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Wantedly仲暁子×Tech in Asiaデビッド・コービン(全2記事)

海外進出の成否は「人こそすべて」ウォンテッドリー仲氏が人材獲得のために試行錯誤した日々を語る

2017年3月29日、30日に開催された「Slush Tokyo 2017」。起業家やイノベーターたちが一堂に会するこのイベントで、WantedlyのCEO仲暁子氏とTech in Asia日本支社代表デビッド・コービン氏が登壇しました。シンガポールで正式にサービスをリリースし、着実に海外進出を図る仲氏。最終パートでは「人こそすべて」と語る仲氏が現地の優秀人材を獲得するために試行錯誤を続けた日々を語りました。(写真:Petri Anttila)

確かな収入があるからこそ、海外進出を考える余裕があった

デビッド・コービン氏(以下、コービン):なるほど。今、海外進出の意思決定についてお話しいただきました。「人」こそが市場における成功を生み出すということでした。

Wantedlyのケースでとても興味深いのは、国内で非常に成功を収めていることです。だから海外進出の機会をとらえることができたのでしょうか? 国内で十分な利益があるので、この利益を海外市場に再投資ができます。

他のスタートアップ企業が海外進出をしようとしたら、外部資金調達が必要になります。「海外進出には、500万ドル必要です」と言って資金調達をしてから、シンガポールや日本などに進出するでしょう。

おそらく観客のみなさんは、「私の会社が海外進出する最適なタイミングはいつだろう?」と思っているはずです。もし、海外進出において外部資金調達が必要だったとしたら、Wantedlyが行った意思決定プロセスは異なっていたと思いますか?

仲暁子氏(以下、仲):そうだと思います。私たちのビジネスは利益が多いわけではありませんでしたが、設立初期からすでにしっかりとした収入がありました。

確かな収入があるからこそ、海外進出を考える余裕があったと言えると思います。国内市場ですら収入を得ることができていないのであれば、海外展開を検討するのは難しかったでしょう。

まずは国内市場で確かな収入を確保すること、そのために海外ではなく国内に投資をする必要があります。日常的に自分のメイン市場で成功をすることが大事だと思います。メイン市場がどこであったとしても。国内市場で成功して初めて、日本やその国以外の海外進出を考えることができます。これは、どのような企業も欠かせないでしょう。

コービン:トークの時間もあと数分となりました。海外進出に関するある種のWantedlyの哲学については理解できました。海外進出において基礎となること、そしてタイミングについて理解しました。

今からは実際にどのように試行錯誤を行ってきたのかお話しいただきます。例えば、どのように相応しい人材を探すのか、そしてサービスや製品をどのように現地に適合させるのか、などです。そうすれば、観客のみなさんが、自身の会社の経営に取り入れることができると思います。

スタートアップ企業については、私自身がいい例ですが、日本で採用を行っています。シンガポール企業も日本で採用活動を行っています。なので、仲さんと同じような問題に直面しました。

シンガポールへ進出するにあたって、仲さんはどのように「相応しい人材」を見つけたのですか?

:いい質問ですね。最初に探すべきはマネージャーです。Tech in Asiaはコービンさんという人材を見つけたのでとても幸運だと思います。

コービン:わお、ありがとうございます。

:あなたがここにいて、他のすべての人々をまとめていますから!

コービン:いえいえ、最初はみんな私のことを嫌っていましたから!

:観客のみなさんの前ですので、またあとで(笑)。

コービス:そうですね、すいません(笑)。

海外進出のタイミングで優秀なリクルーターに出会えた

:一番難しいのは、「相応しい人材」を見つけることです。現地の人材について多くの知識を持つリクルーターなどの力を借りる必要があります。そして、リクルーターたちと知り合うためには、現地のネットワークが必要です。

そういう意味では、Tech in Asia やSlushなどの海外カンファレンスのネットワークは助けになると思います。

実際に、シンガポールで行われたTech in Asiaに2度登壇することで、自然と彼らのネットワークに参加することができました。私もまだ若いですし、他の若い創業者たちもとてもフレンドリーです。どういうことをしているのか、なにか一緒にできることがあるかなどを話せます。

今、あるシンガポールのリクルーターと密に仕事をしています。彼女はとても優秀です。本当に、本当に素晴らしいです。Hub Singaporeをご存じですか?

コービン:ああ、グレースですね!

:そうです! グレースはシンガポールテックシーンの中心人物の1人ですよね? 彼女はいろいろな人を知っています。たとえ彼女のことを直接知らなかったとしても、Tech in Asiaなどで一緒に登壇すれば、そのあと仕事関係のことも相談できます。これはとても素晴らしいことだと思います。

海外展開に相応しい人材を獲得したければ、現地ネットワークやカンファレンスを通して、現地の人々と知り合うことは絶対に欠かせないと思います。気軽な会話を交わすことで、自然とつながりが作れますし、自由に名刺を交換することができます。

コービン:まとめると、何年かかけて現地でのネットワークを作り上げてきたということですね。だから、いざ現地に進出しようという時には、現地の知り合いから優秀なリクルーターを紹介してもらえたと。リクルーターチームのリーダーはリータッシュですか? ウェイティンですか?

:ああ、そうです。ウェイティンです! コービンさんはご存じですね。ジョエルという非常に優秀なローンチャーもいます。彼らはみんなシンガポール人です。

コービン:今、仲さんがお話ししてくださった現地といかに関係を築くかというのは、この会場にいるスタートアップ企業のみなさんもすごく勉強になると思います。もし、日本進出を考えていらっしゃるのなら、これは素晴らしいチャンスだと思います! 

仲さんと同じ戦略を試してみてください。周りにいる人々と会話をして、なにか一緒にできないか、助け合うことができないか意見を交換してみてください。通常なら、人間関係のネットワークを築くのは何年もかかりますから。

海外市場で注目を集めるために磨いたスピーチ力

おうかがいしたいのは、実はこれが一番難しい部分だと思うのですが、いかがでしょうか? 

仲さんの日本での起業については、バックグラウンドが強烈ですよね。ゴールドマンサックス、Facebook、投資家の1人はエンジェル投資家の川田尚吾氏です。これを聞いたら、誰もが「おお! このスタートアップ企業は注目株だな!」と思います。

しかし、シンガポールなどの海外市場については、どのように注目を集めるのでしょうか?

:例えば、メディアやパートナーということですか?

コービン:そうです、メディアやパートナーですね。すごく辛抱強くコツコツ努力してきたのか、それとも、3ヶ月か4ヶ月でさくっとできるものですか? 海外で実際にサービスを展開するには、3〜4ヶ月のプロセスなのか、3〜4年のプロセスなのかどちらでしょうか?

:メディアやパートナーはまったく異なりますので、違ったアプローチをする必要があります。メディアに関して私がしたことと言えば、国際的なカンファレンスでスピーチをする機会が得られるように努力しました。

特に2年前の2015年や2016年は、精力的に取り組みましたね。過去のカンファレンスからすでにつながりは持っていたので、いろいろな人にメールを送りました。「日本や日本の市場について話す機会があれば、喜んでカンファレンスに参加してスピーチします」とできる限り伝えました。

こういったカンファレンスに参加して、価値のある話をすることができれば、自然と注目を浴びることになります。たとえ、バックグラウンドがどういうものであったとしても。

振り返ってみるとこの数年は、チャンスを探すことに注力しました。さまざまな人宛てにメールを送りました。それに、「注目を得るためには、どうすればいいスピーチができるのか」を研究をしてしっかり練習しました。

そういう努力をし始めてから、カンファレンスに参加した人々から声を掛けられるようになりました。「スピーチ、すごく良かったよ!」「インタビューしてもいいですか?」などです。

つまり、最初は小さなステップでしたが、その積み重ねで徐々に勢いを増していきました。ただ、海外メディアと付き合うという意味では、この努力を常に続けないといけません。もし辞めてしまえば、せっかくの勢いも失墜するだけです。

ある種の投資だと言えますね。海外カンファレンスに出席するには毎回、飛行機代もかかりますから。

本社メンバーと海外拠点メンバーが一緒に過ごす期間を設ける

コービン:なるほど。よくわかりました。ちょうどお時間が来たようです。これまでの話をまとめてみましょう。

つまり、設立当初から海外展開を視野に入れることを恐れる必要はないということですね。多国籍、多言語対応サービスを当初から構築することは可能です。会社のブランド認知を高め、会社のストーリーを広めるためには、初期投資の必要もあります。そうして初めて、海外市場の人々が自身の会社について認知してくれます。

そして、そのタイミングが来たら、非常に厳しく「相応しい人材」を探して、雇用しなければいけません。その際には本社のメンバーも、海外の人材と働く準備ができていることが重要です。そうして、強いチームというのが作られます。

:そうですね。もう1つだけ付け加えさせてください。

コービン:もちろん、どうぞ! この時間はすべてあなたのものですから!

:海外で人材を雇用した後ですが、本社と海外拠点が一丸となって強いチームを構築するのは、とても重要です。なので、雇用したあとに、1週間から2週間ともに過ごす期間を設けました。

本社のオフィスで働いたり、ディスカッションしたり。本社メンバーと海外拠点メンバーが一緒に過ごすことで、互いにチームとして一体感が生まれます。そして、本社から離れていても、会社を代表しているという気持ちを持つことができます。さらに、会社の情熱や価値観が失われることなく、海外にも伝わります。

すいません、遮ってしまいました。

コービン:いえいえ! これはあなたのインタビューなのですから! お時間が来たようですね。本日はありがとうございました。このように素晴らしいインタビューに参加できて光栄です。今、会場にお越しの海外のスタートアップ企業のみなさんも、仲さんの例にならってぜひ日本に進出してください。

:そうだといいですね!

コービン:仲さんに拍手をお願いします!

(会場拍手)

:デビッドさんにも拍手をお願いします!

(会場拍手)

ありがとうございます。すごく楽しかったです。

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