2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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立川周氏(以下、立川):ジョッキーとして長年活躍されている武さんですけれども、ジョッキーは数字で人気が目に見えてわかってしまう職業です。実際に乗っていてのプレッシャーというのはあるんですか?
武豊氏(以下、武):もちろん競馬はお客さん、ファンが馬券を買って応援できるスポーツですし、その責任はすごく感じますね。いい加減にはできないです。だからといってやることはただ馬に乗って1着を目指すだけなので、そこを考え過ぎずに、自分のやることをやるという感じでやっていますけど。
立川:「やることをやる」というのは、当然準備だったりもあると思うんですけど、どれくらい準備されて、いつぐらいまでに腹を括るものなんですか?
武:そんなに決まってはいないです。JRAの騎手なんですけど基本1年中、土日でレースやっているんですけど、平日も馬の調教に乗ったりとかいろいろあって、よく「休みの日は何をされているんですか」とか聞かれるんですけど、いつを休みというのかな? という感じで。
自分でいくらでもやりようがあるんで、レースの日は決まっているんですけど、それ以外は休みかというと......別に休んでいる気はないですしね。レースのことを考えていたり、調べものしたり、トレーニングしたり。いろいろあるので、365日騎手と言えば騎手ですしね。だから難しいですね。
立川:365日ある中で、実際にレースに出る日にちというのは少ないじゃないですか。
武:そうですね。100ちょっとくらいですからね。
立川:それ以外の日もすべて、365日馬のことを考えない日はないですか。
武:考えない日はないでしょうね。ぜんぜん嫌じゃないですけど。
立川:なるほど。そんな中で人気というプレッシャーもある中ですけれども、競馬界でもこれだけ長い間活躍されるには、どういったわけがあるんですか?
武:(笑)。プレッシャーはもちろんありますけど、そんな嫌じゃないですよ。それを言う立場にいられる(のがありがたいことで)。レースに出られなかったらそういうプレッシャーもないわけですし、それよりも、大きいレースに有力馬で出ることを目指しているわけですから。
そういうプレッシャーがある時はすごく気持ちいいです。でも、僕は36年くらい騎手をやっているけど、ほぼほぼやっていることは変わらないですね。調教馬に乗って、トレーニングして、競馬に乗ってという感じなんで。
立川:土曜日、日曜日のレースは、1日12レースありますけれども、多い時だと10レース分くらい乗鞍があったりするわけですよね。30分置きくらいに来るレースというのは、どうやって気持ちの入れ替えをしているんですか。当然負けるレースもあれば勝つレースもありますけれども。
武:圧倒的に負けるほうが多いんですけれども、終わったら終わりなんで。ゴールしたら終わりですから、もう1回ってできないんでね。やりたい時はいっぱいありますけど。その馬に乗っている時はその馬のことを考えてて、その馬から降りたら次の馬、という感じになりますね。
立川:本当にスパッと切り替える。
武:そうですね。そんなに決めてやっているわけではないですけど。
立川:我々アナウンサーも失敗すると「次のオンエア嫌だな」とか「収録嫌だな」と考えがちなんですけど、終わったことは終わったことという。
武:そうですね。もうしょうがないですもんね。
立川:なるほど(笑)。
武:へこんだりとかしょっちゅうですけど、終わったらもうしょうがないですから。
立川:では当然レースに乗る時も、レース自体は1〜2分ですけれども、それだけ平日に準備をして集中して乗ってもやはり......。
武:もちろん、なかなかうまくいかない時もあります。でもあとで「もうちょっとあそこをこうしておけばよかった」とか「ああしておけばよかった」って、あまり思いたくないですからね。なので、一応そうならないようにはしていると思いますけどね。
立川:武さんはG1のような本当に大きなレースもたくさん勝たれてきていますけれども、その大舞台での戦い方は、ふだんのレースと変わるんですか?
武:そうですね。やはりみんなが目指しているところですから、例えばダービーとかもうすぐあるんですけど、関係者全員が目指しているレースなので、それはそう思って向かうし乗るしという感じですね。
普通のレースと大きいレースは、その差があるかもしれないですね。もちろんやっていることは一緒なんですよ。できるだけ早く走らせて勝ちたい。小さいレースでも勝ちたいですから、それは一緒なんですけど、「向かい方」が違うかもわかんないですね。
立川:向かい方。
武:考え方というんですかね。やはりみんなが目指しているところは、普通のレースよりは厳しいところが多かったりとかはあるでしょうね。
立川:競馬だと多くて18人が一緒に乗るわけですけれども、ジョッキーによってはデビューしたてのジョッキーもいれば、武さん(のようなベテラン)だったり。
武:そうなんですよね。この世界はちょっと不思議なところが、デビューしたジョッキーと何十年やっている人が、最初から同じレースに出ることがある。すごく不思議なところではあると思いますね。
立川:デビューしたての時の武さんは、「ああ、この先輩と乗るの嫌だな」とか、あるいは「大丈夫かな」と(思うことはなかったんですか)。
武:それは普通の世界も一緒だと思うけど、なんとなく苦手な先輩とか優しい先輩とか、そんな感じです。中には怖いなとか、できれば絡みたくないなという人はいましたけど......今自分がどう思われているのかわかんないですけどね。
立川:(笑)。それでもスタートゲートに入ったら。
武:そうですね。ダービーとかも18頭で走るんですけど、他の馬と競うという意識ももちろんありますが、自分の乗っている馬をいかにコントロールできるかとか、思っているように走らせられるかとか、自分の馬との闘いというほうが強いかもしれないですね。
立川:ジョッキーは当然年齢だったり性別も本当にバラバラですからね。
武:そうですね。
立川:そして武さんは今年の2月に53歳で、前人未到のJRA通算4,400勝到達と。今後の目標をズバリお聞きしていいですか?
武:(笑)。今後の目標ですか。今は明後日の土曜日のレース勝ちたいなと思っていますよ。本当にそれの繰り返しですから。もちろんダービーという大きいレースが5月末にあって、フランスの凱旋門賞が10月にあって、そういう毎年の目標はあるんですけど、そこには簡単に行けないですからね。
本当にふだんから小さいレースで勝って、少し上のクラスのレースで勝って、だんだん強いレースになっていって、やっと海外に行けるということなんで、もう今はこの週末のレースが一番気になりますね。
立川:なるほど。ファンとしては5,000勝もという期待もあるんですけどね。
武:どうでしょうね(笑)。まだ500以上ある。
立川:(笑)。
武:難しいとは思うけど、トライはしてみたいですよね。不可能ではないと思います。
立川:先ほど海外挑戦の話がありましたけれども、やはり「凱旋門賞」というのは武さんの口からもよく聞かれますけれども。
武:そうですね。個人的に思い入れが強いレースですね。20代の頃に初めて乗って、まだ勝っていないんですけど、なかなか勝てそうで勝てない。(凱旋門賞で)日本の馬が勝ったことがないんですよ。
立川:そうですね。
武:いつの間にか、日本の競馬界の夢みたいになっていますね。
立川:そしてこれからも現役で戦っていく武さんにとって、「原動力」はどういったものなんでしょう。
武:原動力ですか。基本そんなに嫌になってないんですけど。
立川:好きだという(思いは変わっていない)。
武:そうですね。それ(「好き」という気持ち)だと思います。楽しいですしね。もちろん騎手だから味わう嫌な思いとか、怪我も多いですし、そういうこともあるんですけど。でもやはり、子どもの時から憧れていた職業の「騎手」に自分がなれたことを、大切にしたいなと思います。誇りを持ってやんなきゃいけないと思いますし、いい加減にはできないなと思いますね。
立川:やはり自分の好きなこと、そして目標を叶えたということが、これからも、そして今までも戦う原動力なんですね。
武:まだまだこれから、今自分が思ってもないいいことがまたあるかもしれないし、本当に先のことわからないんですけど、(そう考えると)なんかワクワクしますし。
競馬って、次から次にトライするチャンスを与えてもらえるんです。そうすると「よーし、がんばろう」という感じになりますし、なかなかうまくいかなくても、たまにすごくうれしいこととかあるので、そうすると「またがんばろう」と思いますね。その繰り返しでやっています。
立川:他の仕事もそうかもしれませんね。
武:そうですね。ただ、人それぞれ本当にやりがいとかあると思うんです。僕も騎手として本当にそれは感じますし、今後も真剣に一生懸命仕事したいなという感じがありますね。
立川:なるほど。ありがとうございました。
立川:そしてここでみなさまからの質問がたくさん届いておりますので、時間が許す限り武さんにお答えいただければと思います。まず最初の質問がこちらです。「スーパークリークからの武豊ファンで、本日S席に座りました」ということで、前のほうの席に。
(質問者が挙手)
あ! ありがとうございます。
武:ありがとうございます。
立川:「現在馬主をしておりまして、地方競馬から有馬記念制覇を目指しています。名馬に出会うために、これだけは必要とされる要素をご教授ください」ということです。
武:そうですね。名馬に出会う。難しいですよね。ただそれだけ競馬のことを本当に好きでいらっしゃれば、やはり競馬の神さまからいつかご褒美があると思ってやるのがいいんじゃないでしょうか。僕もけっこうそう思うほうなので。
立川:武さんがいろんな馬に乗った中で「これは一番の名馬だな」というのは、どの馬になりますか。
武:たくさんいるんで難しいですけど、ディープインパクトという馬は、ほとんどの方がご存じだと思うんですけど、やはりスペシャルな馬でしたね。
立川:すべて(のレースで)コンビを組んだ武さんですけど。
武:思い入れがすごく深いですね。
立川:今、質問された方も(名前を挙げていましたが)、スーパークリークもね。
武:まだ僕が10代の時(に乗った馬です)。すごくいい馬で、忘れられない1頭ですね。
競走馬もみんな可能性があるのでわからないんですよね。どの馬が走るかとか、どういう馬が名馬になるかとか。だたそうやって思い入れとか愛情を持つというのは、我々関係者が一番大切にしていることかもわからないですね。
立川:レースに出すのも大変ですもんね。
武:大変ですね。
立川:ありがとうございます。
立川:では続いての質問に移ります。こちらです。「次に何を目指していますか?」ということで。
武:(笑)。
立川:先ほど目標の話も少しうかがいましたけど。
武:騎手として以外は何も考えていないですね。例えばこの年齢になってくると、「何歳までジョッキーやるんですか」とか「騎手引退したら何をされるんですか」と、普通に聞かれることはよくあるんですけど、正直まったく考えていないですね。
立川:まだ終わりは見えていない感じですか?
武:まったく考えていないですね。いつまでというのも考えていないですし、引退したら何しようということも本当に考えていないですね。
立川:先ほどもお話ありました、本当にひと鞍ひと鞍、1つのレースに全力をそそぐ。
武:そうですね。仕事をもらえたらそこを全力でやらないと失礼になりますし、例え小さいレースでもベストを尽くしてやっています。
立川:ありがとうございます。続いての質問にまいりましょう。こちらです。「豊ジョッキーはJRA史上、誰よりも勝っているジョッキーですけれども、それよりもまして誰よりも愛されているジョッキーだと思います。ビジネスパーソンにとっても他者から愛されることが何より大切だと感じていますが、武豊流の“人に愛される”秘訣を教えてください」
武:(笑)。
立川:ご自覚はありますか?
武:いや、そんなのないです(笑)。どうなんですかね。仕事に対して真面目に取り組んでいたら、見てくれている人は見てくれていると思いますし。たとえ誰も見ていなくても、それで自分が納得できたらいいのかなと思いますね。
立川:ジョッキーは、馬主さんや調教師さんからオファーを受けての騎乗になりますけれども、その信頼関係を築くというのはどうですか。
武:そうですね。いくら馬に乗る技術があっても、なかなか調教師さんとか馬主さんも人間ですから、なんとなく「彼には乗ってもらいたくないな」とか、「誰々に乗ってほしいな」というのはあると思います。そこは取り繕うんじゃなくて、正直にちゃんと向き合っていたらいいのかなという感じでは思っていますけど。
立川:それは本当にふだんの人付き合いからということですね。
武:そうですね。ただ、騎乗馬を得るためにとかそういう感覚は、僕は持たないようにしていますね。本当に普通に、正直に向き合って、それでダメならしょうがないのかなというのはありますね。
立川:なるほど。ありがとうございます。次の質問にまいりましょう。「幅広いスポーツの名選手からもレジェンドとして慕われている武豊さんですが、競馬関係以外で武豊さんが尊敬する、影響を受けた方はいますか」という質問です。
武:そうですね。スポーツ選手に限らず、いろんな分野で尊敬する人がいっぱいいますよ。いっぱいいますけどね。年上で今でも現役でやられている方というのはすごく少ないんですけど、サッカーの三浦カズさん(三浦知良氏)とか刺激もらいますし、尊敬しますし。
野球ではイチロー選手とか野茂さんとか、海外のパイオニアですよね。ああやって厳しい環境の中で切り開いていった姿を見て憧れましたし、すごく刺激を受けました。他のスポーツ選手からというのはすごくありますね。今では大谷選手とか本当にすごいなと思いますし、勉強になりますね。
立川:本当にいろんなスポーツから影響を受けているということですね。
武:そうですね。
立川:ありがとうございました。お時間となりましたので質疑応答をここで終了させていただきます。それでは最後に、ご覧いただいているみなさまへ、「乗り越える」メッセージを武豊さんから一言お願いします。
武:いろんな立場の人がいて、なかなかうまくいかない場面が続いたり、そういうことがあると思いますけど、僕はわりと一発逆転ということではなくて、地道に、少しずつ状況を変えていこうと思ってやっています。それがうまくいった時もあったりしました。
ただ、「乗り越える」というとたぶん「壁」だと思うんですけどね。僕は壁にぶつかっていろいろ悩んだり考えたりというのは、決して悪くないと思います。あらためて考えたりできるチャンスだと思いますし、まだまだ僕自身もそうですけど、がんばっていけたらいいですね。
立川:今週末の騎乗も楽しみにしております。
武:天皇賞もありますので、がんばります。
立川:ありがとうございます。武豊さんでした。
(会場拍手)
武:ありがとうございました。
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