2024.10.10
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前島恵氏(以下、前島):次はラストですね。『はじめての編集』という、改めて編集っていうキーワードに戻ってきました。小川君のほうからお願いします。
小川未来氏(以下、小川):菅付雅信。僕がこの1年間弱アシスタントをしていた編集者で、僕が良く知っているので、説明したほうがいいでしょうと。いろいろなマネタイズとか、あるいは個人のキャリアプランの話もしてきて、メディアの多様性、Web、紙、テクノロジー、広告、いろいろなものが多様に変化している中で、編集って何だろうっていうところが、すごくわかりづらくなっているっていうのは、前島君が最初に言ったことは改めて繰り返させていただきます。
各々違っていていいとは思うんです。けれども何かしらのベースが必要だろうと思っていて、編集の定義、あるいは編集の今までの歴史、これは残念なことなんだけども、そういった本は実は少なくて、僕はやっぱり「編集者がやりたい」とか、「編集者になっていいのか、俺」って迷っている人には、菅付のこの本は本当にお勧めしたいと思っているし、菅付と知り合う前から僕も読んでいた本で、より一層、編集者に憧れるきっかけになった本でもあるので、ぜひ読んで欲しいし、これからもうちょっと説明もしたいなと思っています。
前島:はい。この本の中の編集の定義は、3つあると。
小川:「企画を立て、人を集め、モノをつくる」これすごく実は本質的。ざくっとしていて、これ何でもオッケーだろみたいな感じがするんですけれど、過不足ないと僕は思っています。これ以上大きくしても編集から外れるし、これ以上小さくすると、恐らく編集の本質を突けない。
特に今の現状で僕が思うのは、この「人を集め」って部分。何でかって言うと、最初に前島君、あるいは佐藤慶一君からお話しあったように、キュレーションメディアとか、SNS、バイラルメディアとかは、人を集めてない記事がすごく多いんです。
要するに、他のおもしろいYouTubeの動画を、見出しを変えて作るとか。それって要するに企画を立ててないと思うんです。見出しを作る、こういう切り口にしたらおもしろいだろうって、企画の1要素ではあるんだけれど、そもそも無から有を皆さん企画だと思っているので。
企画には目的があって、これこれこういう人にこういう思いをして欲しいとか、これこれこういう社会問題をこういうコンテンツで解決したいとかっていうところがあるはずだから、その今あるものを包装だけ変えるみたいなイメージだよね。
それはコンテンツの本質は変わってないし、そしてこの人を集めていないといったところで、キュレーションメディアとか、あるいはSNS上でいろいろまとめたりしている人っていうのは、モノは作っているかもしれないけど、1記事は作ってるかもしれないけど、ここは満たしてないから。
僕はずっとそこに対して違和感を持っていたのを、今回イベントに当たって、この本を読み返した時に、「あ、菅付が言ってること、すごい芯を突いてる。ここがないから編集じゃないんだ」っていうのを、今自信を持って、僕の定義が言えますね。
前島:なるほど。何か2人とも言っているのは、大物編集者でさえも、人の調整とか、企画立てみたいなことに相当な時間を使っているってこと。
小川:ずっとメールの返信してますよ、本当に。逆を言うと、菅付の話になっちゃうけれど、菅付に僕が深夜2時ぐらいに原稿できましたって言うじゃないですか。彼は今50歳ですけど、すぐメールの返信がきますよ。だから編集者の仕事って、本当に実は「返事」だと思っているんです。「すぐ返事する奴が大事」っていうのは菅付の受け売りですが、それがないと実際に人が集まらないから。
前島:信用されないと。
小川:そう。まさにそういうことですよ。
佐藤慶一氏(以下、佐藤):あと世に出ている編集本って綺麗な部分ばかりを書き過ぎていると感じていて「編集=格好いい」っていうのとか、格好いいプロダクトとか、雑誌とかどうやって作るのかみたいな部分は、ものすごいフォーカスされるんだけれども、そういうもっと地味な調整だったり。
前島:泥臭い部分ですね。
佐藤:そこは結構やっぱり人を集めるとか、企画を立てる部分で、モノを作る側のほうが編集本は重きを置かれているのかなっていう印象があるので。この本とかは、すごいベーシックなんだけれども、基本をものすごい本質的に突いているので、僕も繰り返して読んだりしています。
小川:だから泥沼、デフレスパイラルっていうか、悪循環みたいなところがあって。まさにデフレなんだけれど、お金は儲からないから企画を立てられない。企画が立てられないからお金が入らないみたいなところがあって、取材記事とかそうですよね。Webで地方に取材に行くとかって、すごく難しい。すぐ稼げるほうに流れていくっていう話ですよね。だからこれは本当に過不足ないなと、すごく思うんです。
前島:ありがとうございます。今の話にちょっと繋がるんですけど、要するに編集の定義みたいなのが揺らいでいるなと。いろいろなWebメディアの登場によって、もしくはテクノロジーの進歩によって編集の定義が変わってきている。
人々の手元に届くものも、実はほとんど間接的にしか人の手が掛かってないみたいなところがある。機械的にコンテンツを収集して、それを繋ぎ合わせて、みたいな技術が登場してきていると。そういった中で改めて、今のは確かに菅付さん長いことやってきた定義なんですけども、これからの編集みたいなところの話もしなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うんですけど。
佐藤:編集っていうのはすごい拡張している概念ではある。最近特に、場の編集もそうですし、イベントもそうなんですけども、変容っていうか、すごい拡大してきているけれども、逆にWebメディアの方面から見ると、キュレーションであったりとか、Facebook、アルゴリズムとかもそうですけども、いわゆる人工知能であったり、テクノロジーの部分によって、コンテンツが届くかどうかが左右されるってなると。
さっきも作るっていうところまで行っても、それが届くかどうかみたいなのをかなり左右されるので、いわゆるアルゴリズムの設計をする人だったりとか、そういうテクノロジーより、キャリアで言うと右下の部分にいた人たちが、編集の何かコアな部分、流通の部分になるんですけれども、そこを握っていくような考え方も、強くなってくるのかなっていうのはありますね。
スマートニュースとかも、ワールドビジネスサテライトっていうテレビ番組に出た時に、「人工知能が編集長」って言っていて。それがまさに今言ったことなんですけれども、その表現がすごく印象的だったので。逆に言うと、それが明らかになれば、人が何をやればいいのかっていうのが明らかになる。
小川:要は食わなきゃいけないですからね、編集やっている人は。
佐藤:食えるように頑張ります。
小川:いやいや、僕も食えないから。どうやったら食えるのかなって考え方でもあると思うんですよね。これは純粋に理想論ではなくて、誰が一番賢く稼げるか。そういうとこ考えなきゃいけないなって思いますね、これを考える時に。
前島:人間だからこそ成せるものと、編集者だからこそ成せるものっていうのは何だと思います?
小川: 1つは編集者ってすごいサービス業だと思っていて、100年後、200年後になればサイボーグもとても素晴らしいホテルマン並みのサービスをしてくれるかもしれないけれど、僕が生きている間は恐らくそれは無理だろうとは思っていて。
さっきのメールを2時に打ったら、すぐ返してくれる。その時に応じて、ケースバイケースだけど返してくれるっていうのもそうだし、あるいは最近すごくリアルの取材とかスタディツアーをやることが多くて、すごく思うのはケータリング。超コアな話ですけど、これって実は絶対どの編集本にも書いてない話で、ケータリングで編集は全部変わりますよ。イベントとか、撮影とか、楽屋裏とか。だって美味しいもの食べれば、みんな機嫌良くなるじゃないですか。
僕も補助的なサブウェポンだと思ったんですけど、実際それで雰囲気が変わる瞬間っていうのを、最近立て続けに目にしてきて、これは本で書いても馬鹿らしいじゃないですか。上手い飯を用意しろって。だからこればかりは、編集の徒弟制度が変容しつつも受け継がれている部分だなと思って、やっぱり人間のコミュニケーション。それを仕事的に言い換えると、サービス業的なノウハウ。これは人を集めるために今後、必要だなと。
前島:言い方はざっくりしているようだけど、徒弟制度で暗黙知的に受け継がれるものが編集者の能力であると。
小川:そう。電話の取り方もそうだし、電話の掛け方もそうだし、ケータリングなどの食事を、どこの店で選べるかも。そもそもその店とどうやってそういう現場みたいな難しいところに高級なお店を呼んでくるかみたいなところって、絶対に本に書けないじゃないですか。
佐藤:さっきどうやって食っていくのかみたいなので、これ全然答えないんですけど、Webメディアの編集をやっていると、今、広告モデルが重要視されているので、逆に言うと、道が見えやすかったりするというか、他のメディアを見てても、キュレーションメディアとかバイラルメディアっていわれているようなメディアってやっぱり、いわゆるテクニック寄りだったりとか、どうやれば稼げるかっていう道が何となく見えてるじゃないですか。どうやって記事をたくさん読んでもらって、お金を貰うみたいな。
でも逆にそこってやっぱり効率化とか機械化みたいな文脈に繋がると思っていて、その道が見えているからこそ、外に外れやすいというか、外れたほうが絶対に編集者としてバリューが出せるよなっていう、それがすごいありがたいとか、みんなその同じ道を行っちゃっているけれども、逆にそれが、草のない、ちゃんとコンクリートの道が綺麗にあって。僕は本当に逆を行きたいみたいなイメージがあります。
前島:それはすごくよくわかりますね。要するにWeb編集みたいなところに参入するのって、ものすごい敷居が低いじゃないですか。
小川:WordPressでブログ起ち上げた瞬間、独自ドメイン取った瞬間。
前島:名乗っていいですからね。
小川:編集長ですからね、みんな。
佐藤:でもコンテンツ作りもそうなると、無駄をどんどん省きがちになるので、紙だとやっぱり無駄っていうと失礼ですけど、偏りや無駄であったりとか、逆に誰かにとってのノイズみたいなのはあるけど、誰かにとったら、めっちゃ綺麗なものかもしれない。何かそのもっとノイズとか偏りとかが、駄目な人もいれば、いい人もいるみたいな。それが重要なのかなと思ったりします。
小川:サービス業の話にちょっとだけ付け加えると、僕の尊敬している編集者、3~4人ぐらいが共通して言っているのは、「インタビューが編集者の基本だ」って言っていて、後藤繁雄さんとか、今回本に入れようか迷って入れなかったんですけど、60歳ぐらいの尊敬するアート系の編集者がいて。
彼とかは、その編集本の中に、すごくインタビューの章を割いて語っているんです。ある種ライターとかの仕事だと思われがちなんですけど、実はインタビューってすごく編集スキルが必要で、人とアポイントメントを取って、1時間なり2時間なり話を聞く。
その人が持っているコンテンツすべて引き出すっていうことは、ものすごいサービス業的なスキルが問われるわけです。お店選び、時間設定、アポイントメント、電話・メールのやり取り。そういったものってもちろん本にはできなくて、けれどそれができると人は集まるし、インタビューって1対1で人が集まっているわけなので、人は集まってコンテンツは成立するわけです。そういったものの積み重ねが、大きな企画になると思っていて、尊敬する編集者は、たくさんインタビューやっていることは確かに多くて。これは基本スキルだと思っています。
前島:その泥臭いメール対応とか、プラスその人が持っている人生とか、知見のどこを切り取って組み合わせるかみたいなことが、まさに編集だなっていう。
小川:あと何言ったら怒らせないとか。本当にそれ大事なんですよね。あと、この人とこの人は苦手とか。
前島:組み合わせね。
小川:そういうのってやっぱり場数とか、インタビューを何回やっていたとか、そういうところだと思うんです。
前島:ありがとうございます。では最後に、それぞれ3人にとってこれからの編集観。どうなりたいかも含めて、編集者としてどう生きていきたいかみたいなところの話をしていけたらなと思います。まず私から行かせていただきます。僕はさっきも言ったように、ちょっと編集者的なところから離れる。
小川:どっちかって言ったら、僕らを駆逐する側ですよね。システムと機械と環境で、人間を駆逐する側ですよね。
前島:そうですね。頑張って駆逐しようかな。
佐藤:戦いましょう。
小川:戦いましょう、本当に。
前島:まず僕にとっての編集の定義なんですけれども、「創造性の創造」としています。編集者自身が直接的に何か作るっていうよりは、ある人とある人を組み合わせるとか、コンテンツ同士組み合わせて、そこでなにか創造性が生まれるっていう。
Credoをやっていても、あるライターさんに、この主題を与えて、その人とやり取りしていくうちに、何か生まれていくみたいな瞬間がすごくあるので。人だったりモノだったりの、持っている創造性を引き出すっていうところが編集なのかなと思っています。
僕は一応Webが専門のひとつなので、これからどうなりたいかっていう話で言うと、よくWebって都市工学とかと対比して語られることがあって、どういうことかって言うと、コンテンツとプラットフォームみたいな文脈で語られる。都市にとっての人がwebにとってのコンテンツで、都市がプラットフォームであると。
小川:お店とかね。
前島:都市全体の設計やビルなどの規模は様々あるのですが、そういうものによって人の流れってある程度決まってしまう。振る舞いも決まっちゃうみたいな議論になって、それってWebに似ているよねと。そういう議論は、60年代くらい、日本が近代化、都市化してきた時にも語られていて、すごい人間の振る舞いがつまらなくなっちゃうじゃんみたいな。
人間の振る舞いや創造性が決定論的になってきてしまっていると、そういう議論があったと思うんですけど、僕の勝手な解釈ですがそういう流れに対して、いろいろな方向からチャレンジする人がいたんですよね。もっと人間らしさとか、コンテンツのおもしろさを追求していこうよと。そうした流れには大きく2つの種類があって、1つは、建築とか都市の設計をわざと既存のプロトコルからはずしてみるとかね。
小川:僕の好きな六本木ヒルズもたぶんそれじゃないですか。六本木ヒルズって、わざと迷いやすいようになっていますからね。
前島:そうですね。本来は最適化されて、行きたい場所に行けたほうがいいんだけど、それをわざと変える。ずらすと言いますか。一方でコンテンツの側は、ある作られたプラットフォームを読み替える。例えば赤瀬川原平や寺山修司みたいな、街に出て行って演劇するみたいな。街を、暮らす場所じゃなくて、演じる場所にする。両方あると思うんです。この議論の文脈で言うと、後者はゲストの2人ですね。やっぱりそのコンテンツ側の、何か組み合わせて、実際にプレイしていくほう。
佐藤:そうですね。コンテンツ作って、まとめて編成だったり、編集するっていう。
前島:僕はどっちかって言うと建築の側なのかなと思っていて、2人がどう気持ち良く意外性を保って振舞えるかっていうところのプラットフォームを作る。例えばCredoReを作って使ってもらうみたいな。
小川:でも僕らより便利な機械が出たら、機械を使うんですよね。
前島:うん。
小川:100年後くらいの話をしましたけど。
前島:ちょっと学術語で言うと、「Architecture」って言うんですよ。人間の振る舞いを明示的に規制するのではなく、環境を整備して自然に振舞っているのに、何かいい感じになっているみたいな。そういう方向で勝負しようかなっていう感じです。
小川:なるほど。編集長候補は機械の?
前島:いや、違います。人間の。
小川:機械じゃない、人ね。
前島:そういう意味で、そっちに移行するにあたって、編集長を募集していますよっていうことでお願いします。続いて、佐藤君。
佐藤:僕ですね。これからって言うとすごい重いので、普通のことかもしれないんですけど、僕にとっての編集っていうのは、新しい関係性を見つけて、それを提案することなのかなと思っています。さっき佐渡の話でも言ったことに通じるんですけど、佐渡とトキの関係性はめちゃくちゃ太くて強いみたいな現状がある。そのあとの違う関係性って何なんだろうとか、そういう人だったりモノだったりと佐渡の繋がりを見つけて、まだ知らない人に、その文脈や動線みたいなものを作っていくみたいなイメージを持っています。
やっぱりコンテンツを作る時に、新しい文脈とか関係性だと、なかなか馴染みがなかったりするので、1歩先ではなくて、半歩くらい先を行って、新しいものなんだけれども、ちょっと懐かしさがあったり、何かちょっと知っているみたいな部分を上手く混ぜるようなコンテンツを作りたいなと思っていて。
3個目のところは、三谷幸喜さんとかの言葉なんですけど、読者の期待にも応えつつ、予想を裏切ったり、こういう世界もあったのかみたいなコンテンツを作れたらいいなと思います。
最後は、時代に合わせるっていうのは、キュレーションとかっていうのはちょっとトレンドに乗りすぎているんですけれども、ある程度その時代だったり、読者っていうのが何を求めるかっていうのを把握して、そういう方に届けつつも、時代を引き寄せるというか。
自分が「絶対に時代はこうなる」とか、「この人は絶対もっと有名になるべきだ」「このコンテンツは表に出るべきだ」みたいなものを、本当に集中的に特集したりとか、頑張ってインタビューとかして、そういう時代のほうを引き寄せたりするっていうのも頑張りたいなっていうのは思っています。
小川:違うな、やっぱり。
前島:ありがとうございます。では最後ですね。小川君お願いします。
佐藤:これは難しいですね。
小川:難しいのかな。慶一君のほうが難しいよ。菅付の話で言い忘れたんですけど、菅付は僕らアシスタント、ほぼ徒弟制度みたいなものなんですけど、僕ら丁稚奉公に口を酸っぱくして言うのが、オペレーターになるなと。
編集者は二分化できて、オペレーターかクリエーターかの2種類だっていうことを、口を酸っぱくして言われていて、僕もこれは本当にそう思うわけです。クリエーターとしての編集者が作ったほうが、恐らく属人性が高い本になるし、恐らくオペレーターが作った本というのは、本ではなくて、自動キュレーションアプリだとか、パーソナライズされた検索結果だとかにリプレイスされる。恐らく人はそこに生きていけない。
そういったところで、僕はそれを意識した上でこういう言葉を考え付いています。それで言うと、「まだ社会に居場所がないヒト・モノ・コトを企画とサービスで価値にしていくこと」これは、ヒト・モノ・コトっていうのは、キャリアプランの話であった、メディアに限定されない、要するに本とかWebとか、テレビとかラジオとかに限定されないっていうふうに、「ヒト・モノ・コト」って書いています。
社会に居場所がないっていうのは、どっちかっていうと建築とは違うのは、僕は今流行っているものにあまり興味がなくて、今社会に流行ってないけれど、提案していくこと、社会に居場所がないものに居場所を作っていくことを企画力、つまり何か人がいるからこそ提案できる大きな企画、あるいは予想もしなかった切り口でサービス、これは先ほど申し上げたケータリングでもいいし、メールでもいいし、気遣いで価値にしていきたいなと思っています。
それをより大きいビジョンで言うと、恐らく機械だけが支配すると、今までググってきた検索結果で、予定調和的に「君はミスターチルドレンが好きだから、ミスターチルドレン的なメロディのアーティスト好きでしょ」みたいな話になってくるわけ。それは食事でも一緒。「中華好きだよね」みたいな。「じゃ、中華先に教えてあげようか」みたいな。
そういうどんどん硬直化していくわけですよ。あるいはそれは分断化、タコツボ化していくわけで、そこに対してどんどんかき乱していく。かき乱すっていうのは、恐らく人間じゃないとできないから、非現実的なこと。要するに効率良く人を集めなくても作られるコンテンツじゃなくて、人を集めるからこそ起こり得るファンタジーみたいなものを、紙面なり、Webサイトなりに現実化していって、次の流行なり、提案するコンセプトなりを現実にしていきたいなと思っています。
前島:なるほど、ありがとうございます。よろしいですか?
佐藤:はい。大丈夫です。
前島:では、ちょうど時間なので、最後に質疑応答を。
質問者:タキと言います。紙の書籍を10年以上作ってきました。
小川:大先輩だ。
質問者:4月から出版社ではないベンチャーに行きます。今日お話を聞いていて思ったのは、ビジネスっていう言葉が、既存のメディアの上に立つというか、要するにそのメディア使ってどうマネタイズするかっていうところに、ちょっと限定された話なのかなと思っていまして。
これからの編集っていうのは、もしかしたらちょっとメディア自体、メディアっていう考え方自体を、ちょっと取っ払って、他のところで金作れないかっていうのがひとつ、編集っていうスキルを拡張することなのかなと思っています。それで、もしそういう感じで、こういう動きに注目しているみたいな話があれば、教えてもらえれば。
小川:ものすごく共感します。だから僕はリクルートっていう、編集者の人員が少ない、営業のほうがリソースが大きい会社に行くんだと思うんですけれども、最近すごくおもしろいなって思ったアプリに「RAKUNEW」っていうアプリがありました。
これってクラウドファンディングを軸にした、近未来ガジェットだけのカタログサイトなんです。カタログmeets eコマース、通販アプリ。サイトもありますけど。ここを見ると、キックスターターとかに出ているプロジェクトがそのまま代理店的に、このアプリが紹介してくれて、説明文が書いてあって、そこで「いいね」も押せて、Kickstarterとかの決済の仲介もしてくれるんです。
どこが編集的かって言うと、これ実際にキャッチコピーがあるんですけど、「半歩先の未来が届く」ってキャッチコピーなんです。これは完全にeコマースビジネスであって、クラウドファンディングを中心に卸をしているってだけなんですけども、カタログ的な配置だったりとか、説明文も付いていますし、動画もここに載っているんですけど、この「半歩先の未来が届く」っていう編集コンセプトのもとにアプリを作って、実際に買わなくてもおもしろい読み物になっているんです、このアプリが。
そういった意味で、おっしゃっているような、メディアがありきっていう広告なのではなくて、eコマースっていうものがあって、そこにメディア的な、あるいは編集的なスキル、コンセプトっていうものが、これからもっと流行ると思っていますし、リクルートっていう会社に、個人的な話ですけど、入るのはどっちかっていうとそういうところを見ているからです。
前島:なるほど。
質問者:個人的にはそうですね。それがeコマースを使ったメディアって意味では、あまりちょっと延長戦にあるものかなと思っていて、僕も全然考えがまとまってないんですけど、編集っていうのは、例えば定義として、「秩序を与えて付加価値を付ける」っていうのが、一番シンプルな定義かなと思っていまして。
だとすると例えば、どこかの会社に行くと、今はなんか全員が移動の季節なんですが、そういう時に、その人たちから社員のデータみたいのを見せてもらって、新たな人事異動を提案するみたいなのも、編集スキルの。もちろんそれが裏付けできる力があるかどうかですけど。
小川:確かにアルゴリズム的な話かもしれないですね、今の。
前島:そうですね。広義の編集で言うと、我々もちょっと話したりしたんですけど、あり得なかった組み合わせによって、より良いもの、クリエイティブを生むっていうところが広義の編集だなって言っていて、そういう意味で言うと、今おっしゃったようなことも編集かなと。
質問者:編集からビジネスに行くっていう時に、そのメディアっていうものを必ず通過するって言うとおかしいんですけども、そうしていると案外僕はこれまでの延長線上なのかなと思いまして。
小川:おっしゃる通りだと思います。
質問者:でも僕はおっさんなので、やっぱり若い方に、何かもっとすごい飛び道具を出してくれるのかなって思ったので。
小川:なるほど。これはちょっといろいろ思考実験だと思います。
質問者:はい。ありがとうございます。
前島:もう1人誰か。はい。
質問者:フカサワユウスケと申します。現在前島さんの下で、ライターとしてCredoを作っておりますけれども、小川さんのほうに質問させていただきたいと思います。途中で梅木雄平さんの話が出てきまして、僕は個人的に梅木さんの「The Startup」を読んでいるんですけれども、かなり燃えやすいというか、日頃から燃えているブログで。
例えば昔のクラウドワークスとランサーズの炎上記事だったりとか、最近だとgumiの上場ゴールの記事が出て、大きく炎上したりとか。でもその一方でコミュニティビジネスっていう、いわゆるブランドイメージがすごい大事なものを両立してなさっているところがあるじゃないですか。炎上っていうのは、そういうブランドイメージに悪い影響を与えるとすごく思っていたんですけれども、何でこう両立できているか。
小川:それはそうですね。梅木さんもしかり、イケダハヤトっていう別の燃えやすいプロブロガーとも親しいので、結構切実にお話しできる話だと思うんですが、梅木さんとお会いしたことありますか?
質問者:いえ、僕はないです。
小川:そういう方が、やっぱりそういうお話されることが多くて。要するに本当にWeb上で燃え広がると、個人のパーソナリティってものすごく見えづらくなってくる。梅木さんは確かに実際会っても、結構とげとげしいこと言うんです。
ズバッと言うし、直接会って僕のことも結構ディスられるし。けれども純粋なんですよね。イケダさんも一緒で、イケダハヤトさんはすごく梅木さんと一緒で、偽悪的な、ある種突っ込まれビリティがすごい高い人ですけれど、彼らが言っていることって、全部ピュアで本気なんです。
実際にWebで書いていることと、実際に会って話すことって、全くずれてないし、梅木さんもずれてないです。Web上で炎上して、いろいろな人の反応みたいなのが積み重なって見る梅木雄平さん、イケダハヤトと、実際に直で会って感じる梅木さんとかイケダハヤトさんの主張とか、個人の性格の良し悪しっていうのは、全く違う。
だからサロンでも積極的にコメントするのは、実際に梅木さんと知り合いが多いように見えます。さっきの田端さんとか、梅木さんのことすごく好きだし、Twitterとかの絡み見ていたらわかると思うので、これは言っちゃいますけど。
イケダさんの周りにも、恐らくそういう人がいて、僕もイケダさんのことすごい好きだし、そういった人が、サロンの恐らく真ん中のコアを作っていて、実際に梅木さんとイケダさんを知らない人が、次の客層として連なっていく。そういった構図ができていると思います。だから決して一部で言われているような、とても問題がある人ではないです、決して。
質問者:ありがとうございました。
前島:はい。平日の夜に、かつ、この駆け出しの我々のイベントにお集まりいただき本当にありがとうございました。
小川:無名もいいとこだよね。本当に恐縮です。
前島:ありがとうございました。
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