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『アフターコロナのニュービジネス大全』 出版記念オンラインセミナー(全4記事)

「地球グミ」が日本のZ世代に爆発的ヒット 若者研究の第一人者が語る、コロナ禍で起きた「売れるモノ」の変化

コロナによる新しい生活様式の広がりの中で、オンライン会議ツールや飲食店のテイクアウトなど、新たなビジネスが生まれました。日本だけでなく世界各地で、それぞれの国の文化やテクノロジーを活かした、多様なビジネスが生まれています。そこで今回は、コロナ禍で生まれた世界のビジネス事例をまとめた『アフターコロナのニュービジネス大全 新しい生活様式×世界15カ国の先進事例』の出版記念イベントとして開催された、共著者の原田曜平氏と小祝誉士夫氏による対談の模様をお届けします。最終回となる本記事では、視聴者からの質問に両氏が回答。Z世代の研究をする理由や、「地球グミ」が流行した日本ならではの理由について語られました。

「なかなか変化しにくい」と言われる高齢者でも変わったコロナの影響

司会者:ありがとうございました。1時間のセミナーの中で質疑応答の時間が取れなかったんですが、お2人がもう15分ぐらいは時間があるということで、もしご質問がある場合は、チャットに書き込んで送っていただけますでしょうか。この間、小祝さんと原田さんの自由なトークなどあればお願いします。

小祝誉士夫氏(以下、小祝):原田さん、ありがとうございました。

原田曜平氏(以下、原田):ありがとうございました。

小祝:途中でお話がありましたけど、若者研究家の原田さんが高齢者についての調査もしてるって、ちょっと意外でした。

原田:そうなんです。大規模サンプルで全国的に調査をしています。やっぱり令和の時代は平成以上に高齢化が進みますし、純粋に言うと、平成の時代って元気な前期高齢者が増える時代だったんですよ。令和の時代は、後期高齢者が増える時代になって、そのボリュームが尋常ではない。やっぱりここは知っておかないと、令和の時代は生きてけないだろうということで、大々的に調査してるんです。

小祝:でも、YouTubeの視聴者層が変わってきているというのは、本当に今がちょうど潮目なんでしょうね。今まで若者中心って言われていたけど、そうじゃなくなってきたということに、気づくか気づかないかはすごく大きいですよね。

原田:なかなか変化しにくいと言われている高齢者でも変わりましたからね。今まではテレビをつけてて「つまんないな」と思いながらも観ていた状況だったんですけれども、やっぱり家に閉じ込められていろんなストレスが溜まって、「もっと楽しみたい」ということで好きなものを観ようというマインドになってきたんでしょうね。

家族時間も増えたから、ちょっと孫に教えてもらったりとか。コロナのピンチをチャンスにできるといいなってすごく思ってますね。

戦後日本のアメリカ中心の情報源にも変化が

小祝:ちょっと違う話題なんですけど、今まで私とか原田さんとか弊社とか、海外情報を意識する時はやっぱりアメリカが多かったじゃないですか。ビジネスでしのぎを削ったり、シリコンバレーみたいなところがあったりして、非常に参考になる事例が多かったんですけど。

今回、中国は当然必要だったと思いましたけど、あえてデンマークとかタイとかを取り上げました。アメリカ以外の国での事例も、非常におもしろかったですよね。

原田:そうですね。僕もメディアに出させていただいてる人間として日頃感じるのが、本当に戦後の日本ってアメリカしか見ていないなと。ニュースを見ていただければわかるとおもいますが、海外の情報ってほとんどアメリカの情報ですよね。たまに政治マターで、中国、韓国がちょろっと出てくる感じで。ロシアとかドイツとかイギリスとか、ほとんど出てこないですよね。

そういう意味で今回のコロナはちょうどいいきっかけで、全世界が同時に同じ困難にぶつかったと。いろんな国がそれぞれ変化している。影響を受けてそれを真似してるところもあれば、独自の変化やイノベーションが起きてるところもいっぱいある。

アメリカもすごく優れたおもしろい国だと思いますが、一方でもっと他のエリアにも目を向けてみる。自社のの工場があるからその国を見るってだけじゃなくて、情報源として世界中のいろんなエリアを見ていただけるといいんじゃないかなと思いました。

インドで爆発的に伸びた「ホームシェフ」のサービス

司会者:ありがとうございます。いくつか質問いただいています。まず「インドの事例が少なかったので、印象に残っているものがあれば教えていただきたいです」とのことです。インドの事例は、私のほうからは今すぐに出てこないんですけれども、小祝さん、原田さんのほうでもしあれば。

原田:インドもコロナひどかったですからね。

司会者:そうですね……あっ、ありました! 私がリサーチ担当をしてたので思い出したんですけれども。コロナ禍で、「ホームシェフ」というサービスがインドで爆発的に伸びたんですね。通常のデリバリー業者じゃなくて、普通の一般人の主婦がシェフとして料理を作って、それを自分たちで近隣に配達したり、配送業者を使って届けるという。CtoCのサービスが爆発的に伸びたという事例がありました。

もちろん、プラットフォームの事業者との連携が必要ですし、通常のデリバリーから派生した動きなんですけれども、コロナ禍で郷土料理の味とか家庭的な味を求める人々が増えたんですよね。そういう意味でも「ホームシェフ」という、テクノロジーとアナログをかけ合わせたようなサービスが広がったということがありました。すみません、私からの回答になってしまいました。

Z世代の研究をするのは、若者=未来だから

司会者:次の質問は、「こういった先進事例をキャッチアップする方法はどのようにしていますか? お2人のような広いネットワークがない私でもできることがあれば教えてください」ということです。こちらはいかがでしょうか?

原田:冒頭で説明したとおり、TNCさんはライフスタイルリサーチャーさんが世界各地にいらっしゃいますから、そこも相当大きいですよね。だから、ぜひTNCさんと一緒にお仕事されてみてください(笑)。

小祝:そうですね(笑)。私はけっこう本を買ったりしていますよ。サブスクの有料読者になったり、そうやって積極的に情報を取りにいくことはやっています。

あとは原田さんが言ってるTikTokも、たまに見てると勉強になりますよね。私は別に若者でもまったくないですけど、今の若い人はこういうのに興味があるんだなというところとか。原田さんがおっしゃるように、ベトナムの事例とかインドの事例とか、地球1週するぐらいの事例がどんどん出てくるので、TikTokおもしろいなと思って見てますけどね。

原田:小祝さんともよく話すんですけど、2人で世界中のZ世代の研究してるのはなぜかって言ったら、やっぱり若者が未来だからです。一番変化を起こしやすいし、今の時代に一番柔軟に適応していますよ。ある種経験値がなくて、固まってなくてふわふわしている分、おもしろいと思ったりこっちが得だと思った方向に瞬時に動けるのは、いつの時代も若者です。

上の世代の中高年からすると、「若者ってバカだな」って見えるんですけど、意外とそういう上から目線じゃなくて、変化に耳をそばだててみると、「ああ、これは未来だな」って感じるものが多いので。

アフターコロナに残るもののキーワードは「リアル超え」

原田:先ほど言ったとおり、世界の若者の感覚がかなり近くなってますから、コロナで海外に行かなくなったって、インスタ上に、TikTok上に世界中の若者の投稿があるわけですからね。ぜひ日本の若者の情報、あるいはSNSを通じて世界の若者の情報を収集するようにしていただけると、海外の事例、および近未来の事例が入手できるようになるんじゃないかと思います。

司会者:なるほど。ありがとうございます。どんどんいきますね。次の質問は「コロナ期に登場した新たな動きや先進事例のうち、アフターコロナに残るものと消えるものを分かつポイントはなんだと思われますか?」ということです。

原田:ぜんぶがこれだけじゃないですけど、僕が思うのはさっき言ったとおり「リアル超え」。これがキーワードだと思います。結局リアルのほうが得だったら、そっちに行きますよね。いくつかあると思うんですけど、1つはやっぱり「リアル超え」です。

司会者:なるほど。小祝さんはなにかありますか?

小祝:「さらに変化の余地があるもの」が残っていくと思いますね。テクノロジーだったり通信環境だったり、その後ろに控えているものがあるものが、残っていくというか、進化してくんじゃないですかね。

高齢者へのアプローチのキーワードは「ノスタルジー」

司会者:ありがとうございます。「後期高齢者が興味のあるコンテンツはどのようなものがあるとお考えでしょうか?」。これはおそらく原田さんへのご質問だと思います。

原田:やっぱり高齢者は、いつの時代も基本的には思い出で生きているものなので。やっぱり「過去のスター」ですね。例えば、83歳の介護デイサービスに通われてる、要介護3ぐらいの認知症になっているおばあさまにインタビューをしたんですけど。

松井誠さんという劇団を主催されてる方がいて、僕は存じ上げなかったので後で調べてわかったんですけど今でもご活躍されていますが、1990年代の終わりから2000年代にかけて代表作があるような方でして。そのおばあさまは、その松井誠さんのYouTubeを熱心に見ていますね。キーワードは「ノスタルジー」です。

司会者:高齢者に関するご質問がもう1個きています。「調査中かと思いますが、現段階で、高齢者に関してYouTube以外になにか気づきはありましたでしょうか?」。

原田:いずれ本にしたり、いろんなところで話すので、ぜひ(笑)。

司会者:お楽しみにということですね(笑)。

原田:今言えることとしては、新聞チラシとYouTubeってことですかね。

司会者:それはどういう意味でしょうか?

原田:新聞チラシが強い、そしてYouTubeも観ているってことです。ぜんぶデジタル化してるわけじゃなくて、残るものは残っていて。SNSはもうぜんぜんだめですね。FacebookもTwitterも、ぜんぶ使えません。

だから、デジタルでもごく一部は受け入れられるようになっていて、旧メディアも捨てちゃうものもあれば、残るものもあって。それをちゃんと把握できてるかどうかが、ビジネスですごくポイントになると思います。

司会者:その結果はこれから情報発信されていくのをウォッチしてください、というところですかね。

原田:はい(笑)。Twitterとかでも見ていただければ、きっといろいろ本を出したり、なにかやる時は報告すると思うんで。もしご興味のある方はぜひ見てください。

地球グミの事例からみる「体験型お菓子」のヒット

司会者:では、最後ですね。「海外の事例を見ている中で、日本ならではの事例などありましたでしょうか?」。これは原田さんがお詳しい分野ですかね。

小祝:本の中にも日本の事例はいくつか入れましたね。星のやさんの貸し切り宿泊とか、あと「バーチャルコミケ」の事例も日本だったような気がします。

司会者:そうですね。世界共通の傾向の中に日本の事例も紹介していて、それは書籍にいくつか入ってると思います。ご質問の意図としては、「日本ならでは」の事例ってことですかね。

原田:本の中にはないんですけど、日本ならではだなと思ったのが、「体験型お菓子」ですね。コロナ前から売られてたものもあるんですが、このコロナ中に爆発的にヒットしたんです。

僕のインスタとかYouTubeにも載せているんですけど、例えば北海道・伊達市の「牧家の白いプリン」という有名なプリンがあるんですよ。すごくおいしいんですよ。水風船みたいなものに入っていて、楊枝で割るとバンって弾けるんです。あとは京都の「水まる餅」もそうですね。

それからドイツの輸入品がすごい日本で売れてるんですけど、「地球グミ」というのがすごく流行りまして。地球儀みたいなグミなんですけど、プラスティックのケースに入ってて、それを噛むと、パキッという容器が割れる音とともに、ビュって青いグミが出てくるんです。それを食べると舌が青くなるんで、ベーってベロって出すっていうのを、みんな動画撮るっていう。ドイツではたぶんそういう食べられ方してないんだけど、日本の若い人はこぞってこういった食べ方をしていました。

「インスタ映え」から「動画体験」の時代に

原田:このコロナ禍で、TikTokやインスタのストーリーズのような、動画の時代になったんです。そういう時に、やっぱり単なるお菓子でも、そういう体験とか仕草が付加されてるものが、かなり広がったんですね。

おそらくこれから、コンビニの商品もただおいしいだけで売れなくなってきて、フタの開け方がおもしろいとか、動画で撮れるとか。完全に「インスタ映え」から「動画体験」の時代に変わってきています。

それは日本特有とは言いませんけど、でも日本でかなり先進的に起こったコロナ禍の変化で、売れたものが多かった事例だと思いますよね。

司会者:おもしろいですね、ありがとうございます。

小祝:最後にちょっとだけいいですか。原田さんのYouTubeを僕も最近知ったんですけど、つい先日からこの『アフターコロナのニュービジネス大全』の書籍で協力していただいた海外各国のリサーチャーさんをお招きして、(原田さんと僕と)3人で話すという企画をやってます。

前回はイギリスのリサーチャーさんだったんですけど、今度バンコクとコペンハーゲンのリサーチャーさんを呼んでYouTubeライブ配信しようと思っていますので、それをぜひ見ていただけると、またさらに楽しんでいただけるかなと思ってます。毎週何曜日とかって決まってるんでしたっけ?

原田:あまり決まってないですけど、一応月・水・土でやるって言っています。そこらへんはルーズですけど、ライブ配信もやってますので、もしよかったら「原田曜平マーケティング研究所」で検索していただればと思います。小祝さんやライフスタイルリサーチャーの方も、これからちょこちょこお招きしようと思ってるので、観にきていただければと思います。

小祝:ありがとうございます。

司会者:では、今日はみなさまご参加いただいてありがとうございました。お二人もありがとうございました。まだという方は、ぜひ『アフターコロナのニュービジネス大全』の書籍を手にとっていただければと思います。今日はありがとうございました。

原田・小祝:ありがとうございました。

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