2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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仕事・プライベートでも責任のある立場となり、若い頃のように失敗もできない40代。日々の中で、なんとなくモヤモヤした思いや不安、焦りを感じている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』著者で、『からまる毎日のほぐし方』を9月に上梓した尾石晴氏にインタビュー。本記事では、会社員の強みを生かしたリスクの少ない起業の手順や「第二の職業人生」をひらくポイントをお届けします。
——前回、尾石さんはミッドライフクライシスを経験し、会社員としての働き方に原因があると気づいたとおっしゃっていました。後に起業もされていますが、その経緯をおうかがいできますか?
尾石晴氏(以下、尾石):そうですね。伏線はもっと長くて、2020年に退職する2年ぐらい前から、ブログを書くようになったんですね。私はそれまでインターネットとかSNSとかも一切やらなかったんですが、知人に「発信してみたらいいよ」と勧められて始めました。
そこからお仕事につながることがちょっとずつ増えてきて、副業をしていく中で、そのまま会社にいたら出会わないような人たちにたくさん出会いました。
文章を書いている人もいれば、自分でショップを作ってモノをうっている人、会社員を辞めて、まったく違うことをやっている方もいました。商売になりそうな商品を考えて、売ってみたりしているのを見て、おもしろいなと思うようになったんですよね。
——子育てをしながらフルタイムで働きつつ、副業をされていたと。かなり多忙な生活だと思うんですけれども、どうやったら副業までできるのでしょうか。
尾石:これは(大事なことが)2つあります。まず1つは「時間をどう作るか」ですよね。多くの方は本業にプラスして家事育児とやっていると、もう時間がなくて副業をやりたくてもできないと、よくうかがいます。
まずは、時間を作ることが一番の優先度になります。どうやって時間を作るのかですが、私の場合は、家事を効率化しました。例えば、私は買い物に行かないことにしています。そのために全部生協やAmazonの定期便で頼む仕組みを作っていきました。そのおかげで、徐々に自分の時間が作れるようになっていきました。
まずは時間を作らないと、絶対副業はできないですよね。そのために、「片付けを学ぶ」でも、「ミニマリストになる」でも、「時間術を身につける」でも、なんでもいいと思うんですがやるしかない。私は、毎日夜に1時間から1時間半の自分時間を持てるように、どう時間を作るか。そのためにいろんなライフハックで時間を効率化したのが、副業を続けられた一番の要因です。
尾石:次も大事なことなんですけど、私はもともと「副業がしたい」と思ってたわけじゃないんですよ。初めて文章を書いたり発信をした時に、喜んでくださる方がたくさんいて、おもしろいなと思ったんですよね。
私は開発系メーカーに勤めていたので、開発する部署があって、いろんな部署の人が手分けして(製品を)形にしていました。マーケティングや営業、企画、広報という中の歯車の1つでしかなかったんです。
副業だと、全部自分ひとりでやります。自分が考えて作ったものを受け入れてくれる人たちがいるのが、すごくおもしろいなと。なので、1時間から1時間半の時間を捻出し(て発信を続け)た結果、たまたまお金がついてきて副業が成立した感じですね。
——なるほど。「毎月プラスいくら稼ぎたい」ということを目標にしていたわけではないと。
尾石:はい。だからこそ続いたんだと思います。これが毎月10万円稼ぐためにやろうとかだったら、本業で月給を上げるほうがいいなと、方向性をシフトしたと思うので。お金にならなくても「おもしろい」と感じることを見つけられたのが、私の第二の職業人生の種になったんだと思います。
——ある種趣味のようなものが、その後の起業につながっていったんですね。
尾石:そうですね。私はよく、「副業のためにどういうことをしたらいいか」と聞かれるんですけど。副業のためにじゃなくて、自分が人より得意だったり好きで、時間もお金もかけていることを発信してみるといいと思います。
物を作るのが好きな人なら物を作ってもいいと思いますが、何か自分がおもしろいと感じるポイントがないと続かない。会社員で仕事もしながら副業をやり続けるのはけっこう難しくて、おもしろいと感じないことだと、続ける原動力が湧いてこないんじゃないかなと思います。
——会社員として働きながら、好きなもので副業を続ける選択もあったのかなと思うんですけれども、起業をしようと決意されたきっかけは何でしたか?
尾石:まあ一言、本当におもしろくなってきたからですね。1時間じゃなくて、2時間とか3時間とか、もっとこれだけを考えていたいなって思うようになったのもありますし。
もっと現実的なところでは、自分が1回転職市場に出た時、どのぐらいの年収で他の会社に雇ってもらえるのか。あと、会社を辞めても何年以内だったら再雇用してもらえるのかという交渉をしました。2年ぐらいだったら会社を辞めて試行錯誤しても、どうにかなりそうだなって目処が立ったのがありますね。
会社を辞めても、バックアップとなるプランBが取れそうだとわかりました。そのため、会社員をしながら毎日1時間の副業を続けるよりも、1回辞めて好きなようにやって、失敗したらまた転職するか元の会社に戻ろうと考えました。そこまで準備をしたので、一旦、退職しました。だから、本当に上手くいかなかったら、今頃は会社員に戻ってたかもしれません。
——なるほど。失敗しても大丈夫だと思える準備をしっかりしていたからこそ踏み出せたんですね。
尾石:やっぱり20代とは違って、アラフォーになった私の場合は家庭があるので、責任がありますし。プランBをちゃんと作っておくのは、大事だと思います。プランBを考えつつ、おもしろいと思うことに挑戦するのは、40代ぐらい(まで)しかできないと思うんですよね。
体力もあって、まだ転職もできて、知的能力も落ちていない、このアラフォーでやるしかないなと。第二の職業人生として模索してみたいなと思い、一歩足を踏み入れた感じです。
——今振り返ってみて、起業に向いている人・向いていない人はどんな方だと思いますか? また、ご自身についてはどう思われますか?
尾石:向いてない人は、指示されたことをやるのが好きな方ですかね。私は会社員を否定しているわけではないので、言われたことを確実に遂行していくのが向いてるタイプの人は自分で何かするよりも、組織の歯車の1つとして生きていくのも、良い道ではないかと思います。
私の周りで、会社員から起業していて向いてると思うのは、与えられた仕事に対して、「もう少し工夫すれば良くなるのに」「こうしたらもっと売れるのに」と、自分で問題点や改善点を見つけながら動ける人でした。現職で、いろいろと「自分はこうしたいのに」と思うことがある方は、けっこう起業に向いてるんじゃないかなと思います。
あとは自己管理ができることも大事ですよね。お金や時間の管理が自分でできないと、信用が得られない。起業したものの、仕事をしないという選択もできてしまうので、例えば「出社時間」の縛りがないとなかなか動けない人も難しい。自分で自分を律する力は要りますよね。
——ご自身も起業が向いているタイプだと思われますか?
尾石:うーん。私は16年も同じ会社に勤めているぐらいですから、けっこう慎重だと思います。でも、「こういうことをやったらいいのに」と思うことは、前職でもたくさんありました。かつ、副業のおかげで、自分がやりたいことがたくさんある状態だったのもよかったですね。振り返ると、起業に向いてるというか、やりたいこと(起業の種になるもの)をいっぱい貯めていたので、結果としてうまくいった感じですかね。
——なるほど。ご自身はやりたいことがいつもたくさんあるタイプだと。自分の好きなことややりたいことが明確にない人は、起業には向いていないんでしょうか。
尾石:いや、そうでもないと思います。私の場合は、自分がやりたいことで起業しましたが、「困ってる人を助けるのがおもしろい」という方もいらっしゃいますよね。そういう人は、自分のやりたいことよりも、人の困りごとを解決していくような仕事で起業をされてる方もいます。
例えば、民泊業者の困りごとに目をつけて、民泊に使っている部屋のシーツを洗ったり、清掃するといった、人の困ってることをビジネスにする人もいますし。自分にとっての「あったらいいのに」じゃなくて、他者の「あったらいいのに」をかたちにしていくことに喜びを感じる方もいますよね。
必ずしも自分のやりたいことがなくても、人の困りごとを解決するのが好きだとか、市場のニーズがあるものを見つけるのが好きで楽しいと思う人も、起業に向いていると思います。
——「やりたいことが見つからない」「好きなものや得意なこともない」と悩んでいる方にとっては、今のお話はすごく参考になると思いました。
尾石:やりたいことで起業したくないって方もけっこういると思うんですよ。好きなことややりたいことを仕事にすると、うまくいかなくなるという話も聞きますし。そういう場合は、自分が得意なことですよね。人の困りごとを解決するとか、市場を見つけることが得意だとか、価格交渉とか、人がやり取りする仕組みを作るのが好きだとか。
自分の「好き」と「得意」なところが、人がお金を払う分野であれば、副業としてなんでも成立すると思います。
——なるほど。起業するかどうかは置いておいて、会社員で副業をすること自体はどうですか?
尾石:会社にもよると思うんですけど、これからの時代は、メンバー型雇用よりもジョブ型雇用が増えていくと言われていますよね。「その仕事に対して、どんな人を就けるか」という形が増えていく。単に会社の組織のメンバーだから、ずっと仕事に就けるということは減っていく可能性が高いと思います。
1つの本業をずっとがんばるのもいいと思いますが、それだけではちょっと苦しいと思う方は、会社員という生活を安定させてくれる本業があるうちに、自分の好きなことを副業で模索してみる。そうすると、もしかしたら、それが第二の職業人生の種になるかもしれません。
会社員の本業があれば、別に副業はすぐにお金にならなくても困らない。会社員を辞めていきなり副業一本にしてしまうと、「お金がないと生活ができない」と気づいて、自分がやりたいことよりも、とりあえずお金がもらえそうな仕事ばかり優先してしまうこともあります。
そうすると、独立しても、行き詰まってしまう可能性も高くなりますよね。まずは会社員として働きながら、その合間に自分の好きなことを模索するような副業をしてみるのがいいと思います。
——お金のためというより、自分の好きなものを模索し、第二の職業人生の種を見つけるための副業という考え方がよくわかりました。ありがとうございます。
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