2024.10.10
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「VUCA時代の人材をいかにして定義・育成し、組織で生かすか」をテーマに、NTTビジネスソリューションズが開催したイベントに、『ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式』の著者・増子裕介氏が登壇。後半では、ハイパフォーマー分析のやり方や効果が語られました。
増子裕介氏(以下、増子):ビジネスの世界で、ハイパフォーマーの思考・行動様式をどのように抽出するかと言いますと、極めてアナログでして。今もあるクライアントでハイパフォーマー分析をしているのですが、ワントゥワン(One to One)で、90分ひたすらデプスインタビューをします。
そのやりとりを一語一句文字起こしして、(スライドの)このように「ここはいいことを言っている」という部分をハイライトしていきます。
例えば右のように長い発言は、「耳の痛い話を上司にぶつける」といったように発言のエッセンスを20~30文字で要約するといったことを、1人ずつやっていく。
これを電通においては百数十名やりました。そうすると1人あたり30〜40個の思考・行動様式が抽出されます。もちろん一人ひとり言っていることは違うわけですが、そのエッセンスにおいてほぼ同じことを言っているなというものをグループ化していくことで、一人がたまたまやっていることではなく、普遍性の高い、その組織・会社において成果に結びつく思考・行動様式をファクトベースで言語化していくわけです。平均して10個ぐらいの要素が抽出されます。
ちなみに、冒頭に申し上げた著書『ハイパフォーマー思考』は、この(スライドの)セカンドキャリアのハイパフォーマー分析がベースになっています。
電通を含めてクライアント作業は守秘義務の関係もあり、みなさんにお見せできませんが、セカンドキャリアのハイパフォーマー分析は自主研究的に行い、どこからもお金をいただいてないのでお見せできます。
セカンドキャリアのハイパフォーマー分析とは、Googleや電通、日立など、普通なら定年まで勤め上げる会社を、自分の意志で早めに辞めて会社を立ち上げたり、次の会社に移って成果を上げている人に共通する思考・行動です。
項目が多いので、要約したバージョンでお見せすると、著書に書いた7つに5つを加えた12個が、おそらく本日のテーマの、「VUCA時代のハイパフォーマー」に近いのではないかと思います。
例えば、1個目の「自分のプロ/コン」、つまり長所と短所を把握するところや、4番の「『自分の軸』を持つ」などが追加項目です。せっかくなので、これは本邦初公開ですが、皆さまが実際に使っていただけるように、あえてこの逆側を1個1個(スライドの右に)書いてみました。
例えば1個目で言うと、「自分のプロ・コンを把握していない」。自分の長所は把握しているけれども、短所もちゃんと把握しているだろうかと自分に問うてみる。あるいは、場合によっては自分の部下に当てはめて考えるという使い方をすると、チェックリストとして機能するのではないかと思います。
では、このハイパフォーマー分析を実施するとどのような成果が出るのかを具体的に申し上げましょう。電通で人事畑に移った時は、「まずは海外拠点のサポートをするように」というのがミッションだったので、電通インドネシアという二百数十名の中規模拠点でハイパフォーマー分析を実施し、ハイパフォーマーがしていることを言語化して、この時は評価制度にガチっと組み込みました。
日本以外の海外では、「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」という、数百社のクラアントが投票してどの代理店が優れていたかを決める表彰制度がありますが、ご覧のとおり2010年は電通インドネシアは1つも取れていません。しかし、この年にハイパフォーマー分析に基づく、思考・行動様式を言語化し、評価制度に組み込んだところ、なんと翌年は10部門中6部門で受賞し、「ベストオブザベスト」という、グランプリまで受賞できました。目に見える成果が、しかも短期間で現れたということです。
驚くような成果ですが、理由は明確です。一部のハイパフォーマーだけが実行していて、それ以外の人がしていないことを言語化し、いわゆる6割の中間層がそれを真似すれば、組織全体のパフォーマンスが上がるというシンプルな話かと思います。
インドネシアでは評価制度に入れたと申し上げましたが、このように「目指すべき人材像」を言語化しそこから逆算することで、採用/配置/教育/異動という、バラバラになりがちな人事施策がすべてリンケージされるところが肝だと思っています。
ハイパフォーマーに共通する思考・行動様式が抽出されたら、その中から入社後の変化が期待しにくいところ、一番深い部分だけを採用で見極めればいいわけです。また、座学では身につかない、経験によって初めて身につく要素もあって、これは異動・配置との連携が必要になる。一番浅い部分は学習でマスター可能ですから、研修などでカバーすると。
優秀人材がきちんと定義され、深い部分を採用で見極めて、経験させ、研修等で必要な要素をトッピングしていけば、こういった仮説がない場合に比べて、はるかに高い確率で優秀人材を計画的に育成、プールできるはずだというのがポイントです。
これが最後(のスライド)です。先ほど採用の話をしましたが、多くの会社は採用段階で特定の能力を見極めていると思います。能力には簡単に変化する能力と変わりにくい能力があると言われています。
実は、多くの企業が重視している「コミュニケーション能力」は、一番変わりやすい能力の1つなんですね。ですから、これは入社後に鍛えればいいスキルで、採用段階でチェックしても意味がない。
むしろ右側にある「概念的能力」や「情熱」といった「変化しにくい能力」を見るほうがいいのではないかという話までつなげられれば、評価以外のところも連携して、すべての人事施策がリンケージしていくのではないかということです。私のパートは以上でございます。ご清聴ありがとうございました。
司会者:増子さま、ありがとうございました。チャット欄に「『状況を批判的に捉える』と、『何とかなると思ってやってみる』は矛盾しないのか」といった質問が来ていますが、いかがでしょうか?
増子:これは私の本を読んでいただいた方ですね。ありがとうございます。7つの思考・行動様式は、To DOリストではなく、「この順番でやっていただければうまくいきやすいよ」という時間軸を伴ったストーリーになっています。まずは、「『何とかなる』と思ってやってみるところからスタートしなさい」というのが、1つのポイントです。
そこから5つのステップを踏んで、必要に応じて、「今のままでいいのか」と疑問に思ったところで、初めて「批評的に捉える」というステップを踏んでもいいと書いていまして、あくまでオプションだと強調しています。
この「批評的に捉える」だけをやっている人もいなくはないですが、それを最初からやっている人はローパフォーマーだと思います。ちゃんと自分のプレイできる場所を見つけ、不断の学習を続けて成果を上げている人が、それでもあえて「今、自分がいる場所がベストなのか」と、意識的にクリティカルに捉え直すことも必要という趣旨なので、時間軸を伴って考えれば、矛盾しないものだと思います。
司会者:ありがとうございました。
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