2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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成田悠輔氏:子どもの頃は、性格も無意味に反体制、反権威的なところがあった。なにか世の中との圧力があるような気がして、無意味に大人に突っかかったり、破壊行為的ないたずらをいろんなところに仕掛けて、半分警察沙汰になりかけたりを繰り返していて。よくわからない違和感みたいなものを掲げて生きてきた感じなんですよね。
(台本の)筋書きとしては、「そんなことから、自然に他人に左右されない自分ならではの得意なことと、生き方・考え方を見つけていった」と。結論としては、やっぱり社会も個人も他の人に左右されずに、自分にあった生き方を選ぶことが大事だと、こんな感じの筋書きになっているようです。
ただ、正直僕はこういう筋書きを読んでいると、ちょっと辛くなってくるんですね。やっぱり、世の中にはこういうストーリーが溢れてるじゃないですか。褒められること、主張できることが成功者、みたいな人たちがいると。そして、その華々しいものの裏には知られざる苦悩があった。
僕たちはこういうストーリーが大好きだと思うんですよね。メディアを見ても、いろいろなイベントを見ても、そういうものにあふれかえっている時代だと思うんです。
ただ、よくよく考えてみると、そんなストーリーを聞いて本当に意味があるのかな? という気もするんですよね。世の中を見ていると、だいたいがうまくいって自力で登っているような人も、出会いに恵まれたり、たまたま生まれた時からすごく特殊な能力とか特殊な体を持っていたとか。
あるいは、ただただ運が良かった。そんなこんなだけでうまくいってる人が、ほとんどなんじゃないかなという気もするんですよね。
成田:たまたまうまくいった人たちが壇上に上がって、自分がこれまでやってきた半生を踏まえて、そこから教訓や戦略を導き出すと、生存者バイアスまっしぐらなんじゃないかという気もするんですよ。つまり、たまたまうまくいった人の話を聞いて、そこから引き出そうとする。
大量の兵隊が戦地に行くとだいたいの人は亡くなって、一部の人だけ帰ってくる。帰ってきた人だけに「どうでしたか?」って聞いても、そりゃあまりいい教訓は導き出せないんじゃないかと思いますよね。
どっちかというと、どうやったら亡くならないかが大事なんだから、亡くなってしまった人の話を聞くほうが大事なんじゃないか。そんな気もしてくるんですよ。
よくよく考えてみると、本当に意味があるのかどうかわからない、エビデンスやデータとは到底言えないような教訓を語って、心が高なる感じになるストーリーを見たり聞いたりしていらっしゃる。例えば、この視聴者のみなさんもちょっとだめなんじゃないかなという気がするんですよ。
さらには、人に頼まれたからと言ってこんなところに出てきて、こうやって自分の半生をとうとうと語って、そこからエピソードや教訓を導き出そうという僕のような人間も、ちょっとだめだなっていう気がするんですよね。
なので、こうやって語ってわかったような気になることがあまりよろしくないんじゃないかと思いながら、何を話すかを考えていたんです。どちらかというと、これまで何をやってきて、何を乗り越えてどんな成功ストーリーがあったかよりも、もっと大事なことがあるんじゃないかという気がしてるんですよ。
成田:世の中にあるさまざまな可能性の中で、僕たちがすでに試してきたことや成し遂げてきたことは、ごくごく一部じゃないですか。その背後には、まだ試されていないこと、あるいは「やってはいけない」と言われてることとか、まだ人が試してない領域がすごく広大に広がってると思うんです。
まだやられていないことや、やってはいけないこをどうしたら実験できるか、探索できるか。「とりあえずやってみるか」。こういうことのほうが、ずっと大事なのではないかと思うんです。
つまり、過去を振り返ってどう成功したかとか、どう乗り越えたかよりも、未来に向かってまだ試されていない可能性をどう試すか。そちらのほうが大事な気がするんですね。
特に最近は、「やってはいけないこと」とか「言ってはいけないこと」っていうリストがどんどん膨れ上がっているじゃないですか。みんなが同じようなことをやって、とりあえず問題がなくて、コンプラ基準にも引っかからなくて、政治的にも正しい発言をみんながしている感じの世の中になっちゃっていると思うんです。
こうなってくると、そこから逸脱するような行為や発言をどうするか、ということのほうが大事になってくる。つまり、成功者としてのエピソードにしにくいようなことをどうするかが大事なんじゃないかなと思うんです。
成田:慎ましながら私自身も、例えば「エリート学校の教育なんて、よくよく測ってみたら意味がない」とか「政治家のみなさんが、コロナ助成金に公共事業で何兆円も流し込んでみたけど、何の意味もない」ということを言ったりする。
さらにはなにかの拍子で、「日本社会で偉そうに権力を握っている大御所の老害のみなさん。どうにか引退してほしい」と言って、一部では「言ってはいけないことを言ってる人」というラベルがついてしまっているようなんです。
ただ、僕なんかはまだかわいいものだと思うんですよね。世界を見渡してみると、トランプ前大統領とか、イーロン・マスクとか、カニエ・ウェストみたいな人たちがいるじゃないですか。もう、わけがわからないことになっていて。
やっちゃいけないこと、言っちゃいけないことをとりあえず言いまくって、火だるまになりまくりながら全力疾走する人たちが(世界には)いると思うんですよね。
そう考えると、良いか悪いかはよくわからない、意味があるかどうかはよくわからない、もちろん成功するかどうかはわからない。ただ、とりあえず「言ってはいけないこと」を言ってみる、やってはいけないことをやってみる姿勢が、もうちょっと世の中に広がってもいいんじゃないかなという気がしています。
そう考えると、言ってはいけないこととか、やってはいけないことをいかにやるかという技術が大事になってくるのかなと思っています。じゃあ、どんな方法を取れば「言ってはいけないこと」を言えるんだろうか。それが今日のテーマである、「言ってはいけないこととは何か」というところにつながってくるんだと思います。
成田:私が見るに、言ってはいけないことややってはいけないことに手をつけるために、ざっくりと3つぐらいの方法を持ってるんじゃないかと思っています。それがこのテーマのサブタイトルにある、「幼児性」「異国性」「武士性」という、ちょっとわけがわからない3つのキーワードなんですね。
1つ目の「幼児性」というのは、けっこうわかりやすいんじゃないかと思います。つまり、子どもになってみるということなんです。子どもになることで、言ってはいけないことを言う。この精神を一番わかりやすいかたちで表しているのが、大昔のおとぎ話の『裸の王様』です。もともとは『王様の新しい服』というタイトルなんですね。
あの物語は何かと言うと、とあるところに偉い王様がいるんですが、その王様は服を売り込んできた詐欺師に捕まってしまった。「これはすばらしい服です」という名目で、何もないのに服があるかのような妄想に陥ってしまうんですね。そして、何もない服を着ているつもりになって、すっぱだかのまま人前でパレードをし始めてしまう。
ただ、王様は偉い人ですよね。だから、王様が満足している感じになっていて、裸なのにすばらしい服を着て、みんなを引きつけているようになんか振る舞っている。そうすると、周りもだんだんそれにしたがって「いや、すばらしい」と言って、裸を晒している王様を褒め称えるんですね。
そうすると、みんなも「そうなんじゃないか」という気がしてきて、みんなで褒め称えるモードになってくるんです。ただ、そこに1人の子どもがいたんです。
その子どもは、まだ大人の世界の常識も知らなければ、共通了解もわかっていない。忖度もしない。というより、できない。そして、その無邪気さとナイーブさを使って「あ、王様が裸だ!」と叫んでしまう。そういう物語なんですよね。
これが、子どもであるということを生かして、「言ってはいけないタブーに挑む」という一番わかりやすい例なのかなと思っています。
成田:同じようなことが、実は「異国性」という2つ目のアプローチについても言えるのではないかなと思っています。これは、いわばアウトサイダーになること。部外者になる、あるいは、広い意味での“外国人”になることで、言ってはいけないことに挑むということです。
例えばビジネスの現場を見ても、コンサルフィーを山のように払ってコンサルタントを雇う。一見、「なんでそんなに効率が悪いことをやるんだろうか?」と思う場合もありますよね。ただ、1つの考え方としては、コンサルタントは良くも悪しくも部外者である。
部外者であるが故に、組織の内部で何が起きてるか、みんなが何を求めているかに気を配らずに、空気を読まない発言をしてしまえる。ばっさばっさと首を切ることができてしまえる、そんな存在だと言えると思うんですね。
そして、彼らは良くも悪しくも部外者なので、数ヶ月も経てば組織から消えていってくれる。だから、責任も取らずに済むから何でもできる、という側面があると思うわけです。
同じようなことが、外国人についても言えるのかなと思います。僕自身が好き勝手に何かを言えるのも、自分が日本人でありながら、日本の外にも片足突っ込んでいるので、半分日本人ではない。ということが、良くも悪くも好きなことを言える後ろ盾になってしまっているのかなという気がします。
こういうかたちで幼児性や異国性を使って、タブーをタブーと捉えない発言や行動をどう行っていくか。これが、3つのうちの2つのアプローチだと思います。
成田:ただ、よくよく考えてみると、幼児性も異国性も最終的にはだめなんじゃないかという気がしているんです。
どういうことかというと、幼児性や異国性というのは、子どもであること、外国人であること、あるいは部外者であることを利用して、外側から社会や組織に対して圧力をかけて変化を起こそうとするアプローチだと思うんですね。
言い換えてみれば、その“家”に住んでいないからこそ、ピンポンダッシュのいたずらをして、「あっかんべー」と言って去っていける部分があると思うんです。
つまり、内側から変化を起こしているのではなくて、よく言えば外圧、悪く言えばただの野次馬を社会に向かって投げかけているだけだという気もしています。
本当に大事なのは、社会の内側から内在的に変化を起こして新しいことを作り出すような、「内部のインサイダーがいかにして言ってはいけないことを言うか、やってはいけないことをやるか」ということなのではないかなと思うんです。
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