
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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変化の激しいこれからの時代に必要とされる「人的資本経営」のあり方について語られた本イベント。戦略人事や人事制度改革に取り組んできた人事のプロである髙倉千春氏が、日本企業が抱える課題と、個人と組織がより良い関係性を築くためのポイントについて語りました。本記事では、日本企業の組織風土における問題点についてお伝えします。
髙倉千春氏(以下、髙倉):じゃあ(日本企業が成功するために)何をやればいいか。今、企業側が考えているのは「将来の未来戦略は大きく変わるよね」という資料の左上のところです。
経営理念と合わせて将来戦略を考えなきゃいけない。「優秀層はどういう人なんだっけ」と考えると、その将来の職務要件や人材要件が大きく変わるでしょうと。
もう1つ大事なのは個の尊重。「うちにはどんな人がいるんだっけ」「どういう思いで何を大切にしてるんだっけ」という可視化が必要です。今HRテックの必要性がすごく言われていて、可視化のツールがあらためて重要になっている。
会社のニーズというか、将来戦略と人材ポートフォリオ、事業ポートフォリオの合体なんですけど「こんな人がいるから、こういうポジションを作ろう」というのが、日本企業の今までのセオリーだったんです。
でも私たち味の素は、「適材適所」から「適所適財」という言葉に換えました。つまり将来の戦略から見た時に、どういう人材要件と職務要件がいるんだろうと。一方で「うちの会社の中にはどんな人がいて、どういう思いで何をやりたくて、どういう特性があるんだろうか」と個に着目する。
ここを適所適財で可視化してマッチングする。実はこの戦略人事は、味の素のグローバル人事戦略で作ってきました。これも本の中に書いています。
最終的には仕事での経験が大事なので、思いのある人にどういう経験をしてもらうのか。会社の中だけで足りなければ、副業・兼業での越境も大事になってきます。
髙倉:さっき組織文化が大事だと話したんですけど、実はオーガニゼーション・デベロップメント(組織開発)は、ずいぶん昔から人事会では科学されてきたんです。私が外資系にいた時は、オーガニゼーションデベロップメントの日本法人のリーダーもやらせていただいたんですけど。
タレントマネジメントとは、タレントデベロップメント(能力開発)とオーガニゼーションデベロップメントが対になっていなきゃいけない。外資では20年間ぐらいこれを追求してきたんですよね。
日本企業にもすごくいいところがたくさんあると思うんですよ。例えば長期的視点で育成ができる。人のネットワークを大事にしている。それから「うちの会社はすごくいいんですよ」と帰属意識が高いとか。
それから長期雇用が生むメリットとして、異動でいろいろな経験ができることがあります。ただこれから変化の時代になると、ちょっと組織風土を変えないと「いいところがマイナスになっちゃうかも」という示唆も本の中に書きました。例えば長期的視点では、トライアンドラーンで挑戦したのに、失敗を許さないと凝り固まった学びで終わっちゃったり。
みなさん、社内の方とはよくネットワークを作っていらっしゃるじゃないですか。社外の人たちとのオープンなネットワークは、どのぐらい持っていらっしゃいます? 「うちの会社はいいよね」と言っているけど、いいとはどういう意味なのか。地下水脈の明文化と書きましたが、これをわかるように言わないと、外の人たちとのコラボレーションもできません。
今、外国籍や若者の活性化なんて言われています。それを文面化してコミュニケーションすることはすごく大事なんですよね。それからオープンな風土で個を活かす時にそういう視点を持っているのか。プロティアン・キャリアのど真ん中にある、志とケイパビリティ(能力)ですよね。社会のニーズにちゃんと見合ったものを求めているかどうかが、勝負になってくると思っております。
髙倉:いずれにしても風土醸成は非常に大事だと思いますが、どうすればできるのか。今までのプロティアン・キャリア協会でのお話や企画を絡ませていただくと、どうも若年層の方のためになっています。でも私は、みなさんの上司であるベテラン層が変わっていかないとだめだと思っています。
そのために「360度サーベイ」や「ラインマネージャーの上司力の向上」にプロティアン・キャリア的な考え方を入れていかなきゃいけないかなと。
これは(ピーター・)ドラッカーさんの「リーダーとは」という有名な図です。決まったことをちゃんとやる人がマネージャーだとすると、「リーダーは何が適正で正しいのかを判断して、みんなを巻き込んでリードしなきゃいけない」と。ドラッカーさんは(リーダーとは)「Doing the Right Things(正しいことを行うこと)」と言っています。
私はグローバル企業でずいぶん人事をやらせていただいて、日本のリーダーの資質も見てきましたが、これができる上司や経営層がどれだけいるでしょうか。右側の(マネジメントの)「Doing Things Right(正しく行うこと)」に関しては、日本人はコンピテンシーレベルですごいんですよ。
ところが、私がアメリカやヨーロッパの本社に日本人の優秀層を推薦して送ると、よく言われるのは「千春、やっぱりだめだわ。彼はすごくいい人だけど、グレートじゃないよ」「いやいや、社長は(マネージャーではなく)リーダーじゃなきゃだめだ」と。
じゃあグレートって何? と言うと、ドラッカーさんの言葉では「方向性を見定めて、みんなの気持ちを駆り立てて、一人ひとりをきちっと見て、個を活かしてリードできているのかどうか」。ここがこれからの上司の勝負どころだと思っています。まさにプロティアン・キャリアだと思うんですね。
髙倉:「リーダーシップはこうあるべき」という鏡に自分を映して「こうやろう」と考えていたのは、私たちの世代でもあった。
でも世の中が変化していくと鏡は変わり続けますから。鏡を見て自分を見直す習慣が、まさにアンラーン(これまで学んだ知識を振り返り整理し直すプロセス)かもしれません。それをやらなきゃいけないと思っています。
今日は人事の方もたくさんいらっしゃると思うので、人事の方にエールを送りたいと思います。私は人事の役割がますます大事になってきたと思っています。おそらく書類作業はChatGPTや生成AIでもできると思うんです。
じゃあ、人事は何をやらなきゃいけないか。これには2つあって、1つはストラテジー・デベロップメント(戦略策定)。人が経営のど真ん中にあるように、経営議論に参画していく人事じゃなきゃいけない。この先天候が見えにくい世の中になっていきますが、船が沈んじゃいけません。船の方向をちゃんと先導できる人事であること(が重要です)。
それからもう1つは、いろいろな人たちが船の中で活性化して、自分の力を活かしてもらわなきゃいけないわけですね。そうすると個を活かせる組織風土を作れるかどうか。これがオーガニゼーション・デベロップメント(組織開発)です。
人事が、自分自身が何者であるかと自分を見つめ直す。そして自分自身の中に、いろいろな多様性を受け止めるお皿を作っていく。これが大事かなぁと思っております。ちょっと駆け足でしたが、本の中で私が述べたかったことをサマリーにして今日はお話しさせていただきました。
今井美穂氏(以下、今井):髙倉さま、ありがとうございました。今回お話しいただいた日本企業の特性を踏まえたアプローチ法や今後の人事がどうあるべきか、詳しいお話は髙倉さんの新著書『人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代』をご覧いただけたらと思います。
髙倉:ありがとうございます。
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