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新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」(全3記事)

“アットホームな職場”で働きたい若手の割合は過去最低 Z世代が本当に求めている「理想の職場」と「理想の上司」

VUCA時代と呼ばれる変化の激しい昨今、早期離職やメンタル不調など、さまざまな企業で新人・若手育成の課題が挙げられています。そこで今回は、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが行った「新入社員意識調査2023」の結果を元に、Z世代の力を引き出す育成のヒントを探ります。本記事では、若手層が求めている職場環境や働き方について解説しました。

新人・若手育成で起こりやすい3つの課題

司会者:当社、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部トレーニング開発グループの武石、桑原より情報共有いたします。では桑原さん、よろしくお願いいたします。

桑原正義氏(以下、桑原):ご紹介いただいた桑原と申します。今日は武石と桑原の2名体制でお話ししますが、まず最初に私からお話しさせていただきます。

武石も私も研究開発部門で仕事をしています。新人・若手領域において、どんどん変化する新人・若手にどういう育成をすると、より効果的か。このVUCA的な時代の中で、Z世代の育成を 探究テーマとして日々研究開発をしたり、トレーニングのプログラムを作ったりして活動しております。

ここからは「新入社員調査」ということで、毎年弊社では研修を受けていただいている新入社員のみなさまにアンケートを取っています。前半では、その調査結果をもとにした分析を進めます。

そもそも今日の新人・若手育成で、どういう問題・課題が起こっているのか。みなさんもこのあたりの情報はご存知のこととは思いますが、私自身も2005年から新人・若手領域を専門に仕事をしています。ですから15年以上やってきているんですが、まさにこの3つの問題(メンタル不調・早期離職・成長鈍化)が、変わらずずっと継続しているなという感覚があります。

毎月お客さま向けのセミナーをやってきているんですが、特にこの2〜3年はもちろんコロナの影響もあると思うんですが、新しい世代、Z世代と言われているような方々が社会に出るにあたって、お客さまの課題感がますます高まっています。

毎月セミナーをやると、多い時だと100名以上、コンスタントに40名以上の方がいらっしゃいますが、ここ(スライド)に書かれているようなことが本当に職場で起こっています。

業種・企業規模問わず、多くの企業が頭を悩ませている

桑原:セミナーに来るお客さまは企業に限らないんですが、学校法人の方、官公庁の方、はたまたNPO法人と、従業員規模が数名から1万名以上の会社まで、これはあちこちで起こっています。

それに頭を悩ませて、「どうしたらいいのか」という課題感がますます高まっているのが現在の状況かと思います。

それに対して弊社は、育成という面で問題解決をサポートしていこうと取り組んでいます。特にその中でも、どういう力を育てていけばいいのかというところでいけば、「自律的に学習・成長していく力」を根幹の力として設定させていきます。

「自律」という言葉はよく聞くと思うんですが、実はもう1つポイントがあると思います。正解がなくてうまくいきにくいVUCA環境だと、単に「自分から考えて動いていく」という自律だけだと、実は思い通りにならない経験が増えていくだけなんですよね。

先輩・上司の言うとおりに正解がある時代は、そういったものを愚直にやっていけばいつか結果が出るところがあったと思うんですが、今は自分で考えて動いたところで結果も出にくい。

世代間の「分断」ではなく「相互理解」を目指す

桑原:自分で考えて動く自律は大事なんですが、プラス「成長・学習」。やった経験から、いかに学び取っていくか。うまくいかない経験に直面しやすい時代ですから、その中からつかみ取っていく「学習していく力」というのが、今日の時代ではさらに重要性が増しています。

ですから、自律的な学習・成長をいかに育てるかというのが、今日のとても大きな重要課題だと考えています。

ここからは、こういう前提を元にしながら調査結果を眺めつつ、武石から考察をお話しさせていただきます。なお、◯世代などと括ってラベリングすることに疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。私たちも、最終的には一人ひとりの個を理解し尊重した関わり合いが大切だと考えています。

そのプロセスにおいて、変化が非常に速く、価値観の多様化やジェネレーションGAPも生じやすい現代においては、それぞれの世代全体としての傾向およびその背景を知っておくことは、その後の相互理解、個の尊重につながるものと捉えています。

結果をもってラベリングするのではなく、「こういう特徴を持つ可能性があるのか。その背景には何があるんだろう?」と関心を持ち、理解する姿勢をもつことで、分断ではなく相互理解に進む一助になると考えています。

“アットホームな職場”を望む人の割合は過去最低

武石美有紀氏(以下、武石):武石と申します。よろしくお願いします。まずは調査概要について説明しますが、今回は2つの調査を元に結果と考察をご紹介していきます。

調査の1つ目は、弊社の公開型新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者に対して、13年間継続的に実施している意識調査です。2つ目の調査は、弊社のインハウス型新入社員導入研修、およびWEB学習プログラムの受講者に対して、2020年から開始した意識調査となります。

調査1の対象者は、弊社の公開型新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者で509名。調査2の対象者は、弊社のインハウス型新入社員導入研修、およびWEB学習プログラムの受講者で1,840名です。

では、調査の中身について見ていきましょう。初見の方もいらっしゃると思いますので、ポイントをかいつまんでデータ部分をお話しします。考察部分のスライドでは具体例なども踏まえてお話しします。では、始めていきます。

まずは「働くうえでの意識」の項目です。働きたい職場の特徴を聞いた質問では、「お互いに個性を尊重する」が過去最高、「アットホーム」は過去最低となりました。

働くうえで大切にしたいことを聞いた質問では、「任された仕事を確実に進めること」が過去最高、「何事も率先して真剣に取り組むこと」が過去最低となりました。

リモートワークの普及によって起きた変化

武石:上司に期待することを聞いた質問では、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が過去最高、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は過去最低となりました。

仕事・職場生活をするうえでの不安を聞いた質問では、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」「上司とうまくやっていけるか」が過去最低となりました。

ここについて少し補足させていただくと、「周囲の関係者とうまくやっていけるか」という項目が下がっているのは、コロナ明けで対面ベースになっていった影響があると考えています。

リモートメインだった時は、入社して会社の人たちと直接会わない中で「仲良くできるかな?」という不安は強く出がちですが、今回の調査時期を考えると、対面も増えてその不安は解消されつつあると見ています。

データ的に見ても、過去と比較してググっと下がってきているというよりは、例年通りに戻ってきているという感覚です。

新入社員が“アットホームな職場”を求めなくなった背景

武石:では、注目したい傾向と考察に移ります。働きたい職場の項目で、「お互いに助け合う」「お互いに個性を尊重する」の項目は、他の選択肢よりも選択率が高い結果となっています。

新入社員は「個」が守られた中で、互いに協力し合うようなつながりを求めている傾向があると考えています。

「アットホーム」「みんなが1つの目標を共有している」の項目は、近年では選択率が減少傾向です。「アットホーム」とは心理的安全性が担保された職場という意味合いで、ある種、新入社員世代には受け入れられそうな選択肢であるものの、選択率は過去最低となっているのが興味深いです。

こちらに関しては、組織が一体化することを想起させる選択肢であることが、選択率を低下させている要因だと考えています。

「みんなが1つの目標を共有している」の項目の低下は、新入社員世代はみんなでやること自体は嫌いなわけではないのですが、例えば、トップダウンで上から降りてくる目標をわけもわからずに追っていくことには抵抗感を感じます。「なぜその目標があるのか」という、意味や納得感が非常に重要です。

「自律」を苦手とする若手社員

武石:考察の2つ目に移ります。働くうえで大切にしたいことの項目で、「任された仕事を確実に進めること」の割合が高まる一方で、「何事も率先して真剣に取り組むこと」の割合は減少しました。こちらは自律を苦手とする若手層の特徴が結果に出ていると考えています。

企業さまからのお声としても、若手層は上司から見て「与えられた仕事はしっかりやる」「真面目だ」といううれしい声がある一方で、「でも、もっと自律的に動いてほしいんだよな」という声をよく耳にします。

「もっとがんばってほしい」という期待を込めて指導したい上司の方も多いと思いますが、(スライド右側にある)上司に求めるコミュニケーションでは、新入社員の厳しさへの抵抗感は年々増しています。

この背景には、社会全体のハラスメント意識の強まりなどにより、厳しく叱られる経験が減少していることがあると考えています。

若手が「仕事をするうえで重視したいこと」とは

武石:では、新入社員の仕事観の項目に移ります。仕事をするうえで重視したいことを聞いた質問のトップ2は「成長」と「貢献」。

得意なスタンス・苦手意識のあるスタンスを聞いた質問では、得意なスタンスのトップ2は「協働」と「相手基準」。苦手意識のあるスタンスのトップ2は、失敗や否定を恐れず思い切ってやってみようとする「試行」と、受け身にならず自分から動こうとする「自発」となりました。

身につけるべきことを聞いた質問の1位は、「社会人としての基本行動」、最下位は「会社の理念や価値観に沿った行動」となりました。

就職先での勤続意向を聞いた質問では、「現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかと言えばこだわらない」が、「定年まで現在の会社で勤めたい・どちらかと言えば勤めたい」を上回る結果となりました。

業務においても、タイパを意識する傾向が高い

武石:「仕事観の特徴」の考察に移ります。まず、(スライド)左側の仕事で重視することとしては、「競争で1位になる」などの外発的動機づけよりも、「成長」「貢献」などの内発的動機づけを重視する傾向がありました。

続いて右側の(新入社員時代に)身につけるべきことでは、「社会人としての基本行動」が最も高い選択率で、「会社の理念や価値観に沿った行動」は最下位で1パーセントを切る選択率となりました。

若手層はタイムパフォーマンスを意識する傾向にありますが、業務においてもその意識は強いです。例えば、「答えやヒントがあるなら先に教えてほしい」という若手層が多いです。

弊社の新入社員研修でも、かつては「まずやってみて、そこでうまくいかないなら、そこから内省して学ぶ」という順番でしたが、現在提供させていただいているものは、ある一定の考え方や方法をお伝えし、そのあとに実践して振り返るというサイクルを回す仕立てとなっています。

こちらは理想の職場と上司の項目で、10年前と比較してどのくらいアップダウンがあるかを見た中で、特に特徴的な項目をピックアップしたスライドを参考に入れさせていただいています。

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