2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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谷崎テトラ氏(以下、谷崎):こんにちはー。小島慶子さん、宮台真司さんです。
(会場拍手)
小島慶子氏(以下、小島):すみません。申し訳ないです。私ここに着いたのが6時59分です。
谷崎:はい(笑)。
小島:本当に申し訳ございません。
谷崎:いえいえ、とんでもないです。間に合ってよかったです。はい、改めまして、エッセイストの小島慶子さんです。僕は、もう、TBSラジオの『キラキラ』(注:『小島慶子 キラ☆キラ』。小島氏は同番組のパーソナリティ)とか、さまざまなパーソナリティで活躍されている印象があって。
小島:ありがとうございました。昔、ラジオの番組をやっていたんですけど、その時に宮台さんともね。
谷崎:そして、社会学者の宮台真司さんです。
(会場拍手)
宮台真司氏(以下、宮台):『アクセス』(注:TBSラジオ『BATTLE TALK RADIO アクセス』。小島氏は同番組の初代パーソナリティ)という番組で、よく小島慶子さんにお世話になっていました。
小島:20数年前……。
宮台:どんなゲストを呼んでも、小島さんのほうが頭がいいので、「結局、先生のおっしゃりたいことはこういうことですよね」ってまとめると、「小島さんのまとめではじめてわかった!」というようなことが、よくありましたよね。だから、「ゲスト呼ばなくていいじゃん」「小島慶子、一人でいいのに」って、いつも思っていました(笑)。
谷崎:ということで、今回のテーマはSDGsということで、さっき打ち合わせをしていたら、SDGs以上の深いところまで入っていったんです。まずはSDGsについて、お二人がどのように考えていらっしゃるのか、どのような取り組みをされているかということを、どちらからでもお願いします。
宮台:あのね、「スローガンになっているものはすべて怪しい」とお考えください。
(一同笑)
谷崎:いきなり否定ですか?
宮台:そのようなことを最初に言ったのは、三島由紀夫ですね。
谷崎:はい。
宮台:三島由紀夫は、いわゆる自称天皇主義者が一夜にして民主主義者になったという滑稽さ、これが世界で最大のみっともないことだと考えていたわけですね。その背後にあるのは「一番病」という病気で、周りが天皇主義の空気だったら、「僕が一番の天皇主義者でーす!」と言うクズ。
(会場笑)
周りが民主主義の雰囲気になってきたら、「僕が一番の民主主義者でーす!」と言うクズ。周りがダイバーシティと言っていると、「僕が一番のダイバーシティ主義者でーす!」。周りが#Me Tooの空気になっていくと、「僕が一番の#Me Too男でーす!」。SDGsもそうですよ。
「おっ、SDGs、なんかいい感じ」「僕が一番のSDGs主義者でーす!」ってね。みっともないんだよね。こういうものを、三島由紀夫は「空っぽなあなた」というんです。実は、1960年代に戦後の民主主義を批判して、やっぱり「空っぽな自分たちだ」って言ったのが、全共闘や新左翼の人たちなんだよね。
三島と全共闘は、一部分的に手を組んだんだけどね。しかし三島は、「でも、君たちはその空っぽをどうするんだ? なんで革命を日本でやるんだ? 君たちはマルクス主義なんだろ? なんで日本にいるんだ? 説明しろ、バカ」みたいなことを言った。当然、全共闘は説明できないわけです。だから、基本的には、全共闘との討論会は、三島の圧倒的な勝利だったね。
説明できますか? この三島が言っているみっともなさ、空っぽさ。これを克服するためには、何かとつながるんですね。いろんなものにつながらないと、人間は空っぽさの外側には行けない。言い換えると、本当は、さもしくあさましいポジション取りの外側には行けないんだよね。逆に言えば、実は、テトラさんが本当はそういうことに……。
谷崎:はい。
宮台:(谷崎氏はそういうことに)物事の考え方の出発点を置いていらっしゃる方なんだけど。逆に、「空っぽではない自分になるためにはどうすればいいか」という問題を設定すると、自動的にいろんなものが出てくるんですね。その1つがSDGs。
あるいはダイバーシティもあるだろうし、いろんなことがあると思う。だからそういう意味で言うと、スローガンで語られるメッセージは、すべて、枝、ブランチ、派生的なものです。
その奥にいわゆる、顕教的ではなく密教的な、しかし本当は昔から誰もが伝えてきた真理があるんだと考えないと、三島の言うような「空っぽなあなた」で、また「ダイバーシティか」「またSDGsか」ということになります。
谷崎:いきなりトップギアに入れた感じですね(笑)。たぶん、日本の社会学者のなかで、「SDGsってどうですか?」と聞いたときに、「三島由紀夫」と答える人はほぼいないと思うんですけれども(笑)。たぶん、最後におうかがいする予定の「学びとは何か」につながるお話になるのかなという感じがしました。
後ほど、その辺の話を少し聞きたいと思います。小島さんはSDGsのバッジをつけていますね。
小島:はい、そうですね。
谷崎:SDGsはどうですか?
小島:SDGsについては私、「これはいいものが現れた」と思ったんです。世の中でわりとSDGsと言われるようになって、新聞でもよく見るようになったのって、本当に去年の始めとか一昨年の終わりぐらい。やっと一般の人が「聞いたことがある」という。
谷崎:はい。
小島:(SDGsの知名度は)そのぐらいになってきましたが、私は1972年生まれで、ちょうどアメリカの選挙などを見ていると「民主主義は素晴らしい」と言われていて、「民主主義というものが世界を平和にしたんです」と習ってきて、「そうなんだなー」と思っていたんです。
そういう「いろんな人がいるけれども、だいたい(の人にとって)、これはいいよね」と言われていたものが、そうともばかり言えないらしい。選挙制度とかいろんな要素はあるにしても、民主主義は、そんなに何でも解決してくれる“夢の処方箋”じゃないんだなと知りました。
でも「じゃあ何?」と言われると、こんなにバラバラな私たちが、こんなにどこまでも地続きでつながってしまっていて、その反動で宮台さんが言うところのいろんなクズが、非常に出てきてしまった。
谷崎:(笑)。
小島:「どうやって生きていけばいいのかしら? できれば人とケンカしないで平和に生きていきたいわ」と思っていたら、SDGsというものに出会いまして、これはなんだか素晴らしいと思いました。なぜならば、どれだけ政治的信条や主義主張が違っていても、とりあえずこの地球から引っ越せないということは、全員一緒じゃないですか?
谷崎:うん、地球から引っ越すことはできないですよね。
小島:そうですよね。なので、「本当にここ以外には住めない」というところは全員同じ。そうなったら、一応いろんな違いはあっても、全員引っ越せないから、なんとか住んでいかなくちゃならないでしょう? そのために何ができるかな、と考えるんです。
宮台:その切り口が非常にいいなと思いますね。日本にいる、いわゆる財界・政界・官界のエリートたちは「船が沈む? 別に構わねぇ」「もう日本は沈むことは確定だから」って、霞が関の官僚の大半はドル預金しているよね。もう預金は円では持っていない。
小島:へぇ。
宮台:だって25年間、ひたすら実質賃金が下がっているのは日本だけですよ。潜在成長率はアメリカ2パーセントで、日本0パーセント。最低賃金はヨーロッパで1,200円~1,400円ですけど、日本は800円。もうすべての経済指標で日本はボロボロで、役人たちはみんなそれを知っているので、日本は間違いなく沈む。5G特許も、日本は中国の7分の1以下しか持っていない。アメリカでさえ中国の3分の1しか持っていない。韓国は日本の3倍持っているっていうね(笑)。
だから、次世代テクノロジーはもう日本はアウト。いわゆる自動運転車の特許も、2018年に中国が日本を抜いた。以上。ということで、日本はもう終わるんです。
谷崎:はい(笑)。
宮台:実は、「狭い地球だから、みんなで仲よく暮らさなきゃダメじゃないか」というときに問題になるのは、時間軸なんですよ。
小島:時間軸?
宮台:そう。「俺が目の黒いうちに沈まなきゃ、後はどうなろうが構わねぇ」(というような考え方)。
小島:まぁ。
宮台:これは原発行政に象徴されますよね。
小島:なるほどね。
宮台:なので実は、SDGsのもっとも大きな柱の一つは、時間軸なんですよね。子々孫々のために、大切なものを残す。あるいは別に人間だけではなくて、生きとし生けるものの子々孫々は自分の仲間だ、と思えるかどうか。
「持続可能な成長が、目標として重要である」という抽象的なスローガンはどうでもよくて、感情が働くかどうかなんです。あるいはその感情の働きが、我々を空っぽにするような従来の時間軸とは違う時間軸をもたらしてくれるかどうか。それだけがポイントですよね。
小島:でも……。でもというか、本当におっしゃるとおりです。すごくいいなと思ったのが、よくわからないけど、(SDGsは)いろんな人たちでシェアできることです。「とりあえず、これはみんなにとって、全員にとって利益があるよね」と言える一つの概念であり、それが常に、観念的なものではなくて17の項目に具体化されていることですね。
谷崎:そうです。(17の項目のもとに)169の指標ですからね。
小島:それで、すごく身近なものじゃないですか。本当に自分が「あっ、じゃあとりあえず今日からちょっと、ペットボトルをやめようかな」ということや、「じゃあちょっと、教育について考えてみようかな」というふうに、今まで離れたところにあったものがSDGsという枠のなかでつながっていって、すごく身近なところから10世代後の人たちのことまで、全部つながっています。
本当に時間軸もそうだし、自分からの距離もそうだし、身近なのか、身近ではないところにあるのかって、全部のスケールが入っていて、すごくよくできているなと思ったんです。どんなレベルからでも参加できるのがいいなと思います。
谷崎:おっしゃる通りですよね。2030年までに、17の領域でそれぞれどうなっていてほしいかというか、簡単に言えば「サスティナブル」という言葉で言われるような、持続可能社会というもの。これがこのままで続いていくといいな、ということではもうないんですよね。さっき宮台さんがおっしゃったように、日本もこのままではだめかもしれないし、僕たちは「地球1個分」の生活をしていないわけですよ。
エコロジカルフットプリントで言うと、日本人は地球3個分の生活をしているわけですね。地球は1個しかないわけだから、3個分の生活をしたらダメです。それについては具体的な目標を決めることによって、それがちゃんと達成されれば、おそらく22世紀、23世紀、そして、7世代先の未来までつながっていくことになると思うんです。そういうSDGsのなかで、今回はとくに教育というテーマを……。
小島:そうですね。
谷崎:お二人は最近、教育に関してとくに熱心に発言されている印象を持っているんです。ちょっと教育に関してお話しいただけますか。
宮台:この三人の共通性は、自閉症スペクトラムでしょう。
小島:私の診断名は軽度のADHDですけど(笑)。
宮台:それもDSM-5(注:米国精神医学会より刊行されたマニュアル)によると、自閉症スペクトラムに入る。
小島:自閉症スペクトラムのなかに入るんですね。
宮台:入るんです。我々の共通点ですね。特定不可能な広汎性発達障害、これが僕の病名、症状名ですが、これも入ります。これらは、ご存知のように「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」と呼ばれていて、今は異常ではないということになりました。人口の1割以上を占めるということで、人類のサバイバル上で重要な役割を果たしてきたんだろうと考えます。決まりを守れない、空気が読めない、約束どおりの時間に来ない。
小島:申し訳ございません。
谷崎:ははははは(笑)。
(会場笑)
宮台:だいたいこの三人は同じですね。これは、実はそういう人がいないと困るんです。みんなが「やめようよ、危ないよ」と言うときに、「知るか、そんなの」って。
谷崎:宮台さんと小島さんのトークということで、ストッパーに僕があてがわれたんです。僕はストッパーの予定ですが、ブレーキじゃなくてアクセルを踏みますよ。どこまでも突っ走っていきましょう。
宮台:例えば今の中国は、クレジットスコアと顔認証で、本当に賞罰を最新のシステムでコントロールしようとしている。中国って今、環境対策に熱心なんだよね。そのSDGsの環境、あるいは持続可能な地球を残すという方向性を、そうしたAIを使った賞罰のシステムで実現しているとすれば、それはいいのかということを考えてほしいわけですよね。
谷崎:評価経済……。
宮台:やっぱり僕は、感情的に「それは大事だ」と思うから実現する、ということでないと、意味がないと思う。要はさっきのように、ポジション取りのために「はい、僕は天皇主義でーす!」と言うのと同じじゃん。
中国は今、ポジション取りをしないと、クレジットスコアが下がっちゃうわけです。中国はもう今、出会い系先進国ですから、必ず自分のクレジットスコアを見せるって……(笑)。大変な社会でしょう。それで持続可能なって……本当にクソ社会だよね。だからやっぱり、キーワードは感情。実は、テトラさんが本当の正体を隠しているんです。
谷崎:えっ!?
宮台:シュタイナー教育専門家でもあるし、象徴哲学研究者でもある。
小島:あらすごい。多才ですね。
谷崎:今日はお二人のトークだから、僕に構わなくてもいいのに。
宮台:(テトラさんは)もともと僕たちに、どういう感情の能力があり、どういうものとつながる能力があるのか、ということを研究する。僕もそういうことをずっと研究してきたので、やはりそういう共通性があったかということです。いかにもスペクトラム系っぽいじゃないですか。
小島:そこに落ち着くんですね。どこに行くんだろうなぁ、と思っていました(笑)。
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