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2024年大予測:どうなる?どうする?ミドル・シニアのキャリアと転職(全4記事)

転職活動で採用側をしらけさせる、ミドルシニアの自己PR 実績や経験が豊富な人ほど見落としがちな、企業が知りたいこととのズレ

最近ではミドル・シニア層の人材獲得競争が激化しています。株式会社経営者JPが主催した本イベントでは、2023年を振り返りながら、ミドル・シニアが押さえておくべき、キャリアと転職のトレンドを深掘りしました。本記事では、合同会社THS経営組織研究所 代表社員の小杉俊哉氏、株式会社ルーセントドアーズ代表取締役の黒田真行氏をゲストに迎え、外資企業と日本企業の賃金差や、経営陣を目指すためのステップについて語ります。

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外資企業と日本企業の賃金差

井上和幸氏(以下、井上):質問にいきましょうか。「政府が出した職種別内外賃金差では、日本企業が多くの職種で外国人よりも低い。ただ、日本にある外資系企業では差がマイルドになっています。これは英語力からきているのか、単に影響を与えられる市場の規模の違いなのか。日本人の力を客観的にたくさん判断されてきたみなさまのご意見を、お聞きしたいです」。

要するに、外資と内資の同一職種で、賃金差があることについてのご質問ですかね。今はちょっと変わっていると思うんですけど、日本企業は若い時から中堅までは、どっちかって言うと、働きに対する給与が低くて、退職金が厚い。

終身雇用でパフォーマンスは少し落ちてくるんだけど、還元率がどんどん上がっているみたいな制度設計をしているケースは、あると思うんですよね。特に如実に差が見られるのは、いわゆる課長から部長ぐらいのところ。今だいぶ薄まってはきていると思うんですけど、外資だったらけっこう高いのに、日本企業は低いみたいな。

小杉俊哉氏(以下、小杉):外資系にいた時の感覚で言うと、単純にジョブグレード(従業員が担当している職務の内容や難易度に応じて待遇を決める仕組み)があって、部長だったらけっこう市場価格の影響で(給与が)高かったりするんですけど。基本的に同じグレードだったら、似たような範囲に入っていて、年齢は何の関係もないというのがあります。

井上:そうですね。おっしゃるとおり、先ほど言った日本企業の年功序列的なところで、役割ではなく(年齢で)給与が決まっているのも、影響はしていますよね。

外資系企業のベース給はそこまで高くないことも

井上:あと、全部がそうなっているわけでもないんだけど、外資系企業だと、パフォーマンスがかなり高いと200パーセントとかで、かなりローレベルだと0になったり。例えばOTEと言いますけども、いわゆるベース給を切り出すと、本当は高くなくて。

日本企業の、例えば年俸1,000万円のポジションが、外資系企業だと1,300万円になっている。その1,300万円の年俸に対して600万円分が業績連動になっているんだけど。パフォーマンスが普通だったりすると、意外と外資系も日本企業も、結果として年収がニアリーイコールになるケースも多くあります。

小杉:ちょっと比較しにくいですよね。

井上:一概に言えるものではないと思うんですけど。いずれにしても役割に対して年俸がついているのが外資なので。特に比較的責任がある役割を見れば、(給与が)高く見えるのは事実ですよね。なぜそうなっているかは、たぶん今、小杉さんがおっしゃったことや僕が言ったことが、複合的に合わさっていると思います。

小杉:英語力は直接は関係ないですね。

井上:(外資系企業は)英語力が(給与に)加算されているということではないと思います。

小杉:管理職であれば、海外の本社とコミュニケーションしなきゃいけないので、当然のことながら英語力は求められるんで。

井上:(英語力があることで)給与が上がるんじゃなくて、そのポストに就けるかどうかの話ですよね。

小杉:そうです。英語力がないとその役職に就けないというだけの話です。ただ、一般職の人に英語力が必要かと言うと、日本の企業がターゲットだったら、(外資系でも)ぜんぜん英語が使えない人もいっぱいいますからね。

経営陣を目指すためのステップ

井上:ありがとうございます。どんどんご質問にお答えしていけるといいかなと思うので、遠慮なくコメントを寄せてください。

「現在30代半ばです。まずは40歳前後で、企業で雇われるのではなく委任されるかたちでプロ経営者、経営陣を目指したい場合に、どういった経験やポジションを狙うのがいいか、アドバイスをちょうだいできないでしょうか」と。

ご自身では、大企業よりはスタートアップで、社長室など経営陣の参謀として事業の成長に寄与し、ネクストステップとして経営陣を目指す。あるいは並行して副業をやり、スキルアップおよび出会いを増やすことで、経営陣を狙えるような機会に出会う確率を上げていく。事業計画策定や業務改善で副業するということですかね。

あと、これまで海外の大学を出られて、外資系の製造業で調達、M&A、戦略コンサル、スタートアップの経営企画事業をされてきて、次をどうしようかと考えていると。ご経歴まで書いていただいてありがとうございます。これはどうでしょうね。

黒田真行氏(以下、黒田):こういった経験を持っていて、経営陣のポジションを狙うプロセスをどうするかということですよね。井上さん、どうですか?

井上:経営陣を目指したい場合にということですよね。うーん。

小杉:さっきもお話ししたとおり、少なくとも30代で何らかのプロジェクト責任者をやって、PL(の責任)を持たないと先がないですよね。

黒田:確かに。

小杉:小さくてもいいんで、自分で提案して事業責任者をやる。社内でも社外でも、副業でも何でもいいんですけど、それをやらないと、ただ経営陣の近くにいても経営陣にはなれないですよね。

黒田:そうですよね。

40代になったら、小さくてもいいから組織を率いる

小杉:40代になったら、小さい組織でもいいから、何らかのかたちで自らが組織を率いることを早くやったほうがいい。そうしないとさっき言ったようなOSがアップグレードされていかないと思いますね。

黒田:そう思いますね。特にプロ経営者ということであれば、お金の収支やちゃんと利益を出せるように全体を回すことが、すごく重要かなと思いますね。経営企画が大きくなったら経営者になるんじゃなくて、経営企画部長になるだけだと思います。経営企画のプロではなく、経営のプロになるには商売をしないといけない。

井上:事業を見ることですね。

黒田:そうですね。

井上:ご経歴を見るに、これまでその前提となる経験をけっこうされていらっしゃると思うので。

黒田:ほとんどされていると思うんですけど。

井上:次は本当にPL(の責任)を持つことですよね。いろんなケースがあると思うんです。いきなりトップじゃなくていいと思うんですけど、異動して事業を率いる何かしらのマネジメントの役割に行かれるとか。

確かに経営企画なんかにいると、M&Aされた時がいいきっかけになることはありますので。現職ではそういうのがなかったとしたら、転職した先でM&Aとか含めて、例えば経営企画のマネジメントで入って、PMI(M&A後の統合効果を最大化するためのプロセス)に絡んでいくとかね。

そのとっかかりで買収先の経営に関与していくみたいな方は実際いますし、ご経歴を活かしていただくとすると、そういった道もすごくあると思うんですよね。

いずれにしても、お二人もおっしゃっているとおり、いきなり最終責任者じゃなくていいですし、小杉さんがおっしゃっているようにプロジェクトでもいいと思うので。現職での異動であっても、転職であっても、何か自分が事業を采配する側に行かれることが唯一の手じゃないかと我々は思います。

黒田:ぜひ、すごくいいプロセスを踏まれていると思うので、そのタイミングです。

井上:ねえ! いいご経験をされていらっしゃる。

近年、転職して失敗するケースがかなり増えている

井上:ご質問で「自己証明書ブームとは何ですか?」というのをいただきまして、これは記事で解説をしているので、そちらを見ていただいたほうが良さそうかと。経営者JPという会社では、幹部クラスから経営職の方の転職のご相談、ご支援をしているんですけれども。実際、転職して失敗したというご相談が、ここ数年はすごく増えているんですよ。

(原因は)いろいろあるんですけど、選択ミスだったり、ミスマッチのポイントを見逃したまま入社してしまった。あるいは採用してしまったと。間違ったものをそのままにしておくのは良くないですから、僕らもバックアップさせていただくんですが、本来はそういうことが起きないようにしていただいたほうが、当然良いと思っていて。

経営者JPって、エグゼクティブサーチという採用転職の支援だけじゃなくて、現職の方のご活躍やキャリアアップをしています。企業から見れば、幹部の方のフォーメーションを作っていただくための支援や育成を、パートナーのみなさんとやっているんですが。ミスマッチが起きないために、企業側も個人も、より自身の棚卸やプロファイルに非常に目が行くだろうと感じています。

その流れで、最近日本企業もリファレンスチェックをすることが、すごく増えてきています。それは、ここで今言っているようなミスマッチを防止したいという欲求が、さらに高まっていることの表れだと思っているんですね。

自分のことを客観的につかむのって、実はなかなか難しいところもあるので、そのためにいろんな自己診断ツールなどがあります。個人であるみなさんが自分を確認して、ミスマッチが転職なり何なりで起きないようにすることと、採用する側もミスマッチを起こしたくないので、当然面接の精度を上げていくことが一番の正攻法なんですが。

そこに客観的ツールとして、アセスメントやリファレンス(チェック)を導入したりする具体的な試行錯誤が増え始めていて、これは今年の1つの大きなテーマになりそうだなと思います。

過去実績は、あくまで「未来の成果」のための材料

井上:ちなみに小杉さん、黒田さん、どう思います? 

小杉:それを自己証明というんですね。

井上:そうですね。自己証明と言ってみたんですけど。企業からすれば、ある意味その対象としている方のアセスメントなんですけどね。

小杉:ふーん。あったらいいですよね。

井上:(笑)。それだけでわかるというもんじゃないんですけど。

黒田:これに関連したところで言うと、やはり職務経歴書とか証明が、プレゼンテーションしていく上ですごく大事なんですけど。

過去どんな会社でどんな活躍をしてきたかの証明ではなくて、私が入社したあかつきに、「どんな成果を出し得るか」という確からしさを証明する。そのために過去を材料として使っているだけだと。

過去実績を本気で証明しにいくと、相手方がしらけてしまうというか、「ところでうちでどうしてくれるの?」という話なので。未来の成果をどう生み出すかを証明する、と考えたほうがいいかなと思います。

井上:おっしゃるとおりです。ソリューション型の商談であれば、いきなり「これはこういうふうに便利で」って言い出すのは下手な営業で。どちらかと言うと「どうされたんですか?」「どんなことをしたいんですか?」みたいな、お客さまの状況から入ると思うんですよね。

転職ということで言えば、我々自体が商品ですから、「なるほど。そういう状況であれば、私が仮にご縁があった場合はこんな観点でアプローチして、こういう結果を、こういう理由で出せると思うんですけどどうでしょう?」という話ですよね。

黒田:そうです。

井上:「なぜそんなことを井上さんができるの?」といったところに、「なぜならば」というものがちゃんとあるといいですよね。そこで初めて、過去実績とか客観的に伝えられるものを提供する感じ。

黒田:(職務経歴は)確からしさを増すための証拠、材料でしかない。それを伝えることが本題になっている方がすごい多い。

井上:そうなんですよね。プロダクトアウト型転職活動って感じだとちょっとまずいですよね。

小杉:なるほど。

黒田:どれだけの貢献ができるかは、「ここからあなたが想像してください」というのでは、ちょっと売り込み方としては弱い。

まずは自分のことだけを考えて突き進む

井上:あっという間に時間がきてしまいましたが、小杉さん、黒田さん、本当にありがとうございました。2024年に、ミドル・シニアのみなさんが「こうしていかれるといいんじゃないでしょうか」ということでまとめて、この会は終わりましょうか。じゃあ黒田さんからいきますか。

黒田:先ほどもお話ししましたが、自分の大切な人生なんで、できるだけ充実したものに。最後に仕事を終える日に「これだけ働いてきて良かったな」と思えることがすごく大事だと思うんで、そこに向けて悔いがないように。

もっと言うと、強欲に戦うと言うとちょっとあれですけど、向かっていただきたいなと思います。あまり人の目を気にしたり、マクロがどうとかじゃなくて、まずは自分のことだけを真っすぐに考えて、突き進んでいただきたいなと思います。どうもありがとうございました。

井上:ありがとうございます。いろいろお二人や僕がお伝えした中で、何かヒントになればと思います。総じて言うと、ミドル・シニアのみなさんは、特に転職とかにいろんなご苦労はあると思うんですけど、僕はけっこう楽観しています。今、どんどん良いほうに向かっているなとすごく感じています。

総じて言うと、みなさんを活用したいという声が広がっているのは事実ですし。ただ、黒田さんがおっしゃってくださったみたいに二極化はあるので。あえて言えば、求められる側のほうに、みなさん自身で回っていただきたいなと思うし、どう回っていただけるかが、今日の話の中で出たところかなと思います。

今日はプロジェクトマネジャーとか、起業家のように働くとかというメッセージがあったと思うんですが。悲観的というか厳しい言い方をすれば、どの会社も課題は山積なわけです。

でも、そういう課題があるということは、解決する余地がいっぱいあるということなので。そこに対してみなさん自身でテーマを決めていただいた上で、「よし、これで解決しよう」と取り組んでいただくと、すごく良い成果を出しやすいと思うんですよね。

キャリアを考える出発点は「いったい自分は何者なの?」と問うこと

井上:そんなふうにみなさん世代が取り組んでいただくと、すごく会社もモードアップしますし。転職ということで言えば、僕がおつき合いしている経営者の方々からすれば、そういう方をやはり求めています。

現職の中でのトップも同じだと思うんです。だから現職であれ転職であれ、みなさんがワクワクしながら、チャレンジテーマを決めて取り組んでいただければ、物事は少しずつでも進みますし、その中で大きく化けるものも出てくると思います。

そんなことをやっていると、けっこう日本が元気になるんじゃないかと思うし、起爆剤になっていただける世代だと思うんですよね。あまりたそがれずに(笑)、黒田さんがおっしゃってくださったとおり、有限である時間を大切に使っていただけたらと。

そのための情報提供とかご支援は、引き続きやらせていただきますので、よろしくお願いします。小杉さん、お願いします。

小杉:黒田さんがお話しされたこととすごく似てるかなと思うんですが、キャリアを考える時に、若い人だけじゃなくてミドル・シニアも「いったい自分は何者なの?」と問うのが出発点だと思います。

結局ワークライフバランスじゃなくて、ワークライフインテグレーション(仕事とプライベートの双方が相乗するという考え方)ですから、仕事をどう考えるかの話じゃないと思うんですよね。

いかに人生と統合して、「いったい自分はどんな人生を送りたいのか」と考える。あなたは主役であり脚本家で、他の何人たりとも代替できないので、(キャリアは)自分で決めるしかないし、自分でやるしかないわけですよ。

自分のこれからの人生の話という自覚を強く持って、自分自身を、これからのキャリアを矮小化しないでいただきたいですね。今日はあなたの人生の一番若い日ですから、まだあらゆる可能性があるんじゃないでしょうか。少しでもそれを考えるきっかけになったら幸いです。ありがとうございます。

井上:ありがとうございます。

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