2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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——中年期に見られる精神的に不安定になる状態は「ミッドライフクライシス」と言われています。尾石さんご自身も、ミッドライフクライシスのご経験がおありだとうかがいましたが、どのようなタイミングで実感されましたか?
尾石晴氏(以下、尾石):私にいきなり中年の焦燥感が表れたというよりも、家族のことで実感しましたね。小1の壁と言われますが、子どもが小1になるタイミングで、働き方と子どもの学校のスケジュールにリズムを合わせていくのが、ちょっと大変だなと自覚するようになりました。
子どもが2人いて、もう1人は保育園児なので、今の働き方をしていると、なかなか子どもたちとの生活のリズムを作っていくのが難しい。実際に子どもの都合や問題で仕事を休まなきゃいけなかったり、早退をしなきゃいけないことも発生するので。
特に、保育園のうちは朝の8時から夜の18時ぐらいまで預かってくれるんですけど、子どもが15時ぐらいに学校が終わってしまうと、そこからの預け先をどうするんだとか、夏休みの40日間は、誰に預かってもらうのか。
あと、保育園時代はお昼寝から食事から排泄から全部手伝ってもらえていたことが、小学校に上がると「そういうのは保護者の責任で、ご家庭でやってください」となりますので。
その問題に対応していく中で、「このまま小1の壁に合わせて働き方を絞っていくと、今後どうなるんだろう」と考えるようになりました。また、小1の壁を乗り越えたからといって解決するわけではなく、「あと10年ぐらいこういうことが続くんだな」と、不安や焦燥感を抱くようになっていきました。
——尾石さんは、会社員時代は月100時間も残業をされていたと拝見しました。かなりハードな働き方をされつつ、子育てもされていたんですよね。
尾石:そうですね。私は中間管理職をしておりましたので、やはり自分の家庭もですけど、チームメンバーや部下になってくれた方の育成も考えなきゃいけない。会社でも仕事がとても忙しくて脂が乗っている時期だけども、片や1人の人間として仕事だけしているわけではないので、家庭との両立をどうするのかという問題がありましたね。
——40代は仕事の領域が広がり、責任の大きな仕事も任されるようになる一方、育児などワークライフバランスで悩まれる方が多いですよね。これが、尾石さんの考える「40歳の壁」の原因なのでしょうか。
尾石:そうですね。私自身は2つあると思っていまして。1つはおっしゃったように、役割の多重性による負担感。母であり、妻であり、職場での役割もある。そうした役割が一番重なり合っているのが、ちょうどミドルエイジなんじゃないかなと思います。
あと、もう1つは『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』に書いていますが、発達心理学者の(エリク・H・)エリクソンが述べている発達段階理論では、40歳は壮年期に入るんですよね。そうなっていくと、これまで「自分のリソースを全部自己の成長に使ってがんばりなさい」と言われていたのに、世代交代になるんです。
今までとはゲームのルールが変わるというか、自分のことだけ考えて生きていたところから、他者に貢献することによって、精神的な発達をしていく時期に入るということです。この2つがちょうど重なっている変化の時なので、「なんとなく不安に感じる」「モヤモヤする」という方が多いんじゃないかなと思っています。
——部下の育成や育児など周囲を支える役割が増えていくと。そこで「周りを見なきゃいけないから、自分のことができないのは仕方ない」と、モヤモヤした思いをそのままにしてしまう方も多いのかなと思いますが、尾石さんはどうお考えでしたか?
尾石:正直なところ、「周りのことをやらなきゃいけないから、自分を犠牲にしなきゃいけない」という感覚は、私自身はありませんでした。確かに他者へのお世話は、リソースは取られるし手間もかかるんですけど、一番大事なのは、それを「犠牲だ」と思うのか「自己の成長なんだ」と思うかの違い。自分の見方の話だと思うんですよね。
自分の好きなことが思う存分できなくても、他者のお世話を通じて「新たな世界に触れられる」と思う人はいらっしゃると思います。そこで自己の成長を感じられるようになっていくと、エリクソンが言うようにうまく発達していく。それを犠牲や、自分が損なわれていると思うと、この後の40歳50歳という壁を乗り越えていくのが、なかなかキツくなるんじゃないかなと思います。
——自分のやりたいことを諦めて他者のために生きるのではなく、自分がこの先もやりたいことをやっていくために、40代から働き方を変えていくという、主体的な考え方が大事なんですね。
尾石:そうですね。会社でもそうだと思いますが、1人でできることは、小さいじゃないですか。他者にどんどん仕事を割り振っていくことのおもしろさとか、それによって相手が成長することの喜びを味わえた方って、マネジャー職でもうまくいくと思うんですよね。その転換をどうするかが、問われている時期なんだと思います。
——なるほど。ここまで「40代の壁」にぶつかる原因をお話しいただきました。40代のビジネスパーソンの中には、出世の先も見えてしまって「今のままでいいのか」という不安や焦りを抱えている人が多いのかなと思います。今後のキャリアをどう考えていけばいいでしょうか。
尾石:「このままやっていけば、そういう部署に行くんだな」「そういう役職で終わるんだな」ということに満足していれば、たぶんミドルエイジたちも、仕事においての不満も不安もないと思います。一方で、不安や不満がある方は、その見えている先にたどり着くのがなんとなく嫌なんだと思うんですよね。
自分が「不安だな」「なんとなく焦っちゃうな」という方は、何が不安で何に焦っているのかを、ちゃんと捉えて分解するのがすごく大事だと思います。お金なのか、ポジションなのか、職歴なのか、クビになるリスクなのか。(不安の原因は)たぶん、みなさん違うと思います。
例えば、「今よりも年収が上がらないことがわかる」という不安なのか、「あのポジションまでしか行けないことがわかる」というのが不安なのか、「50歳になったら退職勧奨されるかもしれないな」という不安なのか。不安の種類によって、キャリアの方向性や対処方法が変わると思うんですよね。
——ぼんやりした不安を明確にしていくことが大事なんですね。
尾石:はい。例えば、クビになるリスクがすごく怖いなら、今の段階で転職市場に出た時に、いくらぐらいの年収で職があるのか、1回いろんな転職エージェントと話してみる。
実際に転職しなくていいので、「あなたの今のキャリアやスキルレベルだと、このぐらいの年収の仕事しかありませんよ」と言われたら、足りないものを聞いてみて、「こういう資格を取ろうかな」とか「このへんでキャリアの方向性を変えておこうかな」と、次の行動の指針になると思うんですよね。
そうすると、不安に対する打ち手が見えてくる。お金のことが不安なら、65歳以降に必要なお金の計算をしたらいいと思うんですよ。「何が不安なのか」がわからないから、不安なんじゃないかなと思うので、その原因を見極めるのがすごく大事だと思います。
——なるほど。尾石さんご自身の不安の原因はなんでしたか? また、その不安とどう向き合いましたか?
尾石:私は子どもを生んでから、長男が6歳になるまでの6年間で、小1の壁とか保活の壁とか、子どもが入院した時の壁とかいろいろな不安があったんですけど、そういうことをずっと書き出していました。
結局、私の場合は何が不安の原因かというと、私の働き方なんですね。自宅勤務とかの制度がなく、外資系の年俸制でしたので、要は「成果を出せないやつは去れ」という中で生きていました。
フルタイムで毎日9時18時まで働いて、転勤もある働き方をしている限りは、今は小1の壁の顔をしているけど、次は小4の壁になるなとか、次は、子どもの中2の反抗期がもし来たら、また同じ働き方で悩むんだなとわかってきました。
人によっては、「うちは時短勤務はあるし」とか「部署替えしてもらえるし」とか。「転勤なしの部署に行けるし」というのであれば、子どもの問題が働き方の問題と拮抗しないので、不安が消えるかもしれないですよね。
私の場合は、勤務先が「フルタイムで長時間働き、かつ転勤がある」という働き方しかないことが原因でしたので、そもそもの職を変えてしまいました。でも、みなさんに会社員を辞めろと勧めているわけではないです。
——小1の壁などの具体的なモヤモヤがあったわけですが、根本の部分は働き方の問題だと考えられたんですね。
尾石:そうですね。一見すると、保活の問題も、小1の壁も小4の壁も、全部、子どもの問題に見えるんですが、そうではなく「親の私の働き方の問題なんだな」と気づきました。
——「子どもの問題だから仕方ない」と思ってしまう方も多いのかなと思いますが、不安の原因を突きつめて考えることで、より根本的な解決策を見出されたんですね。
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