2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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――11月8日に予定されているアメリカ大統領選挙。クリントン氏優位と言われていますが、トランプ氏も大きな存在感を示していますね。ここまでの選挙戦を「コピーライティング」「プレゼン」の両面から、お2人で振り返っていただけないでしょうか。
横田伊佐男氏(以下、横田):まぁ、まだどうなるかまったくわかりませんが……(笑)。これまでを振り返るという限定をつけたうえで言うと、トランプはもともと「にぎやかし」のような、ダークホース的な見方をされている候補だったのに、あれよあれよと大衆を巻き込んで勢いに乗り、大統領の有力候補になった。
そして、クリントンを脅かす存在にまでなった。ここまで登ってこられたのは、彼とその側近のコピーライティング力に大きな要因があると考えています。
――どういうことでしょうか?
横田:トランプ陣営が発信してきた言葉が非常に強いんですよね。ところが、ヒラリーの言葉はどうもブレているように感じられ、ちょっと弱い。
少し分析してみましょう。11月2日に開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」で詳しくご説明するのですが、私は、「刺さるキャッチコピー」には4つの法則があると考えています。
キャッチコピーの4大法則法則1:得になる →「お得感」はあるか?法則2:新情報 →「新しさ感」はあるか?法則3:好奇心 →「珍しさ感」はあるか?法則4:簡単な方法 →「お手軽感」はあるか?
これを踏まえて、両陣営のキャッチコピーを比べてみましょう。
トランプは「Make America Great Again(偉大なアメリカよ、再び)」。このフレーズには、近年、国力を低下させているアメリカのパワーを、もう一度取り戻すのだというメッセージが端的に表されています。
とくに「Again」という単語が「昔は強かったけど、今はその強さを失っている。もう一度強さを取り戻すのだ」とあおる効果を担っていて、「法則3:好奇心」をそそります。
また、そもそもアメリカ人は「強いものへのあこがれ」が大きい人たちです。大きい、強い、一番、そういうものを好みます。だから「Great」という単語も大好きなんですね。
この語感が、とくに格差社会の貧困層を中心に、「自分たちが弱くなっている」「強くなりたい」という不満をもつ人たちに響いていると考えられます。「法則1:得になる」に合致しているんですね。
また、キャッチコピーは4語でとてもシンプルなので、「法則4:簡単な方法」も訴求できています。
前田鎌利氏(以下、前田):なるほど。キャッチコピーの4大法則のうち、3つをカバーしているのですね?
横田:そうです。だから大衆に刺さる。一方、ヒラリーのキャッチコピーは「Stronger Together(一緒のほうが強い)」。語感はスマートなのですが、一緒にいると何がいいのかという「得」の部分が「Stronger」と表現が弱い。トランプの「Great」というフレーズの強さには確実に劣ります。
端的なコピーでメリットを表現できないと、全米を引っ張っていく力がないと判断されてしまうのです。
キャッチコピーの4大法則のうち、押さえられているものといえば、「一緒にいればいい」ということを訴求する「法則4:簡単な方法」くらいでしょうか?
トランプ氏は人格が問題視されたり、政策が荒唐無稽だといわれたりしましたが、コピーライティング的にいえば、人を引きつけたのはトランプ氏のほうだったということです。改めて、言葉がもつ強力なパワーを感じさせられますね。
――ヒラリー苦戦の背景には、そんな見方もあるのですね。
横田:そうではないか、と思います。コピーの弱さだけではありません。より問題だと思うのは、キャッチコピーの打ち出し方がブレているように感じられることです。
トランプが、キャッチコピー「Make America Great Again」を一貫して、ホームページや演題タイトルなど、必ず人の目に触れるところに掲げていたのに対し、ヒラリーの「Stronger Together」というキャッチコピーは、時と場合によって変わっていたことがあった。
たとえば、ホームページに載っているキャッチコピーは「Hillary for President」でした。「Stronger Together」が表に出てくる場合もあれば、出てこない場合もあり、一本スジの通った情報発信を続けてこれなかったのも、訴求力の弱さにつながったのではないかと思います。この点についても、11月2日に開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」で詳しくご説明したいと思っています。
――なぜ、ヒラリーのキャッチコピーはブレてしまったのでしょうか。
前田:それは結局、「念(おも)い」が定まってないからじゃないでしょうか? そんな気がします。
トランプはよくも悪くも、彼の中で「こうしたい。こうすべきだ」という思いがしっかりとしている。だから、生まれてくるコピーも明確で、ブレがない。
横田:そうかもしれませんね。そこで、僕が推測するのが、ヒラリーはメッセージを打ち出す相手を絞りきれなかったんじゃないか、ということです。その結果、メッセージにもブレが生じてしまったように思うのです。
コピーライティングの原則として「書く前にターゲットを定めよ」というものがあります。その観点からいうと、トランプは、オバマに対して不満を溜めている中間層に対してというターゲットが明確です。
一方のクリントンは、「Stronger Together」というメッセージを誰に伝えているのかがあいまいな感は否めません。誰に対して「一緒のほうが強い」と言っているのか。今までバラバラだった人たちは誰なのか。ちょっと見えづらいですね。だからこそ、PRの打ち出し方もブレているように見えてくる。
前田:同感ですね。加えてトランプは、「やるか、やらないか」という二元論でメッセージを発することが多いから、聞いていてすごくわかりやすい。「もうAかBしかないでしょ、どっちなんですかみなさん」と選択を迫るやり方が、パワフルに聞こえてしまうんです。
この二元論には問題もあると思います。世の中、そんなにシンプルじゃないですからね(笑)。それに、パワフルなキャッチコピーで支持を広げても、詳しく政策を見ていくと整合性がとれていなかったり、非現実的だったりすることもあると思います。だから、わかりやすくてパワフルなキャッチコピーに振り回されてはならない、という警戒感は必要だと思います。
横田:そうですね。いちばん重要なのは「中身」ですからね。
前田:ええ。ただ、どんなに「中身」があったとしても、それを多くの人々に伝播させる「強い言葉」をもたなければ意味がありません。これは、ビジネス・プレゼンでも同じことです。
いい商品・サービスがあるのが大前提です。だけど、それを相手にわかりやすく伝える言葉をもたなければ、使ってもらうことはできない。だから、キャッチコピーの重要性は「中身」と同等だと僕は思っています。
横田:おっしゃるとおりです。なかには、「中身」さえよければいいと考える方もいますが、それはもったいない。せっかくいいモノをつくったのならば、なおさら、それを広める言葉を磨くべきです。そんな、意識とノウハウを「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」でも伝えていきたいと思っています。
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