2024.10.10
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桜井雅斗氏(以下、桜井):それではみなさま、大変お待たせいたしました。本日のゲストをお呼びしたいと思います。笑い飯・哲夫さんです。
笑い飯・哲夫氏(以下、哲夫):こんにちは。笑い飯の哲夫です。よろしくお願いします。
桜井:よろしくお願いします。本日はありがとうございます。
哲夫:いえいえ。すごくいいお声ですね。
桜井:ありがとうございます。同じ吉本興業の芸人同士ではあるんですけれども、なかなか漫才師さんたちと新喜劇の僕は関わりが少ないので、かなりドキドキしています。こういう機会はなかなかないので、楽しみにしております。よろしくお願いします。
哲夫:こちらこそ、よろしくお願いします。
桜井:まずは簡単に哲夫さんのプロフィールをご紹介させていただきます。1974年奈良県生まれ、関西学院大学文学部哲学科卒業後、2000年に西田幸治さんとお笑いコンビ笑い飯を結成。2010年にM-1グランプリで優勝。
幼い頃から般若心経に関心を寄せ、仏教について独学で学び、2015年から奈良国立博物館の文化大使を務めます。8年ほど前から大阪市淀川区で、低料金で通うことができる小・中学生向けの学習塾「寺子屋こやや」のオーナーを務めていらっしゃいます。......ということで、間違いないでしょうか。
哲夫:そうですね。大きくは間違ってないですが、2015年から国立博物館の文化大使と、そのちょっと前からコンビで奈良の観光大使をやっています。2016年からは奈良県桜井市の広報大使をやってまして、一応大使を3つやっています。
桜井:すごいですね。哲夫さんお一人でやられてるのも2つあるんですね。
哲夫:そうですね。計3つ大使をやらせていただいていますというのだけ、付け加えをさせていただきます。
桜井:なるほど。僕、この大使の仕事に関してどういうことをしているのかなという興味もありまして。
哲夫:あぁ、特に活動してないです。
桜井:いやいや(笑)。行事ごとに参加したりとか、何かないんですか。
哲夫:国立博物館やったら、ちょっと大々的な展示会をする時には一応呼んでいただいたり、一応マスコミの方も来ていただくので宣伝したり。あと桜井市は地元なんですけど、そこの広報大使は、広報なのでテレビとかで積極的に地元のことをしゃべったりします。
桜井:アピールして。そしてなんといっても気になるのが「寺子屋こやや」。
哲夫:ありがとうございます。宣伝していただいて。
桜井:僕もテレビで特集されていたのを拝見したんですけれども、本当に画期的といいますか。
哲夫:いやいや、ずっと黙っていたんですけどね。
桜井:あ、黙っていたんですか?
哲夫:ずっと黙っていたんですよ。でも、どんなことをしているか密着で知りたいとなって。もうばれてもええかなと。
桜井:......ということは、吉本にも特に言わずに。
哲夫:そうです。仲ええマネージャーにしか言うてへん感じやったんですよ。
桜井:マネージャーにだけはお伝えして。
哲夫:吉本も教育系のことをいろいろやったりするじゃないですか。僕がこんなことやってるって大々的にばれたら、タッグ組んでやろうやって言われそうじゃないですか。
結局吉本はお金儲け第一主義でやってくれてはる。僕もそれはすごく大好きな思想なんですけど、僕の考えてる軸と、低料金という形態と、このお金儲けを融合してしまうと、ちょっと僕の考えと違うようになったらあかんなと思って、「たぶんいちいち言わんほうがええかな」と思ってたんです。
今こうやってばれてしもてね、ちょいちょい取材もあるんです。でもばれたとて、吉本さんは「もっと月謝上げてタッグ組もう」とかもぜんぜん言ってきはらへん。やっぱり僕は吉本興業大好きだなと思いました。
桜井:なるほど。しかも芸人の後輩も、講師として働いているんですよね。
哲夫:すごくWin-Winの関係を作ってますね。まだ売れる手前の芸人たちは、アルバイトをしないといけない。塾講師やから、ある程度の時給を渡せるわけなんです。まあ低料金なんでそこまで高い時給ではないですが。でも子どもたちにものを教えるのって、相当な話術が必要なんですよね。
桜井:そうですよね。
哲夫:そこで話術の鍛錬になる。子どもたちからしたら、やっぱり堅苦しく教えてもらうよりも、笑かしながら教えてくれる先生のほうが理解しやすい。
桜井:絶対そうですね。
哲夫:子どもにとってもいいし、先生にとってもいい。だからWin-Winの関係性になると、いい感じに思いつけたんですよ。
桜井:画期的ですよね。東京とか、全国を見ても(芸人が教える学習塾って)たぶんまれだと思うので。
哲夫:めっちゃ安いし。バイトで先生をやってくれてた子には、今芸人の仕事をばんばん持って、もうバイトの先生に入れなくなったような子もいてくれますし。
桜井:すごいですね。芸人も救済するし、お金が(なくて塾に通えない子)たちも救済する。
哲夫:そんな救済ということやないんですけれども、単なる塾はもうあふれるほどあるじゃないですか。そういうところは、受験受験みたいな感じだと思うんですけど、うちは学校の授業をメインとして考えてるんですよ。学校の勉強をサポートする施設があったらええのになというので。
桜井:そういう思想とか......思想といったらちょっと堅苦しいかもしれないですけど、プロフィールの中にあったように、幼い頃から仏教について興味があったんですよね。
哲夫:変態ですよね。
桜井:(笑)。
哲夫:この寺子屋をやっているのも、ちっちゃい時に近所でおばあちゃんが安うでおもろいの教えてくれるような感じで。ほんまに数千円ぐらいで教えてくれるんですよね。月数千円で週2回ぐらい行って、休憩時間にはお菓子出してくれはって、すごくいい思い出なんですね。
頭の中でそれが言い表せないんですよね。今はご近所さん付き合いが希薄になってるところも多くなってますけれども、そういうのを僕はずっと継承していきたいなって。「古き良きもの」がすごく好きなんですよね。
桜井:その中で並行して、お笑い芸人として漫才ツアーをやられたりしているじゃないですか。今お休みは一切ないんじゃないですか。
哲夫:移動中は休みやと思ってます。「1日」って考えるから変な感覚になるんです。僕は自信を持っているんですけれども、自分は「秒単位」で生きてるんですよね。秒単位で生きていたら、何時から何時までは休みやしって思えるんです。
桜井:丸1日休もうとかじゃなくて、こっからこの時間ちょっとでいいから休むか、みたいな。
哲夫:マネージャーにも「休みいらんで」って言ってます。休みの日はいらん、とりあえず仕事をしたい。実家が農家なんで農業もやっているんですけど、吉本の仕事がないタイミングで、お日さん出てる間は実家に帰ってパパパッと農業してみたいな。
桜井:農業に関して質問をしたくて、それを聞いて「いや本当にスケジュール管理どうなってんねや」と思って。
哲夫:そう、めっちゃうまいんですよ。スケジュール管理。たぶん日本一うまいんちゃうかなと思います。
桜井:(笑)。今日の「働くこと」というテーマはぴったりだと思うので、みなさんの質問にお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
哲夫:お願いします。
桜井:あらためて哲夫さん、今回は「カリスマキャリア相談室」ということで、働くに関するお悩み相談会になります。哲夫さんのキャリアと言えば、今おっしゃっていただいたように、もう何足ものわらじを履いていらっしゃる。
哲夫:何足もわらじを履いて、最近わらじも編めるようになったんですよ。
桜井:えぇー、本当のわらじも?
哲夫:ほんまのわらじに手出しちゃったんですよ。
桜井:職人さんに弟子入り的な?
哲夫:いえ、うちのじいちゃんがしめ縄作りの名手なんでね。じいちゃんにしめ縄を教えてもらって、自分で米も作るからわらがぎょうさん出るんですよね。そのわらで他ないかなと思って、「せやせや、俺わらじ履きまくってるからわらじ編んでみよう」と思ってやったら、できちゃったんです。
桜井:すごいな。やったらできちゃった。
哲夫:YouTubeとかで作り方の動画をあげてる人がいて、それぱーっと見て、こんなんすんねんなと思ってやったらできました。
桜井:それは販売されているんですか。
哲夫:いや、そんなんしてないですね。遊びでやっただけです。
桜井:すごいな。さっきも言ったように、仕事の休みはいらんと言いながらも、その隙間隙間で自分の好きなこともやり続ける。
哲夫:そうなんですよ。僕はメディアに出る仕事をしてるじゃないですか。何足もわらじを履いていると、その仕事一つひとつが全部つながるんですよね。全部つながって、何も無駄なことないなと。
桜井:絶対につながっていくと思うので、そこも今日の哲夫さんのお話で感じとっていただければと思います。
哲夫:お願いします。
桜井:こういう「働く」に関するトークテーマで講演会を設けたことはありますか。
哲夫:仏教の講演会で仏教講座をやらせてもうたりはあるんですけど。でも「学校に来て」という依頼をいただいて、今後就職や進学するにあたっての話をしゃべったりすることはあります。学生さん向けぐらいかな。
桜井:なるほど。今回は学生の方はもちろん、転職を考えてらっしゃる方もいらっしゃいます。後ほど相談もあるんですけれども、30歳40歳超えてという方でも、やっぱり悩んでいる方はたくさんいらっしゃると思うんです。もしかしたら哲夫さんと同い年ぐらいやけど、ちょっと転職を考えているんですなんていうこともあると思うので。そういった方の質問にもお答えいただければと思います。
哲夫:何の役にも立たないと思いますけど。
桜井:いやいや、時間の作り方とかバイタリティとか、絶対に参考になる部分はあると思います。ぜひよろしくお願いいたします。
今日は働くにまつわるさまざまなモヤモヤを抱えていらっしゃるみなさまから、本当にたくさんの質問を頂戴しました。その中からピックアップしまして、哲夫さんにどんどんぶつけていこうと思います。
また、直接相談したいという希望者についてもたくさんのエントリーいただきました。本当にありがとうございます。今回はその中から2名の方にご登壇いただきます。
桜井:イベントテーマにちなみまして、プライベートでも哲夫さんは「人から相談される」ことはよくありますか。
哲夫:わりと聞いてきてくれる人はいます。
桜井:やっぱり芸人の後輩が多いですか。
哲夫:基本そうです。
桜井:「どうやったら売れますか」とか、そういう漠然とした悩みですか? それとも「どうしたら賞レース、M-1に勝てますか」みたいな……。
哲夫:一番多いのは「お金貸してくれませんか」。
桜井:(笑)。本当ですか?
哲夫:あります。僕、消費者金融が好きじゃないんですよね。消費者金融で借りてる後輩がいたら、「先にこれで返して」言うて。
桜井:哲夫さんが貸して、先に消費者金融をクリアにしてくれと。
哲夫:そうです。先にこれで返して、俺に月なんぼで返して、みたいな。
桜井:これは頼れるお兄さんや。
哲夫:でもこれをやるとね、それで返してくれた子は必ず売れるんですよね。そんなジンクスあるんですよ。
桜井:やっぱりお兄さんに借りたっていう……。消費者金融で顔が見えなかったりする部分が、哲夫さんに借りることで、このお金を返さねばという......。
哲夫:その意識が高くなるのもあるかもわかんないですけどね。
桜井:きっとそうです。しかも「芸事で返したい」と思って、みなさん売れていくんやと思います。
哲夫:まぁ、それが理想ですよね。
桜井:そうやって相談されることもたくさんあると思うんですけれども、逆に哲夫さんが悩みにぶつかった時に、相談する方っていらっしゃるんですか。
哲夫:いてますよ。
桜井:例えば?
哲夫:やっぱりご先祖さんであったりとかね。
桜井:おぉー、なるほど。先輩芸人さんとかは?
哲夫:もちろんいてはります。
桜井:そういう方もちゃんといる上で、ご先祖さまにも相談して。
哲夫:そうですね。ご先祖さんに訪ねたりしますね。
桜井:僕もスピリチュアルな部分とかもすごく気になっていて......。
哲夫:でも、霊感とかないです。幽霊怖いんでね。見たことないですけど。
桜井:(笑)、そこはまたぜんぜん別物ですもんね。
哲夫:そういうことばっかり言う人は「ほんまか?」と思っているので。
桜井:でもご先祖さまは大切にしているんですね。
哲夫:ご先祖さまは大好きですね。自分がここに今いるのは、ご先祖さまのおかげですから。血のつながったご先祖さまも大事ですし、もう遠い縁でおそらくつながってるだろうというご先祖さまも好きです。今の日本をずっと継承してくださったご先祖さまみなさんに感謝ですね。
桜井:基本的に哲夫さんは「感謝の気持ち」を忘れずに生きてる感じですよね。
哲夫:仏教をある程度知ると、少なからず「感謝」は生まれてきますね。
桜井:その部分が足りてないと、ちょっとギスギスしてしまったり、人に対して辛くあたってしまったりすると思うんです。優しさを持って、感謝の気持ち(を忘れないことが大切)ですよね。
哲夫:そうですね。「釈迦三尊」といって、お釈迦さんが真ん中にいて、(両脇にいろんな仏さまがいる)フォーメーションあるんですけれども。よくあるのが普賢菩薩さんと文殊菩薩さんですね。
普賢菩薩さんは慈悲の象徴で、「優しさ」なんですよね。文殊菩薩さんは知恵の象徴なんです。だから(お釈迦さんを)慈悲と知恵でサポートしてはるんですけれども、そのお釈迦さんは、慈悲も知恵も完璧に兼ね備えてるような雰囲気なんですよね。
基本的に文殊菩薩さんは、ライオンのような獅子に乗ってるんです。普賢菩薩さんは象に乗ってるんです。象は古代インドで昔からモンスターとされてる恐ろしい動物なわけですよ。それを知恵と慈悲の力によって押さえ込んでる姿なんですね。モンスターが言うことを聞いているんです。
だから原子力というモンスターをなんとか人間の知恵と慈悲で抑え込もうという願いを込めてつけられたのが、高速増殖炉の「もんじゅ」と「ふげん」という名前です。この話はいつも(聞いてもらっている人に)「へぇ~」ってなってもらうやつです。
桜井:今すごくなってます!
哲夫:だから仏教のことをいろいろ調べていたら、そういう「へぇ~」の話がいっぱいあるんです。僕、「へぇ〜」って言わすのめっちゃ好きなんで。
桜井:なるほど。
哲夫:そういう話をする先生には「こういう人の話、もっと聞きたい」ってなったじゃないですか。だから余談が上手で「へぇ~」って言わすのが上手な先生に憧れがあったんですよね。
桜井:日本史とか世界史とかって、自分とは直接関係ないことだったりしますよね。それを習う時にユニークな話で「あ、そうなんや」ってなるような雑学チックな話をしてくれる先生って、今でもずっと印象に残ってますもんね。
哲夫:そうですよね。知恵と慈悲はすごく大事やなと思っていて、2つ揃えると、わりと上手に子育てと、いろいろ育んでいけるんじゃないかなという感覚ですね。
桜井:もしかしたら今日のトークでそういう部分も垣間見えるかもしれません。みなさんぜひお聴き逃しないようによろしくお願いいたします。
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