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Foundation 20 // Elon Musk(全1記事)

「常に批判を求めよ。原理を疑え」"世界最高の起業家"テスラモーターズ・イーロンマスク インタビュー

TIME紙の2013年版「世界でもっとも影響力のある100人」で表紙を飾り、さらにフォーチュン誌ではアマゾン創業者のジェフ・ベゾスなどを抑えて「今年の最優秀ビジネス・パーソン」に選ばれた、いま最も注目されている起業家イーロン・マスク。オンライン決裁システムのPayPal(ペイパル)を創業・売却したあと、電気自動車事業のTesla Motors(テスラモーターズ)や宇宙事業のSpaceX(スペースエックス)を立ち上げた。彼の枠にとらわれない発想はどこから湧いてくるのか? Google Venturesによるインタビューを書き起こし&翻訳しました。

ゲームやパソコンにはまっていた子供時代

Kevin Rose(以下、ケビン): 今回はTesla Motors、 SpaceX、そして PayPalの創設者であるイーロン・マスクさんをお迎えしてお送りします。ご出身はどちらですか?

Elon Musk (以下、イーロン): サウスアフリカのプレトリアで生まれて、ヨハネスブルグにも少し住みました。幼い頃にアフリカ内やアメリカを含む色々な国に行く機会に恵まれました。アメリカに行ったのは確か10歳くらいの時でしたね。子供の頃はマンガや本が好きでした。テクノロジーだとか、物事の最先端は常にアメリカにあると思っていたので、幼い頃からアメリカに行きたいと思っていました。

ケビン:いつ頃からコンピューターやテクノロジーに興味を持ち始めたんですか?

イーロン:10歳くらいの時、サウスアフリカのお店でコモドールVIC-20(1980年発売の家庭用パソコン。日本ではVIC-1001)を買いました。こんなものは見たことない! と衝撃を受けました。プログラムをつくったり、ゲームをつくったり、ATARIで遊んだり。6歳か7歳くらいの時にも他のゲーム機で遊んだりしていたので、ゲームをつくるというアイディアはいつもわくわくするものでした。それが初めてのコンピューターで、メモリーは8Kくらいだったと思います。

起業したきっかけ

ケビン:何があなたを起業家への道に進めたんですか? 昔から自分でビジネスを立ち上げたいと思っていたんですか? それともそこには色々迷いがあったんでしょうか?

イーロン:はっきりとやりたいことが明確だったわけではありません。ある時、新しいものを世に生み出すっていいな、と思ったんです。でもそれが起業することなのか、面白いことをやっている会社で働くことなのかはわかりませんでした。実は最初にシリコンバレーに来たのは、スタンフォードの大学院で高エネルギー物理学を学ぶためでした。それが1995年で、インターネットは世界にものすごい影響を与えるものなんだと衝撃を受け、インターネットの世界でやっていきたいと志すようになりました。実は、最初は自分で起業するのではなく、ネットスケープで働こうとしたんです。

ケビン:ネットスケープから雇われなかったんですか?

イーロン:返事が来ませんでした。ウォートン大学で物理と経済 - 物理とビジネスと言ったほうがいいのかな-の学位を取りました。そして大学院で高エネルギー物理学をやっていたし……。コンピューターサイエンスの学位もなければ、ソフトウェア関連の会社で働いた経験もなかったので……。まぁどういう訳かネットスケープからは音沙汰無しでした。実はネットスケープ社のロビーでうろうろしたりしたんですが、恥ずかしくて誰とも話せずじまいでした。

ケビン:履歴書も持っていたんですか?

イーロン:はい、誰かと話すチャンスを狙っていたのですが……。でも恥ずかしいのと怖いので誰とも話が出来ず仕舞いでした(笑)。

大学を辞めて最初の会社を立ち上げ、そして失敗

ケビン:それからどうなったんですか?

イーロン:その夏はずっとソフトウェアをつくっていました。スタンフォードの新学期も始まり、これからどうするか決めなくてはなりませんでした。そこで僕は学校を休むことにしたのです。ここで自分のビジネスを立ち上げて失敗したとしても、大学院に戻ればいいやと考えました。学部長のところに行って、休学すること、そして多分6か月くらいで戻ってくると話をしました。

学部長は休学を認めてくれました。その時、「君が戻ってくることはないだろう」と言われたのですが、実際その通りとなりました(笑)。彼とはそれ以来連絡を取っていません。それで兄弟と友人のGreg Kouriと三人で一緒に会社を始めました。それがZip2です。初めの方針はメディア関連の会社のオンライン化を手助けするソフトウェアをつくることでした。ニューヨークタイムズ等オンラインサービス化を手伝いましたね。当時はすべてがオンライン化されていなかったので。多くの人がそこに気が付いていませんでした。

ケビン:その時のCEOはあなたでしたか? それとも誰か違う方が?

イーロン:当初は私がCEOでした。最初の一年くらいですかね。でもベンチャーキャピタルファンディングを受けたことにより、私達のビジネスに投資した投資家達がプロのCEOを迎え入れたがったのです。

ケビン:誰か他の人にCEOの立場を受け渡すのは嫌ではありませんでしたか?

イーロン:その時はいい考えだと思いました。CEOとして具体的に何をすればいいかわからなかったし、投資家も変な人は抜擢しないと思ったし。その道のプロに任せたほうがいいと思ったのです。新しくCEOとして雇う方が会社に利益をもたらすだろうと信じていました。CEO業務を他の方に任せることによって、僕はソフトウェア制作や製品監修等、自分の好きなことに専念できると思いました。

でも振り返ってみると、それは得策ではありませんでした。CEOとして迎え入れた方はあまり優れた方ではなかったのです。私が思うに、会社の成功は彼にも投資家達にも寄与していません。

「火星に緑を生み出す」SpaceXの着想

ケビン:PayPalはとても成功していますが、どういう経緯でこんな誰もやったことのないプロジェクトに着手しようと思い立ったんですか? 失敗するかも、という不安はありませんでしたか?

イーロン:もちろんありました。この話をするには大学にいた頃にどうやったら人類に多大な影響を与えることができるだろうか、と考えていたことから始まります。人類の進歩に貢献するには、「インターネット」「クリーン・エネルギー」- これは生産と消費両方ですが- ソーラーシティは生産で、Teslaは消費ですね。そして「宇宙」、これは規模を地球だけに留めないというところにあります。当時、僕はこれらすべての分野に貢献できると思っていませんでした。これら三つは人類の未来に多大な影響を与えるだろうといつも思っていましたが、まさかここまで来ることができるなんて本当に光栄です。

最初に宇宙に関するプロジェクトを始めた時は、火星に小規模の温室を送り込んで火星の乾燥した土地に栄養を与えるジェルを植え付けようと考えました。火星の地面に水分を与えて温室をつくる、そして火星に緑を生み出そうと思いました。これを発表すると、世論がすごく反応しましたね。火星に命を送り込むアイディアはきっと人々を興奮させると確信していました。

ただこのプロジェクトは完全に100%の損失を見込むものであるとたかをくくっていました。もしかしたら、広告やスポンサーだとかどこからかの支援があるかもしれない。それでも、私達のロスは間違いないだろう、と。ロケットの会社を始めても短期間では利益はゼロに間違いないとも思っていました。始めた当初こう思っていました、「SpaceXは確実に失敗する」。

安くてカッコイイ電気自動車を - Tesla Motors

ケビン:Tesla Motorsに関してはどうですか?

イーロン:電気自動車に関しては、当初僕らは介入しなくてもいいかと思ったのです。なぜかと言えば、カリフォルニア州はジェネラルモーターズにVoltというかEV1を無理やりつくらせたようなものなので。EV1が出た時に、おぉ、いいじゃないか。世界で最も大きい車会社が電気自動車をつくりはじめた、と思いました。EV1の名前の通り、きっとEV2、3、4って続くものだと思ったし。

ケビン:生産中止になりましたよね。

イーロン:あれは本当に間違った選択だったと思います。プロジェクトを廃止しただけに留まらず、すでに市場に出回っていたEV1を回収。しかもEV1はリースのみ、販売なしでした。顧客の意思に反して車を回収、そして回収した車は空地に集積し、お払い箱としてポンコツ処理されました。EV1をリースしていた顧客はジェネラルモーターズを法的に訴えようとしました。顧客たちは愛車がお払い箱にされた空地に集まり、夜通しキャンドルに火をともしました。モノが廃棄されたところに人が集まってキャンドルをともすなんて、聞いたことありますか? 本当になんと言ったらいいか……。

顧客の中に、車をキープしたいという人がいるだろうということは、アンケート調査をしなくたってわかったことです。彼らがこのプロジェクトを続けないのであれば、誰かがやらなければと思いました。私達が成し遂げたのは、見た目も格好良く、ハイパフォーマンス、そして長距離を走ることができる電気自動車をつくることができるというのを世に証明してみせたことです。更にその電気自動車はリースではなく購入することができる。ガソリンとはお別れです。

ケビン:どうして他の企業はあまりよくない車をつくり続けるんでしょうかね?

イーロン:どうしてでしょうね。わかりません。ボディパネルの型はいくらでも選べるのに、格好よくないものを選びますよね。選んだ型でどんどん型抜きしていくのだから格好良くても、ダサくてもコストは同じなのに。もちろん、車製造のいくつかの部分ではクオリティを優先するとコストが高くつくものもありますよ。でも多くの場合コストは変わりません。

ダサくて高い車もつくれるし、格好良くて高い車をつくることもできる。手頃な価格で格好良い車もあれば、手頃な価格のダサい車もある。ダサくても格好良くてもコストはあまり変わらないと思います。わからないですが、大企業は企業の歴史や文化に縛られすぎるのかもしれませんね。

ケビン: フォーカスグループ(少数の顧客を集めて行うマーケティング・リサーチ手法のひとつ)を開きますか? 

イーロン:いえ、デザインチームとの話し合いが全てです。毎週金曜日はデザインチームとエンジニアチーム、皆で集まり、車のすべての部分、バンパー、カーブやどんな細部についても意見を交換します。エンジニアリングからの視点、工学的視点、法的規制からの視点……。全ての要求を満たすのはとても大変なことです。つまり自分の好きな車をただ生み出すことは出来ないのです。安全面でも法的規制の基準を満たさなくてはなりませんし。ミリ単位での細部まで検討に検討を重ねます。それが優れた製品を生み出すことに繋がります。

常に批判を求めよ

ケビン:最後の質問です。ゲストの皆さんにいつも聞くのですが、これから起業しようとする方達、起業して間もない方達にアドバイスをお願いします。

イーロン:そうですね。批判の声をよく聞く、そして批判を常に求めるということでしょうか。耳が痛いことは聞きたくないですよね。でも、批判を聞かないというのは皆さんが最もよく犯す失敗のひとつだと思います。

ケビン:どうやって批判を求めていけばいいんでしょうか? 

イーロン:どんな人からでもです。例えば、友達につくったものを渡す、そして「どこがよかったは抜きにして、よくないところを教えてくれ」と言うんです。そうしなければ、友達はどこがよくなかったかは言ってくれないでしょう。ただ、「すごくよかったよ!」なんて言って終わりです。友達は友達を傷つけたくないものですからね。

うまく「よくなかったところ」を聞き出すことですね。彼らが言うことがすべて正しい訳ではないと思いますが、自分の味方から出るアイディアは聞くに値します。でも、競合相手もたまにいい批判をくれます。いいところを聞くのも嬉しいことですが、それよりもここをもっとこうしたほうがいい、という批判の声に耳を傾けるほうが大事です。

もうひとつ大切なのは、すでにあるものと比べない、基本的原理から発想するということでしょう。これってあのサービスと似ている、だとかあの人達もやっているからという理由で物事を進めない。基本的原理を疑ってかかるよりも、成功している人を真似するほうが頭を使わなくて済みますね。基本的原理というのは物理的に言うと世界を見て「これはどういうことなのか、どうしてこうなのか」と考えること、つまり、「私達が正しいと信じていることは真実なのか?」とそこから考えていくのです。なので、考えるのにとても頭を使います。

「車なんて誰も欲しがらない」と言われた時代があった

ケビン:何か例を挙げて説明してもらえませんか?

イーロン:例えば、人は「バッテリーパックは高い、でもそれは今までもずっとそうだったしこれからも変わらない」と言います。でもこれっておかしいことだと思いませんか? ずっと同じものの見方をしていてはいつまで経っても変わりませんよ。あとは、馬。「誰も車なんて欲しがるわけないだろ。だって馬はすごいよ。皆が馬に慣れているし、馬が食べる草はそこらじゅうに生えているし、ガソリンなんてどこにもないんだから。だから車なんてつくっても売れないよ」過去に人はこんなことを本当に言っていたんですよ。

バッテリーに関して言えば、これまで1kWhごとに600ドルがかかっていたのだから、今後これが安くなるわけないだろうと皆が言います。でもここで、それは違うだろ、と声を大にして言うのです。バッテリーは何で出来ていますか? 基本的原理を考えるとはつまり、バッテリーを構成する成分から発想するということです。バッテリーの構成物といえばコバルト、カーボン、ニッケル、アルミニウム、カーボンと、あとはポリマーと鋼の缶が主です。

構成物を一つずつ確認して、例えば「ロンドン金属取引所で買ったら、コストは安く収まるかな? あ!1kWh毎に80ドルになった!」という具合です。どうやればバッテリーの価格を抑えられるか、ということをきちんと自分の頭で考えなくてはならないということです。自分の頭で考えて初めてバッテリーを破格の値段で提供することができるのです。多くの人はどれだけこれが破格なのかに気が付かないかもしれませんがね。

ケビン:ありがとうございました。

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