2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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チャーリー・ローズ氏(以下、チャーリー):今日はジャックをお迎えしました。ジャックは「アリババ」グループの創始者です。「アリババ」は、歴史上最も大きなIPO(株式公開)を行った会社です。今日は彼の個人的なお話や、何回トライして何回失敗したのか、彼が成し遂げた偉業のこれまでの軌跡と、これからの展望について。
また彼がこれから目指すことがもし実現されたならば、それが彼にとって、また人々にとってどのような意味があり、どのような影響があるのか、彼がどのようなことにインスパイアされたのかを語って頂きたいと思います。さて、まずはこの質問から始めましょう。どうしてあなたは私たちのフォーラムを一度離れたのですか?
ジャック・マー氏(以下、ジャック):(笑)。それは長いブレイクでしたね。7年前だから、確か、前に私がここに来たのは2008年でした。でも私はその更に前、2001年に来たことがあるんです。「Young Global Leader for Tomorrow」というテーマのときに。しかし私が来たときは、ちょうどスイスの若者たちがデモをやっていました。それはそれは恐ろしい光景で、私は彼らに「一体あなた方は何をやっているの?」と尋ねました。
すると彼らは「グローバライゼーションに反対するためのデモだ」と答えました。「え、なんで? グローバライゼーションは素晴らしいことなのに、彼らはグローバライゼーションが嫌いなの?」と思いました。
それから会場に着くまでの2時間、マシンガンを持った人たちがボディチェックしてくるし、フォーラムに向かっているはずなのにまるで刑務所にでも送られるのかと思いましたよ(笑)。
しかしですね、そのフォーラムに参加して様々な考えに触れ、私は心が躍りました。次世代のグローバルリーダーになるにあたって必要な、様々なことを考えさせられたからです。経営者としての最初の3〜4年の間に、私は次のことを学びました。
「グローバライゼーションとは何か?」「コーポレート・シチズンシップ(社会の一員としての企業の責任・義務)とは何だろうか?」「社会的責任とは何だろうか?」という、これらの新しい考えに加え、たくさんの優れたグローバルリーダーたちがリーダーシップについて語っていて、私はそれらからたくさんの恩恵を授かりました。
それから2008年〜2009年にかけて、大きな金融危機がやってきたとき、私は仕事に戻りました。なぜなら、ただ理想論を語っているだけでは、ビジネスの世界で勝ち残れないからです。ですからその当時は一旦仕事に戻り、数年を過ごしました。それで今また、こうしてビジネスについて語る場に戻ってきました。
かつて私はこのようなフォーラムの場で先輩のグローバルリーダーの方々から様々なことを学びましたし、またその後、自分の体験からたくさんのことを学んできました。今こそ、若い次世代のリーダーたちに私の今まで培ったノウハウを共有し、今後に生かしてもらいたいと考えたからです。
チャーリー:ちょっとここで、「アリババ」がどれくらいの規模のビジネスか、うかがってもいいですか? どれくらいのお客様に利用されていますか? どれくらいのスピードで成長しましたか?
ジャック:毎日、1億人を超えるバイヤーが私たちのサイトを訪れています。また中国において1400万人の人々に、直接的又は間接的に仕事を提供しています。18人から始めた会社が、今では3万人の社員を抱えるまでに成長しました。私を含む18人が私のアパートの1室からスタートして、今では4つの大きなキャンパスがあります。
15年前と現在を比べれば大きくなりました。とはいえ、この先15年後の姿と現在の姿を比べたら、現在の姿はまだ「赤ちゃん」でしかありません。
チャーリー:(笑)。15年でようやく「赤ちゃん」になったわけですね。
ジャック:15年前、私は自分の会社の社員たちにこう語ったのを覚えています。過去15年間で、私たちは自分たちの会社がゼロからここまで成長するとは夢にも思っていなかった。15年後、「アリババ」は誰もが知る企業になっているはずだ、と。15年前にはまだ、私がeコマースの話をしても、誰にもわかってもらえませんでした。
どうして小さな会社がインターネットを介して、国境を越えたビジネスを展開できようか? 15年後、人々にとってのeコマースとは何だろうか? ともはや質問しなくなることを期待しています。例えるなら電化製品のように、eコマースが電化製品のように身の回りにごく当たり前のものとして存在していたら、誰もハイテクなものだなんて思わないでしょ?
私は15年後、街を歩くときには、「eコマースとは何か? eコマースが人々に与える影響とは何か?」を説明しなくてもいい時代になっていることを望みますね。
チャーリー:つまり、ちょっと想定(予想)を超えていたということ?
ジャック:いえ、かなり小規模なIPOですよ、だって 250(億ドル)ですから。
チャーリー:歴史上で最も大きなIPOですよ! 中国でつくられたものとしては第 2 位ですよね。
ジャック:ありがとうございます(笑)。
ジャック:私が覚えているのは、2001年にアメリカのベンチャーキャピタル(投資会社)に行って、投資を断られたことです。「次に来るときはもう少し稼いで来るからな!」って言ってやりましたけど。
チャーリー:(笑)。
ジャック:225億ドルをどうやって捻出するか、です。 だってそれはお金の問題じゃなくて、むしろ信用の問題だから。彼らは投資する条件として、投資先の会社にいい仕事をして欲しいと思っている。
その期待に応えるように、投資してもらった会社はいい仕事をしてたくさん稼いで恩返しをする。もっとたくさんの人を助け、その分たくさんの見返りがある。私が思うに、もっとも喜びを与えてくれる仕事だと思います。なぜなら私たちのマーケットキャップは、IBMより大きいのです。ウォルマートよりも大きな市場です。世界で10本の指に入る巨大市場なのです。
私は自分自身と若い社員に問いました、「それって本当? 私たちがそんなにすごいはずがない」と。数年前、人々は「アリババ? あんなビジネスモデルはない、あれはヒドイよ」と、私たちのことを酷評していました。あれは金儲けにもならないとかなんとか。他社を引き合いに出しては、悪い噂ばっかり立てられていました。Amazonのほうがいいとか、eBayのほうがいいとか、Googleのほうがいいとか。当時のアメリカには私たちのようなことをしている会社はなかったからですね。
私は数多くの人々に「アリババは皆さんが思っているよりずっといいですよ」と説き伏せていました。今日、私たちはこんなに大きくなって、「いやいや、アリババは皆さんが思っているほどよくもないよ」と言っています。私たちの会社はまだ15歳の赤ちゃん会社だからね、平均年齢も27〜28歳と若い。若い人が集まる若い会社だからこそ、今まで人類が誰もやろうとしなかったことに挑戦できたんです。
チャーリー:将来についてうかがいたいんですが。その前にちょっと話を戻して、あなたは杭州市で生まれ育ったんですよね? そして今でも本社はそこにある。
ジャック:そうです。私のルーツはそこにあります。
チャーリー:それからキャンパスもそこに。
ジャック:根っこ(ルーツ)は動かしちゃいけないでしょ。ルーツはそこにあるんです。
チャーリー:あなたは60年代に生まれ育ったわけですよね?
ジャック:「64年」生まれね。
チャーリー:(笑)。64年、つまり、文化大革命のときに?
ジャック:ええ、文化大革命の末期に生まれました。私の祖父は背が低かった。当時の文化大革命以降、背の低い男性に対してはいい評価がされていなくてね。だから私は子供ながらに、祖父がどれだけ大変な思いをしていたかを知っていました。
チャーリー:3つのカレッジに入学しようとして、3つとも落とされてしまったんですよね?
ジャック:今の若い人たちと同じですよ。大学に入る時、入試を受けるでしょう? 私はそれに3回落ちました。おもしろいことに、私は人生の節目の進学試験で何度も失敗していまして。小学校での大事な試験に2回、ミドルスクールの入試に3回落ちました。私の故郷の杭州には、ミドルスクールがたった1校しかなくてね。
私の成績があんまりにも酷かったもんだから、その1校のミドルスクールに落っこちてしまって、そうするともう行くところがないんですよ、だってたった1校しかないんだもの。
チャーリー:そういう試験に落ちたり拒否されて挫折したとき、どう克服したらいいと思いますか?
ジャック:うーん、私が思うに「慣れ」かなぁと思いますね。誰でもそういう失敗はありますし、私自身も優秀ではなかったし。今でも多くの人々に拒否されることなんてよくありますよ。先程お話したように大学入試のときには3回落ちたし、就職活動するときにも、私は30回も落とされたんですよ。警察の試験も落とされたし、KFCにすら落とされたんですから。
KFCの試験では、24人のうち23人が合格だったんですね。その落ちた1人が私です。で、警察の試験では5人のうち4人が合格、その落ちた1人はまたもや私です。
だから私はよく落とされるんだなぁ。そうそう、これも話しておこう。私ね、ハーバードも受けたことあるんですよ。10回受けて10回とも落とされました。
(会場笑)
ジャック:ほんとによく落とされてるでしょ?
チャーリー:かわいそうに。10回もハーバードに。
チャーリー:リチャード・ニクソンが杭州を訪問して、それ以降、杭州にはたくさんの旅行者が訪れていたそうですね。
ジャック:そうです。
チャーリー:それで彼らから英語を学ばれたんですよね?
ジャック:12歳か13歳くらいの頃、英語学習に興味を持ちました。その当時は(今のように学校の授業以外で)英語を教えてくれる場所はありませんでした。英語教材の本すらなかったんです。
だから私は9年間、シャングリラホテルに通い詰めました。なぜならそのホテルには、毎日たくさんの外国人観光客がやってくるからです。彼らのためにフリーガイドツアーをやって、彼らの話す英語を聴いて英語を学びました。
私の英語学習は完全に、100%中国で培ったものです。時々、人から「あなたはどうやって英語を学んだんですか? どうしてそんなネイティブのような話し方ができるんですか?」と質問を受けることがあります。
その答えは、9年間、外国人観光客たちの生の英語を聴いていたからです。西洋的なオープンマインドな考え方を含め、私を変えてくれました。
学校の教科書で習う英語や、親が教えてくれる英語とは全然違うんですよ。以来、私は見るもの・読むものなんでも鵜呑みにせず、必ず自分の頭で考えることを習慣づけています。2分間は考えることにしているんです。
チャーリー:なぜ「ジャック・マー」という名前になったのですか?
ジャック:実際のところは、私の本名である馬雲(マーユン)はとても発音が難しいんです。そこで、当時ペンフレンドだった女の子、彼女は観光客として杭州に来ていてペンフレンドになったんですけども、その彼女から「あなた英語の名前はないの?」と聞かれて、「えっ、そんなのないよ。何かいい名前、つけてくれる?」というふうにお願いしたんです。
そうしたら、ちょっと考えて、彼女がこう言ったんですよ。「そうねぇ。わかったわ。私の父がジャックで、私の旦那もジャックだから、あなたもジャックっていうのはどうかしら?」
そういうわけで私のイングリッシュ・ネームはジャックになりました(笑)。
チャーリー:最初にアメリカに来たのは1995年ですか?
ジャック:はい、1995年です。当時は政府補助の目的で、地元のハイウェイを作るプロジェクトの一環で来ていました。
チャーリー:それで、インターネットを使ったビジネスをしようと?
ジャック:ええ、インターネットをシアトルでやりました。私の友人が小さい事業を立ち上げまして。この部屋を更に10%ほど大きくしたくらいの小さな部屋にコンピューターを置いて、彼が僕にこう言ったんです。
「ジャック、見ろよ、これがインターネットだ」「インターネット? なにそれ?」「これがあればなんでもできるんだぜ」と。でも私はタイプしたいとは思いませんでした。
なぜなら当時の中国では、コンピューターはものすごい高価なものだったからです。もし万一、下手に触って故障でもさせたら、弁償なんかとてもできません。それでもその友人は私にコンピューターを使うよう勧めてくれました。「いいから何かタイプして検索してみなって」そこで私は、「ビール」と入れて検索してみました。
なんで「ビール」にしたのか自分でもわからないんですけども(笑)。おそらく、綴りが簡単だったからじゃないですかね。それから、「ビール ドイツ産」「ビール USA産」「ビール 日本産」と次々に検索してみました。そこで気づいたのが、「中国産のビールがない!!」ということでした。
ジャック:よしわかった、じゃあ今度は「中国」で検索してみよう。それで検索してみたんですけども、検索結果、なんと0件だったんです。なんにもヒットしない。データが全くなかったんですよ、中国に関することについて。だから私は友人に言いました。
「中国に関するものを、インターネット上につくろうよ」ということで私と友人で、見た目はとても悪いんだけども、ひとまず中国に関するウェブサイトを立ち上げました。それはそれはショッキングな出来事がありましてね。
朝の9:40にそのウェブサイトを立ち上げたんですけども、お昼すぎ、12時30分に例の友人から電話が来まして。「ジャック! eメールが5件届いたよ!」「え、eメールって何?」
(会場笑)
「eメールっていうのはね、これだよ」友人が見せてくれたeメールには、私たちが立ち上げたサイトについて様々な質問が書かれていました。「あなたはどこにいるのですか?」「協力して新しいビジネスを始めませんか?」とかね。私はこれを見て、面白いと思ったんです。
チャーリー:どうして「アリババ」というサイト名にしたのですか?
ジャック:「アリババ」の由来? インターネットビジネスを始めるにあたって、インターネットはグローバルなものだから、名前もグローバルな名前でと思ったんです。一番いい名前は「Yahoo!」だと思います。私は何日もどんな名前にしようか考えていて、ふと「アリババ」がいいんじゃないか、と閃いたんです。
当時滞在していたサンフランシスコで、ウェイトレスの女性に「あの、ちょっと失礼。『アリババ』って言葉、知ってます?」と聞いてみたら、「もちろん」と答えが返ってきました。さらに「『アリババ』の意味、わかる?」と聞いてみたら、「もちろん。あなたのことでしょ」と彼女は言いました。
それから私はその足で外に出て、20人の道行く人たちに「アリババ」という言葉とその意味を知っているかどうかヒアリングしたんです。そうしたらみんな知っていました。『アリババと40人の盗賊』の話。それに「アリババ」という言葉はAから始まるから、話題にあがったときいつでも、検索の上位に出てくるでしょ。
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