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悔いのない30代を過ごすためのキャリアの考え方(全4記事)

伸びる学生・伸びない学生の違いは「言い訳ワード」に現れる 法政大学・田中研之輔氏が指摘する、思考のバイアス

個人が主体的にキャリアを開発するためには、20〜30代をどう過ごせばいいのか? この問いに答えるため、ポジウィル株式会社主催のイベント「悔いのない30代を過ごすためのキャリアの考え方」が開かれました。ゲストは、株式会社サイバーエージェントCHOの曽山哲人氏と法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授。本記事では、曽山氏が20代のうちにやってよかった2つのことや、正解を求める日本の教育の弊害などが語られています。

「でも」という言葉を使わない人生にするためのキャリアを考える

齋藤あい氏(以下、齋藤):みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます。「悔いのない30代を過ごすためのキャリアの考え方」をテーマに、曽山さん、タナケン先生、金井さんにご登壇いただき1時間クロストークを展開したいと思います。よろしくお願いします。

曽山哲人氏(以下、曽山):お願いします。

金井芽衣氏(以下、金井):よろしくお願いします。

田中研之輔氏(以下、田中):お願いします。「キャリアを考える」、いいですね。

齋藤:では、登壇者の方の紹介をした後に、さっそく本日のアジェンダ「5つの質問で考える『悔いのない30代を過ごすためのキャリアの考え方』」を対談形式で行っていきます。ご質問やご意見、お待ちしております。まず曽山さんから自己紹介をいただいてもよろしいですか。

曽山:みなさんこんにちは。サイバーエージェントで人事責任者をしている曽山といいます。一番みなさんにお話ししたいのは、私は「ソヤマン」としてYouTubeをやっておりまして、ここ1年ほどでチャンネル登録者が1万2,000人になりました。キャリアアップに関するものをたくさん発信していますので、ぜひみなさんも観ていただければと思います。

齋藤:ではタナケン先生、お願いします。

田中:私は一言だけ。今日の時間で、「でも」という言葉を使わない人生をみんなと創っていきたいなと思っています。

曽山:なるほどね。「でも」じゃない。

田中:30代になったら絶対「でも」を使わない。私もかれこれ、「でも」を使っていません。よろしくお願いします。

曽山:すごい。

金井:カッコいい。

齋藤:カッコいい。ありがとうございます。では、金井さん、お願いします。

金井:POSIWILL CAREERを運営している金井と申します。私は今年32歳になりますが、年々「人生楽しいな」と思っています。なので、「年を取るのが怖くない」という方を増やしたく、そのあたりをお話しできればなと思っています。よろしくお願いします。

曽山哲人氏が、20代のうちにやってよかった2つのこと

齋藤:ではさっそく本題に入っていきます。最初に、「30代までにやっていて良かったこと・やっておけば良かったこと」について、これまでの経験ベースでみなさんにお話しいただきたいと思います。

曽山:私は、20代の時に伊勢丹に1年間おりまして、社会人2年目からサイバーエージェントに転職し、30歳まで広告の法人営業をやっていました。やって良かったことは大きく2つあります。1つは、広告の法人営業を6年間やっていた時のことで、「与えられた役割を全力でやる」ですね。キャリアを築く中で迷いは生じやすいと思うのですが、「とりあえずやろう」と自分の中で決めたことは良かったです。

もう1つすごく大事にしていたのは、「周りの人を大切にする」ということです。たとえば自分が営業だとして、スタッフサイドの人に「すみません、これお願いしてもいいですか? お忙しい中ありがとうございます」などと一声かけたり、何かメールをもらった時には一言お礼を添えることを大事にしていました。この2つをやっておいて良かったなと思います。

「やっておけば良かったな」ということは、「意思表明」です。「もっとやりたい」と思っていたことが振り返れば本当はあったので、もっと言っておけば良かったなと。例えば、事業をやりたいとか、サービスを作りたいとか。意思表明すれば、ダメならダメなりにそう言ってもらえたでしょうし。プライドが高かったんだと思います。

齋藤:ありがとうございます。

周囲からの「うまくいくわけない」に挑戦し続けた金井芽衣氏

田中:素晴らしいですね。金井さん、お願いします。

金井:そうですね。私も、やって良かったことは2つあります。1つ目は、人が「無理なんじゃないか」と言うことに、あえてチャレンジできたことです。私は、基本的に「芽衣がうまくいくわけない」と言われるタイプだったんですよ。

田中:ええ? 周りから?

金井:ずっとそうですね。

田中:それは周りがひどいね。

(一同笑)

金井:昔からちょっと背伸びした環境に行きがちなんです。なので、わりとビリから始まることが多くて。短大から大学に編入する時もそうでした。その時も、高校の友だちは「あれだけ勉強しなかったんだから受かるわけない」という感じで。大学時代も「リクルートに受かるわけないだろ」とやっぱり言われていましたし。起業してからも、同じでしたね。

なんというか、「みんなが想定し得る結果になることって、あんまり楽しくないな」と私は思うんです。なので、「よくそんなことができたね」ということを、あえてやっていきました。これが20代でできて良かった部分かなと思います。

あとは、私は自分で決めたことには強い信念を持つタイプなんですが、ちゃんと周りの人の意見を聞くことも意識していたと思っています。これが2つ目ですね。先ほど曽山さんがおっしゃったことに通じると思うんですが、リクルートにもたくさん派遣社員の方がいらっしゃって、その方々に対する態度は本当に人によって違うんですね。私は、毎月自分の担当の方には、おいしいご飯をごちそうすることに決めていまして。

曽山:素晴らしい。

金井:「ありがとうランチ」みたいにやっていました。それから、あえてしんどいことを言ってくれる人に感謝すること。これはずっと思っていました。今もそういう方々に助けていただいている部分は、すごく大きいなと思っています。本当に人に恵まれているのは、そういう人との縁を大事にしてきたこともあるのかなと思います。

曽山:素晴らしい。

世間の価値観の洗脳を解くために、週に一度30分の“解毒時間”を持つ

田中:これは良い問いだな。僕も言っていいですか?

曽山:もちろんです。

田中:今、金井さんと曽山さんにヒントを得ながら振り返ると、やっぱり「自分で挑戦できる基礎体力を、20代のうちに培ったほうがいい」と思ったんだよね。

金井さんの話に近いけど、僕も20代の時は「自分は何も持っていない」とずっと思っていて。僕の場合は研究者を目指していたから、国内にいると大学院に行くんだけど、埋もれてるんだよね。「誰とでも一緒じゃん」みたいな。別に英語ができるわけじゃないし、飛びぬけた発明ができるわけでもない。「このままだと何もできねぇな」。でもどこかで「自分らしくやってやろう」というのは20代の時にずっと思っていました。

「やっていて良かったな」ということだと、挑戦はしていたんですよね。何にもない、稼ぎもない、お金もない、借金を800万円くらい抱えて。これはあんまり言うとあれなんだけど(笑)。

曽山:それは大変ですね!

田中:借金を抱えてオーストラリアへ飛んじゃって、「もう帰ってきません」みたいな。それで30代で帰国したので、ちょっと変なキャリアなんだけど。「やっておけば良かったな」ということだと、その時にもう少し、これまでの人生で培ってきた価値観を壊せば良かったなと思って。

どういうことかと言うと、僕は「働くとは1つのことをやり遂げること」という親の価値観に大きな影響を受けていたんです。もっと言うと、それだと1つのことしかできないっていうことだよね。

曽山:なるほど。

田中:つまり、そういう働くことへの価値観によって「研究者になるんだったら研究のことだけだろ」と自分のキャリアを限定していたんです。でも、いろいろな人に会って「ちょっと違うな」と思って。今ちょうど「プロティアン・キャリア」を伝えているんですけど、「新しいチャレンジもできるじゃん」という。

みんな、大人になると1つの役割を背負うよね。でもそうじゃなくて、人的資本を最大化するためには、もっといろんなチャレンジをしたほうがいい。そのことに、30代くらいまでに気づくべきだった。

今日は若手がいるからあえて強い言葉で言うと、週に一度、30分でもいいから「自分は世の中のどんな価値観に洗脳されているか」ということを問い続けたほうがいいよ。自分が「こうだ」と思っていることって、もともとは誰かから伝わって、浸透して、血肉化していることだから。それを解毒することをやったほうがいいと思うね。

曽山:なるほど。

「でも」を使うのをやめると、世界が広がる

田中:ちょっとモードが違いました? このモードで大丈夫(笑)?

曽山:いやいや、いいですよ。振り返りみたいに、自分がどう人から影響を受けているかを言語化するのはけっこう大事ですよね。

田中:「インプットとアウトプットのサイクルなんだよね」と、曽山さんもよくおっしゃるじゃない。

曽山:そうです。

田中:だから「#キャリアを考える」というハッシュタグで、みなさんどんどん解毒のツイートをしたらいいんだよね。

曽山:なるほど、解毒ですね。

田中:日本社会はすごく洗脳されていると思うんですよ。さっきの「でも」という言葉も本当にそうです。僕、ゼミ生や社会人のキャリア相談もけっこうやるんですけど、(みんな)「でも」って言うんだよね。「でも、私はできません」「でも、私はこういう状況だから」と。その「でも」を取っ払ったら、どれだけ世界は広がるか。

金井さんは「でも」って言わなくない? 聞いたことがないんだよね。曽山さんからも聞いたことがない。「でも」って言う?

金井:言うタイミングがないですね。

田中:そうでしょう(笑)。金井さんも採用の仕事をやっていると思うけど、「でも」と言う人は採用しないほうがいいと思うよ。「いや、でも私ダメです」と言う人。「でも」思考の人は、ずっと「でも」だからね。僕も言っちゃいそうになるけど、それではダメなんです。チャレンジしたほうがいい。要は「でも」って言い訳ワードなんだよね。

曽山:そうですね。できる理由を考えるのはすごく大事ですよね。

田中研之輔氏が気づいた、伸びる学生と伸びない学生の違い

金井:確かにそうですね。田中先生がそれだけ「でも」を気にされているのは、何かきっかけがあったんですか?

田中:僕もね、いろいろな登壇をさせてもらうじゃないですか。でも……。今「でも」って言っちゃったね(笑)。

曽山:大丈夫です。会話の中の逆説的な説明としての「でも」は否定はしませんから。

田中:登壇があったり、いろいろな局面で気づくことがあるんです。例えば、僕は大学で学生の本質的な成長を見ているんだけど、その時に伸びる子と伸びない子がいるんですよ。14年間見てきて、その原理は何かというと、「でも」なんだなと気づいたんだよね。

入学後、初対面で「でも、私はまだそういう経験をしたことがないんです」「でも、私は行きたいところがわからないんです」と言う学生がいる。そういう学生は、そのまま変わらない傾向があるんです。だから「それを変えてあげなきゃいけない」というパッションがすごくある。メッセージってすごく大事ですよね? 何のワードがその人のブレーキになっているのか分析すると、やっぱり「でも」なんだよね。

曽山:みんな、「でも」って言っていることに気付いてないんですよね。

田中:そう。

曽山:なので、タナケン先生みたいに「『でも』って言うな」と言ってあげることで本人が気づくことも多いので、伝えてあげるのが良いですね。

田中:そう。自分のキャリアの可能性に、自分でブレーキをかけるのはやめようっていうことなんですよ。それは、本当に自分軸で考えたほうがいいんだよね。「親がこう言っていた」とか「田中はこれぐらいしかできないだろう」というのはやっぱり、本人や周りが持っているバイアスなんだよね。

金井:そうですね。

田中:我々の日常はバイアスとの戦いだよ。だからバイアスを解き放っていくと、曽山さんとか金井さんとか齋藤さんとか僕のように、自由を手に入れた人みたいに、なんとなくハッピー度が上がるんだよね(笑)。

曽山:わかります。

齋藤:私、28歳なんですけども染みまくっています(笑)。

正解を求める日本の教育の弊害

田中:齋藤さんも、「でも」ってあんまり言わないよね。言う時ある?

齋藤:あんまり言わないかもしれません(笑)。

田中:じゃあ齋藤さんに1つ助け舟を出します。一生懸命働いて、1人になってお風呂に入る。その時は「でも」を10回まで言っていいよっていう(笑)。

齋藤:染みます。

田中:別に自分を否定する必要はまったくないので、「でも僕、私はがんばっているんだよ。いいじゃないか」という時間はあってもいいの。ただし、社会に出てビジネスをやっていたり、キャリアを形成している時に、自分にブレーキをかける言葉を、自分で発しているようではもったいないなとすごく思う。そういう人が他国に比べて多い気がするんだよね。

金井:みんないい子だからだと思います。

田中:いい子だから。そうね。守るっていうこと?

曽山:教育が正解主義になっている部分もあるからですね。

金井:そうですね。

曽山:やっぱり「みんなで答えを作ろう」「みんなでやろう」というのは、「正解を探そう」ということですよね。そこに向けて頭を使う教育をされているので、そうなるのもわかります。

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