2024.10.10
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『企画 「いい企画」なんて存在しない』刊行記念 高瀬敦也 × 國友尚 × 小早川幸一郎トークイベント 「オリジナリティ/独自性のある企画のつくり方」(全5記事)
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司会者:今回は『企画「いい企画」なんて存在しない』刊行記念、「オリジナリティ/独自性のある企画の作り方」と題しまして、著者の高瀬敦也さん、ゲストに國友尚さん、ファシリテーターにクロスメディア・パブリッシングの小早川幸一郎さんをお招きしてオンラインイベントを開催いたします。よろしくお願いいたします。
高瀬敦也氏(以下、高瀬):よろしくお願いします。
國友尚氏(以下、國友):お願いします。
小早川幸一郎氏(以下、小早川):お願いします。今日は新刊『企画』の出版記念講演ということで、代官山蔦谷書店さん主催で、1時間半のイベントをお送りしたいと思います。今日はゲストにアソビジョンの代表をしております國友さんに参加していただいて、高瀬さんと國友さんと、たまに私も入って「企画」について話をしていきたいなと思います。
さっそくなんですけど、私は今日の午前中に出版会議がありまして。30本ぐらい企画を見てきたんですよ。
高瀬:小早川さんの会社(クロスメディア)の会議?
小早川:そうなんですよ。出版会議で、もう頭がへとへと(笑)。
高瀬:ちょっと待ってください(笑)。疲れたよって話ですか?
小早川:疲れてるって話ですね(笑)。企画は考える側と、お2人は企画をジャッジする立場にもなられていると思うので、私としては最後の質問のところで「企画をどう判断していくか」と、視聴者のみなさまと同じ、企画を考える側の立場で質問したいなと思っているんです。それで今日は私自身も楽しみなんですが、ちょっと私の話は置いといて(笑)。
高瀬:すごく自分の話をしたそうな立ち上がりですよね。今日の出版会議はどうでした? いい企画はありましたか?
小早川:はい、ありました。
高瀬:いいですね。楽しみですね。いつ出るんですか?
小早川:6ヶ月後ぐらいにたぶん出ると思うんですけど。いつもね、こうやって突っ込まれるんですよ(笑)。
高瀬:そんなことないですよ(笑)。
小早川:すみません、ちょっと話が長くなりました。國友さんにご自身のことをお話しいただけたらと思うんですけど。國友さんのキャリアはもう本当に「企画人生」ですよね。
國友:そうですね。例えば「企画」というものに自分も情熱があるんだなと、このイベントにお誘いいただいたのがきっかけで、さらに深く考えるようになりました。
自分自身も企画にはやっぱり思い入れがあって、高瀬さんの本を読ませていただいて、それにさらに影響を受けているところもあるんですけども。高瀬さんの頭脳の一部をいただいたような、あらたな知をインストールしたかたちで、この本自体を楽しませていただきました。
小早川:國友さんのキャリアそのものが企画という話なんですが、どういうことをやられてきたのか、企画の話を交えながら教えていただけますか。
高瀬:本当におもしろい方なので。本当いろんなことをやられていますよね。
國友:ありがとうございます。そうですね、高瀬さんが「企画力とはシステムである」みたいなことを著書の中でも書かれてましたけども、もともとは私のバックグラウンドにシステム工学という学問があります。
学生時代にロボットの研究をしていたんですよね。その中でも「ロボットの中にいかに人と同じような感情を植え付けるか」みたいなところが専門領域でした。
ただ20年前のロボットって、今みたいなアンドロイドがまだ発展しているわけではなくて。前にいる人の口角が15度上がるとロボットが微笑み返すみたいな仕組みなので、「こんなインプットデータでは、人型ロボットはいつ完成するんだ」というレベルのスピード感だったんです。世の中でインプットできるデータがあまりにも少ないということが課題でした。
私が着目したのは、喜怒哀楽とか人の感情とかをインプットするのに、どの世界に飛び込めばその情報が取得できるかというところで、最初に高瀬さんと同じくテレビの世界に首を突っ込んだ。これがキャリアのスタートになります。
小早川:高瀬さんの今回の本で「企画のシステム」という話をしていて、言葉としておもしろいなと思ったんですよね。この本でいうシステムというのは、「仕組み」みたいなものですかね。
高瀬:そうですね。
小早川:だけど國友さんはガチでシステム工学を学んで、そこからこのクリエイティブの世界に行った。これはあまりない道ですよね。
國友:そうですね。それでいうと、周囲の仲間も含めて「学問の世界でどっぷりと研究し続ける」というキャリア形成だったんですけども、その中で芸能エンタメに行くというのはかなりレアなケースだったと思いますね。
高瀬:國友さんは放送作家さんだったんですけど。
小早川:なにかきっかけはあったんですか?
國友:きっかけが、これまた確かに奇跡的な出会いがあって。ある放送作家の大御所の方がいらっしゃって、それが私の祖父の親友の息子だったというところから始まり……。
小早川:祖父の親友の息子さん。
國友:そうですね。
高瀬:そうだったんですね。
國友:それが廣岡豊さんという方なんですけども、『ダウンタウンのごっつええ感じ』というコント番組でチーフ作家をされていた方です。『笑う犬の生活』というフジテレビの番組が立ち上がる前に知り合いました。
僕はよくわからないままとはいえ、感情を研究していたので「なにか笑いを作れるんじゃないか」という、それなりの自信はあったんです。コントなので、要はシュールな風刺をしたうえでどうやって笑いに変えるかみたいなところ。
それでいきなり初日に、翌日までに100本コントを書いてこいみたいな時代だったんですよね(笑)。ひたすら1,000本ノックを受けまくっていたかたちで、最初のキャリアをスタートさせていましたね。
小早川:要は、年齢的には“知り合いのおじさん”みたいな方ですよね。
國友:そうですね。年齢的に言うと10歳15歳上とかですかね。
小早川:「ちょっとうちで働いてみない?」みたいな感じだったんですか。
國友:廣岡さんが『ダウンタウンのごっつええ感じ』をやっていたのは知っていたので、初対面の時に「これはちゃんと心をつかまないといけないな」と思って。それが企画の最初ですよね(笑)。
どうやって興味や関心を持ってもらえるかというので、今思うとチープな企画だったんですけども、それを持っていって。やる気があるように見えたのか、やんちゃに見えたのか、しごいてやろうって見えたのかわからないですけど(笑)。それがきっかけで、しばらくいわゆる弟子みたいなかたちで業界に入りましたね。
小早川:それは、学生の頃ですか?
國友:そうです。大学3年生のタイミングですかね。
小早川:そこからなんですね。
國友:そうなんです。テレビの世界でいろんな番組を経験させてもらって、テレビで一番良い時代だったと思うんですよね。
小早川:いやあ、そうだと思いますよ。
國友:でも一方で、ようやく世の中にブログが出てきたみたいなかたちで、インターネットをはじめとした情報発信の仕方が変わっていくことを感じたんです。
僕はテレビの世界に8年ほどいたんですけども、それをきっかけに、当時27〜28歳ぐらいのタイミングで「テレビの世界にこのままどっぷり浸かっていたらやばいかもしれない」と危機感を感じたんですよ。
高瀬:「やばい」というのはどういう「やばい」ですか?
國友:特に放送作家という職業であったり、演出家という職業であったりは、正社員じゃなくフリーランスなんですよ。当時、上の世代が40歳前後でどんどんクビを切られていくのを見ていたわけですね。「これは持っても残り10年だ」みたいな感じが見え隠れしていました。
それを思った時に、今、武器としてインターネットの知識を手に入れておくと、自分にとって次のキャリアアップになるんじゃないかと。留学のつもりでインターネットの世界に3年行って、またテレビの世界に戻ったら、自分のバリューが高まるだろうという作戦を考えたわけですよ。
じゃあどこで学ぶかとなった時に、2000年前半でインターネットの世界で最大手だったヤフーという会社に入社をしました。いざ入ってみたらヤフーはヤフーですごくおもしろい会社で、市場としてもガンガン伸びていくタイミングに合致したので、結果的にそのまま10年ぐらい居座ってしまったんですよね。
小早川:國友さんも高瀬さんもテレビをやられていて、お2人の関係の最初の接点はテレビの現場だと思っていたんですが、ぜんぜん違うんですね。
高瀬:ぜんぜん無関係ですね。
國友:そうですね。それでいうと、僕がテレビを離れたのが2004年、2005年ぐらいのタイミングだったんですけども、まさに『逃走中』という番組がちょうど立ち上がった頃のタイミングで。「あ、これは嫉妬する」「すごい番組が来たぞ」というので、企画した高瀬さんの出現によって、僕はところてんのように押し出されたみたいな感じになりますかね。
高瀬:だいぶ違うんですけど(笑)。でも國友さんがずっとそこをすごく褒めてくれるんです。
國友:そうですね。『逃走中』は、もう僕にとって「やられた」と思った番組の1つなので。それはいまだにリスペクトしていますし、あのタイミングでよくぞ外の世界に押し出してくれたという感謝も、高瀬さんに対して持っていますかね。
小早川:『逃走中』って高瀬さんの企画の代名詞みたいなところがあると思うんですが、前作の『コンテンツのつくり方』や今回の『企画』ではあまり『逃走中』のことは語ってないですよね。でも読みながらその話を聞くとおもしろいですね。
國友:そうですよね。まさに「ただのアイデアだけでは進まない企画」がそこには存在して、どうやってあれを実現させるかというところ。テレビだと、いざやろうと思うとすごく面倒くさいプロセスがあるんですよ。
高瀬:そうですね。まさにその「面倒くさい」というのが一番、言い得て妙ですね。
國友:テレビの世界で、今の方は働き方が変わっているかもしれないですけども、四六時中テレビのことばかり考えていて休日もないような状況の中、撮影のための許可取りなどそんな面倒くさいことをやるのはみんな嫌なんですよ。
もう20年近くあの番組(『逃走中』)は続いていることになりますけども、鬼ごっこを番組でやるという「シンプルなのにでも実は面倒くさいこと」をやりきった、すごく画期的な番組の1つじゃないかなと思っています。
小早川:すいません。ちょっとテレビの話になったんですが、それで(國友)ヤフーに行ったんですよね。
國友:そうですね。ヤフーでは「テレビとはまったく違うことをやりたい」というモチベーションがありました。ヤフーの僕の代表作として「Yahoo!知恵袋をやっていた人」みたいに言われることが多いんですけど。
(会場どよめき)
高瀬:すごくないですか? 「知恵袋の人」ですよ。
小早川:「知恵袋をやろう」とおっしゃったんですね。
國友:そうですね。その知恵袋の前に「ヤフオク!(Yahoo!オークション)」という、ヤフーのメガサービスがあって。当時でもたぶん5,000億円ぐらいの市場流通の額を起こしたサービスなんですけども、あれってただの一般人と一般人のやり取りで大きな市場を作っているモデルじゃないですか。
テレビってやっぱり有名人であるとかその影響力の大きさでコンテンツを広めるというやり方ですけども、一般のド素人とド素人のやり取りでこんな価値あるサービスを作れるんだという驚きがあって。それで、押入れの奥底に眠る物品が再価値化される「ヤフオク!」と同じようなモデルで、まさに頭脳版、誰かの記憶の奥底に眠る情報が最価値化されるYahoo!知恵袋のQ&Aです。
「質問する人と回答者」という立て付けと、「出品する人と落札する人」という立て付けは、モデルで見ると同じなんですよね。一般の人たちが知識のやり取りをするか、物のやり取りをするか。いわゆる著名人に頼らないとか、大きなメディアに頼らなくても一大市場を作り上げることができるという、1つの大きな原体験になっていますね。
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