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最小の努力で"残業沼"から脱出する『トップ5%の時間術 実践プログラム』(ゲスト:越川慎司さん)(全3記事)

業務効率化と成果に追われ、しだいに陥る“残業沼” 会社に寝泊まりする20代を経て「週休3日」を実現した経営者

本の学びを深めるオンライン講座「flier book camp」を運営する株式会社フライヤーが主催したイベントに、ゲストとして登場した越川慎司氏。ベストセラーとなった著書『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』に続き、シリーズ最新作の『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』が発売されました。2.9万人を対象に行った再現実験で、再現率89パーセントの結果が出た「時間術」をもとに、仕事の“残業沼”から抜け出すポイントを解説します。

働き方改革支援で見つけた、各社の「上位5パーセント社員」

司会者:ゲストスピーカーは越川慎司さん、ファシリテーターはフライヤーの久保さんです。では、お二人ともどうぞよろしくお願いします。

越川慎司氏(以下、越川):お願いします。

久保彩氏(以下、久保):よろしくお願いします。越川さん、Zoomのアカウントの名前が「こっしールー(越川さんの通常の呼びかけ方)」になってますけど(笑)。

越川:そりゃあ、ルー大柴の親戚ですから「こっしールー」です。みなさんとトゥギャザーして、藪からスティックなことを言いまくります(笑)。

久保:ありがとうございます(笑)。後ほど具体的に自己紹介をしていただきますが、越川さんはルー大柴さんの親戚でいらっしゃるということで、時々「こっしールー」になっちゃうということですね。

越川:はい。もう、24時間「こっしールー」ですね。

久保: 24時間ですか(笑)。今日は、越川慎司さんの書籍『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』にちなんだセミナーです。最初は本のエッセンスをお聞きしながら、その後、実践についてお聞きしたいなと思ってます。よろしくお願いします。

越川さんに聞きたいことがあったら私が拾いますので、みなさんもどんどんチャットへ入れてください。

ではさっそくなんですが、もしかしたらこっしーさんと「はじめまして」という方もいらっしゃるかもしれません。『トップ5%社員』シリーズはめちゃめちゃ売れている本なので、「もちろん知ってるよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に自己紹介いただければと思います。

越川:ありがとうございます。『トップ5%社員』はどういったものかというと、我々クロスリバーという会社は、働き方改革を支援する会社なんです。これまでに815社、17万3,000人の行動を変えるご支援をさせていただきました。そうしたら、各社に輝かしいスター社員がいて、これが「人事評価上位5パーセントの社員」なんです。

本人も「上位5パーセント社員」だとはわかっていない

越川:久保さんもご経験があると思うんですが、自分が上位5パーセントかどうかってわからないじゃないですか。人事評価はだいたい5段階くらいだと思うんですが、S評価、A評価のトップ20パーセントはわかっても、5パーセントかどうかはわからない。わからないからいいんです。実は調査対象になった本人も、5パーセントかどうかをわかっていないです。

秘密保持契約のもとで、人事責任者と経営幹部の方から「この人5パーセントだ」というリストをもらって、5パーセントの人の行動とそうじゃない人の行動を同じように取って、どういう差分があるかを調べたのが『トップ5%社員』シリーズです。

久保『トップ5%リーダーの習慣術』、そして今回3作目のテーマは『トップ5%社員の時間術』ということですが、基本的にはどれも、上位5パーセントとそれ以外の95パーセントを比較した分析から始まるということですね。

越川:そうですね。業種業態・企業規模を問わずに、各社で人事評価トップ5パーセントの方の共通点は何か、そして95パーセント社員との差分は何かを、大量のデータを元に分析しました。

例えば、こういったZoomやTeamsのオンライン会議でいうと、1万9,000時間のデータを取っています。4つのAIサービスを使って分析をして、インサイトを得て、それを書籍にまとめています。

久保:なるほど。私はコンサル出身なんですが、業務改革というと、昔はストップウォッチを持って「業務の時間はどうか」と計って、それがどう改善できそうかを分解してやっていくという手法がありました。それをもう、テクノロジーで実際に成果が出てる人のものを抽出することができてるということですね。

越川:そうですね。一昔前に比べれば、データを取得しやすくなったと思います。働く時間の87パーセントは、なにかしらのクラウドサービスにつながってると言われているので、Google ドライブやMicrosoftさんの行動履歴を分析できます。

ICレコーダーを仕込まなくても、今日やっているように、会議もレコーディングできます。DXの進展によって、より簡単にデータが取得しやすくなったなと思います。

体を壊した経験から「週休3日」の会社を経営

久保:なるほど。「『トップ5%社員』シリーズとは?」というところをお聞きしてきましたが、「そもそも越川さんってどんな人?」というのを、もうちょっとお聞きしたいです。クロスリバーという会社で作ったAIの分析、行動実験をされる前について教えてください。

越川:そうですか。じゃあ、属性をご紹介したいと思います。無駄が嫌いでして、なんとか短い時間で成果を残したいんです。ただ、私は仕事人間で、仕事を取っちゃうとなにも残らない人間だったんですね。新卒で大手通信会社に入社し、前職ではMicrosoftで、みなさんを苦しめている「Word」「Excel」「PowerPoint」の責任者もやってました。

仕事がしたくてたまらなくて、仕事して仕事して、睡眠時間が短くなって体調を壊すということを2回やってしまったんです。それで上限を決めて、短い時間で成果を残す働き方を追求しようと思いました。

ご家族のケアですとか、やりたいことをたくさん考えてらっしゃる方もいるので、世界中のすべての会社を、週30時間しか働かない週休3日にしたいんです。週休3日でも売上が下がらないモデルを作れば、給料は下がらないですし、株価も下がらないですし、社会にも貢献できる。

三方良しの週休3日を実現するために、まずは我々クロスリバーが実践しようと思っています。2017年から5年半、(社員)39名全員が週休3日で、週30時間労働、完全リモートワーク、副業しないと入れない、睡眠時間7時間、という変わった会社を経営してます。

久保:なるほど、ありがとうございます。もう少し越川さんや本についてお聞きしたいとは思うんですが、先に質問が出ているので拾います。「先ほど言われたのは『コンピテンシー』というものなんですか?」。若干違うかなと思う感覚があるんですが、どうでしょうか?

越川:そうですね。コンピテンシーというのは、2000年代前半に流行った「行動特性を真似すれば成果が出る」という考え方が起点です。

『トップ5%の時間術』で、89パーセントが時間管理に成功

越川:ただ各企業、コロナ前とコロナ中の環境変化があまりにも複雑で、環境変数が多かった。行動特性ということではなくて、単純に定量化できるデータに関しては、どういう違いがあるのかと考えました。

我々は調査よりも再現実験に力を入れてるので、「トップ5パーセント社員がこういう行動をとっていた」という傾向が分かれば、一般社員に展開できるので、展開できる確率の高いものを広げていこうとしてきました。

今回は『トップ5%社員の時間術』という新刊を出したんですが、一般の2万2,000人に「騙されたと思って、まずはやってみてください」と言ったら、89パーセントの方が時間管理で「効果が出ました」と答えていただきました。コンピテンシーよりも、どちらかというと再現性を重視したかたちになってると思います。

久保:なるほど。一昔前は、アンケートを取って「うまくいったと思う」という効果測定をするしかなかったのが、実際にやってみた方のデータがあるわけですよね。それによって、成果が出た・出ないもわかってくるということです。

越川:そうですね。2万2,000人は匿名のアンケートではなくて、個人をしっかりと出した上で答えていただいています。あと、テキストデータだと前後の文脈が見えませんので、アンケートも取りつつ、対面のヒアリングを重要視してます。実は今日も、久保彩さんを分析してるんです。

久保:えっ、どういうことですか(笑)。

越川:映像を元に、AIで8つの感情分析ができます。Cognitive APIというAIの機能なんですが、それを使うと「いかに効果を実感して、幸せそうにしゃべってるのか」「本当は憤りを感じてるのか」というのを、AIが教えてくれる。その結果も元に、成果が出てるかどうかを検証してます。

久保:おもしろいです。

行動時間・作業時間を短くするのは、ITではなく人間

久保:もともとMicrosoftの責任者でいらっしゃる越川さんが、さらにみなさんの「時間」に注目されて、もっと多くの会社)充実した週休3日になるよう、いろんな実験をされて本を書かれています。ここからは、『トップ5%社員の時間術』という新しい本で書かれているエッセンスをお聞きしたいです。

越川:ありがとうございます。先に言葉で結論からご説明すると、ITが労働時間を短くすることはないです。これはMicrosoftを辞めたから言うのではなくて、行動時間・作業時間を短くするのは、ITじゃなくて人間です。人が労働時間を削減しようと思った時に、手段としてITを使うんですよ。

今日は400名近い方々が参加されていますが、「ITを入れたら生産効率が上がる」という妄想を持ってた方々もいると思います。でも、使いこなさなければ意味はないので、あくまでもITや評価制度は手段であって、主体は人間です。これに気づいて起業して、時間術について取り組んでいます。ちょっと藪からスティックで申し訳ないんですが。

久保:(笑)。

越川:久保彩さんの説明を聞きながら、今、資料を数枚作りました。

久保:作った!?

越川:はい。どんなことを「flier book camp」の中で説明するか、資料を使って共有させてもらっていいですか?

久保:もちろんです。「今作った」ってすごい発言ですね(笑)。

越川:もともとあったやつをピックアップしたんですが、ちょっとハードルを高めますが、実は私はPowerPointの元責任者です。「AIが人の心を動かすPowerPointのルール」というものを、6つ導き出しました。それに則って資料を作ってます。

久保:気になる。(視聴者コメントで)「話がおもしろすぎる」。私もそう思います(笑)。

大企業、中小企業、国内企業、外資企業と4社を経験

越川:まずは自己紹介です。Microsoftの話にもありましたが、私は4つの会社に勤めたことがありまして、1、2、3、4が入社した順番です。縦軸が従業員数、上が大企業、下が中小企業。左が国内中心の企業で、右がいわゆる外資と言われるグローバル企業です。

越川:1社目で、26万人いる某通信会社に新卒で入りました。6年いてアメリカの「Webex」というオンライン会議サービスの立ち上げに参画しました。そして、日本ベンチャーを作ったりしていました。

久保:ちなみに「Webex(現Cisco社) 」は、Zoomの前身みたいなものですね。

越川:そうですね。2番目に入社した会社で同僚だったのが、エリック・ヤンという中国系アメリカ人で、彼が後にZoomを創業しました。

久保:なるほど。

越川:4番目にMicrosoftに入ったのが2005年です。シアトルに入ってすぐに日本に来て、みなさんを苦しめてる「Microsoft 365」「Office 365」の事業責任者、執行役員をやってました(笑)。そして、また今は3番に戻ったかたちですね。

今日ご参加の方は400名近くいらっしゃいますが、おそらく1、2、3、4のどこかにお勤めの方じゃないかと思います。フリーランスの方でいえば2番、3番になるでしょうし。そういった意味では、みなさんと同じ環境を経験しているので、ルー大柴風に言うと「トゥギャザー」できるんじゃないかと思うんですよ。

久保:(笑)。

越川:ちなみにクロスリバーという会社は、「越川」だから「クロスリバー」。ルー語なんです。じゃあ、スベったので次にいきます。

久保:私も今知りました(笑)。

20代の頃、会社にダンボールを敷いて寝泊まりしたことも

越川:どことは言わないですが、26年前に入った1社目では、ラジオ体操第2までやる会社に勤めていました。当時はこれでいいんですよ。だって、社員の離職率は低かったですし、当時の売上は世界で時価総額1位ですからね。だから、変える必要がないんです。

今はもう、こんなやり方は難しいです。働き方を変えなきゃいけなくなったのは、法律や社長が変わったからじゃなくて、お客さま・市場が変わったからです。

言われたことだけをやるんじゃなくて、自分で考えてやることを業務効率化していかないと成果が出ない。「残業するな。でも売上を落とすな」と言われて、みなさんも苦しんでると思います。これが、いわゆる「残業沼」ってやつなんです。

じゃあ、それをどうするか。当時私は20代だったので、考えずに働き続けて、会社に寝泊まりしてたんです。ベッドがないのでダンボールを敷いて寝てたんですが、掃除のお姉さんがダンボールをゴミだと思って持って帰っちゃう。なので、「人事部企画部門の越川」と名前を書いておくと持っていかれないんですよ。

久保:うわあ。

越川:「人事部企画部門の越川」という、このベッドの画像をすごく大切に思ってるのは、この画像を元に「長時間労働をやめよう」と思ったからなんです。実は、この時が一番仕事が楽しかったです。29歳でさまざまな仕事を任されて、好き放題仕事ができるから。

みなさん、知ってますか? 今、残業したい人って74パーセントもいるんですよ。そう思って、残業しまくりました。しかし、この時に体調を崩したんです。起きた瞬間に、靴の履き方がわかんなくなっちゃったんです。

「このままの働き方を続けると、100年ライフで働き続けられないな」「いつかこの働き方をやめて、短い時間で成果を残すことにシフトしていかなきゃいけないな」と思ったのが、29歳でのこの経験なんです。

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