2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
宇野常寛のオールナイトニッポン0 1月31日放送回(全1記事)
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じつは、昨年末に番組にいただいて読み上げたメールがずっと僕の中に引っかかってるんです。これもう一回読みますね。ラジオネーム、えちじゅんさんからいただいたメールです。「宇野さんにアドバイスをいただきたく初メールです。現在、金融機関のコールセンターで働く35歳です」僕と同い年なんです。そういうこともあってずっと心に残ってたんですけどね。
「ATMが故障したときに一時対応したり、ATMの操作方法がわからない利用者さんからの問い合わせに対応したりする仕事をしています。派遣社員として4年間勤務していますが、いま退職を考えています。やればやるだけ自分の対応スキルの低さに小さく落ち込むからです。利用者と通話しながら最善策がなにかを判断する必要があるのですが、その自分の判断にいつまでたっても自信がもてません。勤務しはじめたころは、この職場で長く勤務できたらいいなと考えていましたが、いまではそう思えなくなっています。この場合、宇野さんならどう考えますか?」
このメールを読んだとき、正直うまく答えられなかったと思うんです。
僕の記憶では、えちじゅんさんに対して具体的なアイデアを2、3個試してみたらいいんじゃないかと。もっと頑張ろうとかもっと気をつけようとかではなく、具体的にチャートとかつくって、こうしたらうまくいくんじゃないかってことを、半年なら半年って決めて、スキルアップしたと思ったら続ければいいし、無理だと思ったらやめればいいって言ったと思うんです。でもこれって、いっけん具体的だけど、根本的な解決になっていない気がするんです。
このときにうまく答えられなかったことが心残りで、年末年始にずっと考えてたんです。それで、これは僕には無理なので誰かの力を借りるべきなんじゃないかって思ったんです。僕って評論家にして編集者じゃないですか。プレイヤー兼プロデューサーなんですよ。ウィザードにしてサモナーなんです。AKBでいうと指原莉乃ですよ! メンバーにして支配人みたいな感じで。
ということでですね、今夜は、僕が考えるかぎりもっともこの問題に答えるのにふさわしい人を呼んできたんです。なんと、転職10回のスペシャリストですからね! マッキンゼーからはじまって、リクルート、ドコモ、僕が会ったときはグーグルにいたんですけど、いろんな会社をめまぐるしく渡り歩いて、いまは楽天の執行役員をやっていらっしゃる方です。それでは、紹介します。楽天の執行役員でチェックアウト事業長の尾原和啓さんです! 尾原 どうも、こんばんはです!
宇野 今日はよろしくお願いします! いきなり呼んじゃってすみません。
尾原 いえいえ。僕はカプセル怪獣みたいなもんですから(笑)。
宇野 この問題に答えるには、もう尾原さんしかいないと思って、いきなりLINEしたんです。「尾原さん、ちょっと……ラジオきませんか?」って。そして深夜3時に無理矢理引っ張ってきたって感じなんですよね。
尾原 スタンプで「了解」って返しましたね。
宇野 転職10回で僕の中ではザ・転職マスターみたいな(笑)。なので、この問題に関しては彼に聞くしかないと思ったんです。で、尾原さんだったらどう答えます?
尾原 これね、宇野さんがここに引っかかったってすごく正しいと思っていて、半分しか答えてないんですよ。
宇野 半分?
尾原 うん、この職場においてどうやっていくかってことに関しては正解なんです。でも、そもそもコールセンターってものが日本からなくなっちゃうかもしれない。
宇野 なるほど!
尾原 世の中の変化に対する漠然とした不安を感じてるんじゃないかなって思ってて。わかりやすく言うと、インターネットの力で土地ってどことどこ関係なく結びついちゃうじゃないですか。だから、いまアメリカの中ではコールセンターで働く人っていなくなってきてるんですよ。
宇野 どうやって仕事してるんですか?
尾原 アメリカのコールセンターって、みんなフィリピンとかインドネシアとか人件費が安い国に全部移っちゃてて。そこで、いかにもアメリカの人がアメリカの中で受け答えしてるんだなって思ってるかもしれないけど、実はみんなフィリピンとかで答えちゃってるんです。でね、そうするとアメリカの中でコールセンターという職がなくなる。そうなると、コールセンターの技術を日本の中で留めていたって意味ないわけですよね。その人がフィリピンで住みたいって思わない限りはね。っていうのが、元々の変化です。
この方はATMの操作っていうじゃないですか、故障したときとか。ATMって、完全に故障しなくなるってこともありうるわけですよね。レガシーのシステムって、昔のシステムのことをいうんですけど、そういうのってどうしてもメンテナンスの時間がいるっていうのが前提条件だったんですけど、いまのコンピュータってそもそもクラウドっていってネットのどこにあるのかわかんない国で働いていて、たくさんの機器が一度に動いているから一台が倒れたとしてもすぐに別のものが動いてるんですよ。例えばグーグルって、みなさんが検索しているものがいまはインドのサーバーにあるかもしれないし、スイスのサーバーかもしれないっていうふうに、世界中のどこのサーバーで動いてるか僕らもわかんないですよ。で、これがどうなってるかっていうと、グーグルの中で一番深刻な問題って……電気代なんです。
宇野 電気代(笑)。
尾原 むちゃくちゃサーバー動いてるから電気代が一番問題じゃないですか。電気代が一番安いのが深夜なんです。だから、世界中に深夜って常にありますよね。いまの時間だったら日本。深夜の国でサーバーを動かすってのをずーっと追っかけてくんですよ。そうすることによって、電気代が一番安くなるようにする。もう場所とか関係ないんですよ。そういうふうにいまの世の中って、日本の中で当たり前にあるってものがなくなるかもしれない。そもそも論で、その仕事に対するニーズみたいなものがなくなってしまう。
宇野 つまり、テクノロジーが発達するとほとんどの仕事はなくなっていくので、スキルの習熟なんてことを考えても本質的な解決にはならないってことですよね。
尾原 おっしゃる通りです。仕事がなくなったら意味ないですよね。
宇野 なるほど。でも、仕事がなくなると困る人っているんじゃないですか? そういう人はどうすればいいんですか?
尾原 そういう人にはふたつ答えがあって、まず「仕事ってしたいものですか?」ってことがあるじゃないですか。
宇野 まあね、僕も本当だったらガンプラつくってAKBのDMM動画だけ見て生きていきたいですからね。
尾原 でしょ。そのときに、世の中の経済って付加価値が生まれていればそこにお金が生まれて、それによって人は飯食って生きれるわけです。だから、自動化して付加価値が生まれれば別に人は働かなくていいんですよ、極端な話。これって宇野さんとよく話してる「日本って年収がどんどん下がってるんだけど、年収300万くらいで年収600万くらいの暮らしができる」「究極の形が年収0でも年収400万の暮らしができる」みたいなことがありうるわけですよね。
宇野 つまり、テクノロジーによって一人当たりの生産力が上がっているおかげで、働かなきゃいけない人間の数自体が減っていく。だから、仕事を趣味にしているひと握りの人間が働くだけで、他の人間は働かなくてもよくなる世の中にどんどん近づいていっている。
尾原 そういうことですね。ただ、それをいいって思うかどうかですよね。僕なんかは働くのが大ッ好きな人間なんで、その中でも一番面白くできるところっていってプロジェクト単位で転職しながら前はグーグルにいましたけどいまは楽天で働いている。
宇野 そのときに多くの人が疑問に思うのが、そんな世の中ってすぐにこないじゃないですか。だったらこの2014年は、例えばコールセンターでもいいんですけど、「この先なくなってしまうかもしれない仕事についている人はどうすればサバイブできるんですか」ってことをみんな知りたいと思うんですよね。そこに関して尾原さんどう思うんですか?
尾原 それはですね、さっき言った前半の宇野さんの答えは合ってたって話なんです。宇野さんの答えって、まずなにかをトライしてみて、その中で自分が成長するかどうかをちゃんとやってみようよってことをアドバイスしたわけじゃないですか。で、実はこれがすごい正解なんですよ。なぜならば、たまたま僕はコールセンターについての事情を知ってたから日本も場合によってはなくなると言えたわけなんですけど、なにがなくなってなにがどう変わるかなんて誰もわかんないわけですよね。
だとすると、変わるということを前提とした中で今なにが一番オイシイんだろうと。いまここに取り組むと、この問題を解決するかもしれないっていう、実は問題っていうものを発見する能力だったりとか、いまこれをやると新しいものができるっていう課題を発見する能力ですね。
宇野 究極的にコールセンターの仕事でもなんでも、「この仕事ってフィリピンに移したら安くね?」とか「この仕事っていずれ自動化できるんじゃないか」とかを発見できる人間になれと。そういった人はいま非常にニーズがあるってことですね。
尾原 そうです。こういうことをやってるのって、日本の中では編集者が多いんですよ。じつは宇野さんが、現代に必要なスキルをもっているんじゃないかなって。
宇野 あっ、はい。ありがとうございます(笑)。でもちょっと衝撃ですね、その仕事がいずれなくなるかもしれないから他のことを考えたほうがいいってことですよね。
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