事業とも共通会員で助け合える。
スタートアップだとつねにVCとか投資家の顔を伺いながら進めないといけない。これは上場したあとも一緒。利益が出ると配当もあたえなくちゃいけないし、赤字にもできない。赤字になるとgumiみたいに怒られちゃうわけよ(笑)。gumiが「5年後は化ける」って主張しても「今は赤字じゃねーか!」って言われる。
さっきの話で言うと、今の若いITベンチャーはチャンスはつかみ易いけど、あとで面倒くさいことが回ってくるわけよ。お金を集めようと思えばいくらでも集められるかもしれないけど、集めれば集めるだけ自分の権限がなくなってくる。だから良いとこと悪いとこもあるね。上場企業の友人もたくさんいるんだけど、オレなんて自由にやってるから「お前ら羨ましいだろ〜」って言ってる(笑)。
おの:話変わるんですけど、亀山さんは定期的に旅に出てると聞きました。
亀山:先月もアフリカ行ってきたよ。仕事ってあくまで人生の一部にすぎないじゃない。だから、たまに自分のことを探そうってことで旅に出たりするんだよね。キミくらいの年齢、18歳なら自分を見失うとかないでしょ。自分を見失うどころか自分がまだ何者でもないから、「これからどうしよう? 何しよう?」っていうのでいっぱいじゃない。
でも歳を取れば取るほど、肩書が増えたり家族ができたりで、良いことと同時にがんじがらめになりやすいんだよ。会社のために、家族のために、って考えると見失ってしまうものも多いんだよね。だから一度離れてみるとわかることもたくさんあると思う。
亀山:オレもジジイになった頃にさ、「こんなにがんばったのに、離婚されちゃった、会社から用なしっていわれちゃった。オレの人生なんだったんだろ?」ってなるかもしれないわけよ。
旅に出ると、部下にひどいこと言っちゃったなとか、ご飯つくってもらってるのに奥さんに「美味しい」って言わなかったなとか、そういうことを思い返せる。で、帰ったときに、「おつかれさま」とか「このごはん美味しいね」とか、そんな些細だけどちょっとした一言をかけるだけで、壊したくないものが守れるかもしれないじゃん。日常じゃそういうのってなかなか気づけないもんなんだよね。
おの:そういった理由で旅に出てるんですね! 今は4年に1度って書いてあったんですけど、昔はもっと頻繁に旅に行ってたんですか?
亀山:そうだね。年に1回くらいのペースだったかな。飲食店やビデオレンタル店をやってたときなんかは、正月はめちゃくちゃいそがしいけど2月はヒマなのね。だから、そのころを見計らって、「オレの給料みんなで分けていいからちょっと旅にでてくる!」みたいな感じで旅に行ってた。正月に休まず仕事したほうが、2月ずっと仕事するよりぜんぜん儲かったりするんだよね。
おの:若い人たちもみんな旅にでろって感じですか?
亀山:そうだね、オススメしてるよ。まぁ、でも、オレは自営業だから自由にやれたけど、勤めてる人はなかなかむずかしいかも。旅にでてるとバックパッカーの学生にはしょっちゅう会うんだけど、社会人はあんまりいない。会社やめちゃって「日本帰ったらどうしよっかな」って人がたまにいるくらい(笑)。
本当はウチの社員にも土日休まず働いたら、1カ月の有給でどこか旅にでていいよっていう仕組みを導入したいんだけどね。会社が大きくなるとなかなか自由にやれないんだよね。
そういう選択もあるよって提案して、オレもいいし、社員もいいけど、労基がダメって言うわけよ(笑)。ブラック企業をつくらないためなんだろうけど、働き方にはもっと多様性があっていいと思うんだけどね。
社会的責任っていうけど、責任の取り方がなんか違うように思うよね。ってあまり愚痴っちゃうと怒られちゃうな(笑)。
おの:ありがとうございます。最後なんですけど、若い人たちにメッセージが何かあればお願いします。
亀山:とにかくいろいろ行動してみたら? 街に出て人に会って欲しいかな。やっぱりネットだけでは判断できないことも多いから。情報なんてしょせん誰かが作ったものだし。自分の足でいろんな国に行って、自分の目でいろんなものを見て、いろんな人に話を聞いたほうがいいよね。
例えば、キミもこうやって会うまでは「亀山さんってヤクザかも」って思ってたわけじゃん(笑)。でも、実際会ったら少なくとも自分の目で見た感想を人に話せるじゃない。誰かがつくった情報としての亀山さんじゃなくて、「オレが見た亀山さんはこうだった!」って自分の経験として語れるわけじゃない。
自分で見たりやったりしないと「これなんでわかるの?」とか聞かれたときに「ネットでそういう風に書いてありました!」しか言えなくなっちゃう。そんなの超ダサいじゃない。
だから若いうちに自分の言葉を持てるようになっておくべきだね。そのほうが将来モテモテになっちゃうよ。というわけで「インターネットを捨てて街に出よ!」がわたし亀仙人の最後の言葉でした〜(笑)。
おの:ありがとうございました!!!
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