2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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坂本建一郎氏(以下、坂本):植松社長、いかがですか? 今の(工藤校長の)お話をうかがって。
植松努氏(以下、植松):僕の会社は、部と課と役職がないんですよ。命令系統が存在しないんです。僕は基本的に何もしていないというか、会社の子たちに任せっきりです。物を買ったりするのも「50万円を超えたらさすがに言ってね」とは言っておくけど、「あとは好きに買っていいよ」という感じで、好きにやってもらっています。
僕はピラミッドの上下関係が大嫌いなんですよ。これはそこら中にあるんだけど、これって天辺をやっつけていったら全滅する組織だから、あまりにも弱いんですよ。
坂本:一番上をやっつけたら全滅(笑)。なるほど。
植松:「こんなだめな組織はないな」と思っていますし、実際これって軍隊の組織のことなんですけれども、今や世界の先進国で、軍隊でこの仕組みを使っているところは日本くらいで、他にはないからね。
坂本:そうなのですね。
植松:日本って、やたらに上下関係とか言うじゃないですか。特に「先生方の間の上下関係はすごいな」と感じます。僕はそういうのが本当に嫌いなんですよね。「理不尽だな」とすごく思うことがいっぱいあるから。
植松:そのうえ「理不尽を我慢することがきちんとしているんだ」という人が多い感じがすごくするんですけれども、僕は「理不尽に納得しないのがまともな人間だろう」と思っていて。「理不尽を乗り越えるようにしたらいいよね」って思うんですけれども、どうも学校という仕組みの中では、そうなっていない感じがします。
本当に学校という、言ってみれば封建主義的組織体系で民主主義を教えているのって、かなり無理あるんじゃないのかなっていう気がするんです。この組織体系そのものをちょっと変える努力をしたら、もしかしたらいいことが起きるんじゃないのかなと思っています。
ちなみに、僕が会社の部や役職とかを全部なくした時、周りの社長さんたちからは「そんなに自由にしたら大変だ」「命令も強制もなしでは、人は力を合わすことができない」「ばらばらになる」と強く説得されました。でもうちの会社は、それから発展しているけどね。
坂本:他の会社では実現できないことを進めていますよね。
植松:やっぱり僕の目から見ていると、今の学校の先生たちがうちに修学旅行に来たところで、見ているだけなんですけれど、先生方にはかなり「第2次世界大戦前の教育を引きずっている人がたくさんいるな」という感じがします(笑)。
工藤勇一氏(以下、工藤):植松さんのおっしゃることはまったくその通りでよくわかります。やっぱり学校の文化が日本社会そのものを象徴していると思うんですよ。例えば小学校の先生で「自分の小学校で、自分のクラスで、一度も多数決を使ったことありません」という人いますか?
坂本:チャットで聞いてみますか?
(参加者に、〇と×をチャット欄に書き込んでもらう)
……まあ、圧倒的に○(多数決を使ったことがある)ですよね。みなさんありがとうございます。
工藤:そうすると多数決を取っている時点で、「マイノリティ(少数派)を排除します」ということを教えているということですよね。A案とB案があって、A案が8割賛成です。2割がB案です。このA案B案にもし利害関係があって、A案を取るとB案の「OKだ」という人たちに本当に嫌なことが起こるとしましょう。
例えば、「運動会の出し物を決めましょう」「みんなでダンスしましょう」ってなったとします。ダンスに8割が賛成、ダンス以外で何か違うものがしたい人が2割としましょうか。それで「ダンスをやりたくない」という人たちに、もう踊りが大嫌いで、「こんなものやりたくない」「みんなの笑いものになるから」と思っている人がいるとしますよね。
坂本:いるでしょうね。やりたくないし、「ダンスを見られるのが恥ずかしい」と思う人が。
工藤:でも8割の人がダンスやりたいと言うので多数決だと勝っちゃいますよね。2割の人たちを排除して、「決めたことに関してはみんなで従おうね」と言うから、嫌々2割の人は付き合うわけですよ。これを今の教室で平気でやっているということは、「次の時代の日本社会がそうなってもいいですよ」ということを示しているわけですよね。子どものうちから、「多数決が勝ちですよ。少数派の意見は排除してかまいません」と教えているということです。
工藤:「誰一人置き去りにしない」と私たちが言うのであれば、2割の子どもたちが主張する違う意見を取った場合、対話をすれば、8割の子は「本当はダンスをやりたかったけど、この遊びだったらみんながOKと言うんだったら、これも選んでもいいですよ」という方法を取れるかもしれない。もしかしたら全員でやる必要はなくて、「みんなの出番を作ってあげて、別の方法を取りましょうよ」「選択できるようにしません?」という方法もあるかもしれない。
やっぱり「みんなで対話をして、全員がOKなものを探し出そうよ」という対話の訓練を、子どものうちからしていないんです。
当たり前のように多数決をやっているから、「じゃあ政治の世界も同じでいいんでしょう?」という話になっちゃうわけじゃないですか。でも政治の話になったら、「なんで数で決めちゃうんだよ」ということを平気で言っている人たちが、実は学校の先生だったりするわけです。
だからここでも自分たちがやっていることで矛盾を起こしているんですよ。多数決というのは、「A案でもB案でもどっちでもOKですよ」という時しか取っちゃいけないんです。
坂本:そうですね、議論を尽くしてから。
工藤:議論を尽くして、「A案でもB案でも、両方とも全員がOKですよ」という時だけ多数決が取れて、そうじゃない時は「徹底的に対話をして、全員がOKなものを探し出そうよ」「C案みたいなものを探し出さないか?」という対話をしなければいけないんです。そういうことが大事なんです。
工藤:横浜創英中学・高等学校の経営は、トップダウンじゃないんです。麹町中学校の時もそうですけど、僕が校長になったばかりの時には、必ず学校の雰囲気はこうです。
A先生が僕のところに、「これもう無駄だからやめませんか?」と言いに来る。それで次にB先生がやってきて、「不穏な動きがあります」「どうもこれをやめようという人たちがいます」「これは絶対にちゃんとやるべきだと思います」と僕のところに来るわけです。
それで、「校長、どうするんですか」となる。トップである僕に、その決定の言葉を言ってほしいんですよ。実は自分たちの中に対立が起こっているのに、人に委ねて、トップに決めてほしいという。「トップはだらしない」とふだん言っているのに、トップに決めてほしいという構造があるんですね。これがつまり、日本のピラミッド型の組織。結局、権力のある人に委ねるという構図がそこから見えるんです。
僕はその構図を変えるために、「目指す最上位をみんなで対話して決めたよな」「この最上位さえ実現できる手段であったら、結果的には何を取ってもいいから」「でも、A案を取ったらリスクあるよな。B案を取ってもリスクあるよな」「それをみんなで『学校として取るのはどっちか』ってちゃんと対話をして決めよう」って言っていたんです。そうすると最初、教員たちが嫌な顔をするんですよ。
坂本:(笑)。決めてほしかったのに、逆に追い返されたからですね。
工藤:「学校として」って言うけど、僕も学校だけど、君らも学校でしょう? って。
坂本:そうですね。当事者です。
工藤:「対立は僕との間に起こっているんじゃなくて、教員間に起こっているんじゃないの?」「それを僕のところに持ってくるなよ」「まず、ちゃんと対話をしなさいよ」「対話をして感情的にならないことよ」「これを訓練しなきゃだめだよ」って言って、そういうのも教えるんです。そうすると、対話をする訓練ができるようになるんですね。
工藤:「うまくいかない」と言っている学校は、実は教員間の対話がぜんぜん進んでいない学校です。自由に意見が言い合える環境ができれば、物事もぽんぽん決まります。横浜創英は麹町中学校の3倍くらいの規模の大きな学校ですけど、ぽんぽん物事が決まりますよ。職員会議なんてほとんどなくなりました。運営委員会とかもほとんどありません。
なぜかと言ったら、基本的に部署で企画したものには全部GOサインが出るからです。教員たちに権限がある。どうしても悩んだら僕のところに相談に来るし、教員間で対立が起きそうだったら全体会議にかけるというルールになっています。それで、それを嫌がらないということです。嫌がらないで、みんなが対立をすることを避けない。
それは見た目の対立であって、本当の対立じゃないんですよ。みんな良かれと思ってやっていることだから、そういう対立に慣れていかなきゃいけないですね。そういった一つひとつの小さな対立を対話で乗り越えて合意形成していくプロセスを経験していくことによって、組織は絶対に変わります。100パーセント変わります。変わらないことはないです。
坂本:工藤先生が書いた『学校の「当たり前」をやめた。』の中で、体育祭の出し物を中学生が自分たちで決めたと言う話がありますね。先生にもお渡ししましたけど、出版社にもいろんなお手紙が来て、「本当にこういう学校に行きたかった」「泣きながら読みました」というおばあちゃんからのお手紙とかがあって、私もすごく感動しました。
やっぱり学校でそういう経験をした子たちは、社会に出ても少数派を排除せず、だれもがOKなところを探す対話ができるようになるし、A案・B案がある時に、「さあ、どっちか」で数の論理でB案を排除することはしない。C案を見つけるかもしれないし、もしかするとマイノリティであるB案のほうがリーズナブルであるかもしれない、ということに気が付くことにつながっていきますよね。
ここまでハイペースで、けっこう難しい話をしてきたかもしれません。ぜひチャット欄で、「とはいえ、ここはどうなんですか?」とか質問をいただければと思います。
植松社長は「『どうせ無理』という言葉は使わないようにする」と多くの著書でおっしゃます。「どうせ無理」って、今日視聴しているみなさんは思わないとは思うんですけれども、でも「なんかしっくりこない」とか「難しい」と感じている方はいる気がするんですよね。このあたり、休憩後にある質疑応答のセッションに向けて忌憚のない質問をいただければと思います。
山田洋一氏(以下、山田):今までの文脈から言うと、2人の対話を聞いていて、みんなが「そのとおり」って言ったらおかしいってことだよね?
坂本:(笑)。そうですね。
山田:「『違和感があります』ということをちゃんと表明できることが、まず大事なことだ」という話を今までしてきているのに、みんな「そのとおり」と書いていたら、ちょっとおかしいでしょうという(笑)。
坂本:確かに、ちょっと変ですよね。
植松:いや、不特定多数をがっと寄せたのならば、「違和感あり」も当然あるんだと思いますけれども、それは選び方の1つですので。無理に違和感を置かなくてもいいんです(笑)。
山田:あ、そっか(笑)、じゃあ、みんなを煽ることはないわけですね(笑)。
植松:(笑)。自分の気持ちを書けばいいんですよ。
坂本:そうですね。それでは対話2のセッションはここで終了となります。ありがとうございました。
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