2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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朝倉祐介氏(以下、朝倉):さっきキヨ(小林氏)からは「今後もサンフランシスコにずっといる」というお話がありましたけど、逆にタク(宮田氏)さんとアレンさん、どうですか? 今後もシリコンバレーで勝負していく合理性って、どのぐらいあると思われますか?
宮田拓弥氏(以下、宮田):そういう意味ではたぶん立ち位置がキヨとは違うので、僕自身はもう2019年は超グローバルイヤーで、バンガロールへ行って、テルアビブへ行って、ジャカルタへ行って、今、世界中を見ています。中国はもう明らかに先へ行っちゃったので、中国に続く、たぶんGDP per capitalで3,000ドルぐらいの国がけっこうゴロゴロあります。インドネシアとかインドとかがたぶんこれから強烈に中国にキャッチアップします。
なのでアメリカは引き続きベースで持ちながらも、やっぱりアメリカだけでは難しいなという感覚があります。僕が住み続けるか・続けないかでは、おそらく住み続けるけれども、チームのポートフォリオとしてはたぶん東南アジアとかアジアにもっとシフトしていくことになると思います。
アレン・マイナー氏(以下、アレン):ここで言おうかな。今日どこかで言おうと思っていましたが、僕は10~20年後にシリコンバレー、サンフランシスコがデトロイトのようになると見込んでいます。先ほどの話に出た、ホームレスや注射器。これがデトロイトの1960年代の現象です。
デトロイトは1929年の世界恐慌のショックを受けました。アメリカでは1920年代の証券バブルで自動車産業を中心に株価が跳ね上がって、みんなが「これは行きすぎだ」「バブルだ」って、General Motor、Studebakerの株を売り始めました。フォードは公開してないんですけど、自動車産業関係のバブルが弾けて世界恐慌ですよ。
そのあと戦争が起きて、デトロイトが戦争・軍事産業で賑わいます。1950〜60年代はアメリカ一。当時のシリコンバレーのような存在がデトロイトです。いろんな意味でその周辺に自動車エコシステムができて、1960年代に今のサンフランシスコのような現象が起き始めます。暴動とか、街の中心がおかしくなって、みんな全部郊外へ行くということが起きました。
1970〜80年代には日本の自動車産業が発展してデトロイトが衰退します。今のデトロイトの姿は、まるで原子爆弾を落とされた後の広島みたいな空き家・空き工場ばかりで、YouTubeに広島とデトロイトの写真の比較動画があるんです。1950年代のデトロイトが現在の広島に見える、1947年の広島が現在のデトロイトに見えるという。
シリコンバレーはやっぱり人が住めない。今は学校の先生がサンフランシスコに住めない。2人で働いても1,200万円の年収が貧困線だと言われているんです。1,200万円以上の年収がないとサンフランシスコに住めなくなっている。これが維持できない。
小林清剛氏(以下、小林):アレンさんに質問したいなと思います。今の1,200万円というのは、(年収が)1,200万円でも貧困層みたいなことですか?
アレン:そうなんです。
小林:サンフランシスコとかシリコンバレーってこれだけスタートアップがいて、Uberも最近は社会インフラのようになってきて、スタートアップがいろんな社会問題を解決しようとしています。にもかかわらず、ホームレスの問題が残っていたり、奨学金返済の問題が残っていたり、いろんな社会問題が残っているじゃないですか。なぜ、このような問題が数多く残っていると思いますか?
アレン:Uberは何の社会問題を解決しようとしているか、よーく考えてほしいんですよね。結局は、仕事がない人にタダ働きさせて、自分たち(Uber)ばかりが儲かるだけ。どこかに移動したい人にとってはすごく便利なんですけど、テックのコアのメンバー、Uberそのものがすごく儲かる仕組みです。
本当はサンフランシスコ、アメリカがやらなければならないのは、Uberではなく日本みたいに電車を敷いてバスを敷いて……ということです。Uberは高い。Uberで同じ距離を移動するのは、バスか電車で移動するより10倍ぐらい高いんですよ。Uberは移動する人にとって効率的なMaaSじゃない。効率的なMobility as a Serviceは日本の社会インフラで動いている公共交通機関です。
公共交通を捨てたアメリカ。それを再構築しない。国を挙げて町を挙げてそういう問題の解決をしないで民間企業に任せているのは問題解決になっていなくて、実は問題をさらに強調している。問題を起こしているんです。
(Uberは)立ち上がりはすごく早いし、ものすごくお金を集めてものすごい時価総額がついているんだけど、実は僕は、Uberは社会問題を起こしている会社だと思っています。
朝倉:確かにUberって……。
アレン:移動するために高い運賃を払って、「Uberがあるからいいじゃん?」と行政の人たちも楽をして仕事しないで済む。僕らを洗脳して……。たぶんアメリカ、シリコンバレーが一番上手なのはプロパガンダです。〇〇テックと名付ける。何でもテックだといいことというふうにプロパガンダをうまくやっています。
朝倉:Uberの場合、シェアリングしているのは、車というよりは人ですからね。ギグエコノミーですよね。
アレン:結局そうですね。
朝倉:日本にいたらけっこう気づきにくいところがありますけど、Uberは完全に人のシェアリングですよ。
アレン:そう。実はあれこそが世界一のブラック企業ですよ。
(会場笑)
日本の「ブラック企業」については、「一生懸命に働いてもらうのがブラック企業」というのはそろそろやめてちょうだいって思うんですよ。一生懸命働きたい人たちに「働いちゃダメ」という働き方改革は、そろそろやめようよって思っています。世界一のブラック企業がUberです。それを日本に呼び込もうとするなって思います。
小林:でも、それを言えるのはアレンさんだけですよね(笑)。
アレン:そうだよね。
朝倉:なるほど。
アレン:でも本当に思っているし、(小林氏に対して)ちょっとは思っているでしょ?
朝倉:まぁまぁ(笑)。そういう意味で言うと、ものすごくハイテクな街だと思って初めてベイエリアを訪れると、けっこう愕然としますよね。インフラはボロボロだし、インターネットの回線はめちゃくちゃ遅いし。逆に言うと、日々の生活に強い不満があるからこそ、それを解決するサービスが出てくるのかなという気もします。
そんなシリコンバレーなんですけれども、今日はせっかくそこに興味を持っていらっしゃる方々が集まっていらしているわけですから、じゃあそこで何か事業を展開しようと思っている人、あと、もう少しちょっと抽象的な言い方になってしまいますけど、シリコンバレーを活用して何かビジネスを展開しようと思っている人たちに対して、何かヒントになるような話があればお願いします。実際に自分が行く人に対してでもいいし、そこを活用する人に対してでもいいです。いかがでしょう?
小林:シリコンバレーに限らず、アメリカでもいいんですけれども日本の企業が海外に行く場合というのは、まずは英語で情報収集するところから始めたほうがいいかなと思っています。
こっちにいて「海外に行きたいです」と相談を受けるケースもけっこう多いんですけど、まだまだ日本語で情報を収集しているケースが多いです。英語で情報を収集するだけでやっぱり情報に対する感度も変わりますし、もう何十倍、もしかしたら何百倍、取れる情報が変わるわけですね。
それによって、例えばインドであれ中国であれアメリカであれ、現地に行ってみて企業のプロダクトを使ってみるとかするだけでもうぜんぜん変わるので、シリコンバレーを活用するだけに限らず、まずは英語で情報を収集して、そしてできれば第一次情報を取りにいくということをやってみるだけで違うんじゃないかなと思っています。
あと、さっきの補足なんですけど、シリコンバレーといっても、サンフランシスコと、パロアルト、マウンテンビューとでぜんぜん違います。パロアルト、マウンテンビューはめちゃくちゃ住みやすいところです。サンフランシスコのSoMaだけちょっと住みづらいだけです。
宮田:そういう意味で確かに英語の話というのはごもっともで、古くて新しい話なんです。やっぱり起業家のボリュームが日本のほうが圧倒的に少ないので、日本にないモデルがたくさんある。確かにキヨが言うように英語で探していったら「こんなのあるんだ?」というのがいまだにいっぱいあります。
僕もGLOBISも含めてたくさん講演させてもらって、「こんなのあるよ」「えっ!?」という、海外には3年前からあるものでも日本にないみたいなものって、いまだにけっこういっぱいあります。現地ではもうつまらないものけど、実は「タイムマシン」が利くものってめちゃくちゃある。
だから実は、もしかしたら起業のアイデアと新規事業のアイデアがないと思っている人は、いわゆる英語の分野をあたってみると、実はすごくシンプルに新しいものがいまだにある。それは意外と引き続き真理かなという気がします。
アレン:僕は今のコメントの両方とも大賛成なんだけど、でも、それに1個だけ重要なことを加えなきゃならないと思います。それは、シリコンバレーはたくさんあるヒントになるところのただの1つに過ぎないということです。世界もですが、日本人はとくにシリコンバレーばっかり見すぎています。
今、例えば人口密度で言えば、アントレプレナーが一番多いのはサンフランシスコではなくてマイアミです。フロリダのマイアミが今、アメリカで最もアントレプレナーをしている人の人口密度が高い。だから実はアメリカで、ちょっと歩いただけでアントレプレナーにぶつかりたいならば、マイアミに行けばいいんです。
テックだとボストンは相変わらず多いんだけど、昔の僕の日本に対する判断のように、今アメリカの中で自分がユニークでstand outしていきたければ、サンフランシスコではなく第2のベンチャー都市のボストンにいたほうがoutstandingになれると思う。あと、自分の地元のプロボ市は、かつて5万人しかいなくて、今も10万人しかいない田舎なんだけど、その田舎の町は人口あたりの投資額が一番多いんです。
いろんなアイデア、いろんな生活観があるはずなのに、やっぱり日本だけにいると日本の常識が世界の常識だと思いがちです。いろんなところから刺激をもらうとcreative inspirationが湧くので、ぜひインドネシアにも行ったり、チュニジアにも行ったり、ロンドンにも行ったり、モスクワにも行ったり、サンフランシスコにも行ったりしてほしい。
その体験・観点に触れるほど、自分の発想の元になる。「こういうのは日本にないけど、私も友達も、このサービスだったら受けたいな」というのがヒントになる。シリコンバレーはデトロイト化していくから、シリコンバレーばっかり見ないでください。実は世界中にクリエイティブなものがあります。
アレン:今、僕は非常に東京がおもしろいと思います。シリコンバレーには見ない、モバイルペイメントの次の発展の10人のスタートアップを一昨年回ってきたんです。絶対にモバイルペイメントの先に「これが来る」というのを東京で押さえて、お客さんが付き始めて、A/B テストし始めている東京のスタートアップ、モバイルペイメントの次を実現すると確信している会社があるんです。
バイオテック産業で僕が世界で最もおもしろいと思うスタートアップは、(山形県)鶴岡市にあるスパイバー。シリコンバレーでもいろいろおもしろいのがあるんだけど、世界一のおもしろいバイオテックスタートアップはスパイバーだと確信しています。
実は世界中を回っていくと、やっぱりシリコンバレーはすごくて、日本に見つけられないものや人間ばかりでおもしろいけど、別にただ1つの街にすぎないということを体験してみると、その自覚が持てます。
最近、シリコンバレーに入ってくるお金が増えているんですけど、シリコンバレーにいる投資家はこの5年間、自分たちの半分の資金をシリコンバレー外にしています。シリコンバレーに集まっているお金の半分をシリコンバレー外に投資していて、去年はその割合が3分の2に増えているんです。だから一番シリコンバレーの状況を知っているはずの人たちが、投資預り金の3分の1しかローカルに落としていない。投資チャンスが外部にあるというこの現象が、すごく新しい。
なのにシリコンバレーに落ちる毎年4兆円というお金が下がっていないということは、シリコンバレーを知らない外部の人たちがシリコンバレーbindersであり、シリコンバレーに落とし続けているということですね。「中にいる人は外部に、外の人がシリコンバレーに(投資する)」というのが、これがやっぱりデトロイト化していく現象の始まりだと思っています。
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