2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中村英泰氏(以下、中村):難波さんの本(『「働かないおじさん問題」のトリセツ』)にある「自分メディア」、僕も大切にしているし、完全にアグリーなんです。やっぱり自分に賛同してくれて、「いいね」してくれる、セロトニンが出やすい環境を自分で作っていく。これが1つの突破口だと思っているんです。
難波猛氏(以下、難波):そうです。たぶん「承認欲求」と「自己実現欲求」をくるくる回すようなサイクルを、みなさんも持っていらっしゃると思うので。
できればこの後ブレイクアウトルームで、みなさんがどういう学習サイクルを作っているのか、どんな工夫をしているのか、ぜひお聞きしたいなと思っていて。それが回り始めさえすれば、こういう場に出ることもおもしろくなると思うので。
中村:そうですね。確かに。
難波:こういう場に一歩も出てこない人の半数ぐらい「学びたいですか?」の質問に「YES」と答えていて、私としてはちゃんちゃらおかしいという。
中村:なるほど。
難波:「絶対やってねーだろ」みたいな感じがしているんです。
中村:名久井さんは、今のお話を伺っていてどうですか? その課題・問題はたぶん自分の中にもあるし、職場に行けばなおさらだと思うんですね。そこをどう超えていくのか、という今日のテーマの結論に向かっていきたいところなんですが。名久井さんはどうお考えですか?
名久井康宏氏(以下、名久井):とても大切ですし、危機感だけを共有しても仕方ないと思っています。この本(『終身知創の時代』)の前段となる修士論文を書いたのが、2019年の春なんですよ。だからけっこう時間が経っているんです。
今の中村さんと同じように、僕も本を書きながら「どうしたら良いのか」と思っていまして。ちょっと分析をし直して、反応確率というものを計算し直してシミュレーションしてみたんです。簡単に言うと、今から申し上げる数値を聞いて、みなさんがどう思うかなんですよね。
中村:数値ですか。
名久井:例えば、先ほど質問にもありましたが、「学び直しコスト」を改善した上で、「大学院で学ぶ」ことに反応させると、10パーセントぐらいの人が学び直しに行くことになる。つまり、コストを下げてあげると、10パーセントぐらいの人が学び直しに行くんです。
中村:10パーセント学び直すということですね。
名久井:そうです。だからこのコストを下げる価値があると見るか、「別にたったの10パーセントでしょ」と言って、やめようと思うのかなんです。続いてもう1つの壁となっている、先ほど申し上げた「周囲の雑音」。これを下げてあげると、だいたい30パーセントぐらいの人が学び直すという確率が統計上出ているんですね。
何が言いたいかというと、私たちミドル世代に絶対に来るのが「中年の危機」というやつですね。「どうしよう」と思うわけです。その時に、基本的な欲求として、結局私たちは誰もが「ユニークでありたい」と思うようになるんですよ。年を重ねるほど、自分らしくありたいと思うのです。
でも、10パーセントだろうが30パーセントだろうが、「あ、やめよう。低いな」と思うということは、自分で平均的になってしまうことを選択しているわけなんです。
名久井:そんな数値があった時に、映画『マトリックス』のように、青いカプセルと赤いカプセルがあった場合に、どっちを取るのか。どっちを取っても良いんですよ。また同じように赤と青のカプセルが出てきて、その選択の連続だから。赤を取ったり、青を取ったりしていくのが、学び方、ラーニングストラテジーだと思いますし。
OECDのレポートを見ていると、4年くらい前から、ストラテジック・ラーニング(戦略的学習力)というものが出てきています。まさにそういうものが、力になってくるんだと思うんですよね。なので、自分の学ぶスタイルが、自分に合っているかどうかを知るのはものすごく大切ですね。
身近なところでは、視覚情報から認識するのが得意か、聴覚なのか、文字情報なのかから始まって、人と対話して学んでいくのか、それとも内省して学んでいくのかなど。このようにいろんなアセスメントがありますが、こういうことを知っておくことが大切になってくると思います。
中村:今おっしゃっていただいたことは、すごく難しいと思いますが、「自分をユニークな存在だと思えるかどうか」さえ達成できれば、おそらく難波さんのようになれるのかなと。名久井さんのお話の中で、これがけっこうポイントだと思うんですが、いかがですか?
難波:そうですよね。私のコメントのあとブレイクの時間を取り、皆さんの話も伺ってみましょう。
中村:そうですね。
難波:私は2年ぐらい前から勉強を始めていますが、勉強を好きになった瞬間というのか、そこの大前提の話をします。人によって違うと思いますが、「自分はこれが感じたくて生きているんだ」ということがあります。これがわかれば、誰もがたぶんいける思うんです。
それは、「何のために仕事をするのか」「何のために勉強するのか」で、ちょっと大げさに言うと、「何のために生きているのか」です。私の場合、中2の1学期のテストがたぶん原体験なんですね。けっこう良い点を取ったら、隣の席の女の子から「難波くんすごーい」って言われたんです。
小学生~中学生にかけて、運動もできない、背も小さかった私が、女の子から「すごい」と言われた。それがたぶん人生初だったんです。その時のドーパミンの出方、たぶん異常値でして。それ以降、とにかく「難波くんすごい」って言われたいか、若しくはもういい加減おっさんなんで、少なくとも「俺すげー」って思いたいっていうのがあります。
中村:そうですね。やっぱり「ユニークな存在である」ということを自分が認めるためには、周りからの承認が必要ですよね。そこが、学び直しにおいては、1つのきっかけになるかもしれませんよね。
難波:そうですね。やっぱり、この領域だけは少なくとも「人には負けねー」みたいなところを、自分の中に見つけること。それができれば、他で多少抜けていたとしても自信が持てるんですよ。
難波:私、こんな自信満々に言っていますが、外資に勤めているのに英語の会議とか1ミリもしゃべれていないですからね。
中村:英語はやられないんですかね?
難波:1年間、Eラーニングを受けていて、毎日30分ぐらいフィリピンの女の子としゃべってたんですけれど、全然伸びなかったです。なぜかというと、たぶん興味がなかったからなんです。
中村:なるほど。
難波:この経験からも、やりたくないものはやっぱりだめだなぁと思いましたし。社労士の試験も受けたんですけど、やっぱり全然頭に入らなかったんです。特にこのミドルシニアと呼ばれる40~50代の人たちは、嫌いなものを無理にやっても、それこそ学び直しコストが異常に高くなるだけなので。好きな領域の周りだけ、とにかく肉厚にすれば良いのかなと思っています。
中村:そうですね。ちょっと(これから)ブレイクして頂きます。ご自身の学び直しコストや、今聞いて頂いたことについて、そこを超えていくためにどうしたら良いか。若しくは、超えたことがあるよというお話など、9分の間にして頂けたらと思います。
3人とお話しして頂いて、その内の誰でもかまいませんので、その内容をブレイクが終わったらチャットに入れていただきたいと思います。この後クロージングに向けて、盛り上がっていきたいので、ぜひよろしくお願いいたします。ではこの後、ブレイクに入らせていただきます。では、開始します。いってらっしゃい。
(ブレイク中)
中村:ブレイク終わりましたが、難波さん、いかがでしたか?
難波:ひたすら聞いていたいぐらい。みなさんから、いろんな熱いコメントが出ていました。ぜひチャットも含めてコメントを確認して行きましょう。
中村:そうですね。ぜひチャットにも入れて頂きたいです。
難波:学んだこととか、こんなことやってますでも良いです。
中村:ブレイクで話を聞かれていて、難波さんはいかがでしたか?
難波:なんだろうな、やっぱり今学んでいることについて話すこと自体が、人にとって快感なんだなと思いました。人間って原則的に、たぶんアウトプットすることが快感なんですよ。
中村:そうですよね。認めてもらうための一番わかりやすい方法ですよね。
難波:そうそう。だからそのために、こういった場を、会社や所属している組織にも作れると良いんだろうなと、すごく思いました。
中村:ただ……。「ただ」と言っちゃいけないですけど、受け取ってくれる人を見つけないといけないですよね。先ほどの難波さんの発言もそうですが、名久井さんがおっしゃっている「自分がユニークである」とわかってくれる人が1人いればなんとかなる。独り言ではちょっときついですよね。
難波:「それやって今期の数字どうなるの?」みたいなことを言われると、たぶん一発でポシャっちゃいますよ。
中村:そうですね(笑)。名久井さんいかがでしたか?
名久井:とても豊かなお話をさせて頂きました。僕も難波さんと同じように、ずっとお話を伺っていたいという気持ちでしたね。
中村:さっそくコメントがきていますね。「目的があると学びが深くなる」とかですね。
難波:「アウトプットの大切さ」というコメントもありますね、素晴らしいですね。
中村:さっきチャットで、「自分のわくわくを知っているかどうか」と、井上さんから頂きました。自分が一番認められたい所がどこかをわかっていて、そこを深めていく、高めていく。そのための学びの最中は、難波さんがおっしゃっている、どれだけ本を読んでも、どれだけ走っても、「次が、次が」となる「フロー理論」とすごく重なると思うんです。
難波:たぶん、多幸感を感じるし、知らないことがわかるようになることが純粋に楽しいんですよね。
名久井:全く、そう思います。
中村:なるほど。知らないことがわかるようになって、間髪入れずお母さんやお父さんから、「お前すごいなぁ、そこまで知ってんのか」と言われて。ここがとても大切ですよね。
難波:そうですよね。山川さんからも「お金を掛けないように」とありましたけど、今本当にコストがかからないですもんね。それはすごいありがたい時代ですよね。昔だったら足を延ばしてどこかに行かないといけなかったわけですから。名久井さんのお話であった、大学院に入るとか、そこまでちゃんとコストをかける時はまた別ですけどね。
中村:そうなんです。それでもやっぱり「学び直しコスト」を、どうしても表に出さなければならない事情もありますよね。
中村:今日の結びとして、難波さん、名久井さんから、そもそもこの「学び直しとは何なのか」というところを、最後に提言していただきたいと思います。そろそろ総括の時間に入ってきていますが、難波さんいかがですか?
難波:誰かから言われて学ぶのは、本質的につまらない作業になる気がします。だから、何でも良いんですが、死ぬほど役に立たないことでも、自分が学びたいことを学ぶ。そして、それを発信して誰かに「おもしろい」と言ってもらう。
中村:受け取ってもらう。そうですね。
難波:理想を言うと、それが仕事につながってサイクルが回るようになると良いですね。そうすると、たぶん永久機関みたいな、太陽光発電みたいなかたちになります。
中村:サステナブルになってきますよね。持続可能や変幻自在であったりとか。
難波:そう。だからちょっとそれを見つけるまでは、誰かが伴走してあげないといけないんです。一緒に考えてあげる。今日は、キャリアコンサルタントや人事系の人が多いので。その時に、「食いっぱぐれのない資格を取りましょう」みたいな「やらねばならぬ」という話にならないことが大切ですよね。
中村:確かにそうですね。
難波:本人が夢中になれることは、どうやったら見つけられるのか。ここさえできれば、心理的なコストがほぼゼロになるので、すごく良いんだろうなと感じました。皆さんのチャットも、すごく参考になっています。ありがとうございました。私からは以上です。
中村:そうですね。ありがとうございます。名久井さんはいかがですか?
名久井:難波さんがおっしゃるように、熱中できるというところは僕も本当にそう思っています。僕が日頃からよく聞く問いに、「誰からも喜ばれないけど、ずーっとやっていられることは何ですか?」というものがあるんですよ。それも1つ大切なこととしてある思いました。
中村:なるほど。
名久井:最後に今日のまとめとして、申し上げさせていただくのであれば、チャットの中に、「ゴール」とか「目的」という言葉がたくさん出てきていますよね。
中村:確かにそうですね。
名久井:みなさん素晴らしく本質的なところをご覧になっていると思っています。僕は今日たまたま大学院の話をしていますが、「大学院に行く」「修士を取る」のが目的でもゴールでもないんですよ。
何が言いたいかというと、「〇〇になる」という目的は、外部環境が変わると無くなるんですよね。例えば仕事が変わっちゃうとか。そうではなくて、目的として、どういう「あり方」をしていきたいかを考えるんです。英語では「being」と言いますが、日本語では「あり方」ですね。
例えば、どういうふうに人と会話をしていきたいかとか、「あり方」を考えるのが大切だと思っています。でも、ここに罠がいろいろあります。
僕はダグラス・ホールの本はだいたい英語で読んでいますが、2020年(出版の)本の中で、プロティアン・キャリア(環境の変化に応じて自分自身を変化させていく、柔軟なキャリア形成のこと)は大切なんだけど、1人で考えるのは難しいということが書いてあるんです。
名久井:つまり、キャリアやゴール設定、自分のあり方に関して、1人で考えてはいけないと僕は言いたいのです。何を学ぶか、何を考えるか、ではなくて、「誰と学ぶか」「誰と一緒にいるか」ということを真剣に考えることが大切なんです。これを最後の、まとめとして言いたいと思います。
僕もそんなに強い人間ではないので、コーチングを勉強している友人に救ってもらったことがあるんです。「ちょっとコーチング受けてみない?」と言われて体験しました。良質な質問に答えていくという、コーチングのような場がこれからすごく必要になると思っています。
それが結果的に、learn abilityを上げていくことになると思うんですよね。今日はありがとうございました。
中村:どうもありがとうございました。今日、ご参加頂きました皆さまは、どうでしたか? 私はたまたまこちら側に立って、今日は難波さんと名久井さんにお話を伺ってきましたが、おそらくこの場においての主人公は私たちではなく、皆さま一人ひとりだと思います。
「ここから何を学び取るのか」ということが、まさに今日の結論であり、ゴールであり、超えていくところだと思います。次に何か学び直す時には、どこか自分ごとになっていくと思います。
もう1つ思うのは、学び直す人が、快く、気持ち良く、セロトニンが出る方向にいけるように、私たちがチェンジエージェントになっていく。今回はそのための、とても重要な会になったと思います。
今日もあっという間でした。「時間設定がおかしい。あと30分欲しい」と言われてしまいそうですね。申し訳ありません。ここからは各自持ち帰っていただいて、セルフラーニングへ向かって頂ければと思います。では、難波さんも名久井さんも、どうもありがとうございました。
難波・名久井:ありがとうございました。
中村:みなさんも、どうもありがとうございます。
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