2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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奥田浩美氏(以下、奥田):さっそく第2部に入っていきたいと思います。第2部も、それぞれの自己紹介とご自身の新しい仕事ということで、まずはスライドが出ている岡部さんからお願いします。
岡部典孝氏(以下、岡部):みなさん、こんにちは。JPYC株式会社の代表などをしています、岡部と申します。今回は「リーガルハクティビスト」という新しい職業を紹介しようと思って来ました。
奥田:聞いたことがある人?
(会場挙手)
岡部:聞いたことが絶対にない人?
(会場挙手)
奥田:ないですね。(会場の1人を指して)ある?
岡部:うちの人です(笑)。本当に新しい職業で、リーガルハクティビストというのは「リーガルハッカー」と「アクティビスト」を掛け合わせた造語なんですね。じゃあ、リーガルハッカーって何だ? アクティビストって何だ? と。
奥田:みんな、どっちもわからないかも。
岡部:はい。わからないものを組み合わせた新しい職業です。
まずリーガルハッカーは、技術サイドで法律に合ったソフトウェアを作る人です。どういうことかと言うと、「ハッカー」という、すごいソフトを作る人がいるわけです。でも、それが法律に違反することがあるわけですね。
奥田:まさに話題になっている。
岡部:そうすると、まさにWinny(ウィニー)のように捕まってしまうことがあるわけです。だから、法律と技術の両方を理解して、法律に合った、法律ギリギリの、法律の枠内であるようなソフトウェアを作るためには、技術にも詳しくなきゃいけないし、法律にも詳しくなきゃいけない。
私はたまたま両方できるので、既存の法律を分析して、その中で「これだったら大丈夫だろう」というソフトウェアを作る。これがリーガルハッカーという仕事です。だから、法務とソフトウェア開発者のいいとこ取りみたいな仕事です。
岡部:もう1つのもとになっている職業がアクティビスト、「活動家」と言われる職業です。これはすごく悪い言い方をすると、ワーッと自分たちの主張を通しにいく職業ですね。世の中に「規制緩和してくれ」、あるいは「規制を作ってくれ」と、要望するような人たちです。
これが組み合わさった職業がリーガルハクティビストなんです。リーガルハクティビストの最終的な目標は、法律を変えたり、規制を緩和してもらったりすることです。そのためには、法律を変える理由が必要なんです。
「立法事実」と言うんですが、立法事実を作るためのソフトウェア、実際に動いているものを作るのがリーガルハクティビストです。リーガルハクティビストは自分でソフトウェアも作るし、それを持って行って「こういうソフトができちゃったので、新しい法律を作らないとよくないかもしれませんよ」という情報提供もするし、活動もします。
その結果、「規制緩和してくれ」「もっといい制度にしてくれ」という要望をお届けします。そういうお仕事をしています。よろしくお願いします。
奥田:ありがとうございます。それを「仕事」という括りで言う場合、どういうかたちでお金に結びついてくるんですか?
岡部:それで言うと2つあります。1つは大学の客員教授として、「どういうふうに規制をよくしていこうか」「どういうふうに法律に気をつけてソフトウェアを作っていこうか」という講義をして、少しですがお金をいただいています。
もう1つ、こちらがメインですが、私はFintechのスタートアップの代表もしています。そうすると、規制が緩和されることによって株価が上がることがあります。
奥田:なるほど。そうやって回ってくるんですね。
岡部:はい。マーケットのサイズが大きくなったりします。
岡部:うちはステーブルコインの領域なんですが、例えば「ステーブルコインで給料が払えるようにしてください」という要望が通ったら、一気に欲しい人が増えるわけです。そういう要望を通しにいくことができると、会社の業績がよくなって、株価が上がって、お金が入るという職業です。
奥田:ありがとうございます。いろんな規制を緩和したり、政策提言で政策が変わったりすると、今すぐお金にならなくても、数年回ってお金に変わります。今、岡部さんがおっしゃっていた内容は、実を言うと私もやっています。
HealthTechの分野ですが、例えば先月出した提言の中で「国が介護テックにかなり注力して、規制を緩和して、云々」と言ったら、その産業にお金が回ってくるはずです。
たぶん岡部さんもそうだと思いますが、その全部が自分の懐にザックザック来なくてもいいわけですよね。だから、お金を誰が受け取るかということは二の次で、もっと広い意味で動かれているのかなと思いましたが、いかがですか?
岡部:おっしゃるとおりです。
本多達也氏(以下、本多):これ、質問はどのタイミングでできるんですか?
奥田:いつでもいいですよ。
本多:いつでもいいんですか? さっき、ちょうど映画の『Winny』の映画の話をしていました。あの映画は見られました?
岡部:『Winny』は、実は公式から「コメントをくれ」という依頼が来て、先に見せてもらって感想を送りました。
本多:なんと! 僕は『Winny』を作った松本(優作)監督と友達で、僕がプロポーズする時の映像を撮ってもらったんです。
奥田:それが言いたかった(笑)?
(一同笑)
本多:違います(笑)。Winnyのような事件って、今もいろんなところで起こり得るような事例がいっぱいあると思うんです。そこに対しては、どういうふうにアプローチしていらっしゃるんですか?
岡部:まず、私もWinnyを作った金子(勇)さんの影響を受けて、介護ベッドで寝起きしながらプログラムを書いていた時代がありました。
本多:なんと(笑)!
岡部:その中で法律の重要性に気がついて、自分で法律を勉強して、「捕まるようなソフトウェアを作らないようにしよう」という強い心を持って、開発するようになったんですね。
そういった中で、作ったソフトウェアをモジュール単位で、とにかくどんどん当局に見せに行きました。「これは大丈夫ですよね?」「これは大丈夫ですよね?」と、部品・部品で(OKを)取りに行って、組み合わせたらまた持って行ってということを繰り返していく作業なんですよ。
少しずつOKを取って、「どこまではいいんですか?」というものを、自分の中ですごく蓄積していっています。
奥田:おもしろい。
本多:でもそれって、できるエンジニアはいる?
岡部:いや(いない)。だから、たぶん新しい職業。
本多:そうですよね(笑)。
奥田:「ここのメンバーでいる?」ということで、次に行ってもいいですか?
本多:はい。
奥田:次は西山ももこさんですが、今の話をポカーンと聞かれていました。今度は逆に、男性2人がポカーンとするかもしれない自己紹介をしてもらおうかと思います。お願いします。
西山ももこ氏(以下、西山):初めまして、西山ももこと申します。私はインティマシー・コーディネーターといって、日本では2020年くらいから始まって、今は日本に数人いると言われている仕事をしています。
(今日は)すごく場違い感を感じております。「なんで呼ばれたんだろうな?」くらいの感じなのですが、映画で言う性的描写やヌードシーン、日本の場合は銭湯やお風呂のシーンがけっこう多いので、そういうところに立ち会う職業です。
奥田:わかりました?
本多:いや、詳しく聞きたいですね。
奥田:ですよね(笑)。
奥田:最近はけっこう知られてきていますが、インティマシー・コーディネーターという言葉を知っている方、手を挙げてください。
(会場挙手)
本多:すごい!
奥田:女性がけっこう多いですよね。手が挙がっているのは、比較的女性じゃないですか? でもみなさん、うっすらと聞いたこともない?
本多:ない(笑)。
奥田:(笑)。
本多:(聞いたことも)ないし、さっきの説明もよくわかっていないですね。
奥田:どういうことをするか、もう少し詳しく(お願いします)。
本多:銭湯とかヌードのシーンで活躍される方ということですよね?
西山:そうですね。どこまでもコーディネーターなので、私がジャッジする立場ではないんですよ。「これはやっちゃいけないですよ」「これをやってください」という立場ではなくて、台本をもらって、台本の中で「AとBがキスをする」って書いてあると、「どういうキスなの?」とか。
西山:たぶん今までは、「役者さんたち、どうぞここでキスしてください」という感じだったと思うのですが、「事前に確認した上で、俳優がOKかどうか、ちゃんと同意を取ってから撮影しましょうね」という動きが、今は日本でも起きています。
例えば、私がインティマシー・コーディネーターになった2020年から2024年の4年間で、50作品以上に携わっているんですね。それくらいスタンダードになっている仕事ではあるなと感じます。
奥田:まさに3~4年前ですが、オンラインで「インティマシー・コーディネーターという仕事で、日本で生きていけるでしょうか? 存在できるでしょうか?」という相談があって。
「生きていけるかどうかは別として、必要は必要なので、そのまま行ってほしい」みたいなことを言いました(笑)。(だから)やっとこんな時代が来たなぁと思います。
西山:今は日本だと、「そういう性描写があるならインティマシー・コーディネーターを入れましょう」という動きがある。
私は今年(2024年)ベルリンの国際カンファレンスに行ったのですが、やっぱり日本は作品数が多いこともあって、4年間で50作品というのは他の国よりもけっこう出ています。みんなに驚かれる数なのですが、それくらいデフォルトになってきたなと感じますね。
奥田:今は日本にたった2名ということですよね。
西山:今年くらいからちょっと増えているんじゃないかなという気はしますが、まだ数人ですね。
奥田:世界ではどれくらいか、数字は公表されているのですか?
西山:2020年の段階で世界で200人はいってなかったんですが、ある意味世界的にブームになった仕事で、確実に人数は増えています。人数は増えつつも、私の中では人種がアンバランスだなと思っています。
西山:やはり、トレーニングを受けるにもお金がすごくかかるんです。1人100万円くらいかかる資格なんですね。それを受けられるのはどういう人たちなの? となってきたら、仕事に余裕があるとか、バックグラウンドが「いいとこのお家」とかなので、特権階級の仕事になりつつあるのを変えていかなきゃいけないなと、最近は感じています。
奥田:本多さん、もっと聞きたいでしょう?
本多:もっと聞きたい!
奥田:何を聞きたいですか?
本多:まず、50作品くらいのキスとか、そういうシーンのご指導をなさっているということですよね。
奥田:指導じゃないって言ったじゃん(笑)!
本多:(笑)。「どういうふうにアドバイスするのか」とか、そもそも「何がダメで、何がいい」みたいなものがあるということですか?
西山:まず、ト書きにはそんなに詳しく書かれていないんですよ。例えば「ここでAさんとBさんが一夜を明かします」みたいな文章が1個しかなくて。そうすると、「ただ寝るだけ」と思う人もいれば、「もちろんそういう行為をするよね」と思う人もいます。主観でいろいろ見るから、まずは監督にそこをクリアにしてもらおうと。
「ここは寝て、ここまでやろうね」と、全部確認した上で俳優部に1回伝えて、役者の中で、「いや、そんなつもりはなかった」「私はここまでできるよ」とかを確認していく作業です。
本多:確かにやられる側としたら、「いきなり胸を触られるの?」「舌を入れられるの?」とかって、絶対にあるじゃないですか。逆に今まではどうなっていたんですか?
奥田:そうそう。今までは「本番、回ります」みたいに、一方的に「これがいいだろう」と思ったものが撮られていたんですよね?
本多:えー⁉ それはやばいな……。
西山:やっぱり、役者さんの負担はすごく大きかったです。
本多:(それは)そうでしょう。
西山:芸人さんですが、キスシーンがあって、舌を入れない話だったのに「入れたほうがおもしろい」と思って、キスしましょうというところで(舌を)入れてしまって、裁判になっている話もあります。やっぱり、そういうふうにはなってきているのかなと思います。
本多:確かに。でも、そういう会話って役者同士でもしづらいじゃないですか。だから、中立な人がいないと成立しないなと思います。
奥田:それが、まさにこの職業ですね。
本多:まさに。
奥田:もっと聞きたいのですが……。
本多:もっと聞きたい!
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