2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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デビッド・コービン氏(以下、コービン):さて、今日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
仲暁子氏(以下、仲):はい、お越しいただいき。一緒にステージへ登壇していただきありがとうございます。Tech in Asiaではないのに、参加していただいて感謝しています。
コービン:いえいえ。同じコミュニティですから。Slushに参加できてとても光栄です。今日はWantedlyの東南アジア進出について、お話をうかがいたいと思います。
仲:はい、お願いします!
コービン:この会場に、もしかするとWantedlyのことを知らない人が1人か2人はいらっしゃるかもしれません。東南アジア進出について話をうかがう前に、Wantedlyについてご説明いただけますか?
Wantedlyとはあなたにとってどのような存在でしょうか?
仲:Wantedlyは、私にとってまさに理想を体現したサービスです。Wantedlyがどういうものか、まずはご説明したいと思います。
ちなみに、Wantedlyをご存じない方は、会場にどれほどいらっしゃいますか?
(会場を見渡して)なるほど、わかりました。では、Wantedlyについてまずはご説明します。
Wantedlyは日本最大のビジネス向けソーシャル・ネットワーク・サービスです。特に若者を主なターゲットとしています。アクティブユーザー数は月間150万人を超え、20,000社以上の企業が利用しています。技術ベースのユーザーサービスを提供しています。
私たちのサービスは、3つの特徴で語られます。「Branding(自分を表現)」「Discovery(企業やサービスを発見)」「Connect(出会った人たちとつながる)」の3つのカテゴリーで表現することができます。説明すると少し長くなりますが。
ブランディングでは、それぞれが自分をブランド化することができます。各企業が自身のブランドを宣伝することもできます。企業プロフィールを提供したり、企業文化やブログを書いたりすることができます。
ディスカバリーでは、企業とユーザーが互いに発見し合うプラットフォームを提供します。共通のミッションや価値観を持っているユーザーと企業が、互いに発見し合うことができます。そして、ユーザーが企業のオフィスを訪問して、気軽にミーティングを行うことができます。
コネクトについては、ビジネスチャット「Wantedly Chat」というサービスを提供しています。Wantedlyのユーザーは無料でこのサービスを利用することができます。
昨年11月に名刺管理サービス「Wantedly People」をリリースしました。リリース直後から爆発的な人気となり、すでにスキャンされた名刺の枚数は1,500万枚を突破しました。
これが、私たちが行っていることです。
コービン:実は、私自身が行っていることでもあります。Tech in Asiaは、Wantedlyを使って採用を行っていますから。
仲:ありがとうございます!
コービン:会場のみなさん、Tech in Asiaで働くことに興味があれば採用ページを見てください!
さて、日本国内での事業展開についてお話しいただきました。今から、どのように海外展開を行ってきたかお話しいただきたいと思います。
たしか、海外のカンファレンスに登壇するなど、海外での活動を始めたのは2013年頃でしたね? しかし、シンガポール支社をオープンしたのはごく最近。2017年になってからです。
仲:いい質問ですね。
コービン:2013年から2017年の間にギャップが存在しています。2013年を振り返ってみると、Wantedlyは設立からわずか1年の会社でした。シンガポール支社設立に至るまで、一体なにがあったのでしょうか?
仲:そうですね。私自身がどういう人間であるか、つまり私のバックグラウンドにすべての答えがあります。
子供の頃から海外で生活をしていて、海外の高校に通っていました。だから、日本の人々のみでなく、海外の人々にも私たちのサービスを使ってほしいという考えはもともと持っていました。Wantedlyを設立するときも、当初から英語版を作って、海外の人々が利用できるようにしたい考えていました。
私にとって海外に進出するというのは、ごく自然な発想なのです。だから、Tech in Asiaのような海外のカンファレンスに参加または登壇機会があれば、当たり前に参加しました。
コービン:2013年は実際に、英語版が存在したのですか?
仲:はい、すでにありました。
コービン:なるほど。では、設立のほぼ初めから多言語に対応したサービスがあったのですね。
仲:その通りです。
コービン:では、2013年の海外カンファレンスはいいチャンスだったわけですね。
海外での活動に注力する前に、国内事業で達成しなければいけない基準とは、どういうものだったのでしょうか? 収益性の問題ですか? それともユーザーの問題ですか? 資金調達の問題でしょうか?
仲:おもに人材の問題だと思います。「これだ」と思える方法を見つけるまで、何年も試行錯誤を重ねました。そして、すべては「人」だという結論に達しました。つまり、自分のチームにどのような人材がいるかがすべてなのです。
ミッションや価値観を共有することができる「相応しい人材」がいれば、彼らを採用することができます。
なので極論をいってしまえば、「インドネシアに進出したい」「シンガポールに進出したい」という企業側の意図ではなく、そこに「相応しい人材」がいるかどうかがすべてです。その人材がシンガポール出身だから、シンガポールに進出する、そういうことです。だから、すべては「人ありき」のプロセスだと言えます。
もう少し付け加えさせてください。設立当初の2013年や2014年は、日本語ができるバイリンガル人材を雇用しようとしていました。日本語と英語、もしくは別の言語ができる人材です。バイリンガルの日本人を積極的に雇用し、彼らに海外進出を担ってもらおうと考えていました。
しかし、これはうまくいきませんでした。原因ははっきりしています。
彼らは言葉ができても、現地の文化や風習は知らないのです。海外展開というのは、どのように製品をその現地文化に適合させるかにかかっています。そして現地の人々といかにコミュニケーションをとるかです。
この経験がブレイクスルーとなって、以降、海外展開には、現地ネットワークに強い人材を雇用するべきだという結論になりました。実際に、シンガポール支社や他の海外拠点のメンバーは一切日本語を話しません。
コービン:本当ですか? 海外拠点のメンバーは日本語を話さないということですが、仲さんはもちろんバイリンガルですよね。他のメンバーはどうですか? 会計担当や戦略担当などいますが、どのように本社として海外の拠点とやりとりを行うのですか?
仲:幸運なことに、私たちの経営メンバーの大部分は英語が話せます。流暢とは言えなくても、ある程度の意思疎通は可能です。なので、海外拠点とのコミュニケーションもそれほど問題とはなりません。もちろん、私自身は英語を話すのになんの問題もありません。
日本企業では珍しいかもしれません。海外拠点の管理者が誰も日本語を話さないというのは、あまりないように思います。
そういう意味では、英語を話す人材が多いのは幸運です。
コービン:「話すこと」と「マネージすること」と違いをはっきりさせるのは大事かもしれないですね。
言語を話すことができたとしても、単純に製品を販売するのとは違って、その人たちがどういうバックグラウンドを持つのかなど理解しなければ、人の管理はできません。どのようにこのギャップを埋めるのですか? どちらも潜在的な能力の問題だと思います。
仲:先ほどお話しした通り、大部分の経営メンバーが海外で働いた経験があります。何人かは実際に、シンガポールや香港などでマネージャーを務めていました。私たちの置かれた現状というのは、本当に幸運なことですが、そのような海外人材が揃っています。
ただし、先ほどおっしゃったように、英語を話せることと、日本人以外の人たちをマネージすることはまったく別のスキルだと思います。すべてが順調に進むわけではありません。毎日たくさんの問題が起こり、対応、解決に日々追われています。走りながら解決していっているという感じですね。でも、決して不可能なことはありません。
コービン:2013年から海外進出を視野に入れており、相応しい人材を探したとおっしゃいましたね? その相応しい人材はベトナム、タイ、シンガポールなどさまざまな国から見つかる可能性があったわけです。その中で、どのように「このタイミングで進出するには、この国が相応しい」と判断したのですか?
「人」だけではありません。市場規模や予測される収益などの判断材料が存在するはずです。そのような観点で言うと、どのように判断したのですか? 大学卒業者の増加や技術産業の成長などでしょうか? なにに基づいて「この国は注目すべきである」と判断したのでしょうか?
仲:そうですね。私の持論ですが、Wantedlyは経済発展国の若者世代にマッチすると思います。発展途上国においては、多くの人がその日暮らしをしています。彼らは明日を生きるために働かなければいけません。
しかし、経済発展国の若者世代は、もはやそうではありません。北米やヨーロッパ、アジアなどでは、若者たちは仕事に対して悩みを抱えています。身の回りに物が溢れていているので、物質的なものを追い求めるのではなく、仕事に対してやりがいを求めます。
これは、私自身が直面した問題でもあります。日本の私たちの世代の多くは同じような問題を抱えているでしょう。そう考えると、他の国の若者世代にも、当てはめることができると思います。
あと、日本との時差が3時間以内の国に限定しました。時差が大きいと管理するのがとても難しいからです。日本との時差が前後3時間以内の経済が発展している国となると、ある程度絞られてきますね。シンガポールや香港、台湾などですね。
コービン:韓国への進出もすぐですね。
仲:韓国はまったく異なる文化を持つ国ですので(苦笑)。できるといいのですが。
コービン:それはインドネシア進出から学んだレッスンということですか? インドネシア語でサービスを提供していましたよね。ユーザーもかなりいたと思います。
仲:そうですね(苦笑)。インドネシアはまったく異なる市場です。インドネシアはまだ実験を行っている段階だと言えます。
インドネシアという国の性質自体が大きく異なります。インドネシアは大きな市場ですが、大部分の人は英語を話しません。日本と同じですね。日本では人生において、英語を話す必要性がありません。あらゆる情報やサービスは現地の言葉で提供されています。
これは、バハサ・インドネシア(インドネシア語)も同様です。つまり、インドネシアに進出するのであれば、他の英語圏の国よりも、より一層製品やサービスを現地に適応させる必要があります。
そういう意味では、標準的に英語が通じる国々よりも、インドネシアなどの国に適合するのは難しいと言えます。それに、私自身はバハサ(インドネシア語)を話すことができません。
インドネシアにおいて英語を話す人材や技術ベースの経験を持つ人材というのは、どうしても数が少なくなります。シンガポールや香港などに比べると少数です。先ほどお伝えしたように、すべては「人ありき」なのです。そういう意味では、「相応しい人材」をインドネシアで見つけるのは難しいです。
これが、過去数年で学んだレッスンです。
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