2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ーーありがとうございます。今「変化の激しい」というお言葉もいただいたので、次のテーマ「VUCA時代のキャリア形成の極意」に映らせていただきます。
今はコロナもあって、すごく変化が激しい時代だなと思ってるんです。もちろん、昭和から平成でもけっこう激しい移り変わりがあったかなと思うんですけど、平成から令和、しかも令和の「コロナ前後」で社会が特に変わっているなと。
その中で、これは特に気をつけるべきとか。これを意識しておくことが必要だ、といった「極意」みたいなものはありますか?
田中研之輔氏(以下、田中):これは僕もすごく意識してるポイントで。いわゆる不透明な時代とか、社会変化が激しい時代って何を考えるかだけど。「未来に関してのキャリア知見」だったら、2つの立場の専門家がいて。1つは「未来なんて予想できない」という立場。そしてもう1つは「未来は予測できる」という立場。僕はどっちに立つか? といったら「未来は予測できる」っていう知見に立つんですね。
「世の中の変化っていうのは、予測できないですか?」って、みなさんに問いかけたい。例えば今だったら、SDGsがありますと。そうすると、世の中的にガソリン車に乗らなくなって、トヨタさんが電気自動車にシフトしていくよね、と。
そうしたら、例えば今日の新聞に載ってたけど、ゼネラルモーターズ(GM)の過去90年のアメリカでの売上より、トヨタ自動車のほうが全米での売上台数が増えたんですよ。こういうのも歴史的転換ですよ。
アメリカ人にしてみたら、スタンダードな車がGMからトヨタになってるってふうに言えるわけで。そうすると今度、トヨタさんは電気自動車にシフトしていく。そして同じくして今日、ソニーが電気自動車に参入するよと。そういった開発に、伸びてる会社がいくよと。そうすると、そこに向かって未来って作られていくんですよね。
田中:だからキャリア形成の極意でいうと、なかなか1人で自分の個人の専門的スキルを磨いて、己のやりたい世界を築くのはけっこう厳しい戦いである。だから僕は、そのプロティアンの中でキー・コンピテンシーとして入れているのが「アイデンティティとアダプタビリティ」。
ーーアイデンティティとアダプタビリティ。
田中:そう。アイデンティティっていうのは「みなさんらしくあっていい」「田中らしくあっていい」ということで、まずこれは絶対に重要。なぜならば、人生の時間軸は長いから。例えば「平均寿命が45歳の時代」だったら、社会に出て20年で人生を全うするわけでしょ。でも、我々の時代の平均寿命、おそらく80歳後半、90歳ぐらいになってくると、社会に出てからのほうが(過ごす時間が)長いわけですよね。
この長い時間軸を持続的にキャリア形成していかなきゃいけない時に、やっぱり本人らしくあるってことが一番持続的な、エッセンシャルな栄養素なんですよ。だから、他人軸で「人はこうだから私はこうする」というよりは、自分のやりたいことは、例えば3ヶ月後は何なのか、半年後は何なのか。1年後、3年後、10年後は何なのかってことを、しっかり育てていく。これが自分らしくあるという「アイデンティティ」。
そしてもう1個が、最初の話につながる「変化適合力」っていうんだけど。やっぱり未来は、ある程度は予測されていると。そして、そこに向かって必要とされるスキルや人材って、ある程度は見込めるんだよね。洞察ができると。そのインサイトに向かって、自分でしっかり準備をしていく必要があって、そのあたりはVUCA時代のキャリア形成の極意だと言い切れる。
簡単に言うと、世の中がどの方向に向かっていって、それに向かって自分がどう助走をしていくか。この世の中の方向性に対して、逆方向に行ってもいいんだけど。
例えば今の時代の書籍に関して。「電子書籍が出てきましたよ」っていった時の“逆振り”は何か? っていったら、SNSもやらない、デジタルマーケもやらない。ぜんぶ紙だけで、日本の中で自分が構えた小さなお店だけで限定販売しますっていうと、世の中の人はなかなかそれを知らないわけでしょ。もちろん、そこにプレミアムな価値が付くかもしれないけど、それはなかなかリスキーなキャリア形成になり得る。
これってSDGsなんかも考えると、すべて紙で大量に印刷して手に取るよりも、例えばこの『プロティアン教育:三田国際学園のキャリアエスノグラフィー』は「プリント・オン・デマンド」っていって。僕はこれを紙でほしいと思ったから買ったんですけど、書店には並んでないんですよ。でも、紙で読みたい人だけは注文ができる。
そうすると「環境にも良いよね」っていうことでいうと、こっちのスキルを増やしていったほうが(いい)。(モデレーターの転職のエピソードを指して)先ほどのお話でいえば、例えば「編集」なんかもそこにニーズがあるよね。だとすると、アダプタビリティをちゃんと磨くっていうのは、すごく大切なことで。そのあたりを、ビジネスパーソンとしては、我々は常にトレーニングをしなきゃいけないだろうなって思ってますね。
ーーなるほど。どっちかだけではなく、その両輪ってことですね。「アイデンティティだけでやるんだ!」とか「アダプタビリティだけでやるんだ!」じゃなくて、その両方を磨いていく。
田中:そう。アイデンティティだけでキャリア形成していくと、究極的には自分の世界の“島宇宙”を作っていくんだよね。自分の世界だけで生きてくと。離れ小島で自給自足生活をするみたいな。それはもちろん否定されるものではなくて、そういう人生でもいいと思うんですよ。
社会的なコミュニケーションコストがあんまりかからないところに行って、自分らしく生きる。これもアイデンティティを貫くことだから、それはそれを選択するならいい。
けど世の中の一般的に、高校を出て、大学を出て、社会に出て、ビジネスパーソンとして働いてると。つまり「組織の中でキャリア形成をやってる」ってことでいうと、アダプタビリティっていうのはめちゃくちゃ重要だよね。
ーーすごく気になったのが、アイデンティティとアダプタビリティでもってプロティアンな生き方をしようと思った時に、果たしてそれが「お金を稼ぐところ」につながるのかな? っていうのは、けっこう難しいというか。本当にそれができるんだろうかって気になるんです。
田中:キャリア形成を考える上で、絶対に理解していただきたいのは「時間軸」がものすごく重要なのね。キャリアっていうのは「1日にしてならず」なわけ。
たとえ話で話すと「1,000万円投資するから、明日までに(英語)ネイティブの商談ができるようにしてください。外資系のトップが来た時にログミーのすばらしさを伝える商談を、通訳なしでやってください」っていうと、帰国子女だったらできるかもしれないけど、そうじゃない場合は「明日までに」って言われたら、けっこうきついと思うんですよ。これがキャリア論なのね。
どういうことか? っていったら「明日までにやんなきゃいけない」っていう時間軸を1年前から設定できれば、集中キャンプとかやってトレーニングを積んで、そこそこな準備をしてプレゼンテーションできるようになるわけですね。それは、法人営業でも新規事業開発でも、なんでもそうで。
田中:我々がビジネスパーソンとしてやってることはいったい何なのか? っていうと、アウトプットに向かって逆算してしっかり時間軸を設計して、戦略的にキャリアを形成していくと。そうすると、大きな失敗をしにくいんですよね。だから持続的なキャリア形成でいうと、やっぱり戦略的に準備をしていくことが大切。
だとするならば、VUCA時代に先行きが見えないとか、これから何が必要がわからないとか。オックスフォード大学のマイケル・オズボーンが論文『雇用の未来』で「いまある仕事のうち、50パーセントがなくなる」みたいな話をしていて。ランキングで出てるわけ。彼のTwitterとか彼の公開情報をチェックすればみんな無料で見られるから、見たほうがいいと思うんだけど。
そこに書かれてることは、AIではじき出してるんだよね。ということは、その論文には、ある程度の未来が見えるわけです。そうすると、例えば「教員」か「銀行の窓口」のどっちがなくなるんだっていうと、どっちだと思います?
ーー教員と銀行の窓口だと……窓口!
田中:そうなんですよね。もうすでにその地殻変動って起きていて。リストラが始まってるところとか、あるいは雇用の再配置、窓口業務から新規事業ユニットへとかって、大手の銀行さんなんかも動き出してるけど、そりゃそうですよね。だって、みんなが電子マネーにシフトして現金なんか使わなくなってきたら、いちいち窓口に行って並んでATMでお金を下ろしてとかやんないでしょ。もしATMが必要ならコンビニでできちゃうでしょ。
だとすると、やっぱそこには世の中の変化があって。こういうことに関して、もっと常日頃からアンテナを立てるってのは大切だと思うんですよ。だからメタバースにしてもそうだし、脱炭素の話もそうだし、SGDsのユニットもそうだけど。そういったような、みなさんの今いるキャリアの場から、未来がどういうふうに変化していって、そこに対して自分がどのようなキャリア準備をしていくか?
田中:これはよく質問を受けるんですけど、年令は問わないから。例えば、今、僕は45歳。でも、50歳だろうが60歳だろうが同じことやると思うんだよね。なぜならば、キャリアってのは持続型だから。今、僕の周りには70歳の人だってけっこういらっしゃるけど、しっかり学び続ける人もいるし。
そうすると、先ほどの時間軸の話でいうと。この書籍『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』の後半に書いてあるのが、僕が現代版プロティアンって呼んでる、これ(書籍『プロティアン』)にはめ込んだ理論は、その時間軸の中でどういうふうにキャリア形成をしていくか。それが「キャリア資本」という概念。
つまり先ほど、やったことが経済資本に転換されるメカニズムである「キャリアキャピタル」って概念を説いたんですけど。これは簡単にいうと、マルクスの『資本論』に対して、僕がUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)で学んだロイック・ヴァカンっていう人の師匠に、ピエール・ブルデューって人がいるんですけど。彼が提唱しているのが「多元的資本論」といって、めちゃくちゃおもしろいんです。
マルクスの『資本論』っていうのは、あらゆる行動が「経済資本」……上部構造、下部構造の中にある経済資本に還元される、転換される、戦略的に蓄積されるみたいなことだったんだけど。
そこに時間軸っていうフレームを入れると、例えば私たちが好きであること、私たちが好んでやっていること。例えば趣味とかって、いつかその経済資本に転換されるんじゃないか? みたいな。そうすると、ファクターとしては「ビジネス資本」と「社会関係資本」。
簡単に言うと「ビジネス資本」っていうのは、みなさんそれぞれが仕事現場でやっている専門的スキルみたいなものの集積物。「社会関係資本」というのは、つながり。今はそのまま経済資本に転換されてないかもしれないけど、新しい経済資本に転換される。これ、やっぱり主要素なんですよね。
だから逆説的に言うなら、例えば今の私の場合だったら大学にいる。その場合だったら、自分の専門性があって「キャリア論を教えてます」ってなるでしょ。キャリア論を教えるのに必要な知資本、ビジネス資本があるわけ。それを学生たちに伝えて、これが自分の収入として経済資本に転換されてるんですけど。
でも他の資本も育ていてかないと、他の場所では使えないじゃないですか。ここが“ミソ”で。ビジネス資本と社会関係資本を貯めてくことを、主体的にキャリア自律型でやってないと、経済資本はやっぱり貯まっていかないんだよね。
田中:だから僕がよく言ってるのは、1つの組織で同じメンバーで、長年同じことだけをやり続けていると、原理的にキャリア資本論で考えると、ビジネス資本のボリューム。資本っていうのはボリュームで考えるんですけど、このボリュームがずーっと一定なんだよね。
そして、社会関係資本としての「つながり」っていうのも、同じメンバーで仕事してるから、外とのつながりがあんまりなければ、これも貯まらないわけ。そうすると、この「貯まらない(ビジネス資本)」「貯まらない(社会関係資本)」の掛け算で導き出される「経済資本」は、社会変化が激しくなった時に(ビジネス資本の)価値が落ちたとすると、経済資本の転換率はガクンと下がるんだよね。
ここはけっこうこれからの危険領域だと思ってるんですよ。だから、今みなさんがもし、自分たちそれぞれには仕事があって、活躍するシーンがあるんだったら、そこは育てておいていいんだけど。次なるロケットを準備しとこうよ、と。次なるエンジンを搭載しようよということを、やっぱり『プロティアン』の中で伝えたいんですよね。時間がかかるからこそ、次なるロケットを搭載しようっていうことですね。
ーー「同じ職場、同じメンバーで長いことずっとやってると、ビジネス資本・社会関係資本は貯まっていかないということに関して。じゃあ例えば「異業種・異職種に転職しよう!」っていうことも大事になってくるかなと思うんです。
ただそこで、例えば今これを見てくださってる方が「もう自分は50歳です。そして1社しか経験してません」となったときに「50歳から未経験の異職種って、果たして行けるんですか?」という心配があるかなと思うんですけど、年齢的な限界値とかっていうのはあるんですか?
田中:ない。
ーーない。
田中:ないけど、いわゆる通常の転職市場で考えちゃうと、やっぱり「受け入れ(企業)側の視点」が入ってくる。だから「30代を求めてます」とか「中堅、40代ぐらいを求めてます」というと、僕のところにも相談ありますけど、やっぱりなかなか「35(歳)の壁」みたいなのはまだあるね。
「(年齢が関係)ない」って言ったのはどういうことかっていうと、つまりは今いる組織の中でキャリアをもっと活かせるようなキャリア準備、ある種のトリートメントが必要ですよねと。
田中:僕は社会関係資本を増やすために「すべてのみなさんが転職しましょう」とは、まったく言ってないんですよね。「プロティアン論」でいうと、6つのキャリア形成のパターンがあって。例えば「イントレプレナー型」でいうと、今の業務をしながら社内で新しいチャレンジをしていく。
まさにこの『ビジトレ:今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』なんかは、NTTコミュニケーションさんの50歳の人たちの、行動変容の変化の過程を追いかけた本なんですけど、76パーセントぐらいの人に変化が起きている。それはまさに50歳の人。
キャリアについて、ここを本当に今年も伝えなきゃなと思っている重要なポイントがあって。日本ではキャリアをどう考えているか? っていったら、2択で考えてるんだよね、いっつも。「自分たちの目の前には選択肢があります。『続けますか、辞めますか?』」って。
でも、例えばグローバルシーンでキャリア形成を考えると違うんですよ。2択じゃないんだよね。もっと選択肢が多いとか、両方をとったりするわけ。
つまりそれは何かっていったら「続ける」そして「辞める」。これを両方とると何が起きるかっていうと、今の仕事を続けながら新しい業務を手に入れるってことでしょ。両方とるんだから。だから兼業とか副業みたいなモデルっていうのが、これからもっともっと増えてくると思います。
で、政府はすでに「副業・兼業推進」って旗を振ってるんですよ。企業側が「それをやられると労働規約上なかなか難しいよね」とか「組織の本業を回す時に姿が見えなくなると、うまくマネジメントできませんよね」って言ってたんだけど、蓋を開けてみたら、今回の2年間のコロナで「働くシーン」もハイブリッドになった。
つまり我々は、今日は(ログミーの)スタジオにうかがって、こうやって身体性を介してイベントをやってるけど、これってオンラインでもみなさん回してるでしょ? 会議でも同じで。だとすると、オンラインとオフラインをハイブリッドで転換する働き方がスタンダードになったわけで。これも我々は「適合した」っていうことでいうと、アダプタビリティが1つ高まった。
そうすると、これからのキャリア形成で考えると、どの方向に向かって自分のキャリア準備をしていくか。これをやっている人と、ここを見ずに目の前のことだけこなしていって、なんとか組織で雇われてるから「まあ退職まで頑張ろう」って思ってる人って、ものすごい格差になるね。
ーー確かにそうですね、ありがとうございます。ここまでご説明いただいたキャリアについて、より具体的に学べるのが「明光キャリアアカデミー」かなと思っております。そこで、明光キャリアアカデミーとはいったいどのようなもので、誰に何をどんなかたちで教えてもらえるのか? について、教えていただけますでしょうか。
田中:明光キャリアアカデミーでは私が学長させていただいてるんですけど、これはおもしろい取り組みで。問題意識は何か? というと、例えば私は大学に籍があるでしょ。大学ってどういう場かというと、高校を出て1つの大学に入って専門性を学ぶ。そして、社会に送り出す。
予測不能な時代の中でも、大学機関には「いっぱしの社会人を育てていくこと」が文科省から求められている。でも「大学を出てからどうやって学ぶんだろう?」って、出てから迷う人たちの相談がものすごく多いんですよ。
「ファーストキャリア形成期」って呼んでるんですけど、20代から30代ぐらいの若手ビジネスパーソンが、そのファーストキャリア形成期でけっこう迷っててね。つまり「大学までは目指したんだけど、その先しっかりキャリアビジョン描いてこなかったから、そこで迷ってる」って。
ここに関しての「学びの場」がないなって思ってて。だから明光キャリアアカデミーっていうのは、このファーストキャリア形成期も入るし、もちろん年齢は問わないから、学生も入ってきます。学生も入るし、社会人、若手も入る、中堅も入る。そして、70歳ぐらいの人だって入る。
これを「オープンユニバーシティ構想」って呼んでるんですけど、僕がアメリカにいた時とか、イギリスのケースとかを見てると、その時は図書館だったと思うんだけど。大学の図書館が開かれていて。誰か1人が登壇すると、地域のコミュニティの人みんなが来るみたいな。ああいう学びの場を、リアルな空間じゃなくていいから、オンラインで作っちゃおうって思ってて。
明光キャリアアカデミーでは、キャリアを軸にしながら、誰でもどこからでも学べるので。まず今は学んでほしいなと思う(テーマに沿った)ゲストを、僕の方でキャスティングさせていただいて、オンラインで展開しています。
前回ですと、ポジウィルの金井(芽衣)さん、そして今年1月はリンクトインの村上臣さんとか。サイバーエージェントの曽山(哲人)さんとかそういう方に来ていただいて、ダイアログしながらみんなに質問できる。そういうことをやってますね。
根本にあるのは、学びの場もなにか1つの組織の中に閉じるんじゃなくて。よく新規事業とかで「オープンイノベーション」って言うじゃないですか。あれって原理はあって、いろんなルーツを持った人たちがある一定期間、偶発的かつ継続的にコンビネーションするから、イノベーションって起きるんですよ。
だけどある種の大学だと、そこに同じような学力の人が入ってきて、同じような方向性で学部を形成してると、けっこうイノベーションって生まれにくいんだよね、構造的に。だから、これをいろんな人が混ざって「なんであの人あんなこと言ってんの?」「ぜんぜん違うこと考えてるわ」みたいなことの触発機会を、明光キャリアアカデミーでは作っていて。
もともと母体に塾がありますから。4,000人を超えるぐらいの大学生の先生たちもいるし、もちろん中高生も1対1で学んでるので。そういったところで、教育のプロ集団である明光(ネットワークジャパン)さんのユニットを母体にして、明光キャリアアカデミーって立ち上がっているので。
そういう意味では、これからの動きも、私自身も非常に楽しみにしてますね。
ーーYouTubeに上がっている明光キャリアアカデミーさんの動画で、田中先生が出てらっしゃるものを拝見させていただきました。私が一番おもしろいなって思ったのが「キャリア戦略の立て方」についてのお話で。「やりたくないことを10個あげる」っておっしゃってて、それがめちゃくちゃおもしろいなと思ったんです。
田中:そう、今もやってる。2週間に1回。
ーーそんな頻度で!?
田中:2週間に1回、10分ぐらい。今は次の本も書いてるんですけど、やっぱり「キャリアっていうのはいったいなんなのか?」って思うじゃないですか。キャリアっていうのは、最初のほうでお伝えしたようにセーフティネットであると。自分のキャリアを守ると。
今、我々がやんなきゃいけないのは何かっていったら、もう1つのキーワードが「キャリアオーナーシップ」。みなさんそれぞれがキャリアオーナーシップ経営をしたほうがいいと思うのね。
つまり、自分が「自分のキャリアの経営者である」として、何を取捨選択していくか。経営者であるならば選択と集中を必ず考えるから、自分のキャリアにおいて今このモーメントでは何が必要なのかを明快に考える。
でも、キャリア相談に来る人の悩みを聞いてると「あれもやんなきゃいけない」「これもやんなきゃいけない」「もうちょっとオーバーフローになっちゃってるから、どっちかにしなきゃいけない。なにかをやめなきゃいけない」って考えるんだけど。自分で自分のフェーズの中で「今の局面はこれはやらない」、そして「時間軸を据えていくから、来年はこれをやろう」とかって、そういうふうにちゃんと選択と集中をやってくってことが、ポイントなんだなと思うんですよ。
だから「やめるリスト」って決まっていて。私の場合だったら、今は大学の教授職として、例えば学会のレフリードっていうジャーナルの審査とか、あとは学会の司会とかってあるんです。それってけっこう、研究者の人としたらうれしい仕事だと思うんですよね。
僕自身もお声をいただくと「ありがたい」って思うけど「自分がやらなきゃいけない仕事か?」っていうと、やっぱり明光キャリアアカデミーをグロースさせたいとか、本を書きたいとかって思ってるから「申し訳ないです」ってちゃんと断れるんだよね。
みなさん意外と、断るが下手だと思うよね。いろんな仕事が来て「わかりました、やります」「やります」って言って、そうするとだんだんそのアイデンティティの部分が見えなくなる。僕はけっこうレスポンスが早いほうだと自分で思ってるんですけど、それはなんで早いかっていったら、自分の中で決まってんだよね。
その決まっているフォーマットの中に来た案件なのか、少なくとも今年に関してはそうじゃない案件なのかっていうのが決まってるから、悩まないんだよね。キャリアを常日頃から考えているから、悩んでいる時間が本当にない・少ないから、そういう意味では、ずっと心理的幸福感が高いままにできる。
それは選ばれてるんだけど、少なくとも自分で仕事を選んでるっていう自覚があるから、ブレないよね。そういう感覚。
ーーなるほど。じゃあ参加者のみなさんも、定期的に「自分は何がやりたくないんだろうか」っていうのをリストアップする。
田中:そう、書き出す。もちろん携帯にメモってもいいし、こういうPCに打ち込んでもいいし、紙に書いてもいいし、なんでもいいんだけど。やっぱり悩んでいる人の特徴があって。悩んでる人っていうのは、何もしないでモヤモヤしてるんだよね。
ーー言語化せずに考えてるだけ。
田中:そう。絶対に書いたほうがいい。それは2パターンあって、文字にするのでもいいし、ビジュアライズしてもいい。どっちでもいいんだけど、必ず書き出す。つまり自分のキャリアのオーナーシップを持って「自分のキャリアのオーナーは自分だ」って思って、自分で書き出して、自分で人生を絵にしていくんだよね。
そうすると、ものすごく負担が軽くなるから。「あっ、今はこれに向かってやってるんだ」と。その時に絶対やっちゃいけないのは「あの人はこうだから」っていう発想。「あの人」は関係ないから。「自分はこうしたいんだ」っていうふうに思うようにする。
このトレーニングが、日本のビジネスパーソンとか日本の教育は著しく弱い。プロティアン教育を高校生に向けてやってるんですけど、もう本当に「自分らしく生きるとは」、それと合わせて「社会に貢献するとは」っていうことの掛け算をやり抜くというのが、プロティアン教育なんですよね。
だから、やっぱり「画一・均一化した仕組みの中で『こうしなきゃいけない』っていう偏差値教育」みたいのがあるから、その教育を1回外さないとね。そして、自ら主体的にキャリア形成をすると。
ーーなるほど、ありがとうございます。では、そろそろお時間となってしまいましたので、最後に今回のイベントをご視聴いただいた参加者のみなさんにメッセージをいただけますでしょうか。
田中:今日のテーマでお話したVUCAとか、あるいは私のほうでトピックにさせていただいたSDGsとか、そして未来を予測するとか作るとか想像するとか。このへんのテーマっていうのが、2022年も主軸になってくると思います。
やっぱりみなさんと共有したいのは、自分らしく・みなさんらしくキャリアを形成すること。そして、社会の変化を予測しつつ、しっかり戦略的に準備しておきましょうよと。行き当たりばったりのキャリアじゃなくて、常に選択しなきゃいけないって考えるんじゃなくて、常に自分にとってマネジメントしていく。キャリアをしっかり定期的にマネジメントしてくようなかたち。
それが見える化する1つの指標としては、この書籍『プロティアン』の中にもありますけども、キャリア資本論っていう考え方もあるので。若干、難しく聞こえるかもしれないんですけど、ワークシートなんか見てもらえるとすごく簡単です。簡単に作ってますので、やっぱり悩んでいる状態から、考える状態へ。
だから、キャリアを他人に預けている状態から、自分の手に入れて、自分で育てていくということができれば。例えば、これを見て下さった後から1ヶ月くらいの間に、まず自分でチューニングしていく。チューニングして、それを習慣化していく。そうすると行動が持続するようになるから、そんなようなきっかけになったらいいのかなと思いました。
ーーありがとうございます。それでは、本日はここまでとさせていただければと思いますので、本日ご視聴いただいたみなさん、そして田中先生、本日はどうもありがとうございました
田中:ありがとうございました。
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