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アイシャ レバイン氏「主体性、自己肯定感、考える力を育くむ 世界基準の子育て」(全5記事)

親のアイデンティティ優先は、「ワガママ」ではない ユダヤ人の子どもが勉強好きになるワケ

「親も学ぶ」を理念に 子育てや教育に関する様々な講演会を開催し、動画で配信する「花まる子育てカレッジ」に、子育てメソッド本『親から始まる「正解のない時代」を生き抜く世界基準の子育て』を出版したアイシャ・レバイン氏が登壇。家族の日常を通して英会話が学べるYouTubeチャンネル「バイリンガルベイビー英会話」の登録者数が36万人を超えるアイシャ氏が、映画や音楽を通じた世界の見せ方や、「クリティカルシンキング」が身につく質問などを語りました。 ▶イベントを主催した「花まる子育てカレッジ」のYouTubeチャンネルはコチラ

学校の授業や習い事だけでは、自分の「意見」につながらない

アイシャ・レバイン氏:次のステップ2は、子どもについてです。子どもも、自分で考えられるようになるためにはいろんな情報が必要です。例えば、6歳の小学校1年生の子どもの1日を考えてみてください。朝起きます。ご飯を食べます。お友だちと一緒に歩いて学校に行きます。学校で勉強して、帰ってきて、ちょっと宿題をする。漫画を読んで、遊んで、食べて、寝ます。これの繰り返しです。

大人と違って、子どもは行動の合間に情報に触れることがないんですよね。文字もそんなに読めないし、スマホももちろん触らせてもらえない。だから、子どもの1日はこんな感じなんです。確かに学校にいる間は、特に日本ではレベルの高い知識を得ていると思います。習い事でも同様です。でも、知識だけでは意見につながらないんですよね。それでは結局、インプットだけで終わってしまうから。

だから、親が家でできることとしては、世界のいろんな情報に触れさせることです。例えば「ニュース」「音楽」「映画」を用いてインプットができます。

今はこの3つだけを挙げましたが、オンラインコミュニティの中を見ていただくと、日本人の方はいろいろなインプットの考え方、やり方を持っているのがわかると思います。

映画や音楽を通じた世界の見せ方

映画の話をしますね。2年ぐらい前に子どもと一緒に『ボヘミアン・ラプソディ』を観ました。うちは0歳からムービーナイトをやっているので、子どもも大人の映画を観ることができるんです。「この映画は子どもが鑑賞するには不適切だな」と思ったらやめればいいんですね。このように子どもの好みに合わせて、アニメだけでなく、いろんな映画を観せてもいいと思います。

『ボヘミアン・ラプソディ』ですが、主人公がゲイですよね。映画を観る前は、そういった方が周りにいないし、「男・女じゃなくてもいい」という発想がなかったのですが、観た後は「なるほど。いろんな生き方があるな」と思いました。それからロックですね。ロックの中にもいろんなジャンルがあります。それも1つのインプットです。

子どもは学校ではそんな話をしないですよね。友だちとはポケモンの話をして、授業では歴史や科学の話をすると思います。だから家では「ロックにもいろんなジャンルがあるんだよ」「彼らは『ボヘミアン・ラプソディ』という曲で、1曲の中にいろんなジャンルを混ぜたんだ。そういうことを初めてやったのが彼らなんだよ」という話をするのもいいと思います。

またビジネスの話として「プロデューサーが一番お金を出すんだ」「でもプロデューサーの心を動かさないと、レコードが出しにくいんだよ」といったこともインプットになります。うちの場合は、映画を観ながら一時停止して説明をします。わからない時は、アレックスからも「ちょっと止めて」と言います。でも、これは0歳からやっているからですね。途中から始める場合は、アニメやキッズムービーでもいいと思います。

この間は、レバインエデュケーションという子育てコミュニティで、『フリー・ウィリー』という昔の映画を観ました。みなさんは、子どもの個性や好みに合わせて映画を選べばいいと思います。映画を観ながら子どもにいろんなことを教えられます。

それから音楽ですね。私はよくビートルズの例を出します。なぜビートルズかというと、いろんなジャンルの曲があるからです。彼らは何度も、自分の考えや思い、フィーリングを変えて、その度に新しい音楽を出しました。「音楽ってやっぱり、人の心の中にあることのイメージだよね」とか、感じたことを話します。

誰でも、家でこういう会話ができて、それはインプットですよね。学校のインプットとはぜんぜん違います。そこに気づいていただきたいと思います。

子どもにいきなり「意見」を求めてはダメな理由

そして最後のステップ3です。これに入る前に、ステップ1と2を半年ぐらいはやってほしいんですね。ほとんどの日本人はステップ3からやってしまって失敗するんです。ステップ1で、親が常に見本となって、世界に興味を持ち、意識して行動します。親が自分の行動について「おかしいな」と思ったら変える。親が積極的に、そういう生き方をしていることを、子どもに示すんですね。

それと併せてステップ2として、世界のいろんな情報のインプットをする。「こういう国があるんだよね」「こういうジャンルの音楽があるんだ」「昔、こういう人がいたんだよ」「こういう考え方もあるんだよね」など映画や音楽、ニュースや絵本を用いて、インプットの数を増やし、新しい世界を少しずつ広げていけばいいと思います。

そして、ステップ3はアウトプットです。ステップ1とステップ2を6ヶ月~1年ぐらい回して初めて、「じゃああなたはどう思う?」と聞けるんですね。なぜ、いきなり「どう思うか」と聞けないかと言うとですね。会社やバイト先に入ったばかりだとイメージしてみてください。

会社に入って1週間以内に「あなたは〇〇局についてどう思う?」と聞かれたら「いやいや、入ったばかりでわからないよ」となりますよね。でも半年後なら、いろいろ会社を見てきて、学びもあって、いろんな人の意見を聞いているからインプットがあります。だから「確かにあの局はいらないかもしれないね」という考え方が自然に出てきますよね。

それは、いろんなインプットがあって、いろんな人の意見を聞いたからです。ステップ1とステップ2ですね。だから、いきなり子どもに「ウクライナについてどう思う?」と聞いても、それは当然わからない。でもウクライナについて話し慣れている人だったら、意見が自然に出てきますよね。こちらが聞かなくても「僕はこう思うんだよ」と口をついて出てくる。

いきなり「どう思う?」では、必ずつまずきます。よくDMで「子どもに意見を聞いたけどうまくいかなかった」といただきます。それで「どれぐらいステップ1とステップ2を回しましたか?」と聞くと「あんまりそこはできていません」と言うんですね。

それはちょっとずるい。子どもがかわいそうですね。子どもはまだ5年間しか生きていないので、何も知りません。私たちは35年間も生きているんだから、インプットの量がちがいます。子どもの意見を形成するためには、もう少し情報を与えましょう。

前提を疑う「クリティカルシンキング」が身につく質問

アウトプットのやり方ですが、とりあえず「どう思う?」と聞くことです。意見を求める。ちょっとした会話の中でも意見を求めていくんですが、その方法はいろいろあります。まず「正解のない質問をしてみる」ことですね。「1+1=2」ではなくて、「ウクライナはどこにある?」ではなくて、「ウクライナで起きていることについて、どう思う?」と聞くことですね。正解があるものとは、また違う次元の質問ですね。

ちなみに日本の試験の文化、教育の文化は、正解があることについては非常に強いです。もちろん、それを否定してはいけないし、それを減らしてはいけません。PISAの総合順位は世界で4位ですよね。そこは絶対キープしましょう。そこにさらに加えるということですね。正解があるものだけでなく、正解がない問いかけについて、考えることに慣れてもらうんです。

それから家族で議論すること。動画を見ているとわかると思いますが、私たちは食卓でも議論しているんですね。それは「マナー違反ですよ」とよく言われるんですが、それでも私は考えました。マナー違反かもしれないけど、私たち夫婦は共働きだし、本当に深く話ができるのは食事の時間しかないんです。タカとも話して、「食卓はマナー優先ではなく、意見交換優先」という場にしたんです。

でも、マナー違反という意見を無視したわけではないんです。確かにおっしゃるとおりなので私も考えましたが、マナーはいったん置いておいて別のところで学ぶとして、食卓で議論をすることを選んだんですね。特にニュースを見ながら食事をすれば、「私はこう思う」などの議論のきっかけになりますよね。

また、想像力が試される質問をし合うこともあります。例えば「もし空がピンクだったらどう思う?」とか。「どこからそんな質問が出てきたの?」ということもありますね(笑)。アメリカやイギリスの学校は、こういうところが非常に強いですね。ものごとや状況を見て、自分で判断して考えること。

このプロセスをクリティカルシンキングと言いますが、アメリカの教育はこれにすごく力を入れています。だから自己肯定感100パーセントとかなんですね(笑)。その代わり、世界的な試験では非常にランキングが低い。だから、日本式とアメリカ式のハイブリッドが理想ですよね。どちらかではなくて、両方取り入れること。

親のアイデンティティ優先は、「ワガママ」ではない

この3つのステップを常にくるくる回しながらやっていくイメージです。

ステップ1は毎日できますよね。親も「人に対してエンパシーを持つ」「思いやりを大切にする」「ゴシップや悪口は言わない」「困っている人を助ける」といったことを大切にする。

周りがどうであれ、自分がやりたいことをやる。もしくは、親としてだけではなく、人間として自分のアイデンティティを大切に、目標を持つ。例えば「やっぱり英語が大好きだから、もう少し勉強してみよう」「オンラインコミュニティに入ってみよう」とか。

ステップ1として、毎日こういうことをしても罪悪感を持つ必要はないんですよ。自分をケアすることは、ワガママなことではありません。子どもはそれを見て「社会だけでなく、自分も大事にしないといけない」「自分がどういう人であるかが大事なんだ」と感じます。これが自己肯定感のベースになるので、親はその見本になることです。

そしてステップ2は、子どもに世界のことを、楽しく自然に教えること。ステップ3は、子どもに「これについてどう思う?」と意見を求める。これを常に回していきます。

それから「レバインメソッド」という名前について。私の名前はアイシャ・レバインですが、実はこの子育て方法は父が私にしてくれたものなんですね。父はユダヤ系アメリカ人ですが、どちらかと言うと、基本的にはユダヤ系の子育てです。ユダヤ人は旧約聖書をすごく大事にします。そこに書いてあること、それが自分の人生にどういう影響があるかを勉強するために、大人になってからも土曜日の学校に行くんです。

学ぶこと、教育へのリスペクトが親の芯にあるから、子どももそれを真似するんですね。世界に興味をもつ。世界を助けたいと思う。いろいろなことがやりたくなる。また、ユダヤ人の家に行けばわかるのですが、家族での会話がすごく多いんですね。タカも「ついていけない」みたいな感じで(笑)。

だから、レバインメソッドは父がやってくれたユダヤ系のメソッド、そして国際バカロレアや名門校、国際教育のカリキュラムの要素、かつ日本のアイデンティティが混ざった考え方ですね。日本のアイデンティティも否定していません。それをキープしたまま、プラスアルファとして加えていくイメージです。

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