2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために開催されるカンファレンス「あすか会議」。今回は「あすか会議2023」から、ワーク・ライフバランスの代表・小室淑恵氏、フォースタートアップスの代表・志水雄一郎氏、衆議院議員・平将明 氏、そしてNPO法人ETIC.創業者の宮城治男氏が登壇したセッションの模様をお届けします。最終回となる4回目は、来場者との質疑応答が行われました。
各務茂夫氏(以下、各務):さて、ここからは質疑応答に入りたいと思います。ご質問がある方は手を挙げていただけますか? じゃあ前の女性の方、いかがでしょう。
質問者1:名古屋校の卒業生のものです。AIを活用してキャリア形成をしていかなくちゃいけないと思うんですが、キャリアを形成していくためには、やはり健康でないといけないと思うんですね。小室さんは睡眠を推進されていますが、みなさんが健康であるためのポイントがあれば教えていただければありがたいと思います。
各務:どなたかに聞きたいというようなことはございますか?
質問者1:みなさんに聞きたいです。
各務:どうしましょう。一番健康な方に答えていただくというのは。
(会場笑)
各務:じゃあやはり小室さんですかね。
小室淑恵氏(以下、小室):私はいつも聞いてくださっているから、他の人から聞きたいですよね。
質問者1:いや、小室さんお願いします。
小室:私でもいい? いくつか聞いてからのほうがいいかもしれないです。
各務:健康に関するご質問を承りました。まとめてご質問を受けて、それでお答えしましょうか。どうぞ。
質問者2:サカモトといいます。文科省で働いています。官僚ということで働きがいのところがすごく気になっていて、志水さんに質問したいと思います。
官僚って仕事が多いと言われています。バリバリ働きたいというのもありますが、小室さんの言うとおりバランスを取ることも大事です。「ことを成す。大きいことを成し遂げられるんだよ。その可能性があるんだよ」という、私は成し遂げるということにやりがいを感じるんですが、いろんなものとバランスを取ることについて。
やりがいってそこでちょっと削られる部分もあると思っていて、バランスを取りながら、でも大きいことを働きがいとして成し遂げられるものなのか。バランスを取れるとしたら、どういうふうにやったらいいのかをおうかがいしたいと思います。
各務:ありがとうございます。これは志水さんですね。もう1つくらいご質問を。はい、前の方どうぞ。
質問者3:ダイビックの野呂と申します。日本の高齢化に伴い、外国人の超優秀な子たちが日本に来たり、そういうコミュニケーションでAIを活用してブレイクスルーしていくことに、日本人がもっとチャレンジしていかないといけないと僕は思っています。例えば、アフリカの国から超優秀な子たちを連れてくるとかをやりたいと思っています。
みなさまの中で特に平さんにうかがいたいんですが、外国の優秀な人たちを連れてきたり、興味を持って来てもらうことに関してどのような議論がされて、どんな展望をお持ちなのかをうかがいたいと思います。
各務:ご質問ありがとうございました。
各務:さっき手を挙げたこちらの方も。
質問者4:ハセガワです。私はキャリアの質問がありまして、平さんにおうかがいしたいと思います。私は今年結婚しまして、キャリアを考えるにあたって家族もセットで考えていきたいと思っています。
奥さんのキャリアもあって、家族揃ってキャリアを形成していきたいと思った時に、国として、家族全体で考えた時のキャリアをサポートする仕組みやそこに関してどういう議論がされているのかを、もしあればおうかがいしたいと思います。よろしくお願いします。
各務:こども家庭庁の関連の話も出てくるかもしれませんが、今4つのご質問を承りました。1つは健康に関するご質問。このご質問は小室さんに。それからサカモトさんから受けた、働きがいというものに関して志水さんに。
野呂さんのご質問については、生成AIの翻訳という立場を考えた時、外国人に対してどうかということ。さらにハセガワさんのご質問も同じく平さんにで、家族をキャリアとして考えた時に、政府の施策があるかどうか。それぞれお答えをいただきたいと思いますが、小室さんからお願いしてよろしいでしょうか。
小室:今日までの自分のキャリアを振り返ると、そもそも1日8時間しか時間がないという話をした上に、途中3年半不妊治療をしているのでたまに手術もあったりして、その間は「この週は仕事は入れられない」というのが帯で毎月あるんです。
それから子どもは長男と次男、今17歳と10歳がいますが、それぞれが2年ずつ大病していて、1日3時間しか仕事ができないという経験を2年半ずつしています。誰も気づかなかったと思うんですが、その間、短い時間だけれども必死で仕事をしてきました。
特に子どものことは、自分のメンタルをすごく悪くしちゃうんですよ。なので、体の健康というより、どちらかと言うと心のほうが大切です。経営者としてポジティブな存在であるためにも、自分のマインドをポジティブにすることがすごく重要で、やはり睡眠が一番重要だったなと思います。
小室:睡眠については、びっくりするくらい知られていないんだなと驚いたことがあります。2022年5月に慶應義塾大学の山本勲教授が明らかにしたのが、企業ごとの従業員の平均睡眠時間と企業の利益率の相関を調べたら、なんと睡眠時間が長い企業のほうが利益率が高く、それが1年後も2年後も継続していて、2年後はより差が開いていたことがわかっている。
従業員のワークエンゲージメントと、企業の睡眠施策活用度は、主に「勤務間インターバル制度」に関連します。例えば、7時間の睡眠を守るためには、前後1時間ずつの生活時間と、通勤時間をさらに1時間ずつと考えた7時間+4時間、つまり11時間が必要なんですね。
この11時間のインターバルを空けて会社を経営する。これを積極的に活用している企業のワークエンゲージメントがもう明らかにピンと高かったんです。こういうことを経営者、もしくはリーダーとなる方は、自分自身の睡眠と部下の両方でぜひイメージしてください。
なぜ自分も大事か。「経営者だから別に有給も残業もないでしょ」と思うかもしれませんが、論文でしっかり解明されているのが、「睡眠不足の上司ほど、部下に侮辱的な言葉を使う」という事実です。侮辱的な言葉っていうのは、上司の性格ではないんです。
「自我消耗」と言って、睡眠が短くなると自分をコントロールする力が弱くなって、部下の一定の口癖とかに、ものすごく腹が立つんですね。なのでそこでカッとなって、いわゆるパワハラ的な行動を取り、それが離職につながったり、もしくはモチベーションダウンにつながって、結果として自分の仕事がまたボーンと増えるんですね。
こういう負のスパイラルをやっていると、当然リーダーとしてビッグビジョンを描く時間もないし、メンバーがしょっちゅう入れ替わるから、志も何も、一緒になって走る人がどんどん抜けるわけです。なので睡眠とポジティブさ、健康を守ることは、部下も大事だけど、自分自身もものすごく大事です。
小室:それからさっき「妻のキャリア」の質問もされていましたが、みなさんご存知かわからないんですけれども、産後の妻の死因の1位は自殺なんですね。これは産後うつによるものなんですが、妻の睡眠を守ることもものすごく大事です。
出産などによって女性ホルモンがもすごく上下するんですが、授乳の時間が2時間おきだから、それが治らないんです。なのでいかに自分が代わってあげるか。それによって妻の7時間の睡眠を守るか。
家族一体となってポジティブになるためには、これもすごく重要です。でも簡単ですよ。「7、7」って覚えておけばいいんですから。iPhoneとかで毎日計っていけばいいので、ぜひやっていただきたいと思います。ちょっと長くなっちゃってごめんなさい。
各務:ありがとうございます。大変勉強になりますね。
志水さん、お願いします。
志水雄一郎氏(以下、志水):働きがいっていうポイントですが、今日のこの5人の登壇をベースにして解を出そうとすると、たぶんこれかなと思っています。何かと言うと、社内もしくは組織内には、すべての解はない。だから組織内で課題解決するためには、社外でインプットしないとダメだと。
日本と世界を代表する人にたくさん会いましょう。まずインプット。時間を減らすためにはAIを使いましょう。さらに政策面から見れば、昔、繊維産業から自動車産業に日本の主たる産業を移した時、ある一点にフォーカスしたから勝ったんですよ。
いろんなことをやるんじゃなくて、未来を変えられるところにフォーカスする。そうしたら時間制限を持ちながら、ルールを持ちながら、最大のアウトプットを出せるんじゃないかなと思います。以上です。
各務:野呂さんとハセガワさんのご質問について、平先生お願いします。
平将明氏(以下、平):まず外国人材は、今回の骨太方針にも入っていますけど、優秀な高度人材をどんどん入れていこうということになっていて、その1つがスタートアップ・キャンパス構想でもあります。
それとAIやデジタル、Web3をやっていると、みんな日本好きですよね。もう日本に来たくて来たくてしょうがないので、来やすくしましょう、滞在しやすくしましょうということをやっていきます。
言語のところは当然のことながら、Large Language Models(LLM:大規模言語モデル)で言葉の壁を超えちゃうのであまり気にしなくてもいいし、うまくAIを使うと子どもたちはいろんな言語をしゃべれるようになると思います。
あと夫婦のキャリア。すみません。私、ぜんぜんそのへんの政策をやっていなくて、私自身のキャリアって考えたことがないんですよね。結果こうなっているだけで。私はもうノープランでここまで来ているので、あとで小室さんとも一緒にお話をさせていただければと思います。
いずれにしても、家族の価値を大事にしようというのが自民党保守なんだけど、そうでもないよねと。今自民党の中で、個人にフォーカスを当てるか、ファミリーに当てるかという戦いをしています。
あと健康。Oura Ring(体表温や心拍数の変化をモニタリングできるスマートリング)をつけていると、「寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ」ときますよね。寝しなにいつも強い酒を飲んでいたんですけど、やめてお茶にしました。そしたらスコアが改善しました。
(会場笑)
各務:「使い倒す」という志水さんの言葉、他の先生方の言葉もありました。AIに問う力、格好つけて最近は「プロンプトエンジニアリング」なんていう言葉を使うわけですが、そういったものも当然みなさんご存知だと思います。
最後に、今回の「スタートアップ育成5か年計画」の中ですべてのものが「5年で10倍」というマグニチュードで変わり、スタートアップを心がけようとする方にとってはフォローウィンドが吹くということでしょうが、ユーグレナの出雲充社長はよくこういうふうに言うんですね。
やはり最初はなかなかご理解いただけないと。これも営業の真髄のようなもので、確率が1パーセントあるのであれば、1回目は1パーセントで、2回目をやれば確率がどんどん上がっていく。理論的に言うと300回くらいやるとけっこう100パーセントに近いところまで行くと。
このあたりはいかに説得するかという能力、あるいは粘り強さといったものが、今後相対的に重要になってくる感じもします。
今日の最後のまとめとしては私が最後に言うには弱かったかもしれませんが、営業力の部分もみなさんにとってはすごく重要で、結果的にはこれは巻き込む力と言われるものかと思いました。宮城さん、どうぞ。
宮城治男氏(以下、宮城):一言というか、エールというか。30年で社会は大きく変わって、一人ひとりがエンパワーメントされたと話したんですが、ここ3年のコロナがあって、Generative AIが出てきてというこのタイミングって、それがさらにググッと加速していると思うんですね。
ということは、今まで我々が前提としてきた社会が、そのままでは絶対にいかないということだと思うんです。そのタイミングでこの「あすか会議」の場に来て、ある種人生にタメを作って、時に前の会社を辞めてっていう自由を得てここに来ているのは、すごくセンスがいいなと思うんですよね。
その時にみなさんが本当に大切にしたいというか、やりたいと思うことに情熱を傾けることに、ぜひ向き合っていただきたいと思います。今感じている違和感や思いが真実なので、その先に次の時代に必要な新しい価値の軸、あるいは会社や出来事が生まれてくるんじゃないかと思います。
ぜひ期待をしてエールを送りたいと思います。ありがとうございました。
(会場拍手)
各務:ありがとうございました。宮城さんにまとめていただきました。ありがとうございます。
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