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トップランナー達が語る「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例(東邦出版/編)」出版記念特別イベント(全6記事)

世界基準を知る男が語った欧州サッカービジネス最前線 「市場が価格を決める」

「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例」(東邦出版)の刊行を記念して、2017年7月5日に特別トークイベントを開催。本パートでは、スポーツ業界に携わりたい人たちからの質問に登壇者が答えました。

参加者からの質問

仲島修平氏(以下、仲島):まだまだたくさんお願いしたいですが、海外スポーツビジネス関連というかたちで、海外と国内の仕事の取り組み方の違い、世界で、スポーツ界でバリューを出すために大切にしていることへの質問も多かったです。

ですが、質疑応答の時間があと10分程度しかないので、会場の中で挙手いただきたいと思います。その後、懇親会があるので個別に聞きたいことがあれば懇親会の方にぜひお越しいただきたいと思います。ご質問ある方いらっしゃいますか?

質問者1:やっぱりレアルって久保君を狙っているんですか? レアルファンなのでぜひ獲ってほしいと思っているんですけど。

酒井浩之氏(以下、酒井):選手、チームの方向性に関してはご想像にお任せしたいと思います。玉乃さん。サッカーの世界は何があるかわからないですね。

質問者1:あとオフシーズンツアーに最近日本にあまり来てくれなくなっちゃったけど、中国行っちゃったりとか、ぜひ日本に来られると。

酒井:そうですね。私もぜひ来てほしいですね。

岩本義弘(以下、岩本):Jリーグのルールというか、中断期間の関係が変わったので、また可能性があるんじゃないですかね。とりあえず今シーズンもレアルとバルサは来ないけれども、結構来ますからね。今シーズンから。

仲島:では次を。

サッカー界には独禁法や公取委がない?

岩本:偉い人が紛れ込んだんじゃない?

(会場笑)

質問者2:すいません。偉くないですよ、ぜんぜん。時間あれば斎藤さんと岡部さんに聞きたいです。まず、じゃあ斎藤さんから。今日はスポーツビジネスの話なんで、スポーツビジネスについてあえて一石投げ込みたいと思っています。

僕、実はバルサが大好きで、MotoGPってバルクレースの工場に行ったときに、むりくり(バルセロナの本拠地)カンプノウに一緒に行ったりして。サッカー大好きなんです。でも、あの1つ気になることがあって、確かに先ほどハイリスクハイリターン、ロナウジーニョを獲りに行ってどんどん成長して大きくなったんだと。

でもそれは、ハイリスクハイリターンっていうと、強きが強きを生み、弱いチームが相対的にできますよね。

これ資本主義の悲しい部分で、強いとこはどんどん強くなるんですよ。その業界で弱い人は弱くなってくる。だから資本主義の世界で言うと独禁法とか公取委ですよ。

でもサッカーってそれがないんですよ。スポーツビジネスにはそれがない。一応僕もスポーツビジネスを真剣に考える仕事をしています。僕はたまたまアメリカンフットボール部でNFLの仕事をたっぷりしています。

NFLの仕組みと仕事を聞くと、学生の方が多いからわからないかもしれないですけど、NFLは厳格なサラリーキャップがあります。チームの年俸、年収の総額が決まっています。どうしてそういうことをやるかというと、チーム同士の拮抗のため。

グリーンベイみたいな、あんなど田舎の町にあるチームでもスーパーボウルに行くチャンスがある。すべての試合にドキドキして、もしかしたらスーパーボウルがあるかもしれないって、毎年思うからファンがどんどん増えていって、今もどんどん成長しています。

じゃあ、なんでレアル・マドリードやバルセロナはそれ(サラリーキャップ)やらないんですか?

ちなみに私は去年のスーパーボウルがシリコンバレーだったので、スタンフォードのスポーツビジネスの教授に会いに行きました。鈴木大地もいましたので、2人で一緒に聞きに行きました。さっき、バルサがエリート中のエリートって言っていましたけど、その教授は「トップは何を考えてるんだろう?」って言ってました。その質問に答えてほしい。

岩本:ちなみに、何でバルサ好きなんですか?

質問者2:バルサとレアルどっちも好きなんですけど、リーガ・エスパニョーラの上2つは世界の中でもすごく目立つから。でも、他のチーム同士の試合もある。結構下の方は赤字だったりする。NFLは確かに全部黒字。前者の成長性はどっちが上なんだろう?

サッカーの人はどうしてそれを考えないんだろう? というテーマになって、僕はアメフト部だけど、バルサを愛しているし、最高です。だって楽しいし、競技人口はあんなに多い。だから、これを聞いてみたかったんです。

2000年代初頭、バルサの矛盾

岡部恭英氏(以下、岡部):俺が答えていい?

岩本:斎藤さん、先に答えて……。

斎藤聡氏(以下、斎藤):2つあって、1つ目は、当時は実はバルサはそんなに強くなかった。4位、6位のチームをどうやってトップ3に上げるかを、まずは1つのタームとしてやろうとしていたんです。

ですから自分たちがリプレゼントして、それを世界にっていうよりは、自分たちがどうするかで目いっぱいだった。当時の時代もあったと思いますが、当時の人間はそれを考えたということです。

もう1つは、例えばリーガ・エスパニョーラで一番強くなったら、いろんな投資家がヨーロッパのサッカーにお金を入れるようになった。

じゃあチャンピオンズリーグでどうやって優勝するか? 他の国ではとにかく中国や中東から投資が届くからどんどん投資が集まって、そういうクラブに対して、バルサが立ち向かうためにはどうするのか? もう1つ、そのコンペティション(競争)があったんです。

そういう意味では、あまり他のクラブと統合して、NFLなどアメリカ的なセントライズマーケティングのフェアプレーをしようという考え方があまりない。

自分たちがよければいいという考え方がけっこうありましたね。今だから言いますけど、日本人としてアジア人として、中に入っているとそれが顕著にある。アジアはお金が出てくる市場としか見ない。

アジアに対してもっと自分たちのサッカーの普及や育成やってもいいというけど、口だけなんじゃないのと思いました。自分たちのことをすごく考えていたのは当時からあると思います。

岩本:ありがとうございます。岡部さんお願いします。

市場が価格を決める

岡部:今の質問はエコノミックスの部分だったんですよね。エコノミックスのマネーで言うと、UEFAはファイナンシャルフェアプレーがあるんです。

アメリカのモデルではないんですけど、じゃあスーパーボウルの例でやりましょう。スーパーボールとチャンピオンズリーグのファイナル、どっちが世界で見られていますか? 

質問者2:もちろんUEFA(チャンピオンズリーグ)です。

岡部:ですよね。チャンピオンズリーグ。ということは、もちろんアメリカのスポーツも成長しているけど、チャンピオンズリーグもリーガもめちゃくちゃ成長しているわけです。

資本主義という言葉が出たかと思いますけど、僕らの表現では「市場が価格を決める」。市場が価格を決めてセラーとバイヤーがいる限りは、このビジネスは弾けることもあると思うんです。弾けると資本主義だから修正がいきます。

別にチャンピオンズリーグやリーガが弾けるとは言っていないですが、ありえますよね。アメフトの例が出たけど、もちろん僕らからするとアメリカのスポーツマーケティングは1番進んでいる。

NBAもNFLも知っていますけど、ではアメリカ以外のところでメジャーリーグベースボール、NBA、NFL、どれだけ伸びています? 

NBAは、デービッド・スターンが何十年前に中国に行って国営放送CCTVにお金を払ってテレビに映して貰った。それに加え、戦略的にヤオ・ミンを利用して成功した。それでも年間収益が100億何とか。

中国で人気になったという意味ではすごいですけど、じゃあNFLやMLBがどこまでいっているか? だからアメリカンスポーツが伸びているのに、なんでヨーロッパは? という質問はちょっと違う意味かもしれないですね。

質問者2:競技人口より仕組みの問題。スポーツビジネスの仕組みの問題。

岡部:それを見る時はエコノミクス以外のことを見なきゃいけない。ある主張を見るときにそれをエコノミクスで説明できる、説明できないっていろいろある。

優秀な方なのでわかると思いますが、じゃあ何を見るか? 中国なんかすごいポリティクスが関係している。もう1つ言うとヒストリーが関係している。ヨーロッパのサッカービジネスはアメリカのスポーツとぜんぜん違います。

アメリカは日本のJリーグと一緒です。要するにトップダウン、フランチャイズ、リーグがすぐ来るんです。

ヨーロッパは違うんです。何百年という、キリスト教の教会があるとか産業革命の工場があるとか、カトリック、プロテスタント、あと例えばケンブリッジとか大学の仲間たちが始めたようなそういうボトムアップがある。

それはさっき聡のプレゼンでありましたけど、どのクラブが好きかって、要するにヒストリーが、すごいジェネレーション(何世代)にわたって、「斎藤ファミリーならこのクラブ」みたいなのがあるじゃないですか。

それを何百年にわたってきたのを今続けているだけ。変化がないとは言わないですが、アメリカ型のフランチャイズのトップダウンが正しいというのは、あまりにもエコノミクスしか見ていない。

じゃあアメリカが正しくて、「マンチェスター・ユナイテッドを明日、ロンドンに移す」なんて言ったら大変なことになるんですよ。

質問者2:それはどのスポーツもあると思いますね。

歴史と密接に関わる欧州サッカー

岡部:その現象で見るならエコノミクスのマネーの部分、それとポリティクス。中国のお金持ちや、今韓国も絡んでいる。ミドルイーストが大変なことになっている。

それで、ヒストリー。ここを見ないと僕らがこれから日本のスポーツを良くしようというときに、欧州サッカーがこうだからとか、アメリカのスポーツがこうだからなんていってもうまくいかないんじゃないかと思います。

質問者2:ヒストリーは大事ですよね。今まであったものは大事。1つの側面かもしれません。ただ、変えなきゃいけないんですよ。変えるべきところはあるんじゃないかなと思ったんです。

岡部:変えるのはいろいろ変えていかなきゃいけない。さっき聡のプレゼンで言った、これ英語で言いますけど、レボリューションですね。レボリューションしていない。プレミアリーグも1回レボリューションしてる。

質問者2:それも良さだから。確かにそれも魅力ですね。

岩本:今度その2人のトークイベントを別でやりましょう。

(会場笑)

岩本:岡部さんももろに自分のビジネスのところに来ちゃったんで、完全にスイッチが入っちゃった。

(会場笑)

岡部:いやいや、非常にいい質問です。

岩本:こういう感じで世界で戦っているんですね。でも、実際日本のJリーグはアメリカのサラリーキャップを参考にしたほうがいいんじゃないかなと思います。

歴史の部分がまだそこまでじゃなくて、どうしても成績に左右される部分もあるんですよね。プロ野球も巨人の人気が落ちるなんて思いませんでしたから。

岡部:いろいろ話題にもなってますけど、例えばプロ野球とかアメリカスポーツなんて、プロモーションなんてあるんですよね。要するに非常に魅力的ですよ。プロ野球に投資するのは。

岩本:まさにその通りなんですけども、切ろうと思ったらつい話して引っ張っちゃった。

(会場笑)

プロスポーツビジネス 私たちの成功事例

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