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「成長実感96%組織」を作る平岩国泰氏直伝「月曜日、行きたくなる職場」の作り方(全1記事)

リーダーが見るべきは、「一番遠く」と「一番近く」 成長実感96%のNPO法人代表が語る、幸せになれる職場の作り方

「セミナーに参加したかったけど、時間が合わなくて行けなかった……」。株式会社イノベーションの調査によると、ビジネスパーソンの2.5人に1人はそんな経験をしているそうです。同社が運営する動画サービス「Seminar Shelf」は、オンライン配信を通して、いつでもどこでもセミナーに参加できる環境を提供しています。今回のSeminarShelfのオンライン動画では、放課後NPOアフタースクール代表理事 平岩国泰氏が登場。平岩氏が取り組む「月曜日に行きたくなる職場」作りのポイントを語りました。 ■動画コンテンツはこちら(※動画の閲覧には会員登録が必要です)

30歳で芽生えた「部活のように働きたい」という気持ち

平岩国泰氏:私は今、放課後NPOアフタースクールというNPO法人と、新渡戸文化学園という学校法人の理事長という2つの仕事をしております。加えて、渋谷区の教育委員をやっていますので、正式にいうと、この3つに時間を使う働き方をしています。

最初はサラリーマンからスタートをしたんですけれども、30歳の時に子どもが生まれて、その時からNPO法人を作ることを志して、37歳の時に会社を卒業してNPO法人専任になり、その後ご縁があって学校や教育委員の仕事をいただいて、今に至っている感じですね。

NPO法人なんかは法人化して11年目になるんですけど、ボランティア時代も入れると活動してもう16年目、ちょうど娘と同じ年になっていますね。

私はサラリーマンをしていたんですけれども、30歳の時に子どもが生まれました。ちょうど30歳でもあったんで、その頃からなにか、自分の中で生涯をかけてやれるような仕事ってないかなと、ライフワークを探すような気持ちがありました。

言い換えると「部活のように働きたい」というか。中高生の時は野球部で、一生懸命野球をやったり、時には手を抜いて部活をしたり、いろんな時期があったんです。あれぐらい熱くなって、仲間と目標を追いかけるような働き方を、40歳とかになったらしちゃいけないのかなぁという感じがすごくあって。

なので、部活のように熱く働きたい気持ちと、生涯×ライフワークのようなものはないかなと探してたと思います。

会社員もとてもおもしろかったし充実もしてたんですけれども、やっぱり「自分でなにか」という思いもあって。その時に子どもが生まれて、とにかくなにか子どものためになることをやろうというのが原点だったと思うんですね。

「放課後が変わっている」という気付き

2004年に子どもが生まれたんですけど、その年は非常に子どもの連れ去り事件が多かった年で。子どもが朝おうちを出てから帰り道までの間に連れ去りが行われて、その多くが亡くなって帰ってくるという事件がすごく多くて。

全国的に飛び火するような感じで、あっちの地方でもこっちの地方でも起きていて。初めて父親になる身だったので、そういうことだけは、と思ってたんですよね。

そういう記事を眺めている時に、あることに気がついたんです。だいたいそういう事件は下校の途中で起きるんですよね。時間で言うと15時から17時の間に起きるんです。

これ、放課後の時間だなと思って。そこで初めて、放課後がなんか昔とは変わっているみたいだと自分の中に気づきがあって。その時にたまたま、アメリカでアフタースクールを見てきたという私の同級生の友人がいて。

自分の中では運命の一致で。放課後というのを、自分が父親になる手前で意識をし始めて。その時にアフタースクールという、もしかしたら解決になるかもしれない手段を目の前にたまたま提示されて。勘違いだったのかもしれないですけど、自分の中では運命の一致みたいに思っちゃって。

それで、「これだ」と思ってスタートを切った感じですね。自分の中ではびっくりするというか、自分がたまたま意識した「放課後」と、友人の「アフタースクール」が、頭の中で、お団子にぐさって串が刺さったような感覚があったのを覚えています。

解決したい問題と、もしかしたらできるかもしれない手段が目の前にあって。ぐさっと刺さって。ただ、そこからはそうはいっても、いきなり起業するとか、NPO法人とかも当然難しさがあるので。いろいろ悩みながらスタートした感じですね。

株式会社ではなくNPO法人という形態を選んだ理由

そこから私は「放課後NPOアフタースクール」というNPO法人を起業するに至りました。実はNPO法人というのを、もともとよく知っていたわけでもなくて。起業するタイミングで勉強し始めたような感じだったんですね。ですから、別に株式会社でもよかったし、NPO法人でもよかった。自分のやりたいことはどっちの組織だったらいいのかなという中で、NPO法人を選択したんです。

NPO法人を選んだ理由は2つありまして、1つが学校と組みたかったんですよね。私たちのアフタースクールは、学校でやるものですので、学校と組むにあたり、やっぱり非営利法人のほうがいいでしょうということです。

2つめには、やはり自分たちだけのことではなくて、私たちの組織を通じて、日本中の放課後を明るく豊かにしたいという思いがあって。いつか自分たちで培ったノウハウをいろんなところにお渡しして、地方の人たちにいろいろ真似てもらうのが大事だな、と思ったんですよね。

そうすると株式会社だと、どうしても自分たちの組織の株主価値を上げることになってきちゃうと。ノウハウを渡したり地方の支援をしたりが、なかなかやりづらいんじゃないかなというのもあって、NPO法人という選択肢をとったんですよね。

「NPO法人だから」で株式会社に負けたくない

NPO法人って、世間の人たちの理解と実態がけっこう違うなと思うんですけど、株式会社と基本的にはあまり変わらないんですよね。

やっぱり収益は必要だし、そこで得た収益を株主に還元することができないんですけど、ちゃんと収益がないと組織は続かないし、お給料もちゃんと出していかないとスタッフも雇えないということで、ほとんど(株式会社と)変わらない。

NPO法人だから安くていいとか、質が悪くていいとかも決してなくて。最後はやはり株式会社と比べられて、NPOのアフタースクールに行こうかな、それともとても高いけど塾に行こうかなみたいな選択肢で、サービスの質で比べられるようなところもあるんですよね。

そうすると、決して株式会社に質で負けちゃいけないというのもありますし、負けていいとも決して思わないんですよね。放課後と名乗っているジャンルでは、やっぱり僕らが一番勉強していたいし、僕らが一番質のいいものでいたい。どんな株式会社にも負けたくないと思うんですよね。

やっぱり組織もしっかりしてなきゃいけないし、すてきな人たちもいなきゃいけないし、でも一方で、株式会社のように株主がお金を出してくださるような制度もないので、お金もそんなに潤沢にあるわけじゃないよねという。じゃあ、何が株式会社に勝てるのかなと考えて。

もしかしたら柔軟な制度とか、みんなが支え合う風土とかだったら勝てるんじゃないかなと思って、そこを磨き始めたのが、私のやってきたことだと思います。

「月曜日に行きたくなる職場」は、仕事を通して幸せになれる職場

「月曜日に行きたくなる職場」が、私たちの組織の合言葉なんですけど、まさに「みんなどういう組織にしたい?」と話した時に、そのフレーズがあるスタッフから出てきて、いい言葉だなと思ってずっと使ってるんです。

私は「なぜ働くか」というところから考えたんですよね。みなさんやっぱり、生きていくために働くと当然のように思っていると思うんですけれども。当然必要なんですけど、それだけで終わっちゃうと、ちょっともったいないなと思うんですよね。

やっぱり生きていくために働かなきゃいけない。生活とか趣味とかと、また働くという往復をしているだけだともったいなくて。仕事って、大人がかなりの相当な時間とか労力とかをつぎ込むんで。生きるために働くんですけど、そこで働いたことで「幸せになる」というステップが得られれば、仕事ってとても意味があるなと思うんですよね。

ですからそこ(仕事と生活)の往復じゃなくて、「幸せになる」ところに循環していくモデルが回っていくといいなと。私たちはそもそも、仕事をするためにこの世に生み出された仕事マシーンでもないですし、やっぱり仕事を通じて幸せになる。幸せになるための手段が仕事だと思うんですよね。ですので、そういう職場を作りたいなと思っておりました。

ではどうしたらできるかなと考えた時に、やっぱり人の幸せってなんだろうと。誰かの笑顔が見られたとか、誰かが喜んでくれたというのが、根源的な喜びだろうと思うんですよね。

長く続く根源的な喜びは、1つは誰かの笑顔だなと思ったんですね。次に誰でもできることとかあなたじゃなくてもいいことではなくて、やっぱり自分の大好きなジャンルとか、自分の得意なことを生かしたとか、自分らしくできたとか。「○○さんがいてくれたおかげだよ」と言われると、やっぱりとてもうれしいと思うんですよね。

もう1つが、最後はすてきな仲間たちだと思うんですね。「誰かの笑顔×自分らしさ×すてきな仲間」という方程式が、私は幸せな仕事の方程式だと思っていて。これを組織を通じて作っていけば、とても幸せな職場になるんじゃないかなと思ったんですね。

よい仕事と出会うための「ナイキの法則」

じゃあどうやったらそういう仕事に出会えるか、探せるかなんですけれども。私は採用説明会では、自分で全部しゃべることにしているんですけれども、やっぱり組織のリーダーがどういう人かとか、どういう考えかというのが、その組織を如実に表します。なのでやっぱりそこは自分が(しゃべろう)と思うんですよね。

私はそこで「ナイキの法則」を話しているんですね。なにかと言いますと、よい仕事を見つけるための法則なんですけど。ナイキの「ナ」は仲間のナなんですよね。仕事探しって、いわば仲間探しみたいなもので。一緒に働いて、ただの同僚とかを越えて「仲間」って呼べるような存在が見つかるかな、という目線で仕事を見るといいんじゃないかなと思うんですよね。

「イ」は一生懸命のイなんですけれども。私は部活を通じて感じたんですけど、中学・高校の野球部の間に、一生懸命やってた時期とあまりやらなかった時期がありまして。

当時、一生懸命やってなかった時期は、周りからは何となく楽しげに見えていたのかもしれないですけど。後から思うと、一生懸命やらなかった時ほどおもしろくなかった時はないなって思うんですよね。

そうすると、やっぱり一生懸命やるのが一番おもしろいに決まってるんですよね。我が子が生まれてさらに思ったんですけど、いつか子どもと「どんな仕事をしているの」と会話する日を想像した時に、「俺は一生懸命こんな仕事をしてるんだ」って我が子に語れる自分が想像できるような仕事がいいなと思って。一生懸命になれるかどうかですね。

最後の「キ」が一番大事かなとも思うんですけれども、共通目的なんですね。仕事って、目的が揃わないと、いろんなところで苦労するんですよね。目的さえ揃えば、逆に手段は任せられるところもあって。その目的を揃えるところがとても大事なんです。

組織の目指す目的と、自分がこんなことをやりたいなという目的の完全一致はなかなか難しいかもしれないけれども、重なれば重なるほど幸せになるだろうなと思うので。「仲間・一生懸命・共通目的」を、ナイキの法則と自分では呼んでいまして。

みなさんが仕事選びをする時も、いろいろなことを見ると思うんですよね。ホームページを見たり、経営理念を見たり、経済成長性を見たりとか。いろいろ見ても、正直なかなか判断がつかないなという時は、このナイキの法則も思い出して。

仲間が見つかりそうかな、一生懸命になれそうかな、共通の目的が持てそうかなというのも、仕事選びの判断にされるといいんじゃないかなと思って話をしています。

組織の中で、トップの役割をどこに置くか

そういう組織作りをしてきて、じゃあ自分自身の役割をどこに置くかなんですけれども、組織を始めて最初の頃は、やっぱり外向けの営業に行ったり、PRに行ったり。当然ですよね。人もいないですし、ある意味トップが営業するほうが一番売れるとも思うんですよね。

そうしてたんですけど、ある程度組織が広がってきてから、例えて言うとバス1台以上ぐらいになってきた時ですね。40人とかを超えてきたあたりからは、みんなのモチベーションとか、逆に内側を支えるほうに切り替えたんですよね。

いろいろ見ていて、組織が広がっていくにしたがって、一番最初のメンバーではないメンバーが増えてきたところで切り替えを行ったんです。

どの組織もタイミングはまちまちなんで、必ずとは言い切れませんけれども、やっぱり外向けにどのぐらいパワーを使って、内向きにどのぐらいパワーを使うかというのを、経営者の方は考えていると思うんです。私は今、かなり内向きにパワーを使っています。

ほぼ全員が損をする「性悪説」のルール

最初に組織風土がどんどん先にできていきまして、もともとそういう気質の人が多いのもあって、支え合うような風土ができていったんですけど。人事制度を作っていく時に、一番最初に念頭に置いたのが「性善説」なんですよね。

逆に言うと、世の中の人事制度とか、学校のルールなんかもそうなんですけど、かなり「性悪説」でできているケースが多くて。1,000人に1人ぐらいしかそんなことをしないかもしれないために、1,000人全員だめにしちゃうみたいな。999人が損をするみたいなルールがよくあるんですよね。

そんなことをする人は1,000人に1人もいないかもしれないし、あるいはいたとしても1,000分の1だったら別にいいよねと思って。逆に性善説のルールを作ると、999人がうれしい思いになれるんですよね。

具体的なものとしてはいくつかあるんですけど、例えば有給休暇が入った月からとれるんですよね。普通は6ヶ月後からとなっていて、これも性悪説で見ると、3ヶ月で辞める人のために有休を使われたらかなわんみたいな部分もあるんです。けど、そんな人いないでしょうと。

あと看護休暇というのがあって、ご自身の体調が悪いとか、自分以外でもペットでもいいと言ってるんですけど、どなたの具合が悪くても、年間5日間までは有給で、お給料が出る状態で休んでくださいと作っています。

それも悪く使えば、「今日はずる休みして看護休暇使っちゃえ」と言えばできるんですけど、そんなことをする人は誰もいないというところですね。

社員の満足度を測る「貢献・尊重・成長」の指標

それから、自分の育成を自分で計画していくプランを作っていて。いわば自分の育成予算を自分で持つような感じですね。会社がこの研修をやりなさいというんじゃなくて、やっぱり自分で自分の成長をデザインしていくのがいいだろうと思うし。あるところを過ぎると、会社が一律の研修をしていくのはちょっと難しいんですよね。なので、そういうのもあります。

私自身、自分の成績表をどういうふうに見ているかというと、もちろん業績とか、そういう外向けのものはあるんですけれども。中で採っている、社員の満足度調査が私の成績表だなと思って。

毎年、今年1年を見てということで、年末ぐらいに採るんですよね。特に多く注目して見ているのが、まず「自分の仕事が誰かのために貢献できていますか」ということなんですよね。その指標を見ています。

それから2つめが、自分が組織の中で大事にされているのか、「尊重されてますか」というところを見ています。

最後に、「私たちの組織は、組織として成長していますか」という、この成長を見ているんですよね。貢献・尊重・成長という3つの指標を重視していて。

昨年の数字でいくと、「貢献していますか」というのに96パーセントが「そうだ」と言っているんですね。それから、「自分が尊重されてますか」というのは86パーセントが「そうだ」と言っています。「成長していますか」というのも、96パーセントが「そうだ」と言ってるんですね。

この数字は、人に聞くと「高い」と言われるんですけれども、私としてはなんとか100パーセントにしたいので。まだまだ足りないし、人数が増えていけば増えていくほど、こういう数字というのはなかなか難しくなってくる部分もあると思うんです。

うちの場合、今まで幸い人数が増えても、この数字も年々上がってきたところがあるんですけど。なんとか100パーセントになるまで、毎年がんばり続けたいなと思って、これを自分の成績表だと思って受け止めてます。

学校法人の理事長になって感じた「変わらないこと」

私は2019年から新渡戸文化学園という学園の理事長の仕事を引き受けるようになりました。本格的に二刀流で働かせていただいているんですけれども。1927年にできた学校で、幼稚園から小学校・中学校・高校・短期大学と5つの学校がある、歴史ある学校法人の理事長を引き受けさせていただいております。

場所が学校に変わりまして、私はもともと「放課後」だったので、今度は午前中の学校のほうもとなったんですけれども、やるべきことはぜんぜん変わらないなと思っていて。

自分の組織とか自分が勤めさせていただく学校で、これからこうありたいよねという像の、0から1をまさに作り出して。それをいろんな学校とか、いろんな放課後(NPO)のみなさんに、ぜひ参考にして取り入れていただくことで、日本中になにかいい影響を与えられるような仕事がしたいなというのが、自分のできることだなと思うので。

本当に、目的もやるべきことも変わらないなとは思っています。ただ今回は、もともと新渡戸文化学園にいらっしゃる職員の方々、教員の方々と一緒に仕事をするようになるので。自分で作って自分でやってきて、自分で採用してきた組織とはちょっと違ったところもあります。先生の方々とたくさん一緒に仕事をするようになったんで、そこもちょっと違いがあるなと思うんですけれども。

やっていて違和感というか違いはなくて、やっぱり放課後NPOもそうですし、新渡戸文化学園も、みんな子どもたちの幸せを願う人たちが集まっていますので。そこについては、もうまったく変わりがないですし。

お互いに時間帯が違うだけで、考えていることや、やっていることも一緒で、目的はそろっているので、基本的には同じ手法を使いながらさせていただいているとは思いますね。まだまだこれから変わっていく部分はあるので、とても楽しみにしながらやっています。

「一番遠く」と「一番近く」を見るのがリーダーである

私なりにマネジメントは、理屈で入るより自分が思うままにやってきたようなところはあるんですけど。改めて整理してみると、一番遠いところと一番近いところを見ているのが、私なりのリーダー像かなと思っています。

もっとも遠いところは、やはり「ビジョン」ですね。こういう未来でありたいよね、こういうことでワクワクしたいよねというところを、言葉だったりやってきたことで表現をしていく部分だと思うんですね。

そこがまずみなさんの行きたい地点、行きたい景色を、きちんと想像できるような表現をしていくことだと思うんですね。

次は、そのために必要な組織を作ったり、人を集めてきたりも当然あると思っていまして。それをやれるチーム体制を作っていくことだと思うんですよね。

最後に、そこができたら終わりではなくて、できた後がやっぱり大事で。もっとも今度は近くを見るんですよね。そこで働いている人たちががんばれているかなとか、疲れていないかなとか、なにか手助けが必要じゃないかなとかを見ています。

NPO法人のほうも学校法人のほうも、毎年、常勤の職員の方全員と、一人ずつの面談をします。大人であっても、一人ひとりに向き合う時間ってとっても大事で。もちろん子どもも大事なんですけど、自分1人に対して組織のリーダーが時間を使って「大丈夫? どう?」と、しっかり話せる関係が大事だなと思っていて。

もちろんその面談だけではなく日頃からもそうなんですけども、気にしてくれてるとか誰かがいるというのは、とても大事なことです。

その最も遠くと近くを見るというのが、私が意識していることなのかなとは思います。

今度、その目的が合意できたら、あとの手段は、かなり任せるようにするというのも1つの私のスタイルだと思います。当然、ミドルのマネジメント層の方もいますし、それぞれ一人ひとりが「こんなことをやりたい」とか「今日はこんなふうに」というテーマを持ってきているわけですから、そこに対していちいちあれこれ言うのも、せっかくの意欲を削いじゃうところもあるので。

任せられると人は楽しくなってくるし、やる気にもなってくる部分はあるので。先ほど申し上げた、幸せな仕事の法則に照らしても、「誰かの笑顔×自分らしさ×すてきな仲間」の、この「自分らしさ」の部分ってかなり大事だなと思うんですが、それがイコール任せるだろうなと思っていて。

目的が合意できれば、手段は任せるというのも私のやり方なのかなと思います。

大人や日本全体が、子どもを子ども扱いしすぎている

私が学園の理事長を引き受けて、所信表明演説があった時に、一番最初に言った言葉があるんです。それは「すべての主語を子どもたちに」と言ったんですね。

学校教育でも、いろんな他の教育でもそうなんですけど、「子どもたちに○○させる」という言い方をよく使うんですよね。「覚えさせる」とか「ここを読ませる」とか「学ばせる」とか。それは全部「大人」とか「学校」が主語になっている言葉で、本来学校は、子どもが育てられるんじゃなくて、育つ場だと思うんですよね。

まさに子どもたちが主語になる。逆にもう少し違う言い方をすると、私たち大人だったり先生たち日本全体が、子どもを子ども扱いしすぎるんですね。

子どもはたぶんできないだろう、任せても遊んじゃうだろうという前提を作っちゃって、大人がどんどんいろんなことをやってあげちゃうんですよね。そうすると、子どもたちは自分たちでやる力がどんどん削がれていく。

日本財団の調査で18歳の調査(18歳意識調査)があって、「自分で国や社会を変えられると思いますか」って9ヶ国の18歳に聞いてるんですけど、日本が一番、ダントツに低くて、18パーセントなんですね。8割の方は、「いやいや国や社会なんか自分ではどうにもならないよ」って思っちゃってるんですね。

1位のインドは逆で、8割以上が「変えられます」って言ってるんですよね。ちなみにビリから2番目は韓国だったんですけど、約4割なんで。(ビリの日本は)ビリから2番目の半分しかない。このことを、教育関係者は重く受け止めたほうがいいと思っていて。自分でなんとかできると思えないと、将来に対する楽しみがないですよね。

それは学校運営とか、自分の勉強とか、子どもたちが自分で自分の学校をよくするとか、自分で自分を学んで高めていくとか、そういう体験がとても少なくて。大人がいろんなことをやってあげちゃったから、失敗はしなかったかもしれないけれども、自分でなんとかできる、自分で周りをよくできるという感覚を持てずに18歳になっちゃっているのは、とても問題なので。

まさに学校運営も学び方も、どんどん子どもたちに渡していくといいと思うんですね。学校は安全な場でもあるので、そこでいろいろトライしてみたけど失敗しちゃったっていいと思うんですよね。

18歳までにたくさん失敗しておけば、大人になったらチャレンジする、あるいは会議で手を挙げて発言するような大人ができてくる。逆に言うと、今の日本の教育はもしかすると、会議で手を挙げない子、物事には正解があると思う子、失敗が怖くなっちゃう子を、たくさん作り出しちゃってる気がしていて。そこをなんとかしたいなと思っています。

子どもたちの「早く大人になりたいな」という夢のために

今日は月曜日に行きたくなる職場というのがテーマでお話をしてきたんですけど、まさにその「月曜日に行きたくなる職場をみんなで作りませんか」というのが、私からのメッセージです。

子どもたちは大人の姿をよーく見ています。大人たちが元気でいきいき楽しそうに働いていると、将来に夢を見てくれると思います。「大人は楽しそうだな」「大人っていいものだな」「早く大人になりたいな」と思ってくれると、毎日前向きに過ごすんですけど。

もしその逆のことが起きると、月曜日の朝、満員電車でうーんってつらい顔をしているのばっかり見ちゃうと、「大人って大変なんだな」「子どものままでいたいな」と思っちゃうので、ぜひ月曜日に行きたくなるような職場を、みんなで作りたいと思っています。

私たちは、仕事はつらくても我慢、なにか自分を捨ててやらなきゃいけないという前提をどこかで受け入れてきちゃって。仕事ってそういうもんでしょ、だって仕事ってそうだからという一言で、いろんなことを切り捨ててきちゃったと思うんですね。

時には、人間性まで失っちゃう人もいて。でも仕事って、自分たちが幸せになるために人間が作り出したシステムですから。そのシステムに振り回されて、自分が不幸せになるというのは、まさに本末転倒だと思うんですよね。

ですから、月曜日に行きたくなる職場をみんなで作っていけば、仕事観も変わっていくし、人生100年時代ですので、これから60年ぐらい、仕事をしたり、学んだりという時期が続くような時代に入るので、まさに幸せに過ごさなければ、60年は長いですから。この世代で月曜日に行きたくなる職場作りをして、次の世代に新しい仕事観で渡していきたいなと思っています。

今日は、ありがとうございました。

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