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岩田拓真 × 川辺洋平「遊び上手」な親が子どもの「探究心」を刺激する!(全5記事)

子の探求心を伸ばす家庭と、萎えさせる家庭の違い 子どもの「おもしろい」を引き出す環境の作り方

『「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」』の著者・岩田拓真氏が、同じく、子どもたちが夢中で学ぶ環境づくりのプロである「おうちピテクス」の川辺洋平氏を迎えて行った本屋B&Bでの刊行記念対談イベント。本記事では、子どもの探求心を伸ばす家庭と、萎えさせる家庭の違いや、「親の顔色をうかがう子ども」になる原因などを語っています。

「遊ぶように学び、生きていく」を当たり前にしたい

岩田拓真氏(以下、岩田):よろしくお願いいたします。

川辺洋平氏(以下、川辺):よろしくお願いします。

岩田:はじめまして。株式会社a.school(エイスクール)の代表を務めています、岩田と申します。今日は私の出版記念イベントで、川辺さんと対談させていただくことになりました。みなさんお越しいただきまして本当にありがとうございます。

さっそくですが、最初に私の自己紹介と本の簡単な紹介をしてから、川辺さんとの対談に入っていきたいと思います。ちょっと画面を共有しながら、お話をさせていただければと思います。

あらためまして、岩田拓真です。子どもたちには「いわたく」と呼んでもらっているので、ぜひみなさんも「いわたく」と覚えて帰ってもらえたらと思います。

今36歳で、エイスクールという教育系の会社の代表をしています。2013年の9月5日に会社を作ったので、もうすぐ8周年(イベント開催時は8月)です。他にも教育系のNPOの理事をしています。

もともと教育系ではなく理系出身で、前職も経営コンサルタントをしていたんですが、ひょんなことから教育の道に進んで、もう8年になってしまいました。

ふだんは読書をしたり、コロナになってからなかなか美術館や博物館には行けてないんですけど、アート作品を観るのが好きだったり、あとは旅行ですね。これもコロナでなかなか行けてないんですけれども。いろんなところを旅するのが好きで、学生時代は東南アジアをバックパックしたりしていました。

あと、もうすぐ3歳になる息子がいます。乗り物が好きで、いろんな種類の車の名前とか、電車のなんとか線みたいなのをひたすら覚えていて。絵本も好きなんですけど、半分以上が乗り物関係みたいな感じで。楽しみながら息子の乗り物探究に付き合っています。

本の紹介に入る前に少しだけ会社の話もできたらと思います。エイスクールという会社は、「学びをもっと自由にする」をミッションとする、教育や学びの活動をやっている会社です。

僕自身が学ぶのが趣味というか生きがいというか、新しいことを知ったり試したりするのがすごく好きでして。僕にとって、学びは遊びみたいなもので、遊ぶように学び、生きていくみたいなことがもっと当たり前になったらいいなと考えています。

子どもの「おもしろい」や「得意」を発見し、伸ばす探究学習塾

岩田:「学び」って、カチッとした勉強のイメージを持たれる方もいらっしゃると思うんですけど。そこをゆるやかにしたり、「こんな新しい学びの世界があるよ」というのを作ったり世の中に提案したりしたいなと思ってやっている会社です。

いくつかメインの事業がありますが、一番コアなのが塾ですね。ただ、いわゆる学習塾、勉強を教わりに行くとか受験のための塾ではなくて、子どもたち一人ひとりが「こういうことおもしろいな」とか、「あっ、自分はこういうことが得意なんだ」みたいなことを発見し伸ばす。そういうちょっと変わった探究学習塾を、東京で3校舎とオンライン校舎も運営しています。さらにもう1校舎を増やす予定もあります。

授業もちょっと特徴的で、「なりきりラボ」という名前の授業で、「仕事」をテーマに学ぶんですね。「こんな仕事があるんだよ」とただ知るだけじゃなく、2ヶ月間、子どもたちが実際に1つの仕事に文字通りなりきって挑戦します。プロが日々現場でやっている難しい仕事のおもしろさやヒリヒリ感を擬似的に体験できるのが特徴です。

そのようにたくさんの仕事を楽しく体験していく中で、いろんな学びが起こります。科目につながるところもあるし、そうじゃないところもある。そんな変わった授業を自分たちで作ってやっています。

知識を得るというインプットだけじゃなく、それを使うおもしろさみたいな、アウトプットを重視していて。プロジェクト学習ならぬ「プロジェクト遊び」みたいな感じで、2ヶ月間のプロジェクト形式で学んでいます。

例えば、エンジニアになりきるプログラムだと、子どもたちは2ヶ月かけて電気の仕組みや電子工作を学んで、電気を使ったおもちゃみたいなものを自由に作ったりとか。

ゲームデザイナーだったら、ふだんは遊んでいるゲームを、遊ぶだけじゃなくて自分たちで作ってみる。それでみんなで遊んでみて、ゲームの企画の裏側を学んでいくとか。

建築家だと、どんな建物があったらいいだろうかと考えて、図面を描いて、実際に建築模型を作ってみる。平面図とか立面図とか、算数的な知識・スキルをいかすので、「おしごと算数」という算数の授業の中でやるんですけど。

あとは、起業家の授業とかですね。実際に自分が売ってみたいものを売る授業。(写真の)左の子は、家に使わなくなったおもちゃが溜まっていたので、行商のようにスーツケースに入れて、いろんなところで売り歩いていたんですけど。

右側の子はアクセサリーが好きなので、百均でいろんなかわいいものを買ってきて、自分で加工して作品として売る商売に挑戦してみたり。

仕入れから販売まで、子どもがふだん親と行くお店の裏側を知れるゲーム

岩田:実際に商売にチャレンジするだけじゃなく、経理とか後ろのお金の仕組みを、擬似的なゲームを通じて学ぶ授業もあります。仕入れから販売まで、売上・費用・利益とかいろんなところで算数や計算が出てくる。

そういうビジネスや商売の基本的な流れみたいなものを、ゲームを通じて学んでいます。「あっ、ふだん行っているお店って裏側はこうなっているんだ」みたいに。

長く通ってくださっている方だと、「好きなことが見つかった」「学校や家での様子が変わって、学校で手を挙げたり、自分の意見を言うようになった」「自分の頭で考えるようになった」と言ってくださる方が多いですね。みんなが楽しく通ってくれているので、うれしいなと思いながらやっています。

あとは、この授業を、自分たちの校舎だけじゃなく、全国に広げたいと思っていて。ただ、我々のような小さな会社だと、全国に校舎を作るのはなかなかできない。なので、地域のおもしろい学び舎さんをパートナーにして、先ほどの「なりきりラボ」や「おしごと算数」のプログラムをお渡しして運営していただくかたちで、ちょっとずつ全国各地に広げています。

また、新しい学びを創り出すのが好きなので、ここに書かせていただいた教育系の企業さん(リクルート、河合塾、明光義塾 等)以外にも、いろんな企業さんから、最近は街作りとか学びの施設作りとか、そういった文脈でも声をかけていただくようになっています。意外と、塾のお仕事だけじゃなく、半分ぐらいはこういう企画系のお仕事もさせていただいています。

子どもの探求心を伸ばす家庭と、萎えさせる家庭の違い

岩田:そんな中で今回、『「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」』というかわいい感じの本を出させていただくことになったんですけれども。なんでこの本を出そうと思ったかというと、理由の1つは、おうちに探究の文化があることがすごく大事だと思うようになったことです。

お父さんやお母さん自身が日々学びを実践されてたり、子どもたちがどんどん好きなことをやって深めていくのをおもしろがったり、家庭で一緒に盛り上がったりしている。そういう文化があるご家庭と、そうじゃないご家庭がある。

例えばエイスクールに来て、おもしろいと思って火がついて帰っても、その火がどんどん燃え上がってエイスクールに戻ってくる子もいれば、ご家庭に帰っちゃうと「遊んでないで、もっと勉強しなさい」みたいなことを言われる子もいたり。

そういう事例をたくさん見てきて、塾という外の学び場だからできることもありますけど、おうちが探究の場であることがすごく大事だなと思うようになって。ご家庭でできることをもっと伝えていけたらなと思ったのが、すごく大きいです。

また、ご家庭で大事なこととエイスクールで大事にしていることって、根本はたぶんあんまり変わらなくて。立場が違うので、細かい部分で変わることは色々あると思うんですけど、声のかけ方とか学びの楽しみ方とか、親やサポートする側の姿勢は共通だなって思っていて。それでこういう本を書かせていただきました。

あとは、「探究」を知らないご家庭にも届けたいなと思って、教育とか学びに関心が強くない方でも手に取りやすいよう、タイトルやイラストの感じをかわいくしたりして。今まで僕たちが出会ったことのない方に届いたらいいなと思って作った本です。

親が役に立たないと思っても、後々学びに効いてくる遊びがたくさんある

岩田:詳しくはぜひ、お手にとって、読んでいただいたらうれしいなと思うんですけれども。どんなことが書いてあるかを簡単にご紹介すると、私自身も自分の人生を通じて実感していますが「遊びが学びなんだ」ということですね。

親や先生のなかには、子どもたちに「将来役に立つことを学んでほしい、勉強してほしい」という思いってあると思うんですよね。大人には誰しも、そういう目線で子どもたちを見る部分が多少はあって、それが強い保護者の方もいらっしゃると思います。

一方で、子どもたちは将来役に立つかどうかなんて、あんまり考えてなくて。おもしろいかどうか、ワクワクするかどうか、やってみたいかどうかのほうが大きいと思うんですね。それが一番強く出るのが遊びかなと思うんですけど。

この2つが重なることだと、親も「あ、いいね」って思うし、子どもたちも楽しいしで、いいと思うんです。親子で勉強に関してぶつかる場合は、この2つのぶつかり合いが多くて。

お父さんとしては「こういうことが大事だからやったほうがいい」と思っているんだけど、子どもは違うことにワクワクしたり、夢中になっていて、「どうしようか」みたいなことってけっこう多いと思うんですよ。

それを少し離れたところから見ている僕たちが思うのは、大人が今「ただの遊び」「役に立たない」と思っていることでも、意外と後々学びに効いてくることがたくさんあるなと。あとは何かにハマるという経験が増えていくと、意外と子どもたちも、もともとはおもしろくないと思っていたようなことにも、だんだんおもしろみを感じられるようになったりするんです。

「遊んでばっかりいないで」みたいに無理やりつまらない勉強をやらせるよりは、主体的に遊ぶことを応援しながら、だんだん「こういうところにつながるよ」と新しい場所に連れていったり、興味を広げてあげる。そういうサポートができたほうがいいんじゃないかなと思っていて。

「親の顔色をうかがう子ども」になる原因

岩田:とはいえ、「じゃあどうやったらいいの?」というところが難しいと思うので、そういうことに慣れてない方でもやりやすい学びに繋がる遊び(ゲーム)のアイデアを30個載せました。そこがメインの本です。

1章では、「勉強しなさい!は逆効果」ということで、遊びと学びのつながりを書かせていただいて、2章では「学びのゲーム」をたくさん載せています。

いくつかご紹介すると、レポーターのように食べ物を食べた時の感覚を表現してみて、誰の表現がおもしろいとか、うまく言い表せているかみたいなことを対話し合ったりとか。

お買い物の中で、お母さんが今カゴに入れているものを足していくと幾らになるかを予想して、ぴったり近づけるかどうかみたいな、算数につながるようなことをやったりとか。

買ってきたものの産地を日本地図にマッピングして、「意外と自分たちが買ってるものってこういうところに多いんだ」みたいな気づきを楽しんだり。

目玉焼きをつくる時などに火加減や条件をちょっと変えて、料理を実験的に楽しむような遊びとか。日常的なお買い物や食事のなかでも、こんなことができたりします。

これらをそのままやってもいいですし、「こういうかたちだったらおうちでできそうかな。楽しめそうかな」と自分たちでアレンジしてもいいので、「入り口としてこういうのはいかがですか?」というのをいろいろ書かせていただきました。

3章には、こういうゲームをやりながら、親がお子さんの探究心を伸ばしていくためにできることを書いています。

細かい、ちょっとしたノウハウみたいなのもあるんですけれども、大きく言うと、親子が上下で管理する関係だとすごく探究する姿勢が伸びにくいというのがメインです。上下関係が強いと、お子さんは「親は何をしてほしいと思っているんだろうか」とか、「何が正しいんだろうか」というところをすごく気にします。そうじゃなく、フラットに近い関係性のほうが、子どもたちがのびのびと探究していきやすいんですよね。

具体的なTipsをいくら積み重ねても、(子どもが)「お父さんお母さん怖いな」と思うような関係だとなかなか探究が進まなかったりするので、関係性の大切さについてしっかり書きました。

4章はどちらかというと、お子さんをサポートする保護者の方のあり方みたいなことを書かせていただいています。

子どもは、環境や人から多くを学んでいる

岩田:今は「探究学習」と言われていて、1つの学習手法っぽく紹介されたりしていると思うんですけど、僕自身は、探究って「あり方」とか「生き方」だと思っているんです。「この人すごく探究しているな」みたいなのって、日々のいろんなところに表れるんですよ。Doと言うよりはBeと言うか、そういうものなんじゃないかと思っていて。

Be(あり方)みたいなものって、言葉よりは、雰囲気とか様子から伝わるものがすごく大きいなと思っています。エイスクールでも、講師や僕たち大人が、楽しい、おもしろいなと思うことを探究し続けることをすごく大事にしていて。

大人だけでなく、通っている子どもたちも探究を楽しんでいる子が多いので、そういう環境に入ってまわりから影響を受けている部分がすごく大きいんじゃないかなと思います。子どもたちの好奇心に火がつくようにプログラムも作り込んでいるんですけど、意外とプログラムだけじゃなく、子どもたちは人間関係というか、人から学ぶ部分がすごく多いんだろうなと思っています。

なので、保護者の方に、ご家庭でも、子育てとか家事のこととか、何でもいいから探究してみてほしいなと思って、最後の締めで書かせていただきました。

という感じで、ちょっと長めにしゃべってしまったんですけれども、ここまでが私の自己紹介になります。今日は、私の出版記念イベントで、知人の川辺さんとしゃべってみたいなと思って来ていただきました。

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