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それでもやっぱり先生という仕事を続けたい人へ〜しんどい気持ち、皆どうしてる?〜(全3記事)

ブラックと言われる教師が“将来の夢ランキング”に入るのはなぜ? 現役教師が伝えたい、しんどさだけじゃない仕事の「楽しさ」

先生のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボが主催したイベントに、公立小学校の教員2名が登壇しました。人手不足、長時間労働、保護者への対応など、多忙なイメージのある教員という仕事。そんな中でも、自分を大切にしながら仕事を続けるには、どうすればよいのか? 本記事では、劇団員から教員の道に進んだ松下隼司氏が、これまでのキャリア遍歴や、著書『せんせいって』に込めた思いについて語ります。

劇団員を経て、小学校の先生に

高村ミチカ氏(以下、高村):では松下先生、よろしくお願いします。

松下隼司氏(以下、松下):この4つのお話をさせていただきます。まずはこれまでのキャリアなんですが、ちょっと変わってます(笑)。今年度で、大阪で教師になって21年目です。19歳の大学生の時に、大学がちょっとおもしろくないなと思って、大阪の劇団に入りました。

そこから、大学を出てスペイン村でちょっと働いて、24歳で大阪で小学校の先生になりましたが、29歳までは演劇活動をやってました。(周りの劇団員が)みんなギラギラしてるのがいいなって思っていて。

その時は生意気に「職員室で子どもの悪口言ってるのがかっこ悪いな」と思ってしまったんですね。今はもう慣れちゃいましたけど(笑)、先生になった時は「なんか嫌やな」って思っていて。

芝居して、ウケへんかったのを客のせいにしてるような感じがしていたので、(仕事としては)演劇を中心にやっていたなと思います。

だけど、「ちゃんと準備してやったら、芝居よりも授業のほうがおもしろい」という本を読んで、なるほどなぁと思ったんですよ。だって、芝居って台本どおりじゃないですか。

だけど授業はそんなわけにはいかんし、そこから学校の仕事もおもしろいなと思い出して、29歳で劇団を辞めました。

怒らなすぎても、かえって子どもが離れていく

松下:もともとめっちゃ怒りっぽくて、ディズニーとかへ行って並んでいると、お腹が減っただけでイライラするんですね。それで、診断したんですよ。

必要以上にすぐ怒る、強く怒る、必要以上にネチネチと長く怒る。この3つとも当てはまっていて、「あかんな」と思って、20万円ぐらいかけてアンガーマネジメントの資格を取ったんですけど、それでもうまくいかなかったんですね。

「怒らんように、怒らんように」ってしたら、逆に子どもが離れていったんですよ。「なんで先生は怒ってくれへんの?」って、ちゃんとした子からも距離をとられて。そこは一番しんどかったですね。

怒らんかったら怒らんかったで子どもが離れていくし、怒りすぎて子どもを傷つけてしまったこともあるし。そこからちょっと苦しんで、自分なりに、なんとか最後は笑いに持っていけたらなということで、この絵本を作りました。

口癖で「オイ!」とか「コラ!」なんて言っていてね。怒らずに、どうやって笑かそうと考えて。「コアラ!」「コーラ!」とかなんでもいいですけど、そういうふうにしたら子どもも笑顔になるし、自分も我慢せんでいいよっていうことで作ったのが、『ぼく、わたしのトリセツ』という子ども目線の取り扱い説明書です。

しんどいと感じた瞬間も、辞めようと思った時も山ほどあるんです。今も1年以上は毎日、栄養ドリンクを飲んで(学校へ)行っていますね。不健康ですが、箱買いして。

生徒に聞かれた「先生ってブラックなんですか?」

松下:それでもやっぱり続ける理由は、2019年、コロナの4ヶ月ぐらい前に、担任をしてる子から休み時間に「先生ってブラックなんですか?」って聞かれたんですよ。

今やったら大阪やから、「コーヒーのこと?」「コーラのこと?」とか、いろいろ茶化して聞けるんですけど、慌ててしまって。「なんで知ってんの?」って言っちゃったんですね(笑)。

僕は「なんで小4の子どもがそういうこと知ってんの?」っていう意味で聞いたんですが、たぶん「先生、認めてんねや」って思われたのかなと思って。

そこから、自分はどういう気持ちで先生をやってるのかなということで、正月に田舎に帰ってる時に学級通信を書いたんですよ。それで、それを元に絵本を書いたんです。

あるあるで、これは地域によっては違うと思うんですけど、朝学校に行ったら「遅い」「遅刻や」って言われるんですよ。8時10分ぐらいに行くと「遅い」と言われるんですが、勤務開始が8時半とか。

「子どもが来る時間よりも早く来る」とか、早い先生は1時間以上前に来てるじゃないですか。そこもしんどいなあと思ったりね。あとは「子どものほうが早いんやで」とか。

子どもとゆっくり向き合う時間がなかった

松下:学校の先生をされてる方は、何分でご飯を食べてはりますか? 1回数えたんですけどね、だいたい3分とか5分ですね。

食べてる時間も子どものほうを向いてますし、仕事をしながら。本当はゆっくり子どもとしゃべって食べたいなと思ってたのに、現実と違うのもしんどかった。

放課後に「遊ぼう」と言われても、「ごめん、会議があるの」「研修があるの」って断ったり。あと、初任の頃はよう言われたんですけど、「先生は夏休みあってええな」とか(笑)。

今はだんだんそういう感覚がなくなって、めちゃめちゃ夏休みを増やすようになりました。自宅研修って、なくなっちゃいましたか? みなさんのところはどうですかね。厳しくなりましたよね。

けど……先週ですかね。「ハサミ、持ち方気ぃつけや」って言っただけで、「めっちゃ優しい!」って(笑)。子どもにちょっと言われるのがうれしいですよね。

けど、子どもにそう言っときながら、自分はめっちゃ怒ってたりしてるのがショックで、「ぜんぜん自分はできてないな」と思ったり。

小学校の時に、6年の担任の先生に憧れて「先生になってみたいな」と思ったんです。

そうしたら、赴任した時にその先生も一緒におってくれて、すごく良かったなと思います。

しんどさだけでなく、教員の「楽しさ」も伝えたい

松下:子どもに「先生ってどんな服が似合うかな?」と聞いたら、いろんな色を言ってくれるんですよ。でも、先生自身は「自分の服はブラックや」って思ってるんですよね。

「ブラック、ブラック」って言われながらも、不思議なことがあるんですよ。なんで子どもは先生の過酷さを知っておきながら、毎年「将来なりたい夢ランキング」で「学校の先生」が上位に挙がり続けてるんかなって。

それはニュースとかの情報だけじゃなくて、子どもたちの目の前にいる全国の先生方がキラキラ楽しそうにがんばってるから、「目の前の先生みたいになりたい」と思ってくれてるんじゃないかなと。

だから、先生のしんどさだけじゃなくて、楽しさも伝えたいなと思って絵本を作りました。「しんどいのはほかのお仕事も一緒やし」って。

今やったらいろんなお仕事が出てきていますが、「どんなお仕事をやってみたい?」と聞くと、「学校の先生になりたい」と言ってくれる子も毎年います。

著書『せんせいって』に込めた思い

松下:最後のページなんですが、「いいなぁ~。みんなは まだ なんにでも なれるね。せんせいだったら…」。正直な話、やっぱり先生はずっと続けてやりたい。「ゆめいっぱい やるきいっぱいの みんなと いられて しあわせだよ」。「せんせいの おしごとは 本当に…にじいろだよ!」。

最初にこの詩を書いた時は、虹色ではなく「ゴールド」って書いたんですよ(笑)。自分でゴールドって言い聞かせないと、ちょっとしんどい時期やったんで。でも、嘘っぽくなっちゃったんで虹色にしました。虹色って国によって暗い色もあるし、嘘じゃないなと思って虹色にしました。

具体的に、このしんどい思いをどうやって持ちこたえているのか。今は、朝出勤する前に、学校の先生のドラマをYouTubeで2~3分見てから行ってますね。『みにくいアヒルの子』って知ってますか? 友紀子先生世代は知らない? 知ってる方はいないですかね。

高村:わたしもわからないな(笑)。

松下:あらっ、すみません。岸谷五郎さんの『みにくいアヒルの子』、ご存知じゃないですか。まぁ、なんでもいいんですけどね(笑)。(視聴者の中には)あ、知っておられる方も。そういう先生ドラマを見てからがんばってます。以上です。

高村:ありがとうございます。最後のレインボーの表現がすごく素敵だなと思って、お話を聞いていました。

働く中で感じた「しんどさ」の正体

高村:このあとは3人で、キャリア座談会というかたちでお話しできたらと思います。

最初にお聞きしたいんですが、お二人はけっこうしんどい時があったとお話しいただいたんですが、そのしんどさを感じる正体って何だと思いますか? このご質問からしていきたいんですが、友紀子先生は「しんどさの正体」、何だと思いますか?

渡邊:「みんなが」っていうのはわからないんですが、少なくとも私は、「こうあるべき」に自分自身がとらわれすぎちゃっていたところと、0:100で不幸になっちゃっていて。

「これができなかったら私はダメなんだ」「これができないんだったら、もう私はなにもしないほうがいい」という感じで、極端に考えちゃったりしたところもあったし。

あと……これも「こうあるべき」というところなんですが、「この1年間で、子どもたちを絶対に良い方向に導かなければいけない」って思ってたんですよね。

それができればいいんですけど、なかなかそういうわけでもなくて。もうちょっと、ゆるく見守ることができたらよかったんだろうなって思います。

高村:すごくわかります。(視聴者コメントでも)「その思考の癖、僕にもめっちゃあります」と来てますが、すごくわかりますね。

「担任のせい」というプレッシャーのしんどさ

高村:特に「成長させなきゃいけない」って思えば思うほど、指導が極端になってしまったりして、子どもたちとの関係性が悪くなるということは、すごくよくあるなと思います。松下先生も、そんな経験ありますか?

松下:友紀子先生の最後の「ゆるく見守る」というのは、人それぞれしんどさを感じるところは違うと思うんですが、僕は同僚、職員室の雰囲気でした。

いくら子どもの対応がしんどい時でも、(職員室に)帰ってきた時に「しんどい」とか「そうそう」って、愚痴を共感し合える暖かい雰囲気やったらいいんですが、そうじゃなかった時はつらいですね。

荒れてたり、子どもとの関係や保護者の関係がうまくいかない時に、冷たい雰囲気を感じる職員室やと一番しんどいですね。

高村:なるほど。それ、さっきの話とつながるなと思って。「成長させなきゃいけない」と思ってると、学級の姿が「担任のせい」みたいな感覚にすごくなって。

同僚から責められるのも、「きっとあのクラスができないのは、あの先生のせいだよね」みたいな感じになっちゃうと、すごくしんどいだろうなと感じましたね。

松下:友紀子先生の「完璧に」っていうのは、ものすごくわかるところがある。指導案とかも……(笑)。僕じゃないですが、夜の10時までみんな集まって指導案を練り上げることもあるでしょうから、しんどいなって思いますよ。

高村:ありますね。

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