2024.10.10
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大谷晃司氏(以下、大谷):ここからイノベーションについていくつか分けてお話を進めたいと思っております。
まず最初のテーマの1つ、「起業、課題解決」と挙げているんですが、ここにいらっしゃるみなさんはイノベータ―に近いのかなと思っておりまして。何か課題を感じて、その課題を解決するために起業をしたという方が多いかと思うんです。
そういう方に対してなぜそれができたのか。動機ですとかそういったものをまずお聞きしたいなと思っておりまして。それを順番に椎野さんからお聞きしてもよろしいですか?
椎野真光氏(以下、椎野):はい。我々GameBankはYahoo! Japanとインキュベイトファンドのサポートを受けて設立されたゲーム会社です。
Yahoo! JAPANはご存知のように、これだけすごいインターネットに対する大きなパワーを持っているんですけれども、ゲームは、制作手法や資金のかけかたなど、既存のインターネットのサービスとは何から何まで違うわけで、それらについて独立した意思決定をできるようにするには、別の会社にしてしまったほうがいいだろうという結論に至り、Yahoo! JAPANのゲームアプリ事業を担うGameBankを設立することとなりました。
Yahoo! JAPANの中のビジネスの、今でしたら広告のビジネスから考えると、こういったBtoCのエンドユーザー向けのゲームコンテンツをリリースするための、結局体制とか理解とか、そういうところがなかなか得られませんでした。
また前職セガ、現セガゲームスですけれども。そちらのほうはそれまでのコンシューマーのパッケージングのゲームからフリーゲームと言われている、一部のユーザーが多くのお金を払ってくれることで成立する、そういったゲーム性に対する理解も低かった。
これを変えるために前職では、スピード感を。一番重要なのはやっぱりスピード感だと思っていますので、いろんなものをトライして失敗してそういったことを迅速にできるように、会社として前職のセガネットワークさんを起ち上げました。
椎野:今回Yahoo! JAPANの中では、その辺の説明をするための時間、コストですとかそういったものを最小限にするために、GameBankという形で切り出しを行いました。この切り出しを行うことで得られたものは、今申しましたようにやっぱりスピードだと思っています。
これまでのビジネスの中で培われたいろいろなノウハウみたいなものが、新しいビジネスを行おうと思ったときに、それが逆に阻害になるということも多くありまして、これが今GameBankでは取り払われて、Yahoo! JAPANの中の送客という部分を、最大限に強みとして生かしながら、スピード感を得ております。
そういった意味で我々としては、単純に大きい会社から事業を切り出すというところで、イノベーションを生み出すことを考えております。
大谷:ヤフーさんというと、やっぱり爆速経営ってイメージがあるんですけど、その爆速のスピードは遅かったんですか?
椎野:爆速ではあるんですけれども、その爆速を枝葉末節まで行き渡らせて、組織自体を大きく変えていくためには、どうしても慣性の法則的に時間がかかったりとかします。
今僕らが求めているゲーム業界っていうものは、デバイスが変わるとゲーム性も大きく変わってきますので、そこをキャッチアップするためのスピード感を我々が得るためには、どうしてもやはりそこは、まだまだ足りない。
爆速をもっとさらに早いようなスピード感で進めたいということで、スピンアウトしたと。
大谷:ランサーズさんの、時間と場所に捉われない仕事っていう発想自体っていうのは、いつぐらいからお持ちだったんですか?
秋好陽介氏(以下、秋好):そうですね。発想は2006年ぐらいから思ってましたね。実際に起業したのは2008年4月ですけども。
私、冒頭申し上げた通り、自分自身が学生のときに、学生ベンチャーをやっていて、大阪だったんですね。フリーランス的に働いていて、フリーランスの良さっていうのを自分自身がわかっていた。
その後、IT系の会社に入る中で、いろいろな発注をしてたんですけども、大手の企業だったので、結構いいデザイナーさんじゃないですけど、人月単価の高いところに発注してたんですよね。この稟議書を見たときに、ちょっと待てよと。自分の知り合いのフリーランスのエンジニアとかデザイナーさんは、たくさん知ってたんですよね。
その方々に発注することができれば、企業側としては、安くて早くてクオリティがいい。個人のフリーランスからしても、前職富士通系だったんですけども、富士通から発注を受けるというのは、ポートフォリオになるし、単価もいいんですよね。
実際に数十万の仕事を、1週間ぐらいで終わる仕事が発注できたりしたんですよ。ここを結び付けたら世の中変わるなと思ったんですね。そういうサービス、インターネット上に土台はあるよねと。
私こう見えてエンジニアで、ググり力が半端なくあるんですけども、Googleで2006年当時、検索に検索を重ねたんですけども、1件もなかったんですよ。そういうサービスが。これはもう見つけちゃったと思って、1年半後に起業したっていう形ですね。
大谷:海外では、そういうのありましたよね。
秋好:そうなんですよ。特に中国のほうが発展してたんですけども、日本語での検索能力しかなくて海外にあるっていうのは実は知りませんでした。自分が世界で最初に見つけたと勘違いしてました。
(会場笑)
大谷:そういう意味では本当に、日本で自ら新しい仕事を作ったっていう。
秋好:そうですね。ただ作ってみて、理想は高いもののなかなかインターネット上で仕事を発注するって「本当に大丈夫?」と。「トラブルないの?」っていうところで、8年に比べるとまだまだなんですけども、3、4年はかなり苦しい状況でした。
最初の1年は売上10万円ぐらいでずっといっていたので、いつ資金が尽きるのかっていうのと、あきらめなかったっていうのが、一番大きかったかなと思いますね。
大谷:ジェイソンさんにちょっとお聞きしたいんですけども、米国のテラスカイIncの代表をやってらっしゃるっていうことで、向こうにクラウドソーシングですとか、弁護士ドットコムのサービスって、あったりするわけですよね、きっと。そういうところって、どう見ていらっしゃるんですか?
ジェイソン・ダニエルソン氏(以下、ジェイソン):それは普通にありますね。先ほどスライドにも出てたんですけど、ElanceとかoDeskとかは、昔からちょっと栄えていますね。
大谷:やっぱりすぐ受け入れられたんですか、そういうのは。やっぱりインターネットで仕事を発注するとかっていうのは。
ジェイソン:法人的にですか?
大谷:個人的にもですし、あとはやっぱり企業としても伺いたいんですけども。
ジェイソン:そうですね。企業では特に大手のところがそのサービスを使うのは、まだそこまででもなかったかもしれないですね。僕がアメリカにいた頃。
でも増えていってるかもしれないですけど、あくまでも限られたパッケージでもらえるような、例えばデザインとか完全に開発したもの、動いてるものがもらえるとか、そういうようなものに限りますね。大きなプロジェクトではあまりそういうサービスは使われないかもしれないですね。
大谷:じゃあその辺は日本にもかなり近いというか、先行してたけれども、やっぱりすごい近いって状況なんですかね。日米で比べると。
ジェイソン:そうですかね。でも、どうでしょうかね。日本だとデザインとかもあまり使わないイメージなんですけど、違いますかね。
大谷:人材の問題かもしれませんね。
大谷:次のテーマなんですけども、人材の話をしたいなと思っておりまして、やっぱりそういった人がイノベーションを起こすという意味では、1人の人間ではイノベーションは起こらないんですね。わりと自分が一緒にやる仲間ですとか社員ですとか、そういう方と一緒にやっていくのが、やっぱりイノベーションを起こすのかなと思うんですけども。
その点、ゲームを開発しているお立場で、例えばクリエイターがいてプログラマーとかいっぱいあると思うんですけども、そういった人材ってどう見てらっしゃるのかなってところを聞きたいんですけども。
椎野:そうですね。ゲーム開発における人材は、例えばプログラマーとプランナーの関係性に代表されるような、コミュニケーションを密に取らなければならないとかの仕事と、あとデバイスとかを発注するような、大量の素材を用意する、大きく分けて、その2つのブロックに分かれます。
それらを束ねるプロデューサー、ディレクターっていう能力は非常に重要で、我々としては特にプランナー、プログラマーのコミュニケーションの中核になるような人材をどういうふうに集めていくのかと。
ちょっとゲームから外れるんですけども、クリエイティブっていう意味では映画産業でいう宮崎駿さんとか、最近だと河瀬直美さんであるとか、ああいった中核となるクリエイターたちをどういうふうにその中で培っていくのかみたいなのは、1個課題としてありますね。
大谷:そういう人を育成するっていうのは、どういうふうに育てるんでしょうか?
椎野:これは、日本の場合は叩き上げ。
大谷:叩き上げ。
椎野:はい。セガの時代もそうだったんですけれども、例えばディレクターでプランナーってポジションから大量な作業をこなす上で、芽が出る人を丁寧に会社の中で守りながら育てていくみたいな。そんな感じでしたね。
大谷:ランサーズさんはやっぱり人材集めるってことがすごい重要だと思うんですけども、その点ではどう。
秋好:そうですね。鎌倉にいたときは、かなり苦労したんですけども。鎌倉、東京から90分ぐらいかかるんですよね。「ランサーズという会社には興味あるが、鎌倉まで行くのか」っていうのがみなさんあって。
ただ逆にそれを、「鎌倉フィルター」って呼んでたんですけど、そこまで来て働きたいと思ってくれる人が、ビジョン企業理念への共感がありますし、そういった方たちには今でも活躍してもらってますね。
ランサーズの1つ特徴的なところで言うと、何十万人と会員様がいらっしゃいますので、その会員様っていうのは、ランサーズのことをすごく知ってる方々なので、その会員様に、一緒に働こうと働きかけて、社員にしてるっていうケースがかなり多くて。
なので、社内で10人から15人ぐらい、特にサポートスタッフは、実際にユーザーさんに社員になってもらってるっていうのは、他社さんにはあまりないかなと思いますね。
大谷:わかりました。
大谷:ジェイソンさん、ちょっとお聞きしたいんですけれども、イノベイティブな人材といった場合、例えばアメリカの場合っていうのは、どういうふうなイメージがあるんですか?
ジェイソン:日本だと、改善できる箇所をいくつか挙げますと、会社の中は団結が強いと思いますけど、ある層の方には少し働きにくいと思いますね。例えば、子持ちの母親だったりすると、あまり柔軟に対応できないので。あと外国人もそうかもしれない。こういう活躍できるような人材が、たぶん少子化の影響でどんどん少なくなっていってますね。
それを他の人、それに当てはまらないような人も、活躍できるような環境を作らないといつか回らなくなると思いますね。
大谷:日本でその多様性とか、ダイバーシティーとかの言葉で、そういった女性だったりですとか、あと高齢者ですとか、もしくは障害を持ってたりとか、いろいろな雇用をするとか、そういう企業もいっぱいあるとは思うんですけども、なかなかそれって実現する環境がなかったとして、そういう部分もあるかと思います。
例えばランサーズさんなんかの場合だと、きっとそういう方に対して職場を提供するっていうこともやっていらっしゃるようなイメージもあるんですけども、その辺どうなんでしょう。
秋好:そうですね。実際に働いてる方、地方の方なので、地方にいながら働いているというところと、お子さんがいらっしゃる、特に赤ちゃんが小さい方だと、なかなか外に出て働くっていうのも難しい方が多いですけども、お子さんが寝たあとに2時間って、実際に働いてる方もいらっしゃいますし、そういった方っていうのは、すごく今増えてますね。
ランサーズを創業した当時、ほとんどユーザーさん、フリーランスの方だったんですよ。ただ、今フリーランス率って半分ぐらいになっていて、それじゃどういう人が増えてるかっていうと、主婦の方と、サラリーマンしながら副業というか、空いた時間に働いてる方、ここが急激に今増えてるんですよね。
大谷:ちなみに副業という意味では、ジェイソンさん。厚切りジェイソンさんは副業なんですか?
ジェイソン:いいえ。極力、楽しく両立いたします。
大谷:次のテーマは「組織」なんですけれども、そういった多様な人材が活躍できる組織っていうのは、一体どんな組織なんだろうっていうのは、みなさんどう考えてるのかをお聞きしたいんですけども、椎野さんどうですか?
椎野:はい。ゲーム業界は、会社規模感にもよるんですけれども、一昔前は1つの会社で全て上流工程から下流工程までこなしていました。
ただ最近は、規模感の大きい会社ですと、その優秀な人材がフリーランス的にいろいろ小さい事務所を作ることが多くて、そういった方たちを上手く取り込みながら、スケールの大きいビジネスというか、開発をしていかないといけないっていう状況も増えてきました。
特に最近、2005年から2010年ぐらいにかけて、比較的その独立開業する敷居が大きく下がった印象があります。非常に大手で優秀なクリエイターが、まさにそういった事務所を作っていたりするので、今、社の中でも取り組んでいるタイトルでも、そういった方たちが上手く入って、コンテンツを作るような環境に徐々にシフトしていくというふうになっています。
大谷:そういう優秀な方が出て行かれて、自分で組織を持ち、そういうのを作って、そういった優秀な方が集まる、束ねるチームを作るっていうこと自体が、組織といますか、そういった状況を作るっていうのが、椎野さんのお立場ということになるんですか?
椎野:そうですね。特にクリエイティブに関しては、堅い組織ももちろん重要なんですけども、それよりも外部の優秀な人材を受け入れながら、そのクリエイティブの質を高めるっていうことを同時にやっていかなければならないと思っています。
なので、基本的に映画産業、特にハリウッドとかの映画産業って完全に分業化されていて、いろんなスペシャリストが入ってくるような、そういう世界的なコンテンツを作っていると。日本のゲーム業界においてもそういったものが徐々に入ってきてるという印象はあります。
大谷:ランサーズさんの場合は、ランサーズさん自体、登録した人がどんどん多様化してると思うんですけども、そういう方を実際に企業の方が、仕事をお願いするわけですよね? 将来的にはやっぱり、その企業のほうを探していくっていうのもあるんですか?
秋好:そうですね。まずランサーズの中で働くのは、多様というか、オンラインで仕事をするという世界ですね。
我々ランサーズ自体も、日本全国、アメリカ含めて、テレワークでやっていたり、会社の中にも、ヨーロッパ出身の方とか、アジア出身の方もいて、女性も4割ぐらいいて、幹部にも女性がいて、それだけ言うと、「ビジョンのために建前でやっているのか」と言われることがあります。
でもそうではなく、それこそが大きな誤解なんだと。ダイバーシティーや多様化について普通の企業はこういうものを、福利厚生的に捉えているんですね。
そうじゃなくて、こうすることのほうが、優秀な人材を採用することができるんですよ。我々で言うと、週4日勤務とか、週3日勤務などの限定的な働き方やテレワークなどが可能です。ベンチャー企業だと採用なかなか難しいですが、そういった多様な仕組みを用意することが、競争戦略上有利なんですよね。
なのでリーダー、社長、経営者自体がそこに早く気付くことがものすごい大事だと思っています。今日本の新卒では、インターンして新卒採用するのは普通になっていますよね。でも、10年前はインターンしてる企業って先進的で、採用競争力あったはずです。
そんな形で、2020年、2030年を見たときにダイバーシティー、多様な仕組みをもつ企業は普通だと思います。ただ、今やることには、優位性がある。特に日本においては特に感じます。
なので、そこは積極的にすることがいいんじゃないかなというか、我々はそういうスタンスで、もちろんビジョン実現っていう観点もあるんですけど、やらしていただいてるっていう感じですね。
大谷:多様性と、そういう意味では、アメリカは一番進んでるという気もするんですけども、例えば新卒の話が。採用の話があるんですね。新卒を採用するっていう意味でも、やっぱりその日本の企業と米国の企業って、すごく違いがあると思うんですけれども。
ジェイソン:いや、日本の新卒採用はかなりおかしいと思いますよね。「大手に入りたい、ここで面接します」となるんだけど、そのあと何をやるのかは、その会社が勝手に決めるわけですよね。
アメリカだと、こういうものを4年間大学で専門してずっと勉強してきたから、すぐ活躍できるようにこういう仕事をやるために、ここと面接しますと。それは根本的な違いですね。
大手に入ってから、もう1回完全に教育を受け直す時間はすごい無駄ですし、効率悪いですよ。アメリカだとそういうのを大学でもう習ってるから、いきなりこういうようなプロジェクト、真面目なプロジェクトに入ってもらってます。
大谷:給与も違うって話ですよね。新卒で入る前っていうのは。
ジェイソン:お給料もアメリカは完全な実力主義なんですよね。できる人前提で採用されてて、それでできなかったら、もう首切られます。
なんだけど、最初はみんな平等に低い給料からスタートし、少しずつ、できてもできなくても給料が上がっていくのではなく、できる人はどんどん修正して、マネージャーとか経営になっていて、できない人は代わりにもう首切られて、どこか他の向いてることをやらせることが多いんですね。
大谷:たぶん日本で代表権があるのはたぶん椎野さんかと思うんですけど、それってやっぱり意識がありますか?
椎野:そうですね。先程お話したように、ゲーム会社は、比較的最初はいろいろ学ぶために、低い賃金でいろんなことを学ばせて、徐々に育てていくというような部分があるので、そういう意味では、特に今ジェイソンさんがお話あったように、アメリカとは全然そのスタイルが違うなっていうのはすごく感じますね。
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