2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岩崎:「ジャパニーズアニメ」ということなんですけど、最初に紹介するのが、アニメがいかに人気で、かつ日本が他国をいかに圧倒しているかというのを数字で表した記事ですね。
この記事のソース元がParrot Analyticsという会社です。私も初めて知ったんですけど、比較的最近できたエンタメ系のデータを集めて(分析をする)データアナリティックの会社です。テレビで言うと視聴率のような感じです。
ドリームワークス・アニメーションとかソニーとか(大きな配給会社や)主要メディアがお客さんで、信用のあるリソースなんです。
この記事で何を言っているかというと、テレビショー全体の中で最も視聴者に需要のあるテレビショーの1位が『進撃の巨人』です。アニメ部門の1位じゃなくて、全体で。
傍島:すごい。
岩崎:Demand(需要)なので、実際に観られているかはわからないんですけど、要するに一番見たいと思わせる番組の1位が『進撃の巨人』。
この記事ではいろいろアニメ全体の需要と供給に関して話していて、おもしろかったのが、世界でのアニメコンテンツの需要シェアが、去年の4.2パーセントから7.2パーセントになっているんです。
つまりどういうことかというと、エンターテインメントっていろんなジャンルがあるじゃないですか。SFとかコメディとかホラーとか。そのジャンルの全体の需要が100パーセントだとすると、アニメが占める割合が7.2パーセントなんです。
7.2って言うと「そんな大したことないじゃん」と思うかもしれないんですけど、「カートゥーン」とは別なんです。キッズ向けの番組は別のカテゴリーで、ジャパニーズスタイルの全年齢対象向けの「アニメ」というカテゴリーが1つ確立されていて、その需要が7.2パーセントなので、かなり大きい数字なんですね。
傍島:確かに。
岩崎:去年2021年の非英語コンテンツの世界視聴の需要は、英語コンテンツの需要の2倍です。どういうことかというと、ちょっとわかりにくいんですけど、今まではハリウッドがメインだったので、英語で制作されるもののコンテンツ需要が多かったんです。でもそれ以外。韓国ドラマとかKPOPとかも入ってくると思うんですけど、英語をしゃべっていないもののコンテンツ需要が、英語のコンテンツの2倍になっているんです。
要するに「ハリウッド離れ」が起きている。みなさんのコンテンツに関する趣味嗜好が多様化しているということが、この数字でわかるんです。
小川:確かに。最近(ハリウッド映画より)韓国ドラマのほうが見てるかもしれないです。
傍島:(笑)。
岩崎:そうなんですよ。アメリカ人も、最近もうほとんどアメリカのドラマの話がなくて。友だちと会うと、最近見たKドラマの話なんですよ。
小川:えー、そうなんですね。
岩崎:最近見たKドラマか、最近見たアニメの話にしかならなくて。アメリカの映画でも、例えばこの前だとNetflixで『ストレンジャー・シングス』という大ヒット作だったり、マーベルのスーパーヒーロー系とか、ビッグネームが出てくると「見た」っていう声がちらっと出てますけど。もうみんな、Kドラマかアニメの話しかしない。
そういう需要の多様化が出てきている。日本語のコンテンツに関しては183パーセント、83パーセントの増加です。ほぼ1.9倍。韓国コンテンツは意外に37パーセント増の、137パーセントなんです。
なので日本語のコンテンツの需要のほうが高いんです。もちろんこの日本語のコンテンツの需要はほとんどがアニメです。90パーセントがアニメになります。
という感じで、今の市場の需要という意味でいかにアニメがすごいのか、けっこうおもしろい記事だったなと思いました。
傍島:いいですね。数字で見せてもらえるのはわかりやすいですよね。感覚的には「韓国すげえ」と語られますけど、確かに日本の数字はすごいですね。
岩崎:どうしても自分が楽しんでるものって(そのすごさがわかりづらくて)、周りの友だちの話とか聞いてすごさは感じるんですけど。実際今回リサーチしてみて、数字で実績が出てるのはすごいことだなって思いました。
岩崎:もう1個、ハリウッドレポートの記事なんですけど。先ほどの名前が出た『鬼滅の刃』ですが、アメリカでもかなりヒットしてます。世界的にかなりヒットしています。
この記事が紹介していたのは、コロナでアメリカの映画の収入が80パーセント減ったんですね。ロックダウンで映画館にも行けないので。
日本では45パーセントで、半分ぐらいで止まった。その理由が『鬼滅の刃 無限列車編』のヒットです。そのおかげで日本の映画界は持ったんだということが書いてありました。
ジャパニーズアニメの映画の興行収入で一番売れたのが、この『鬼滅の刃』です。ダントツ1位の514ミリオン。514ミリオンってどれぐらいですかね?
傍島:514億ドル、今、円だと650億円。
岩崎:そうですね。日本の興行収入が365ミリオンで多いんですけど、アメリカでも48ミリオンです。比較すると、2位が『千と千尋の神隠し』なんですよ。『千と千尋』って、いつ日本で映画放映されていたかわかりますか?
小川:かなり前ですよね。
岩崎:2001年なんですよね。
傍島:20年前。
小川:もうそんなに。
岩崎:かつジブリの作品って、特に中国で、宣伝しなくても売れまくるコンテンツとしてかなり人気なんですよ。
かつ『千と千尋』が世界中で放映された時って、まだYouTubeとかなかったんですよね。今みたいにNetflixとかもなかったから、映画全体がわりといい感じでした。その時に出た数字を2年で抜くということを成し遂げたんですよ。そう考えると、この短期間でいかにアニメが熱狂的なファンを作っているかがわかるかなと思います。
傍島:確かにな。
岩崎:さっきアニメの世界需要の話をしたんですが、このコロナ禍に需要がすごく伸びてて。2年間で118パーセント増。アニメが見たい人の世界人口が2倍以上に増えていることになります。
岩崎:今、アニメの需要に関してかなり明るいニュースをお伝えしてきたんですけど、実はちょっと暗いニュースもあって。需要がのりにのっている中でも、ちょっと供給が間に合っていないというお話があります。その原因がアニメクリエイター不足です。
クリエイター不足に関連して起こっていることで、日本人のアニメクリエイターの方々は、こんなに儲かっているのに、なかなか現場にお金が落ちてこない。
かつアニメを作る方って過酷な労働環境なんですよね。すごく丁寧に描かなきゃいけない、技術もいる。なのに低賃金。
傍島:それ、意外ですね。
岩崎:そうなんです。かなり辞めてしまう方が多い。このハリウッドレポートの記事には具体的に給料の話とかも書いてあるんですが、本当に「そんだけしかもらってないの」という値段で。
あと、この記事によると、日本のアニメクリエイターは全体で5,000人ぐらいしかいないらしいんです。アメリカで有名なPixarという会社がありますよね。あそこは1社で1,200人ぐらいいるんですよ。
もちろんこれはクリエイターが1,200人なのか社員全体でどうなのかは書いてないんですけど、日本 VS Pixarでほぼ5分の1って考えると、もうちょっとクリエイターを育てるための努力をしなきゃいけないんじゃないかというところです。どう思われますか。
傍島:確かに。日本はお金儲けをするのが下手ですね。クリエイターさんのようなモノを作り出した人にお金を回す仕掛けができてないという感覚がありますよね。
どうしてもそこが報われない。「汗水垂らして働いてなんぼ」のような世界がわりと美徳と思われているところがあるじゃないですか。僕はやっぱりお金儲けが下手なんだろうなと思いますね。
岩崎:そうですよね。しかも斜陽産業だったりしたらしょうがないかなと思いますけど、ノリにのってる業界なんで、変えたいなっていう気持ちはありますよね。
岩崎:補足なんですが、さっきの需要と供給という意味での数字でもうちょっと説明すると、さっき言った「ジャンル」ですね。さっき7.2パーセントに上がってるって言ったんですが。
これは去年のデータなんですが、いろんなジャンルの中でアニメは、今需要があるコンテンツとして3位です。1位がクライムドラマ(刑事ドラマ)、2位がシットコムというコメディです。
3位がアニメで、次がSF。次がキッズ向けです。世界需要の3番目ってすごいなって、私は純粋に思うんです。しかもSFより上なんだ、『スターウォーズ』見たい人より、アニメ見たい人のほうが多い。そう考えるとすごいなって思います。
あとは、需要と供給でいう意味でいうと、もう1個すごくおもしろかった数字があって。需要があるのに対して供給が足りてない、その差は33パーセントです。
要するにアニメが見たい人と供給量に、33パーセントの開きがあるという意味で、さっき言ったとおり、もっとアニメクリエイターにインセンティブを出して、労働環境を改善して、もっといいアニメをたくさん作ってもらえれば、世界市場に33パーセントもまだ余白があるという意味に捉えられると思うんです。
傍島:まだまだ伸びるってことですよね。
岩崎:そうですね。伸びしろがあります。
岩崎:ちょっと堅い話が進んだので、ちょっとおもしろい話をしたいと思います。イギリスのDiamond Lobbyっていう、オタク記事を作ってるプラットフォームが発表してた、世界のアニメ人気分布です。
傍島:おもしろいですよね。
岩崎:世界で一番人気のアニメはなんだと思います?
傍島:『ポケモン』ですか?
岩崎:そのとおりです。『ポケモン』です。ただ、北米と南米でも、場所によっても(人気のアニメが)違って。
傍島:赤は南米からアフリカ系にすごく多いですね。赤はなんですか? 『NARUTO』?
岩崎:赤は『NARUTO』です。
小川:そんなに差があるんですね。
傍島:ピンクみたいなのは、中国?
岩崎:これはロシアなんですよ。不思議なんですけど、『One-Punch Man』(『ワンパンマン』)という漫画です。すごくおもしろくて。もともと素人の人がWebで描き始めた漫画だったんですね(※アシスタント経験のないONE氏が、個人サイトでWeb漫画として公開していた作品。書籍化されているのは村田雄介氏作画のリメイク版)。
ストーリー的には、ふつう主人公って成長していくじゃないですか。弱いところからどんどん強くなっていったりする(のが定番な)んですけど、この主人公は(最初から)とにかく強すぎて、すべての敵をワンパンチで倒しちゃうんですよね。
設定がおもしろい漫画で、そのWeb漫画を集英社の人が見つけて、「となりのヤングジャンプ」で連載したんです。そしたらすごいヒットになって、アニメ化もして、なぜかロシアでめっちゃ流行る。
傍島:視覚的にわかりやすいですよね。ポケモンが世界中で大ヒットしているのかと思ってましたけど、赤いところ(『NARUTO』)が多かったり。『One-Punch Man』も(どの地域で人気なのかが)わかりやすいですよね。『ONE PIECE』もアフリカの上のほうで。
岩崎:アフリカは『ONE PIECE』が人気らしいです。ヨーロッパはかなり細かく分かれていて、フランスとイタリアが『ONE PIECE』で、イギリスとスペイン、東欧系が『NARUTO』。エストニアになると突然『遊☆戯☆王』になるんですよ。リトアニアだけ『進撃の巨人』で。
傍島:これだけ分かれると難しいですよね。マーケティングもそれぞれの地域に合わせたりして、全世界で1本ってわけにいかないですね。
岩崎:そうですね。ここで私が言いたかったのは、まず1つは「アニメ」って言っても、けっこう趣味が分かれる。バックグラウンドが違ったりすると、好きなものが違ったりするんです。
例えば『One-Punch Man』のコンセプトがロシアの人に引っかかるのは何かの理由があって、『NARUTO』がアフリカで引っかかったのも何かの理由があって。趣味の多様化、好きなものの多様化がすごく進んでいます。
私が何より驚いたのは、こういうデータが作れるぐらい。世界中の人がアニメを見ているんだなと思ったんです。この前には「世界中でどのゲームが流行っているか」というプロジェクトもやっていて。
確かにゲーム人口ってすごい多いので、なんとなくそのデータが存在するのはわかっていたんですけど、アニメもこうやってデータが取れるぐらいに世界中で見られているということが、ここからわかるんじゃないかと思います。
小川:岩崎さん。なぜ日本のアニメがこんなにも海外にウケているんでしょうか?
岩崎:漫画とかアニメ文化が長く日本で作られてきて、伝統と歴史があって、かつ名作が出やすいエコシステムができあがっているのが1つだと思います。
スタートアップに例えると、新人の漫画家、いわゆる新しい起業家がいた時に、普通だったらベンチャーキャピタルとかが育てるじゃないですか。でもそこで編集会社が新人の漫画家を見極めて育てる。そして必要によっては人気漫画家のアシスタントとして修行させる。
かつ漫画賞などにガンガン出させて、いわゆるスタートアップのピッチで、伝説の漫画家が審査して、フィードバックをして、どんどんクリエイティビティを上げていく。
それでいざ連載開始という、いわゆるビジネスがローンチすると、作家がCEO、編集者がCOOという(構成になります)。CEOは、ストーリー作成とかキャラクターデベロップメントとかに集中できるんですね。COOである編集者がその周りを見て、例えば投票をとって読者の反応を見てインプットしたり、漫画家の健康管理をしたり、アシスタントの準備をしたり。
そういう環境を整えるエコシステムができあがっている。ほとんどのヒットアニメが漫画からきてるので、おもしろい作品・コンテンツを作れるという意味があると思います。
傍島:なるほど、チームか。
岩崎:もう1個はキャクターデベロップメントの話なんですけど、漫画って1人が描いていたり、原作者がいると2人で描いていたりするので、構想に深みが出るんです。例えば『ワンピース』って、作者(尾田栄一郎氏)の方が始めた時から最終回を決めていた感じで、深みがある。
ただディズニーとかになると、いろんな人が脚本を書くので効率性とかが問われる。キャラクターデベロップメントから1人でウンウン考えたほうが、深みがあるなと思います。
もう1個、バラエティが豊富ですね。歴史モノがあったりとかファンタジーがあったり、最近だと「異世界モノ」って言って、現実世界の人がパラレルワールドに行って、現実世界での知識とか記憶がありながらファンタジーの世界で生きる「異世界」の話が流行っています。アメリカ人も「Isekai」って言うんです(笑)。みんな理解してます。
そういういろんなジャンルがあるっていうのは、日本ならではです。
傍島:意外ですね、単一民族なのにそういうバラエティがある。アメリカはいろんな人種がいるので、いろんなストーリーがありそうな気がしますけど、日本のほうがバラエティがあるってことですよね。
岩崎:たぶん日本以外の人たちは、それを漫画にしようという発想にならないんじゃないですかね。最後に「厨二病的発想」って書いたんですけど(笑)、ごめんなさい。日本人は大人が真剣に考えたら到底浮かばないような設定がすごく得意だなっていうのが私の印象です。
例えば『エヴァンゲリオン』では、エヴァには14歳しか乗れないとか。『NARUTO』だと主人公が呪いにかかっていて、その呪いの狐と一緒に成長するとか。「それ、何なの?」みたいな設定が外国人にすごくウケるみたいです。そこが日本の強みなのかなと思います。
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