2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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——石倉さんは早稲田大学に合格後、紆余曲折を経て中退されたと拝見しました。どのような学生時代を送っていらっしゃったんでしょうか?
石倉秀明氏(以下、石倉):私立に進んだのですが、もともと実家が裕福ではなかったので、仕送りもありませんでした。なので生活費や学費は、奨学金とバイトで自分で払っていました。それでバイトをしすぎて病気になって倒れてしまって。学費用に貯めていたお金も入院費に使うので、学費を払えなくなって辞めましたね。
——そこでアルバイトなどをして過ごされ、その後にリクルートに契約社員で入社されたんですね。
石倉:そうですね。当時あった、3年間限定の契約社員(旧CV職:学歴・職歴不問で挑戦でき、契約満了時にはキャリアアップ支援金として200万円が支払われる)に応募しました。
——入社2年目でリーダーに登用され、若くして管理職となりますが、どのような難しさがありましたか?
石倉:僕は営業で入ったんですが、わりと最初から結果が出たというか、基本的にあんまり苦労しなかったんですよね。だから、体系的に「どうやったら営業ができるか」というノウハウを自分で持っているわけでもなくて、「普通にやったらできるじゃん」みたいな感覚でした。
それをそのまま、部下にも「普通にやったらできるっしょ」と接しちゃったりしていたと思います。これは特性のせいにしちゃいけないんですけど、僕はASD(自閉スペクトラム症)という、発達障害の当事者でもあります。
空気を察したり、共感性が低いので、他人の気持ちを理解しにくくて、正論だけを言う上司になっちゃったりするんです。なので、チームのメンバーも疲弊していくし、なかなかうまくいかないようなことが、ずっと続いていましたね。
——なるほど。石倉さんの『コミュ力なんていらない 人間関係がラクになる空気を読まない仕事術』という本では、自身をコミュ障だと書かれています。営業はコミュニケーション力が必要な仕事ではないかと思うのですが、どうやって成果を出されていたのでしょうか。
石倉:(うまくいったポイントは)コミュニケーション力で勝負しなかったところじゃないですかね。例えば、その本にも確か書いたんですけど、「このトークを言うと、そこそこの確率で刺さる」みたいなスクリプトが、会社として用意されているわけですよ。
そこで、1週間で10社に提案できる人と30社に提案できる人だったら、後者のほうが受注数が多そうじゃないですか。なので、「どうやったらそうなれるかな」と考えてみるんです。例えば飛び込みってほとんど相手にされないし、テレアポも担当者につないでもらえないことがほとんど。10件かけても、担当者と話せるなんて1件とかそんなものです。
「どうやったら3件とか4件のアポを取れるかな」と考えた時に、少なくとも担当者がいるであろう時間をどうしたら知れるか、そのためにどんな仮説を立てながら組み立てるか。そして、いかにその時間に電話できるかといった工夫をしていました。
なので、新規のテレアポでも、他の人よりもたぶん3倍ぐらい、担当者と直接話ができていると思うんです。すると、他の人とアポを取る率が同じだとしても、3倍(の受注が)取れる。結局、こっちがコントロールできる要素の中で、どうやったら(受注を)取れるかですかね。
——コミュニケーション力ではないところで勝負していたと。そういったロジカルな考え方はどうやって身につけられたのでしょうか?
石倉:高校を選ぶ時とか、陸上部の大会でどうやって記録を出していくかという時も、同じような考え方をしてきた気がします。どうやったらその場で成果が出るかとか、どうやったら勝てるかを導き出すために、分解していったり、どこにフォーカスするかを決めていました。
要は、勝てる方法とか戦い方を考えてきた。大学受験とかでも、この思考はまったく一緒だったかなという気がします。
——昔から、成果を求める気持ちが強かったのでしょうか。
石倉:どうなんですかね。何も考えずにがむしゃらにやることは、昔からあんまりしなかったなと。「どうやったら勝てるかな」とか「どうやったらうまくいくかな」と考えて試していたかもしれないですね。
——石倉さんが、転職や異動で仕事内容や環境が変わっても変わらず成果を出されてきた背景には、そういった考え方があるのかなと感じました。リクルートでは契約社員として入社されたあと、MVPを獲得し、正社員になられますが、26歳で退社されたのはなぜでしょうか。
石倉:そうですね。先ほど言ったように、特に当初はマネジメントで苦労していました。いっぱい失敗してきた結果として、「どうやらこういうやり方は良くない」「こういう発言はダメなんだ」と学んできた感じですね。要は地雷をいっぱい踏んできたという意味で、慣れてきた感じです。
2008年くらいに、サイバーエージェントの藤田(晋)さんの『渋谷ではたらく社長の告白』という本に出会いまして。サイバーエージェントの創業期のドタバタ劇みたいなのが書いてあり、それを見て、「創業期の会社で働くのって、おもしろそうだな」と思ったんです。その時にリーマン・ショックが来たので、「創業期のドタバタの会社に入るなら、今かな」と思って辞めたんですね。
ちょうどHRの仕事をやっていたのですが、リーマン・ショックの影響で、前年比売上60〜70パーセント減みたいな感じでした。要はそのぐらい求人数とかも減って、みんな採用もストップしていた時期なんですよね。
その時に、「積極採用しています」と言っている創業期の会社って、本当に伸びている良い会社の可能性があるんじゃないかなと。やるなら今なんじゃないかなと思ったんですよ。
ただ、あまりに当時のリクルートの仕事が忙しくて転職活動もできなかったので、辞めて有給期間を使って転職活動をしようかなと。だから先に退職して、有給期間を使いながら、動き始めた感じです。
ただ、やはりそんなにたくさん(採用をしている)会社がないから、ちょこちょこ受けたりしていたのもあったんですけど、結果的に無職期間もできちゃったという経緯ですね。なので、先のキャリアを考えたというより、わりと衝動的に動いたのが大きいかもしれないですね。
——「大企業よりも、ベンチャーのほうが自分に合っていそうだな」と思われたのでしょうか?
石倉:ベンチャーというよりは、本当に5人以下とか10人以下が良かったんですよ。ちっちゃい会社で、「なんかドタバタして、カオスで楽しそう」というだけです。だから、(自分は)どっちが合っているという思考はなかったんですよね。
——より混沌とした場所で働いてみたかったということですね。実際に大企業からベンチャーに転職されて、どういった違いを感じられましたか?
石倉:1個1個の仕事は、そんなに変わるわけじゃなくて。例えば、営業に行って何をするかは一緒じゃないですか。でも、やはり自分がした仕事のインパクトは大きいですよね。僕はそこですごく大きなギャップを感じたことは、そんなにないですね。もちろん(大企業と比べて)お金はないけどね、みたいな(笑)。
——なるほど。その後30歳の時にDeNAに転職されますが、ベンチャーを経て、再び大企業に転職をされたのはなぜですか? 先ほど、ドタバタしたところに行きたかったとおっしゃいましたが、実際に経験してみて、考えが変わられたのでしょうか?
石倉:リブセンスでは、ドタバタとした中でも会社の事業が成長して、人も増えてきて、2年後には上場もしました。それはそれで、自分たちで作ってきた会社だから、そのままいたら居心地もいいだろうし、楽しいだろうなと思っていたんですけど、当時はなんとなく焦りがありました。
このままいくと、創業期とか少ない人数で事業を立ち上げていくことはできるのかもしれない。でも、本当に大きいビジネスを動かしていくとか、とんでもない人数とかステークホルダーがいるような、難易度が高いことをがんがん回して、事業としてインパクトが出せるような能力が身につかないんじゃないかなと思ったんです。
簡単に言うと、「10億円の事業は作れるかもな」と思ったんですけど、「1,000億円はできますか?」と言われると、イメージが湧かない。それで、当時はソーシャルゲームバブルみたいなものがあって、DeNAとGREEは、ありとあらゆる業界の優秀な人を採りまくっていた。
「今日本で一番優秀と呼ばれる人が集まってそうな会社に入ったら、どうなるんだろうな」「天下一武道会に出てみるか」みたいな感じで、入社したんです。自分が通用するのか・しないのかも試してみたかったし、自分的にも「すごく強くなるのかもな」と思ったんですね。
——今のお話をうかがうと、「より大きな仕事をしたい」「自分を成長させたい」という思いがモチベーションになっていたのかなと感じました。
石倉:やはりお金に苦労して生きてきたので、当時は「お金に困りたくない」というのが強かったんですね。お金に困らないためには、たぶんすごいビジネスパーソンになればいいんだと。当時よく言っていたのは、「ホリエモンは逮捕されてもお金に困っていない」。なぜかと言うと、たぶんすごくスキルが高くて実績があるから、仕事が集まってくる。
——替えが利かない人材になるということですね。
石倉:やはり実力をつけるとか大きな成果を出すことで、自分が困らなくなるのではないかと思っていたんです。それで、自分の戦闘力をどんどん上げていくほうに、ひたすらフォーカスしていました。
——今は大企業でも定年までは働けないと言われていますが、当時からリクルートで出世していく道は考えてらっしゃらなかったんですか? お金に困らないという意味では、ずっとリクルートにいる選択もあったのかなと思いました。
石倉:今思えば、そういう道もあったのかもしれないですけどね。根底にある、お金に困りたくないという価値観と、小さい会社で初期の立ち上げをやってみたいとか、すごい人がいるところで働いてみたいといった衝動性の矛盾は、ありますね。
どっちのほうがメリットがあるかと、客観的に計算して考えることはまったくできてない。これまでのどの会社でも、出世してたら年収も上がっていくだろうし、それなりに困らない人になりそうなのに、「こうしたいな」という思いが出てきたら、衝動的に動いてしまう。ある意味計画性がないんですね。
——ちなみに、先ほど「人の気持ちがわからず、人間関係に悩んでいた」とおっしゃっていましたが、その後も人事や人材採用のような、人に関わる仕事を選んでこられたのはなぜですか?
石倉:別に選んでないですよ。会社から「異動」と言われたからやっているだけで、自分から希望を出したことはないです。
——会社員時代の異動は自身のご希望ではなかったんですね。その後、キャスターの子会社となる「株式会社働き方ファーム」を立ち上げられた際は、なぜ人材採用支援の事業を始めようと思われたんですか?
石倉:正直、当時はそんなに考えてなくて。独立していろんなお仕事をもらう中で、僕のキャリアの最後が人事だったので、採用関係のお仕事が多かったというだけなんです。
——なるほど。あらかじめ計画的にキャリアプランを立てて進んでいかなくても、石倉さんのように都度成果を出していくことはできるんですね。今は先のことが読みにくい時代だと思うので、置かれた場所でどう成果を出すかという考え方には励まされると思いました。
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