2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山口揚平氏(以下、山口):よろしくお願いします。秋津さん、ありがとうございました。『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』著者の山口揚平です。どうぞみなさんよろしくお願いします。今日は30代・40代のライフシフトということで、自分も赤裸々に語らなきゃいけないかなと思っています
『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』(SBクリエイティブ)
ふだんは客観的に一歩引いたかたちで構造的、論理的に整理することが得意なんですけれども、今日は自分の経験を語ります。ライフシフト、簡単に言えば「決断」だと思うんですけれども、「こうじゃないんじゃないの?」と直感的に思っている指針があります。
人生は結局は「密度」だと思っています。100年時代と言ったって、感知し記憶できる情報量は50歳の1年と、5歳の1年間には、10倍の密度の差があるわけです。であれば、50歳から100歳なんて……そんなもんなんですよね(笑)だから100年時代どうこうというよりは、量ではなくて密度。どのくらいの密度で人生を楽しんだかがすごく大事だと思っています。
昔、父によく「迷った時はよりつらいほうを選べ」と教えられたんですよね。それをやっていたら、あらゆる病気になったので、父の教えは間違っていたんじゃないかと。確かに格好いいんだよね。でもそうじゃないなと思うんです。
いろんな考え方がありますが、今はそういう考え方ではないんです。僕がたどりついた考え方は「心の声を聞く」。ちょっと怪しい方向に感じるかもしれませんが、この話をしたいと思います。
10代〜40代のキャリアを振り返ってみると、10代は家で塞ぎ込んでいました。ファンタジーの世界が好きだったり、実家で釣りをするとか、そういう、田舎から出ないような暮らしをしていました。
ところが、間違えて大学に行ったんです。(コンサル業界では)「切り口がセクシー」と言ったりするんですけれども、なんとなく自分は人と違う考え方ができるんだと感じたんです。
でも本当は絵描きになりたかったんです。絵描きになりたかったんですけども、一般課程の普通の大学に入っちゃった。だから「考え方が違う」。
僕の場合は何かいろんなことを考える時に、必ず頭の中にビジュアルで見るというか……。「ビジュアル」と言うと格好いいんですけど、イメージで見る感じなんです。なので大学の中でも論破王じゃないですけど、「頭が切れる」と言われ始めていました。
そういう人が集まる研究室に入ると、「コンサルティング会社に行く」という流れがありました。そのままコンサルティング会社に20代で入ったんですが、最初はまったくついて行けない。
僕の大学からは当時1人、僕だけコンサルに入ったんですが、そもそもが私立の文系なんていないんです。1人もいない(笑)。慶應経済の子が1人いましたけど、すぐ辞めました。
ほとんど大学院の理系出身で。なんなら海外の大学出身とかがいて、「おお、ケンブリッジか」と言うんですよね。ケンブリッジ出身の人は「ケンブリッジ」って言わないですね(笑)「Cambridge」ですね。ケンブリッジの人は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの会社のことは「マッキンジー」と言うんですね。「マッキンゼー」とは言わないんだと思いました。
「ああ、そうか。みんなそういうインターンを受けて入ってくるから、ぜんぜんついて行けない」と感じました。文系だから、役に立たないじゃないですか。理系は分析ができるし、AccessとかExcelとかマクロとか使えるんです。
これは困ったなということで、みんながどんどんプロジェクトにアサインされて仕事をもらっているときに、私はずっとビーチ(on the beach)、つまり仕事がない立場でした。
なにせ研修で20人中19番ですからね。すると、「20番中19位か。しかも20位のやつ、もう辞めてるしな」と。ブービーと見せかけてズベだというのがわかって、「これはちょっと困ったな」って思いました。
なぜ困ったかというと、僕は15歳から自活していて、大学ももちろん奨学金で行きました。うちの3人兄弟は全員15歳から自立していたので、奨学金という借金が溜まっています。だからクビになるわけにはいかないんです。
コンサルティング会社に入ったのも、当然それが一番の理由でした。受けたコンサルティング会社はだいたい全部受かったんですけれども、その中で「一番給料が高いのはどこか」という、その1点だけで選んだ会社でもあったんです。
そんなことやっていたら、劣等生になっているわけですよね。本当に困っていたんですが、ある時にカルロス・ゴーンさんが日本に来て、日産の株をルノーが買収するというプロジェクトのチームに入ったんですよね。ゴーンさんは、日産のCOOとルノーの社長の両方をやった人ですね。
外国の会社が日本を買うM&Aが当時ブームでして、GMがいすゞに資本参加するとか、私はそういう仕事をやっていました。それは僕が何か能力があったわけじゃなくて、逆に能力がなかったんですよね。能力がないから、みんながやりたがらない仕事、アサイン先がない仕事をやったわけです。
その中で、すごく薫陶を受けた言葉があります。あの頃は元気なので、とにかく膨大な情報調査とか分析をして、「これがこの会社の人事制度であったり、業務の実態であって、残っている売掛金です」みたいなことをまとめたものを、クライアントで今はなきリーマン・ブラザーズのトップの人に出したんです。
そうすると、その人は「これはわかった。君らが朝から晩まで、なんなら晩から朝までずっとやっているからよくわかる。だけど、僕らが知りたいことは2つだけしかない。1つは、この会社を動かしている、根本的なエンジンはいったい何なんだ」と。
「キードライバー」か「エンジン」と言ったか、「コア」と言ったかは覚えていないんですけれども、「本質は何なんだ」と聞かれたんですよね。「あ、なるほど」と思って。
もう1つは「この会社の妥当な価値はいくらなんだ」という、その2つの質問をされたのをすごく覚えています。その時、僕に衝撃が走ったんですよね。
それはなぜかというと、「本質」ということなんですよ。この頃はいろんなことを考えるのが好きだったんだけど、「あ、そうなんだ」と。要するに「いろんなことを知ること」じゃなくて、物事は有機的につながっていて、その中の「本質を見抜くこと」がとても大事なんだと。
「コア」「レバレッジポイント」「エッセンス」とか、さっき言った「エンジン」「キードライバー」とか、最近は「センターピン」と言うのかもしれないですけれども、言葉は何でもいいです。その本質を捉えるところがとても大事なんだと。
それって考えなければ捉えられないんですよね。概念とか情報とか知識とか、今の現実を知覚して、有機的に結びつけるという行為。それが「考える」という行為ですけれども、それができないと駄目なんだと気がついたんです。
これが2002年くらいです。それが僕ができる、僕が天才性を活かせる仕事なんだと思ったんですよ。
新卒時代に同期だった人は、当時から膨大なシステムは組めるし、何ならSAPという当時のDXみたいなもののシステムのトップになっていたり、コーポレートファイナンスのトップだったり、そういうことができるようになっていて、ある業界に詳しい人もいました。
僕は辞めるわけにはいかなくて、「僕は何になるのか」と考えた時に、その中で戦えるのは「考える力」だと。「考えるって何?」というと、今言ったように「物事の本質を捉える」ということなんだと。
「考える行為」は何かと言ったらば、知識、事象、現実とか、あるいは目に見えていない裏側にある背景だったりを知覚して、それを有機化させて、有機化させたさまざまなものの中から、もっとも抽出したハブを捉えることなんだと。
よくゲームでもありますよね。「相手の弱点は目だ。目を狙え」みたいな感じですね。それが3次元の立体的に、なんなら時間の概念も含めた4次元的に動いているわけです。あるいは5次元的に、偏在して消えたり見えたりしている。
でも、そこの本質を捉えなければ、この仕事は終わらないんだと気がついたのが20代です。よく20代は「修行」、30代は「挑戦」、40代は「収穫」で何かかたちにすることだと言います。50代は「貢献」なんですけれども、まさに僕が20代において学んだこと。修行時代は「『考える』ということを考える」ことをやっていました。
会社に入っちゃったところまでは、そんなに僕の中ではライフシフトはなかった。本当は地元で高校を出て、釣りしてずっと人生終わりだと思ったんですけど、たまたま流れで大学に入って、流れで会社に入り、必然というか、20代で抽象志向とか、問題解決志向とか概念化とか、本質抽出力を身につけた。それらを捨てて、事業を起こすんですね。
28歳くらいの時に、やっぱり挑戦をしなきゃいかんと思っていて。体も不調をきたしていたいたし、でもチームを背負っているし、いわゆる「ライフシフト1」というやつです。これは本当に苦しくて。
僕は寂しがり屋でコミュニケーションもできないし、できることが限られていて、そうすると仲間で戦うしかない。すでに40人くらいの大きさのチームになっていたもんだから、辞めると言いづらかったんです。
しかも2005年くらいにはシニア・ヴァイス・プレジデントという副社長のポジションになっていました。M&Aの世界もひと段落して、「これから収穫期だ」みたいな感じだった。
それと同時並行で、「今から辞めるんだ。ゼロになって、そこから教育事業をやるんだ」と、本を出して名を売りながら、システムの構想を練っていきました。教育だけじゃペイしないので、システムで何とか回収しようと考え始めていたんです。
会社を辞めると言い出すまでに、6ヶ月かかりました。悩む時には1年、2年かかっていて、当時住んでいた市谷甲良町には、まだ大江戸線が通るか通らないかという時期でした。神楽坂のほとりです。そこで「どうしようかな。どうしようかな」と、毎週末新宿御苑に行って悩んでいました。
僕は悩むたびに公園に行っているから、どこの公園に行ってもトラウマ(が甦ってくるようになりました)。悩んでいる時って暗いじゃないですか。陰気な感じになっちゃうから、あまり都内に清々しく行ける公園がなくなっちゃって(笑)
白金にある、外国人の子どもたちがウキャウキャ遊んでいる公園とかね。王子にある、カラスばかりいる公園とかですね。そこもやり尽くしました。
新宿御苑だとか大隅公園とか六義園とか、とにかく都内中の公園で悩んだ経験があるので、今行けるのは本当に限られた公園だけ。代々木公園とかぐらいかなと思っています。それくらい悩んでいました。
僕は結局、会社を辞めるんです。最後は蚊の鳴くような声で、22歳から一緒にやっていた上司に「会社辞めます」って小さい声で言いました。
上司は「わかったよ。もうわかってたから」と。8年間ずっと一緒に働いてきた上司だったので、盛大なパーティーまで開いて送り出してくれました。盛大なわりには人が来なかったんで、あまり人に好かれていなかったんだなと思いますけれども。そこに至るまでにはずいぶん悩んだなということを覚えています。
そこから起業して、金融教育をやって、売却までやる。その当時、成功哲学とか自己啓発的なセミナーとかがあったんですよ。
そこで話されていたのは、ガツンとマッチョに筋トレやるような「人生変えるんだ!」みたいな感じでした。僕、そういうの全部胡散臭いと思ってしまうんですよね。人間の体とか感情とかって、もうちょっときちんとしているし、無理があっちゃいけないと思っています。今の筋トレブームでもあまりいい目で見てはいないんですよ。
成功哲学とか自己啓発的なもので「人生変えよう」と言われていたんですが、それは違うと思っていて、もうちょっと柔らかく包み込むというようなものだったり、あとはアカデミックにしっかりと再現性がある形にしたいなと。脳にドーパミンとかアドレナリンとか出して「ウオー!」と変えるような、そういうことじゃない。
(もっと繊細に関わってもらえる)そういうものが必要だなと思っていて、この「ジーニアス・ファインダー」が則っていたんです。「金だ!」とか「秒速で行く」とか、そういう無理な話じゃなくて、マッチョじゃないかたちで、自分の人生を生きることができるようになったらいいなと思っています。
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