2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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森田さえ氏(以下、森田):取材中に先生が「今、コロナ禍においても、けっこうかなりの人がモヤモヤしたモードにいる」というお話をされたと思うんですけど、どれぐらいの割合ですか。
下園壮太氏(以下、下園):1段階、2段階、3段階の区分で言うと、例えばコロナ以前だったら1段階の通常モードの人が7〜8割、モヤモヤモード、2段階の人が2割。闇落ちモードの人が1割でした。いろんなアンケートとかデータとか調べてみて、だいたいそんな感じでした。
ところが今は、約半数が鬱っぽいというデータがかなり出てきています。どういうことかというと、半分が通常モード。そして3割がモヤモヤモード。闇落ちモードが2割です。
森田:2割も。
原田知都子氏(以下、原田):けっこう多いですね。
森田:やはりコロナが長引いて、在宅勤務とかが増えたからなんですか?
下園:コロナはさっきの4つの偏った思考(「自責感」「不安感」「自信の低下」「負担感」)を強くさせました。現代人の場合は疲労によって鬱になることが多いんですけれども、例えばマラソンしても鬱になるわけじゃないですよね。
森田:確かに。
下園:鬱は精神症状も入っているので、疲労しながら自責感、不安感、自信の低下とかを感じるような要素がいっぱいあると、鬱っぽくなっていくんですよ。まずコロナは、不安が大きかったよね。
森田:「いつ終わるの?」とか「大丈夫なのかな」とか。
下園:マスコミがいろんなところで、患者数とかヨーロッパの葬儀の映像をバーっと流してきたりして、怖かったですよね。
森田:死がすごく身近に感じましたね。
下園:不安が長期的に刺激されたんです。
下園:ストレスって、短い期間だったら人間けっこうなんとかなるんだよね。例えば1週間とかだったら、もちろん体力は落ちていくけど、落ちたとしても2段階までは行かずになんとかできる。でも長いと、どうしても落ちてしまうんですよ。
不安だけじゃなくて、自責の念。明確なものじゃないんだけど、なんか自分が悪いことをしているような感じ。鬱っぽい時にはそれをすごく感じやすいんですけども、それを感じると鬱っぽくなるし、鬱っぽくなったらさらに感じるという、原因であり結果でもあるんです。
コロナって人からうつるし、人にうつすかもしれない。もし自分がコロナになったら、会社や組織がワーッと対応するじゃないですか。自分と接した人が濃厚接触者になるわけですよ。その方がもし病院に入って重症なんかになったら、これはもう自分を責めちゃうところがありますよね。
結果が伴わなくても、なんとなく「もしかしたら自分が......」ということをずっと感じたり、考えてしまう。クラスターが起きた時、感染源の追跡で「何をしていたか」って考えて、ビクビクしていましたよね。
森田:していました。「あの日電車乗っちゃったな」とか(笑)。
下園:そうそう。「マスク確かに外したよな」とか。
原田:他の人に「マスクしてください」と言うのも、なんか嫌だけど気になるとか。
森田:電車で鼻マスクの人とか見ると「あ、鼻マスクだな」と思って見ちゃいます。
下園:そうそう。だから我々の感情がすごく刺激されたんです。
下園:そして「自信」ですね。「私はこれができる」「私は健康でいる」「私には居場所がある。ちゃんと私のことを注意してくれる仲間がいる」といういろんな自信があるんですけれども、コロナで外出自粛になったじゃないですか。
森田:居場所がなくなりましたね。
下園:そうです。自分のコミュニティを失ったと感じた人が多いんですよ。これは全世代、老人から幼稚園児まで。
だいたいマスクしていて笑っているのかどうかもわからないから、物理的にも離れたし、心理的にもすごく孤立してしまった。それが自信の低下、自責の念、不安感につながりました。
さらに私たちはずっと「ストレス解消法」を我慢せざるを得なかったんですよ。我慢ってむちゃくちゃエネルギーを使うんです。
森田:むしろそうなんですね。行動的には何もしていないから、体力的には減らないのかなと思ってました。
下園:そう感じる?
下園:例えば自粛は、家にいるだけだから何ともないという見方もできるよね。ところが自粛は多くの人が同意してくれると思うんだけど、我慢もしているんですよ。
何を我慢しているかというと、外に出て発散したり運動したりすることを我慢している。欲求があるのに我慢しているんです。これは大変つらいことです。どのくらいつらいかというと、アウンサンスーチーさんの場合は自宅にいることを「軟禁」と言うんだよ。
原田:ああ、そうですね。
下園:私たちが何か悪いことをしたら、牢屋に入れられるじゃん。あれも言い換えれば自粛です(笑)。
(一同笑)
下園:何も特にない。動いてもいないし、ちゃんとご飯も出てくる。だけど相当つらい。
森田:軟禁とか監禁と言われると、すごく大変だなと思いますね。
下園:そうですよ。だから自粛について私たちは、病気のためにやらなきゃいけない、自分のためなんだだと理性では思っているし、そんなにストレスだと思っていないかもしれない。でも一方で、人間の本来持っているいろんな欲求をかなり抑圧し続けていて、かなりのエネルギーをずっと使っていたんです。そういう側面はあったと思いますよ。
原田:なるほど。
森田:コロナ禍で、先生のところにいらっしゃるクライアントさんは増えましたか?
下園:コロナは3年前(2020年)の2月頃に顕著になりましたが、その頃から「コロナの構造は鬱っぽくなりやすい」と予測していたので、いろんなところでお話差し上げたんですけれども、今、やはりそれが現実化しています。
コロナ自体の表の不安はだいぶ減ってきたんですけれども、問題は疲労です。疲労が蓄積したがために、4つのいろんな精神症状がたくさん出て、会社を続けられないとか、本当に死にたい気持ちが出るぐらい落ち込んでいる方が、けっこう多くなってきています。
原田:先生、ありがとうございました。ここで実は今回、たくさんの方から質問をお受けしておりまして、それを順番にお答えさせていただこうかなと思います。
下園:ついつい取材のノリで話してしまいました(笑)。
原田:時間の経つのも忘れてという感じだったんですけれども。今回は職場のお悩み、子育ての悩み、もろもろいっぱいいただいています。森田さん、気になる順に読んでいただいてよろしいでしょうか。
森田:はい。たくさんいただいているんですけど、これからかな。「疲れている時ほどショックだったり、嫌な出来事が流せません。どうしたらいいですか」という。
原田:私もです。
森田:(笑)。
下園:まず流したいですよね。でも最初にお伝えするのが「流せないのがデフォルト」で、人間の通常の姿ということです。どういうことかというと3つのモードに関連することなんですけれども、人間弱ったり疲れたり、ケガをしていたり、あるいは自分の仲間がいなくて孤立していたりする時って、原始時代的な防衛反応がすごく強くなるんです。生き残りのためにすごく警戒するようになるんですよ。
だから、誰かからパッと言われたことに対して、「自分を攻撃するものじゃないか」というように見るわけです。例えばメールで「今日の会合来るの?」ときたとします。単なる確認かもしれないし、「早く来てよ」というお誘いかもしれないんだけれども、弱っている時って「ヒーッ!」と思うじゃないですか。
森田:確かに(笑)。
下園:「すいません」って言いたくなるよね。もっと弱っていると「来るなってこと?」と思ってしまう。
森田:わかる(笑)。
下園:ネガティブに捉えてしまうのは自分が弱っているからで、それ以上の危険が世の中にあるかもしれないから、そういった危険からはできるだけ距離を取って身構えていたい。そういう反応が、どうしても出ちゃうんです。
下園:頭では「悪い人たちじゃないから、きっとテイクアウトを頼むための注文の確認なのかな」とか一生懸命考えるんだけど、なかなか心ではそう思えない。原始人的な反応が出ちゃっていると思っていただければいいと思います。残念ながらスルーできないんです。
森田:疲れてない時は流せるかもしれないんですか。
下園:そうそう。だから対策としては、妙な対策になるんだけど、寝ることなんだよね。
森田:本の第4章に書いてあることですね。
下園:「私のこれまでの態度が悪かったんじゃないか」とか、過去の検索とかいろいろするんじゃなくて、とりあえず保留して寝ることです。
原田:考え込まない。
下園:考え込まない。なぜかというと、どうしてもネガティブに見てしまうわけですよ。そこで考えてもほとんどいいアイデアは浮かばない。睡眠してちょっとエネルギーが上がると冷静に見渡せるようになりますから、以前のご本人のような幅広い視点で見られるようになります。
悪いところばかり見てしまうと、周りから性格が悪いと、「あの人ネガティブなところばかり見ているよね」みたいに思われてしまいます。
原田:「しつこい」と言われちゃいますよね。
森田:まずは寝ると。
下園:まずは寝る。これが効果的です。
森田:ありがとうございました。
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