2024.10.10
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岩本隆氏(以下、岩本):失敗力の身につけ方ということで、今日はパネラーの皆さんに、2つの議論の内容をちょっとお伝えしておりまして、1つはまず個人として失敗力をどう身につけるのかというお話でございます。
おそらく、皆さん社内で1番失敗をされている方々かなと思っておりまして、それをどういうふうに身につけてきたのかというところ、意識の持ち方であったり、失敗したときの対処の仕方みたいなところをお話いただければと思っているところでございます。
2つ目の議論は、これを組織としての失敗力の身につけ方にどういうふうに昇華されているのかというところですね。
こっちも企業が成長していくうえで非常に重要なお話かなと思っていまして、その2点について議論をさせていただければと思っております。最初に、いろいろ資料を用意していただいた石渡さんから議論1についてお話をお願いいたします。
石渡美奈氏(以下、石渡):はい、ありがとうございます。ホッピービバレッジ株式会社の石渡と申します。本日は、ありがとうございます、よろしくお願いいたします。
祖父が創業した会社に3代目として入りまして、旧態依然とした会社を活気のある会社に変えようということで、以来、全社員から辞表を突き付けられるとか、失敗の数々には本当に枚挙にいとまがないんですが……。
「何でいつもそんなに元気でいられるんですか?」っていうご質問をよくいただくんですけど、1つは、やはりすべて自己源泉なのかなという、自分の身の上に起こることはすべて自分が引き起こしているんだという意識、だから、誰かのせいではなくて自分だからという。
そうなると、自己源泉に立てるので、じゃあそれをどうしていこうか、というのがわりとすぐ入りますね。それとやはり同じで、すべてに意味があって自分の中に起こっているんだということをいつも考えています。
私は、小学校以外はすべてキリスト教の教育を受けておりまして、そういった学校教育のバックボーンも大きいのかなと思うんですが、基本的に乗り越えられない課題は与えられないはずだという自分の信念がありまして、絶対乗り越えるから今ここが与えられるっていう。
これを乗り越えられないともう次の成長はないと、常に自分の中にそういったことを課します。なので、乗り越えるためにありとあらゆる手段を使って乗り越えるということなんですけど、やはり大切なのは、「対処は間髪入れずに」ということなのかな。
特に経営者は時間の回りが早いので、おそらく社員の3倍のスピードだと思っているんですね。社員の1ヶ月が自分にとっては3ヶ月分ぐらいの時間だというふうに思っているので、多分私がその対処に遅れると3倍遅れることになるなという、そんな考え方もありまして、「対処は間髪入れずに」すると。
もう1つは、何があっても私が元気でいられるのは、「自分で解決できない問題は躊躇せず人に聞く」ということ。実は、私の周りにはいろいろ支えてくださる先生もいらっしゃいまして、学生もやっているというのはそんなことですかね。
でも、やはり失敗は避けられないんだと思うんですね。必ず降ってくる。逆に、失敗がなければ、それが修行にならないので、自分の成長もあり得ない。
ただ、経営者として大切なのは、大難をいかにして小難に変えていくかという、そういったことを色々な研鑽を積みながら力を身につけていく、そんなことを毎日繰り返しているかなと思います。
岩本:ありがとうございます。非常によくまとめていただいていて、大変参考になるかなと思います。
次は、兼元さんにお願いしたいんですけれども、兼元さんも実は壮絶な人生を歩まれているんですけど、今日は個人としての失敗力の身につけ方についてちょっとお話しいただければと思います。
兼元謙任氏(以下、兼元):今、OKWaveというQ&Aサイトをやらせていただいております、「教えて答える」の頭文字で取らせていただいて、それを世界にウェイヴのように、波のように広げていくということで。
今、月に4,000万人の方がQ&Aを繰り広げていただいていて、これをそもそも何でやりたいと思ったのかがたぶん僕の失敗力なんです。
小学校5年生の時に、トイレに顔を突っ込まれて落とされそうになりました。原因が、僕は韓国から来た祖父の子孫でございまして、国籍が韓国だったんですね、日本で生まれて日本で育っているんですけど。もう今は当然帰化しております。
その時、それを知った友達に、8人だったんですが、殴られてトイレに落とされたんです。1番びっくりしたのが、昨日まで「かねちゃん、かねちゃん」ってキャッチボールしていた友達が、鬼のような形相で蹴りを入れていたのを見て、何でこんなことが起こるんだろうと……。
同じ日本で日本語しか話せない人間を、なぜそういう目で見るんだろうって思ったんですが、25年ぐらいそれから抜けられなくて、切り替わるきっかけとなったのが、ものの見方を変えるっていうことでした。
兼元:実際は、そのたった8人のいじめっ子が韓国がどうのこうのとか、日本がどうのこうのって言っているだけで、もっとリベラルでフリーな方はたくさんいて、これから2020年のオリンピックに向けて、そんなことを考えていちゃ駄目なんだっていうことを教えてくれた本がありました。
アルフレッド・アドラーさんっていう方がいらっしゃって、その本の中にこんな話が出てきて、それが僕の事業を決めてくださったんです。
電車があります。そこそこ混んでいたけど椅子が何個か空いてきて、駅に止まったんですね。ドアが開いて、男の人が入ってきました。その後ろから子どもたちが2人乗ってきたんです。男の人はダァーって歩いてきて、その椅子にズガーンって座っているんですね。
子どもたちが2人、キャーキャー騒ぎながら乗客の皆さんの足を踏んでいるんです。「これはもう駄目だろう」、「この男の人はどうなっているんだ」と、いろんなところで陰口がささやかれます。
「あー、教育なってないよね」「あの親にしてあの子だよね」って。たまりかねたおばさんが、その男性に聞くんです、「あんたね、座らせるんだったら子どもが先でしょ! 教育どうなってんの! 子供たち、どうするの?」それを聞いた男の方が、「すいません。実は、朝出てくる時に、病院にいた妻が亡くなったと聞いて……座るところがあって座ってしまったんです」と言ったんです。
そしたら、「何だ、この親父は」と思っていた電車の中が一転して、「がんばんなきゃ駄目だよ!」っておばさんも言うし、その子どもを「ぼく、こっち来い! あめ玉あげるよ。こっち来い、こっち来い!」って言って変わったんです。
僕はこの話を聞いて、そうだ! って思ったんですね。インターネット上のQ&Aでそれだけをやりとりする場所があれば、いろんなやりとりがあって、そこの中でも意見交換ってされているんですけど、世界をひっくり返す、考え方をひっくり返すぐらいの力をもったコミュニケーションができるじゃないかということで、OKWaveというものを15年前に作らせていただきました。
兼元:これから国際的になっていきますので、いろんな国籍のしがらみを持っている、だけど、日本人として日本でどういうふうに海外の人を受け入れられたらいいかということを始めようと思わせていただいたんですね。
だから、個人としての失敗力は、何か一方的にやられていることとか、受けている自分のやりとりが負の方向だけではなくて、これって先ほどもおっしゃられたように何か意味があって、どうせ生まれたからにはこの意味を、この命を何のために使ったらいいというふうに切り替えよう。
どっかにあるんだと思うんですけど、それが得られたのがよかったのかな。自分で得なきゃいけないんです。このことをどういうふうに転換していったらいいかということを、何か見つけられる時が来るんじゃないかなと思っていますし、たまたま自分はそれを受けることができたということで、今の事業に生かさせていただいております。
岩本:ありがとうございます。それでは、最後に……。実は、私、慶応ビジネススクールで成長企業の人材マネージメントの研究をしていまして、サイバーエージェントさんは相当研究させていただいていまして。
藤田晋氏(以下、藤田):ありがとうございます。
岩本:ぜひ、まずは個人としてということでお話をいただければと思います。
藤田:あらためまして、藤田でございます。よろしくお願いいたします。個人としましては、経営者歴も今年でもうすぐ18年目か、社会に出ても19年経って、本当に致命的な失敗をしていたらさすがにここにもいられないとは思うんですけれども、細かい失敗はたくさん積み重ねてきているんです。
よく「経営者として、藤田さんの強みは何ですか?」というふうに聞かれますが、僕は三木谷社長のようにハーバード大学も出ていないですし、実家が金持ちというか、そういうわけではなく、ただのサラリーマン家庭に育ちました。
人格的にも、自分で言うのもなんですけど、非常に普通だと思っているんですけれども……。その中で、やっぱり自分の中で強みだなと思うのは、精神的な強さ、ハートの強さというのを持っていると思っておりまして、経営者だけでなく、仕事をする人全般に言えることだと思うんですけれども、実は、そういうハートの強さというのがものすごく仕事をしているうえで武器になりますし、重要だと思うんです。
どうやってそれを鍛えるかと言いますと、実は、僕も生まれ育ってずっと最初から精神的に強いわけでは決してありませんで、それも普通だったと思うんですけれども、これは自分のキャリアを通じて鍛えられていったものでございます。
藤田:それをどういうときに鍛えられるかというと、当然、大きな失敗をしたとき、みんなに叩かれているとき、そこで鍛えられてきた経緯というのがあります。24歳で会社を作って2年、26歳で電光石火で上場させました。
その時ちょうどインターネットバブルがあった2000年でしたし、上場するまでは息止めて一気にやっていたんで、失敗も何もなかったような状況だったんですけど、絶頂の時期に結構いろんな人生の先輩から、「挫折をしてないやつは駄目だよ」、「人生の中で失敗してないやつは駄目だ」って結構言われたんです。
それを聞いた時に、「何を言っているんだ。そんなのなくたって一気に駆け抜けられるよ」と。それまでうまくいっていたんで正直そう思ったんですが、今となっては、同じような調子に乗った若者がいたら、「おまえ、挫折してないから駄目だ」って絶対言っていると思うんですけれども(笑)。
上場直後にネットバブルが崩壊し、その時恐ろしい株価がついていたのが、あっという間に半分じゃなくて10分の1になったものですから、1株850万が85万まで下がっていって、そのまま亡くなった方の心電図のようにピタッと下に張り付いたんです。
なぜ張り付いたかというと、会社を解散しても、それを2倍、要は、200億ぐらい会社に現金があったんですけれど、100億以下で時価総額がついていたので、藤田が社長をやっていれば、当然、お金がどんどんなくなるだけということで、半額セールで株式市場に出ていたような状態で、ずっと止まっていまして……。
経営者って、いい時は何を言っても、「う~ん、なるほど、だから藤田いいんだ」って言われるんですけど、悪くなると何を言っても、「だから、おまえ駄目なんだ」というふうに、いわゆる結果がすべてみたいなところがあるので、その時にかなり長期にわたって「駄目だ、駄目だ」と言われて、やがて、「あいつはもう死んだ」ぐらいに言われた時に、4年がかりぐらいで黒字化させて会社を伸ばしていったんです。
この時、3、4年、どうやって耐え抜いたのかといったら、じっと耐えていたとしか言いようがないんですけど……。極端なことを言うと、その経験を経たので、株価が半分になっても「だから、何だよ」っていうふうに言えるんです。
藤田:だから、今はちょっと叩かれてもどうってことない。おそらく、今の安倍総理も1回目の政権の時にかなり痛い目にあったんで、それが今生きているんだと思うんですけど、やっぱりメンタルを、精神力を鍛えるチャンスというのは、失敗したとき、叩かれているときに磨かれる。
特に、若い人と話していると、起業する、新しい事業にチャレンジする、挑戦するときに、「でも、リスクがありますから」とか言っている。そのリスクの内容をいろいろ聞いていると、若いので失うものなんてほとんどないんですよ。
お金もどうせ持っていないし、そういう立場もないし、せいぜいがんばってきた学歴、僕にとってどうでもよさそうに見えるんですけど、そういうものを失うリスクだって言っているんです。
結局、本当は恥をかくのが嫌だ、叩かれるのが嫌だ、失敗したらばかにされるのが嫌だ、とたかだかそんなものをリスクと言っているので、そういうところを恐れずに挑戦していった人は、結局、先に先に経験を積んでいってしまう。
失敗力という意味でいうと、ある程度の失敗をしてメンタルを鍛え、経験を積み、ばかにされることを恐れないという人は、やっぱり若くして早く成長していってしまうというようなところはあると思いますし、僕自身それを生かして20代を過ごし、30代を過ごし、40代になると多少……。
最近も会社の売上の7割は全部スマホに転換するというのを脇目もふらずやったんですが、みんなもうばかにしないし、その間赤字を垂れ流しても、「まぁ、社長が言うんだからいいや」っと。
結構そういう叩いていたような人も、もっと1世代下に落ちたというか、「もう藤田はいいや」みたいな感じになったので、そういう意味ではいろんなことがやりやすくなりました。それが失敗力と言えば、そういう感じなのかなと思います。
岩本:ありがとうございます。何か、やっぱり、失敗に対する見方が世間の人と一段違うのかなというような感じですね、皆さんのお話を聞いていますと。
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