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思うは招く ロケット開発を実現させた植松努の原動力とは(全8記事)

日本では「幸せになるには勝たなきゃいけない」と教えられる 植松努氏が目指す、競争ではなく尊重し合う社会

人々の主体性を引き出し、生きる力を育むキャリア教育に取り組む認定NPO法人『キーパーソン21』。誰の中にもある、わくわくして動き出さずにはいられない原動力を「わくわくエンジン」と名付け、全国各地のコミュニティと協力して、さまざまな取り組みを推進しています。今回はそんな『キーパーソン21』が主催する「わくわくエンジンEXPO」にて行われた、株式会社植松電機 代表取締役の植松努氏による基調講演の模様をお届けします。本記事では、同氏が目指す理想の社会像について語りました。

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ネガティブシンキングは、決して悪いことではない

朝山あつこ氏(以下、朝山):やっぱり、「だったらこうしてみたら?」と言われると、すごくがんばれる。私も経験上そうで、「いやそれはね」とできない理由を先に言われると、すごくつらくて。「なんかもういっか」と諦めていくことって、やっぱりあるんですよね。

実はキーパーソン21をやっていても、「そんなこと……」みたいに言われてしまうこともいっぱいあって。でも、応援してくれる人たちがいっぱいいるから、20年もがんばってこれたんです。だから「呪いの言葉」と「魔法の言葉」は本当にそうだなと思って。「だったらこうしてみたら?」と言ってもらえたら、本当にがんばれる。

私、妄想が大好きなので、「妄想がすぎるよ」的な感じだと「ちーん……」ってなっちゃうんですよね(笑)。

植松努氏(以下、植松):(笑)。妄想は脳みその中のシミュレーションだし、大いにすべきですよね。あと僕も、すごくネガティブシンキングなので、ものすごく悪いことをいっぱい考えるんですよ。でも考えるからこそ、それを越えられるんですよね。穴ぼこにはまるよりかは、穴ぼこを見つけて避けられたほうが絶対にいいから。

だから、ネガティブシンキングや悪い妄想って決して悪くはなくて、それを書き留めときゃいいんです。逆に考えたらきっと乗り越えられるので。

朝山:そうそう。「こうありたい」「こうしたい」と思う妄想と、それを実現するために「こんなことが起きるだろう」という妄想を、両方同時にしてるんですよね。

植松:それが最高ですね。

朝山:だからめっちゃ小さいことも気にして、でもデカいことも言っちゃってるみたいな……(笑)。

木本:妄想モンスターですね(笑)。いや、でもとてもいいと思います。

朝山:だからすごく植松さんの言葉が身に染みて、うれしくってうれしくってしょうがないんですよ。

「会社」と「社会」が持つ共通の意味

朝山:さっき植松さんがおっしゃってくださった、「知りたい」「こうしたい」という気持ちが出たら脳がどんどん回るって、猿の絵を描いてくれてたじゃないですか。あれだと思ってて。

わくわくして、わくわくエンジンが稼働すると、動き出さずにはいられなくて、脳がぐるぐるとめっちゃ回るんですよ。でもさっきみたいに「ダメ」「こんなことがあるから無理じゃね?」とかって言われると、脳が萎縮するというか。「ちーん……」とちっちゃくなる感じがするんですよ。だからさっきのお話が、やっぱりすごくうれしくて。

私この間、植松さんのわくわくエンジンを聞いたんですけど、私のわくわくエンジンは「みんなの力をつなぎ合わせて、新しいなにかを生み出すこと」なんですよ。

植松:おぉ、いいですね。

朝山:いいですか? それを今、話を聞きながら書いといたんですよ。「みんなの力をつなぎ合わせて、新しいなにかを生み出せる」と思う時、めちゃめちゃ脳が回って、めちゃめちゃ妄想が働いて、行動も発言もすごくできるようになるんですよ。

植松:おそらく、そういう人がいたから人類が進化したんだと思います。

朝山:植松さんみたいな人ですよね。

植松:どっちかというと、僕なんかは技術の一部なんですよ。朝山さんみたいに「いろんな人が力を合わせて新しいことやろう」という、センターに立つ人ってきっと必要なんですよね。そういった人がいろんな人を集めてきて、みんなが力を合わせられる状況ができるんじゃないかなという気がすごくするんですよね。

朝山:植松さんもつながってくれました(笑)。

植松:僕も混ぜてもらいました。やっぱりそうすると、いろんな人とのご縁がさらに広がっていく感じがするんですよね。僕は「会社」と「社会」は同じものだと思っていて、それは「人が力を合わせて、一人じゃできないことをやる場所」なんだと思うんです。

日本の教育では「勝ちなさい」と教えられる

植松:なのに残念ながら、日本の教育では「勝ちなさい」「負けるんじゃない」「やられたらやり返せ」「競争だ」「幸せになるためには勝たなきゃいけない」みたいなことを教えちゃうと、誰とも力を合わせなくなっちゃうんですよね。それはすごくかわいそうだなと思って、もっともっと穏やかに、人が力を合わせられる環境が作れるんじゃないかなと心から思いますね。

朝山:ですよね。わくわくエンジンのプログラムもグループでやるから、相手のことがわかるようになるんですよね。競争じゃなくて尊重し合えるから、お互いを認め合う。そうすると、さっき植松さんもおっしゃったように、クラスのいじめとかもなくなっていくと思うんですよ。

木本:そうなんですよね。「彼はあれが得意だから、ここは任せてみよう」みたいなね。自分はちょっと苦手なところででうまく補完・助け合えるというのもあると思います。

朝山:今日の配信をするのも、植松さんとつなぐプロの末吉さんやウルちゃん(金澤美貴氏)や、裏方でつなぎ合わせてくれるスタッフや、企画をやってくれてるきもっちゃんや、先頭に立って旗を振っている朝山がいたり。そんなみんなの力をつなぎ合わせて、こうやって今、植松さんとつながれてるなって思います。その時にまた、新しいものが生まれてくる予感でわくわくが止まんなくなっちゃうんですよ。

植松:本当だよね(笑)。一人ひとりの力はとっても小さいけど、集めることができるのが人間の強みだと思います。そもそも人間が、なぜ群れを成さなきゃいけないかというと、人は大脳が発達したおかげで睡眠をとらないといけないんですよ。寝てるあいだは無防備で、一人じゃ生きていけないから、仲間がいるんです。

だから人間は本能的に群れるんですが、群れを作るために大事なのは、自分の弱点をしゃべることというか。「自分はこれが苦手だよ」「これができないよ」ということを、しゃべり合う気がするんですよね。

高校生の頃、クラスで成績のいい子たちが、威張ってるわけでもないんだけど……「成績の悪い子たちが、授業の邪魔になっている」と、すごく迷惑な感じのアクションを取って。彼らにとっては、自分より成績が悪い人間は自分にとっての害があるという認識をしちゃうんだろうなという気がして、かわいそうだなと思ったりもしたんです。

「成績」という一部分だけで見ないで、人としてのいろんな能力や、例えばかわいげがあるだけでも、素晴らしい能力だと思うんですけれども。それを発揮できるような、社会やつながりを作っていきたいよね。

朝山:そうですよね。

植松氏が「わくわく」する、3つのこと

朝山:前回のKMP(くさつ未来プロジェクト)のサマースクールで教えていただいたんですけど、植松さんのわくわくエンジンってこれだったんですよ。

木本:「みんなが幸せになるためにより良くしていくこと」。

朝山:というふうにおっしゃってたんですね。もともとは「何が好き?」と聞いたら「紙飛行機」とおっしゃって。「なんで好き?」と言ったら、「ビューンと飛んでいく感じ」とおっしゃいましたっけ。

植松:そうだね(笑)。

朝山:次が「バイク」。「コーナーをグゥーンといくのがたまんない」とおっしゃってたんですよ(笑)。

植松:そうそう(笑)。

朝山:もう1つおっしゃったのが、「きっちりできた時」。

植松:映画の中だ。

(一同笑)

朝山:「きっちりできた時」と「紙飛行機とバイクが好き」ということだけを聞いていたら、植松さんのわくわくエンジンはわからないじゃないですか。「……で?」みたいな感じになる(笑)。興味・関心の対象や好きなものを“名詞的わくわく”と私たちは言ってるんですよ。

だから、植松さんの「ロケット大好き、飛行機大好き、宇宙大好き」という興味・関心の分野は、“名刺的わくわく”なんですよね。そこに夢中になるのは尊くて素晴らしいことだから、子どもたちも大人たちもどんどんハマっていって、オタクになればいいと思っているんですよ。

でもその理由を聞いていくと、結局好きな理由はこれだったんですよね。「みんなが幸せになるために、より良くしていくこと」がわくわくエンジンだと、あの時はおっしゃったんですよ。また変わってるかもしれないけど。

植松:いや、だいたいいいとこいってるんじゃないかな。

朝山:あとね、「より良くなるように追求・探究すること」とおっしゃってました。そこにわくわくエンジンがあるんですよね。

植松:人が加えた力以外で、紙飛行機はぎゅーっと飛んでいくんですよ。その時、きちんとした感じというか、すべてに調和したバランスがそこにあるので、それがすごく美しいんです。オートバイでも、荷重をかけながらコーナーをグッと曲がっていくところも、やっぱり微妙にいろんなものをバランス取っているんですよ。

朝山:バランスね。

植松:ペーパークラフトとかを作っていて、ピタッと合った時も「あぁ、美しい」っていうね(笑)。

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