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パックン直伝「今をツカむ!世界のニュースの読み解き方」(全6記事)

外国人への呼び名が「ガイジンじゃなくなってきた」 パックンが語る、日本人の国際感覚の変化

2017年12月4日、国際派お笑い芸人でコメンテーターの「パックン」ことパトリック・ハーラン氏が、毎日新聞の森忠彦氏とともに、新刊『世界と渡り合うためのひとり外交術』刊行記念イベントに登壇。来日して26年目を迎えるパックンが、日本人の国民性について触れながら、世界で活躍するために身につけるべきスキルを紹介します。

英語はスポーツだ

森忠彦氏(以下、森):やっぱり日本人は一般的に、英語がものすごく不得手ですよね? それがあるからこそパックンは、英語の先生という立場で最初に日本にやってきて。NHKも出て。

日本人の「英語がうまくなりたいのだけどなかなかなれない」という問題、これをどうすればいいのか? 

パトリック・ハーラン氏(以下、パックン):これについてもパックンマックンで講演会をやっています。そうした立場の方はぜひお聞きください。でも、いろいろとアドバイスをするんですが、一番端的に言うと、英語を学問ではなくスポーツとして考えたほうが早い。

:ほう。どういうこと?

パックン:スポーツをやっている方は、最初にフォームを習いますよね。フォームを習って、テニスのラケットの持ち方や、ボールのトスの仕方や、最初の打ち方はやりますが。そのあとどうやって勉強します? 本を読む? DVDを見る? 違う! やる! ひたすらやる! 

それで、日本の方は、これもすごく不思議な話なんですが、例えば英語を練習したい。しゃべりたいけど練習相手がいない、とよく言い訳をするんですよ。スポーツに置き換えてみてください。

テニスの練習がしたい。でも錦織圭がいない。と言っているようなもんですよ、ネイティブスピーカーがいないと練習ができないというのは。

プロの相手がいないと、テニスでも卓球でも野球でも練習できないと言っているようなもんですよ。極めてわがままな発言です。

(会場笑)

日本人同士で、素人同士で、初心者同士で練習した方が、お互いのミスも気づくよ。そして笑いながら楽しみながらできる。どのスポーツもそうです。英語もそうです。

毎日1時間授業があれば絶対に話せるようになる

パックン:僕は文部科学省の。

:なんとか委員をやっていますよね?

パックン:いろんな有識者会議にも参加させていただいていますし、また大臣の前でも呼ばれて、こうした話をさせていただいたんですが。中学校で、英語の基礎は、基本だいたい覚えているんですよ。

そのあとは高校3年間で週4回。週1回は基礎で、文法などをいろいろやります。語彙力を上げてもいいですが。週4は、英会話に毎日1時間かければ、英語力も間違いなく上がるし、会話力も上がるし、知らない単語、英語で言えない言葉が何かあればメモっておいて、最後の15分に先生に確認してもいいし、調べてもいいし。

英語を学ぶ姿勢も身につく。3年間毎日英語をしゃべっていれば、例えばオリンピックのときに、海外から人が来た「わあ英語使えない!」と思う人はいませんよ。毎日使っているから。

例えば、毎日ごはんを作っている人。ご飯の炊き方がわかる。世界一美味しいご飯が炊けると思っていないでしょ? プロ並みに炊けるとも思っていないはずですが。海外から誰かが来た。ご飯炊いてください。炊ける。絶対に炊ける。

:人並みに炊けるよね。

パックン:炊けるよね。だから毎日英語をしゃべっていれば、できないはずはありません。毎日算数をやっている人は、海外の人に「30×4」は? といわれて「ごめーんできないー」という人はいません。同じように毎日やっていれば、できる。やろうじゃないか。と文部科学省大臣に言ったら「ほほ〜面白い」と。

(会場笑)

パックン:冗談じゃないよ。

:ぜんぜん取り入れられていませんよね。いいのにね。

有識者会議の芸能人は「客寄せパンダ」

パックン:僕、いろんなことに関して提言しているんですよ。これもそうですし。電線の地中化なども20年前から言っている。

:キャブシステムね。

パックン:プレゼン能力に関する教育制度を変えるべきだと。まぁ、いろいろラジオでもテレビでも言わせてもらっているんですが、ほとんど聞いてもらっていない。僕はどんなに影響力のない人なのか。

(会場笑)

:ちゃんとそういう場に呼ばれて、発言はしているのだけど、彼らが全然、彼らというのはおエライお役人さんたちのことだけど、聞いてくれないのね。

パックン:まぁまぁまぁ、この辺はある程度は自覚しなければいけない。これもまた違う本に書いたんですが、コミュニケーションの大前提は自覚、自信、自己主張なんですね。

:自覚、自信、自己主張。

パックン:僕の自覚としてわかっているのは、ああいう有識者会議に呼ばれている芸能人は、まぁ人寄せパンダ的な存在であって。

(会場笑)

:わかっている(笑)。

パックン:メディアが来て、あっ有識者会議をやっている。政治家と官僚たちはさまざまな分野から、ちゃんと見解を集めて、それを踏まえて政策をつくっているのだなという印象づくりだけなんですよね。

:アリバイづくりね。

パックン:わかっているんです。わかっているのに、無謀に挑戦する、いつも。

(会場笑)

:では、行われたためしがない。いまだかつてない。

パックン:ほとんどない。

森・パックン:ハッハッハッハッ。

パックン:ほとんどありません。

:なるほどね。

パックン:でも、少しずつジワジワジワッと影響はあるかなと。

五輪は国際コミュニケーション能力不足を克服するチャンス

:あと3年もすれば、オリンピックでしょ。だからすごくやっていくことになりますよね。今年で2,800万人の外国人が日本にやってきて、新記録をどんどん更新しています。恐らく2~3年後には目標の4,000万も越してしまうと思うんですが、大丈夫ですかね?

パックン:3年後は目標達成で、4年後どうかという話ですね。

:カーッと落ちちゃう。

パックン:可能性はあるんですが、まあまあ。3年後は間違いなく4,000万人は来ると思います。

:それはでも、やっぱり日本人が国際コミュニケーションの技術を克服する機会としては、非常にいい機会なのでしょうか?

パックン:(海外からの)観光客と触れ合おうと思えば、できるようになりました。この間、東京駅で、ドイツ人かな? 背の高い金髪の方が、近くの方を捕まえて「すいません、新幹線のホームはどちらですか?」と一生懸命覚えたての日本語で話しかけていたんですよ。

「すいません、新幹線のホームはどちらですか?」と。「エライなあこの人、日本に来る前から日本語を勉強して。しかも使おうとして。すげーな」と思っていたのだけど「新幹線のホームはどちらですか?」と聞かれているこっち側の人は、どうやら中国人だった。

(会場笑)

:それはミスったねえ。

パックン:通じてない。それで僕が相手をして「新幹線のホームはあっちですー」。

:なに、日本語で言ったの?

パックン:日本語で言った。すると中国人の方が「謝謝(シェーシェー)」

:シェーシェー。

(会場笑)

まあ3人が3人、なんとなくコミュニケーションができたということですよね。

パックン:だから触れ合おうと思えば、もちろんできます。

:触れ合おうと思えばなんとかできるということですね。

パックン:その前にスマホでもできますよ。ほんとに。

:翻訳機能がありますしね。

パックン:翻訳機能もありますし。

「外人」ではなく「内人」

パックン:外国人と最近いわれるのが、やっと過半数を超えたような気がするよね。外人じゃなくなってきたような気がする。

:昔は外人。

パックン:外人外人ばっかりですよ。僕も最初。

:最初? 福井で? 

パックン:福井で「ガイジンガイジン」と言われましたし。そう、『ボキャブラ天国』というお笑い番組がありましたね。タモリさんがやっていたやつ。でも僕は出ていませんよ。あれに出ていると思っている人、あれは違う外国人です。

(会場笑)

「パックンマックン」で1回だけ寄席に出たんですが、そのときのネタはマックンの「あの師匠、この間から話していた新しくコンビを組んだ相方です。まあご覧の通り」と言って「ガイジン」をもじって「僕、アイジンです。」と言ったのも明らかに寄席なんですが。

あのときも「ガイジン」「ガイジン」というのが流行ったから「アイジン」。

:ということでできたのね、言葉がね。

パックン:でも、それも今はテレビではまず言わないし。世の中でも言わなくなったんですね。外国人がいっぱいいらっしゃることによって、外の人ではなく、外からいらした人ですけど、わりと「ウチジン(内人)」。

:ウチジン?

パックン:ウチジン。同じ人間だというように少し見る目も変わってきたような気がするよね。日本に住んでいる外国人は、まだ百何十万人しかいなくて、人口の1%台なんですが。見ることも増えましたし、触れ合うことも増えました。昔は六本木にいかなきゃいけなかったんですが。

(会場笑)

:けっこうあちこちでいまは見ますよね。

パックン:いま、普通に近所のコンビニや「つぼ八」に普通に行けばいますよ。

:居酒屋にね。

パックン:そうなんです。

:いっぱいいますよね。

パックン:「どこの方ですか?」「日本どうですか?」と話そうと思えばできるんです。

:そういう機会が増えているので、ぜひ怖がらずにやってみてください。ということですよね。

日本の夫は虐げられている?

:はい、あと15分ぐらいです。年末という、今年1年間を振り返るシーズンに入ってきたので。

パックン:確かに。

:いろんなニュースがありました、今年は。国際ニュース、国内ニュース。パックンは、BS-TBSというチャンネルで。

パックン:「日本の夫は虐げられているか?」というテーマで議論しました。

:でしたね。はい、そうだと思う方。

パックン:日本の夫は虐げられている。自分じゃあないですよ。

(会場笑)

「世の中の夫は虐げられていると思うか」です。

:奥さんから虐げられている。逆に言えば、女性は虐げている。と思う人、どうですか? あれ、若干おられる。心のなかで上げていると思います。

パックン:そうそう。昨日の議論でも、奥さんが日本人である4名の外国人記者に、その男性の方に「虐げられていますか?」と聞いたら、やっぱり手はあげなかったんですよ。虐げられているからこそわからない、ですけどねえ。

(会場笑)

:自覚はしていないということですかね。

パックン:いえ、あがったら怖いんですよ。

:ああ、生で。

パックン:と言うのをみんなでCM中に言っていたんですが。

:CM中には手をあげてたの?

パックン:CM中はもちろん「違いますよ」と冗談で言っていたんですが。昨日の4名は割と国際式の結婚制度を家庭で守っている人で、まあ昨日の話は「オットデスノート(だんなDEATH NOTE)」というものが、いま世の中で。

(会場笑)

:あるんですってね。これは調べてみてください。

パックン:そう。「死ね!このクサイ親父」みたいな、そうした書き込みが、どうやら、メッチャウケていますね。

(会場笑)

:書いていらっしゃるんですか?

(会場笑)

書いていらっしゃらない。

パックン:会員の方? ハッハッハッハッ。会員が一万人突破など、スゴイらしいですよね。そういう本もサイトも流行っているらしく、日本の家庭関係はどうなのか? という話で議論しました。

でも、昨日の番組もそうなんですが、僕らがあちこちで煽られているようなテーマは、煽られているほどではないよとだいたい議論が収まるというか、白熱しても「メディアが煽りすぎだ」というところでよく落ちるんですよね。

:まあそうですね。けっこう外国人メディアは日本メディアを最後は叩いて終わりますよね。見ていて嫌になって僕はときどき切るんですがね。

(会場笑)

パックン:煽っている側としてね。

:まあでもね、それは毎週日曜日の夜10時から。

パックン:ぜひご覧ください。

:来週もぜひご覧ください。

一にトランプ二にトランプ三四もトランプ五もトランプ

:そこで、一年間キャスターとして、MCをやってくれていますので、ずーっと毎週毎週、最近のニュースを全部フォローしていますから、だいたい全部わかっているはずなんですが、どうですか。

今年のいろんなニュースがあった中で、まあランキングではありませんが。

パックン:まあ、ダントツトップなのはトランプですよ。

ダントツです。

:ダントツ。

パックン:世界から見ても、世界のリーダー的存在だったアメリカがリーダーの座から身を引く。中国、ドイツ、またはマクロンが登場したフランスにその主導権を譲る。これも日本の活躍する場をあててくださったと思ってもいいかも知れません。日本にとっては機会、チャンスでもあるかもしれません。しかし、日本にとっても世界にとっても、大きな危機でもある。

アメリカのリーダーシップは完璧に正しいとは思いませんが、戦後だいたいの流れが掴めた。だいたいどういうことをするのかはわかります。だいたい、まぁ少なくともアメリカの国益がかかっているところでは警察的な仕事もやってくれる。

たまに余計なところに手を出したりして、情勢を乱すこともありますが、基本的に今までの政権はオバマみたいに、世界や国際社会から温暖化対策のためや、イラン核合意のため、ウクライナに不法介入したロシアを牽制するための協力を得られるように根回しもして。

立派な演説も行って地道な活動も行い、アメリカの場合は国務省ですが外務省に優秀な人間も抜擢。ものすごく努力をしていました。

ブッシュ政権は僕の好きな方向ではありませんが、がんばっていたのは間違いない。その前のクリントンも、パパ・ブッシュも、レーガンも、カーターも、フォードも、ニクソンも。外交におけるアメリカの活動は、右左で多少ブレはしましたが、方向性はだいたい似てるんですよ。

ところが、この一年になって、まったく違う方向に向きだした。アメリカ・ファーストと言いながら、「各国民ファーストでいいよ」といっているんですね。

そこで、我々はアメリカのソフト・パワーとして、人権問題や各国民のそれぞれの幸福の確保のために、保障のために圧力をかけるよう、政府とだけ仲良くしてはしょうがないよ、アメリカは世界の手本になるべきだというように思って、いろいろと偉そうなことを言ってきました。もちろん、ときどき矛盾はしますよ。独裁国家もめっちゃ仲良くしている例はあります。資源関係が多いですが。

でもトランプは口出ししない。勝手にどの手を使ってもいいから、それぞれの国で統率していよう、統治していようと言っているんですよ。我々(アメリカ国民)が、ビジネス関係が繁盛すればいいと、こんなに赤裸々に言う大統領はいままでいませんでした。

この喋り方からもう僕の意見はわかると思うんですよ。この先どうなっていくのか不安だと思います。これがこの一年間の一番大きな出来事で、もう一にトランプ二にトランプ、三、四トランプ、五、六もトランプ。

(会場笑)

世界と渡り合うためのひとり外交術

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