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思うは招く ロケット開発を実現させた植松努の原動力とは(全8記事)

学校に行けなくても成績が悪くても、誰でも身につけられる“ある能力” 植松努氏「『問題を解決する人』には、絶対に必要なものがある」

人々の主体性を引き出し、生きる力を育むキャリア教育に取り組む認定NPO法人『キーパーソン21』。誰の中にもある、わくわくして動き出さずにはいられない原動力を「わくわくエンジン」と名付け、全国各地のコミュニティと協力して、さまざまな取り組みを推進しています。今回はそんな『キーパーソン21』が主催する「わくわくエンジンEXPO」にて行われた、株式会社植松電機 代表取締役の植松努氏による基調講演の模様をお届けします。本記事では、夢を叶えるための「ある言葉」が明かされました。

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夢は「誰かにしてもらうもの」ではなく「自分でするもの」

植松努氏(以下、植松):もしかしたらみなさんの中には、「まだ夢がありません」と悩んでいる人がいるかもしれません。でも、「そもそも夢って何だろう」と考えてみてください。もしもそれが「幸せになりたい」だとしたら、今度は「幸せって何なの?」という話になります。

例えば「贅沢な暮らし」「有名」「賞賛」「友達」「いいねの数」とか、それって本当に幸せなのかなと僕は思うんですが。これはもしかして、「あなたは幸せだよ」と言ってほしいだけなんじゃないかという気がするんです。

自分の幸せがわからないから、「あんたは幸せだね」と、誰かから言ってほしいだけな気がするんです。そしてこれは全部、「してもらう」なんですが、してもらうことが夢なんでしょうか?「してほしいのにしてもらえない」というのが、“夢が叶わない状態”なんでしょうか? なにかすごく、違う感じがするんですよね。

そもそも世の中は、だいたい思うようにいかないんですよ。台風とか地震もそうだし、ロケット教室の日に雨が降るとか、思うようにいかないのは当たり前のことなんです。「思うようにいかない世界で自分はどうするのか」が、すごく大事な気がするんですよ。

夢って「してもらう」ではないと思っているんです。「会社に入社させてもらう」「大学に入れてもらう」「給料をたくさんもらう」とか、そうじゃなくて。夢は「する」ものじゃないかなと思っています。

だから夢は、「意思」なんじゃないのかと思っています。「夢がありません」という状態を「意思がありません」と考えてみたら、なんだか悲しくなってくる気がしますが、でも実は、そういう状態なんじゃないかなと思うんですよ。

「手段」を「目的」にすると、夢には届かない

植松:では、意思とは何かというと「生きるために必要な、人の行動の原動力」です。ものすごいパワーですよね。こうして書くと、すごく力強い感じがするんだけど……なんというか、僕にとって意思って、こうなんだけどこうじゃない気がするんですよ。

僕の知ってる人たちで、意志が強い人たちはいっぱいいるんだけど、その人たちに「なんでやるの?」と聞いたら、だいたいかなりぼやっとしてるんですよね。なんとなくやっちゃってるので、やらずにはいられない感じなんですよ。ごーっと燃え盛る炎じゃなくて、もっとぽやーんとした感じなんです。

僕の今までの経験からいくと、夢は具体的になればなるほど「手段」になっている感じがします。今、これをすごく間違えてる人がたくさんいる気がするんですが、手段を目的にすると夢には届かないんです。

例えば大学進学だって手段で、夢ってもっと向こうにあるからね。でも気がついたら、大学進学を夢にしちゃっている人がたくさんいます。そうしたら、大学に入った瞬間に(目的が)わからなくなっちゃうんですよ。もったいないですよね。

僕はこの、ぼやっとした夢、柔軟な夢、穏やかだけど強い夢がものすごく大事なんじゃないかと思っています。それを思い出させてくれるのがわくわくエンジンで、僕はわくわくエンジンは意思であり夢な気がしているんです。すごくおもしろいものですから、ぜひ学んでみてほしいと思います。

中途半端だと言われても、夢はたくさんあっていい

植松:そう考えてみたら、僕もちっちゃい頃からいろんなことが大好きだったんですよ。それが全部集まってきて、ロケットを作れるようになって。そうしたらいろんな人が助けてくれるようになって、日本中で少しだけ自分の夢に近づいていってる気がするんです。

これができているのは間違いなく、いろんな「わくわく」なんです。僕の中のいろんなわくわくがたくさん集まって、いつの間にか力になっているんですよ。

だから僕は、「夢は1つじゃないよ。夢はたくさんあったほうがいいよ」と信じています。わくわくも、1つじゃなくてたくさんあっていいからね。わくわくがいっぱいあると、絡まり合って叶っていきます。

夢がたくさんあると、必ず「中途半端」と言われますが、気にしなくていいからね。なにもしないよりも、なにもできないよりも、中途半端だってぜんぜんいいんだから。誰かと比べる必要ないからね。

「私は絵を描くのが好きです。だけど、自分より上手な人がいっぱいいるんです」とやめちゃう人がけっこういるんだけど、今はすごく上手な絵を描いてる人だって、最初はひどかったんだと思うんだよ。誰だってそうでしょう、最初はうまくいかないんですよ。やってたから上手になっただけなんですよ。

誰かと比べてやめちゃったら上達しないから、人と比べる必要はありません。比べるならば、「昨日の自分」や「1年前の自分」でいいと思います。休憩しても寄り道してもいいから、自分のペースでゆっくりゆっくりやり続けていれば、いつか力になるから。「中途半端」なんて言葉に負けないでほしいって思います。

学校に行くこと、成績がいいことよりも大事なこと

植松:これから先、ロボットがじゃんじゃん増えて、あと10年で(人間の)仕事は半分なくなります。でも大丈夫。「なければ作れ」ですね。人生って雇われるだけじゃないから、仕事って自分で作れるんだよ。みんなの身の回りにある、悲しいことや苦しいことや不便なことを、「自分ならどうするか」と考えたら生まれてくるから、ぜひこれを考えて、新しい仕事を作り出してほしいです。

そうは言っても、「作れって言われても難しそう」という人がいっぱいいると思うんですが、だから僕たちは今年から、北海道で新しい専門学校の学科をスタートします。僕はここで、宇宙の技術やロボット技術という最先端技術を使って、「問題を解決する人」を育てたいんです。

「問題を解決する人」には、絶対に必要なものがあるんですよ。それをどうやったら学問として伝えられるんだろうということで、すごく今悩んでいるんです。でも、この3年間でがんばってやってみたいと思います。

今、社会は「悲しいこと」「苦しいこと」「不便なこと」に満ちあふれてます。それを「自分ならどうするか」を考えたら、仕事は生まれます。でも、これを考えるために必要なのが「優しさ」なんです。「優しい」って「優れる」という意味だからすごいんだよ。これこそが、ロボットが持たない能力だから。

だから、学校に行けなくても構いません。成績が悪くても構いません。大事なことは、「昨日よりもちょっと優しくなれているか」なんです。これを目指したら、きっといいことがあると思うから、優しい自分を目指してほしいと思います。

大人にも子どもにも「わくわくエンジン」が必要

植松:去年、くさつ未来プロジェクトさんが主催してくれたサマースクールで、いろんな人に出会えました。そこで出会ったのが朝山あつこさんだったんですが、最初はどんな人かよくわかっていませんでした。

そのあとトークセッションでいろんな話をさせてもらって、僕はそこで「これはきっと、僕が考えたことをうまく具体的にしてくれたものだな」と思ったんです。だからこれを、うちの会社の全員でやってみたいと思ったんです。

そう思ったらすぐにいろんな人が来てくれて、うちの会社の人たちはわくわくエンジンができるようになりました。それと同時に、「自分たちのわくわくは何なんだろう」ということを、彼らがすごく考えてくれたので、とても役に立ちました。

なぜうちの会社の全員で受けたのかというと、これから始まる専門学校にやって来る子たちに、ぜひ「すきなものビンゴ&お仕事マップ」(わくわくエンジンを見つけるワークショップ)を提供したかったからなんです。日本では残念ながら、国公立系の四年制大学が一番てっぺんで、そのあとどんどんランク分けされて、専門学校ってかなり下のほうにあるんですよ。

だから進路の先生にも、専門学校なんて言ったら「えぇ、専門?」とか言われたりします。そんなふうに言われてしまった子たちが来てくれるんです。その子たちがもっともっと力強く羽ばたけるように、自分自身が本当に好きだったものや、やってみたいものは何なんだろうかということに、最初に気づいてほしいなと思いました。そうすればその人たちは、もっと輝けると思ったんです。

わくわくエンジンは、子どもたちにとっても必要なものだと思うんですが、優しいからこそ自信や夢を見失ってしまった人たちにも、必要なものだと思ってるんです。だから僕はこれを、大学などでも提供していきたいってすごく思ってるんです。

ちょっとコマーシャルなんですが、今度の5月12日と14日、東京ビッグサイトで日本最大の教育分野の展示会が行われます。なんていう名前かわかんないけど(笑)、うちの会社の子が「このコマーシャルをぜひしてこい」と言ってくれたので、もらった映像なんですが(笑)。

12日から14日までの間、ビッグサイトにブースを構えていますので、僕らがやっている教育支援事業のコマーシャルを一生懸命します。仲間も募集しますので、ぜひ見に来てくれたらうれしいなと思っています。

思考を停止させてしまう、3つの言葉

植松:母さんが教えてくれた言葉は「考えることをやめなければ、いつかつながるよ」という意味な気がするので、いっぱい考えたらいいと思います。でも、考える時に気をつけてほしいのが、「だりぃ」と「面倒くせぇ」と「意味なくね?」です。この3つを使った瞬間に脳みそが止まるから、気をつけてね。

最後に使ってほしい言葉が、「だったらこうしてみたら?」です。誰かの夢を聞いた時に、わざわざ評論する必要もわざわざ潰す必要もないでしょう。誰かの夢を聞いたなら、「だったらこうしてみたら?」「本屋にこんな本があったよ」と言ってあげたら、元気100倍です。

誰も夢を否定しなくなったら、みんな安心して夢をしゃべれます。そうしたらみんな、もっと仲良くなります。その夢をみんなで支えたら、あちこちで夢が叶うでしょう。

「だったらこうしてみたら?」のたった一言で、足を引っ張らない社会が作れるので、ぜひ使ってみてください。そうしたら、知らない間にいじめや暴力がなくなって、僕はうれしいです。力を貸してもらえたらと思います。

ということで、僕の長い話がやっとこ終わります。長い時間聞いてくれて、どうもありがとうございいました。

(一同拍手)

朝山あつこ氏(以下、朝山):植松さん、ありがとうございます! もう感動で涙が……ちょっとこれ「本番中は泣けないぞ」と思いながら、ずっとこらえてました。

木本文絵氏(以下、木本):私、鼻水出てましたよ。すぐ出るんですよね(笑)。植松さん、5月12日から14日は「第12回教育総合(EDIX東京)」ですね。

植松:そうなんだ(笑)。それです、それです。

朝山:ありがとうございます。

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