2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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鷺山昌多氏(以下、鷺山):残り10分という限られた時間なんですが、「どこでやるか」です。今日の重要なテーマの1つなんですけど、「大企業の中でこそやったほうがいいんじゃないかと今なら思う」でもいいですし、「当時思ってた」でもいいです。「起業して外でやるべきだ」という意義なのかできることなのか、差分があるから場所が分かれるんだと思うんですけど。
ご自分の話だけで構わないので、今の経営をなぜこういうかたちでやっているのか。リクルートにいたらリクルートの中でやっていたか、ちょっとこのへんのお話を少しお聞かせいただけたらうれしいです。
宮原禎氏(以下、宮原):私が少しだけ。
鷺山:ぜひ。
宮原:会社で上場すると、当たり前ですけど投資家に対する説明責任がめちゃくちゃ出てくるじゃないですか。シナジーがない領域、かつ間尺の長いファイナンスは、絶対しにくくなる。そういう外部環境が絶対にあると思うんですよね。
例えば、リクルートが「動物園を作りましょう」って言ってもどんだけ儲かるかを考えたらできないじゃないですか。でも、本当に動物園を作りたくなっちゃったらどうするんだと言ったら、やめるしかない。究極的には、ファイナンシャルな話でいうとそうだと思っています。
ベンチャーだと、やはりワンテーマ7年とかで勝負できるんですよね。比較的成長していけばできる。つまり7年間は自分がやりたいことを追求できると思っていて。
結局社長をやっていると、投資家に対してもある種自由に「この人に投資していただきたいから、この人にプレゼンしよう。この人はちょっと合わないかもしれないから、プレゼンはやめよう」とか、こっち側にも幾ばくか選択肢があります。
でも大企業は当たり前ですけど、選択肢はないんですよね。意思決定者がその(投資家との)先のビジョンを一緒に描けなかったら、投資は生まれてこないし、上場している会社だとストーリーの中にはめられているところがあるので、その外側に出ようと思った瞬間に、結局は起業するしかないんじゃないかなと(笑)。そんな気もしたりして。
宮原:自分は起業家として、「世の中が来るよね。ビークル(投資家と企業をつなぐ組織)が向かうためのガソリンをこの説明でもらえていないんだったら、外で別の船を作って新しいガソリンを積む。自分が船長をやる」という感じじゃないと、7年という渡航はできないと思うんです。そういう整理をしていますね。
鷺山:非常にわかりやすい整理でしたね。時間軸の話もそうですし、7年一緒にやるための仲間、そして投資家を選ぶことを担保するためにも、それ(大企業の中でやること)は難しいんだと。非常にわかりやすかったです。ありがとうございました。他の方はいかがでしょうか。
田中大地氏(以下、田中):3つ目の「いつやるのか」という話とセットのような気もするんですけど。やはり社長とか経営者が唯一得られるものって、ミッションを実現できることに対するリワード(報酬)だけだと思ってるんですよね。
お金がほしいとか有名になりたいとか、そういうものだけだと正直ベンチャーをやっていてもしんどいことしかない(笑)。毎日それでは、続けられないと思っていて。
そういう話じゃなくて、「このミッションが実現できたら、僕の人生は本当に良かった」と思えるものを見つけられるかどうかだなと思っています。見つけられないんだったら大企業で、見つけられたんだったらミッションを実現するために起業する、という話なのかなという気がしています。
森脇潤一氏(以下、森脇):じゃあ僕も。社内で事業を作るも、外で事業を作るも、本質的には同じですよね。自分がやりたいと思ったことに対して、本気で人生を注いでいく。それをやる上で、自分で常に意思決定し続けられるか。僕はそこが一番「自分でやろう」と決めたポイントかなと思っています。
いろんな関係者がいらっしゃいますし、当然投資をいただいている以上、いろんな事情にも応えていかなきゃいけない。あとは一番大きかったのは、実は「仲間探し」というさっきのテーマがあったと思うんですけど、社内でやっていると、これが自由自在にできないと思うんですよ。
どうしても通常人事で「この人が来ました」とか、そういうかたちでチームが後半になると組成されていくんですが、やっぱり本当に思いをもって集まってくる仲間と、そういう通常人事でやってくる人は、マインドが違うと思っていて。仲間探しも自分でやりたい。経営も自分ですべて意思決定したいと思って僕は起業しました。
今は投資家のみなさんに非常にご支援いただいて、本当に同じベクトルで背中を押していただいていますし。仲間探しも社員が25名と言いましたが、すごく信頼のおける本当に素敵な25名の仲間です。
自分たちで「この指止まれ」で集めているので、大企業ではできなかったことが、実際創業してみるとできるんだなという実感があります。ただそこが崩れちゃうと、けっこう経営はしんどいなと思っています。今は苦しいこともないんですが、非常に楽しくやれています。
鷺山:なるほど。(森脇さんがリクルート時代に作った)「kidsly(キッズリー)」は、事業的には成功してイグジットまで至った。人事権を持っていたわけじゃないんですが、社内人事の結果でも勝つ事業はできた。そこと今の違いは、「儲かる事業」はできたけれども、今は「好きな人」と「好きな事業」ができているというのがぜんぜん違うんですね。よくわかりました。
鷺山:磯野さん、最後になっちゃいましたが、ぜひ一言いただけないでしょうか。
磯野謙氏(以下、磯野):僕は振られたら何を伝えようかと思って......。大企業にいたことが昔過ぎて、ぜんぜんわかんない。大企業の論理を僕はわかってないんですけど。
鷺山:なるほど。
磯野:ずっとベンチャーにいる立場で考えると、大企業でできるんだったら、同じことをベンチャーでやっても絶対に勝てないので、大企業でやったほうがいい気がします。
宮原くんが言っていたように、時間軸が違うとか、ポジションが違うとか、そもそも大企業じゃできないことをやらないと生き残れない。そういう意味では、大企業で生きるんだったら大企業でやったほうがいいんじゃないかなと思います。
鷺山:磯野さんも、今やっていることは「大企業ではできないこと」なんですよね。
磯野:当時はできなかったですね。今はあらゆる大企業が(再生可能エネルギー事業を)やろうとしてきているので、競合にもなるしパートナーにもなり得るんです。経営としてはどう次の一歩を踏み出すかという大事なタイミングに来ていますね。
基本的に、ベンチャーはマイノリティなマーケットでの戦いだと思うんですよ。だからベンチャーが生き残れる。大企業が戦っているフィールドにベンチャーがいきなり入ったって、絶対に勝てない。それが創業して10年経って、メジャーなマーケットになり始めてきて、さあどうしようというところですね。
森脇:僕らもマイノリティな領域で今の事業を作っていっていて、僕の会社は今4億7,000万円の調達をしていますが、(同じ市場で投資家が)今現在この事業に4億7,000万円も突っ込めるのは、たぶん僕らだけなんですよね。
じゃあ大企業がそこに対して、それだけの投資をいきなり行うかというと、少し時間もかかると思うので、そういう意味だと大企業とぜんぜん渡り合えるし、むしろ利があるんじゃないかと考えたりしますけどね。
田中:本当にそうで、以前だったら「ベンチャーのほうがかけられる資金も少ない」というのが一般的だったと思うんですが、今のスタートアップは違います。アイリスも単一事業で約30億円資金調達していて、大企業にも張れる状態に変わってきていますよね。
森脇:本当そうだと思います。なので勝機というか、別に競い合っているわけではないんですけれども、我々のような小さな会社でも大きなチャレンジができるんだなと思っています。
鷺山:ありがとうございます。ぼちぼちお時間なんですが、いやぁ、早かった。ラストの質問になってしまうんですが、今回、2022年から何か動き出そうかなと思っている方々のためになることを一言お届けしたいと思っているんですが。
あたらめてみなさまの言葉で構わないので、「今、何を学んでおけ」「まずはこれ動け」といったアドバイスを、みなさんなりにこれから動こうとしている方に一言いただいて、締めに行ければと思うんです。
森脇:じゃあ僕から行かせていただきますね。もし何か新しいチャレンジをしようと本気で思っているなら、やったほうがいいかなと思います。
僕も友人が亡くなったこととか、自分の子どもがお腹にいた時に亡くなっちゃったこととか、あと自分の3人の子どもがちゃんと生まれて成長している過程を見ていたりとか、「人間が毎日健康で生きていられる」って、本当に奇跡的なことだし、僕らにとっては何気ない1分1秒を、心の底から欲しがって亡くなっている人がいるんだと本当に痛感するんですね。
だからこそ無駄なことで時間を使いたくないし、やりたいなと思ったら今しかない。たぶん中長期で後悔するほうが大きいと思いますので、やっぱりやれる時に思い切ってチャレンジしてください。
さっき田中さんも言っていたように、ベンチャーだからといってリスクがあるわけではないと思うんですよ。うちの会社に今、いろんな方がチャレンジして入ってくれていますが、仮に会社が数年後になくなっても、絶対に今一緒に働いてくれているメンバーは、どこの会社からも引く手あまたでいろんなチャレンジができる。そういう(どこに行っても通用する)経験を積んでくれていると思っています。
なのでリスクはないですし、心の踊るほうに、ワクワクするほうにちゃんと人生を歩んでいくことが大切なんじゃないかなと私は思います。もしチャレンジするかどうか悩んだ時には、「これで本当にいいのか」と1回問い直して、大胆に行動していただくほうがいいのかなと思います。ありがとうございます。
鷺山:ありがとうございました。
磯野:じゃあ次は僕が。本当に森脇さんのおっしゃるとおりだなと思うと同時に、自分はそういうことを考えずに生きてきたんですけど、キャリアを考えた時に、採用する側からすると、たぶん「ずっと大企業にいた人」って、正直採用しにくくなっていると思うんですね。
自分が10年前に起業した時とはぜんぜん違う環境で、むしろチャレンジした人のほうが欲しいという雰囲気が出ている気がして。他のみなさんはどうですか。
宮原:おっしゃるとおり。
磯野:やった! 一歩踏み出すほうがリスクが低い社会になっている気がします。
鷺山:一歩踏み出された方が出戻りで(大企業に)戻って、もう1回新規事業の責任者をやったりとか、チャレンジの評価がどこでもされる社会になりつつありますよね。いい話だと思いました。田中さん、どうですか?
田中:そのとおりで、むしろ生き延びるために、変化できることをしなきゃいけないと思っているんですよね。隕石が落ちて氷河期がきた時に、変化できなかったマンモスや恐竜は絶滅しちゃったんですけど、変化に強い生物は生き残ったことに近い。
そういう話と共通する部分があると思っていて、そのあたりはアナロジー(類推)できると思っています。まさに今、コロナで現代人が経験したことない変化が起きる中で、ここで変化耐性を持っていないと、逆に絶滅しちゃうんだと思っています。
なので、やったことなさそうだったら挑戦するとか、現状維持バイアスに戦うことが、むしろ生き延びるために大事だなと感じていますね。
鷺山:ありがとうございます。宮原さん、最後にお願いします。
宮原:そうですね。私もみなさんがおっしゃるとおりだとは思うんですけど、1個、「リスクを分解してみる」というのがあると思っています。
起業って怖いじゃないですか。でも「起業ってなんぞや」「企業のリスクとは」って10個くらいに分解して、時間軸でタスクを追ってみると、意外と怖くなくなったりするんですよね。
例えば転職もそうですよね。「家の子どもの飯食えなくなっちゃうかも」とか、「次の転職ができなくなっちゃうかも」とか、リアルに考えると本質的に気になるリスクがあるじゃないですか。
それをいきなり一足飛びに全部超えるとなると、ある程度の歳になるとメンタル(不調の原因)になっちゃうと思うんですよ。だからなるべく若いうちに、かつそのリスクが取れる範囲を取っていく。
例えば3年に1度、適切に連続的にリスクを取っていくという状態は、比較的(健康で、)筋肉だったら筋肉痛になってから次の筋肉痛で行くような状態です。徐々に徐々にやっていくと、悟空が超サイヤ人になっていたようなことなんだと思うんです。でもいきなり「俺、超サイヤ人になる!」と言っても、すげぇしんどい気がするんで。
ただ、ずっと「超サイヤ人になる」という目標もなくダラダラしていたら、若いうちは無理が効くんですけど、歳を取ると無理が効かなくなるんですよ。それが本質的だなと思っています。
宮原:50歳からいきなり「起業しろ」とかすげぇスタートアップでがんばって資金調達してってやると、社長がメンタル不調になっちゃうリスクが高いと思うんです。
その前までに、さっきの森脇さんの話じゃないですけど、助走で何か1回やってみて、そのあとに本格的に独立型でスタートアップをやる感じでやると、筋肉が付いたまま次の筋トレしに行けるようになると思います。そのへんはある気がするんですよね。
「取れるリスクをちゃんと取る」とすると、意外にはじめの1歩はその先にあるんじゃないかなという気もしました。
鷺山:ありがとうございます。もうちょっと話もうかがいたいんですが、今日ちょっと時間の関係で、ここでお話は終わりにしたいと思います。
今日のようなテーマだと、「リクルート流的な成功のロジックで考えるとね」みたいな話が出るのかなと思いきや、みなさんの生き方論にたどり着きましたね。
「リクルート」という1つのキーワードで、まったく違う知らない人たちが集った。今日の登壇者には、実はお互いに初めましての方もいらっしゃるんです。このネットワークは、大手ならではのつながりの1つの成果だと思うんです。
ですからこのリクルートの先輩方にご相談したらいいと思いますし、リクルートじゃない方々だって、自分の仲間たち、周囲の起業家たちとつながって、相談できればいいと思います。
「今の環境からすぐ飛び出せ。やるんだ!」とは私は言いませんけれども、得たものを活かして何か次のチャレンジを、登壇者のみなさんのように前に進んでいただけると、すごくうれしいなと思った次第です。
本当に4人のみなさん、ありがとうございました。大変楽しかったです。
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