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小室淑恵と体験する心理的安全性の高いオンライン会議と、多様な意見があふれ出すオンライン会議のやりかた(全1記事)

コロナに関係なく、私たちの働き方はとっくに「限界」だった 日本人が知らない、人口ボーナス期・オーナス期の「勝てるルール」の違い

株式会社ワーク・ライフバランスが主催したイベントに、代表取締役社長の小室淑恵氏が登壇。オンライン会議の課題である「発言が偏る」「ホワイトボードが使えず話がまとまらない」「相手の反応が見えない」といった事例を挙げながら、心理的安全性の高い組織作りの秘訣を解説しました。

発言が偏る、話がまとまらない……オンライン会議の悩み

小室淑恵氏:今日、事前にみなさまからアンケートをいただきました。そこに、オンライン会議の課題をたくさん書いていただきました。「一部の人に発言が偏る」、これはかなり多くの方が書いていらっしゃいました。「リアル会議よりも時間が長引いてしまう」、一日中会議になっちゃう、なんて方もいました。

「議論の発展・ブレストが難しい」。言葉を重ねて、どんどん発言していくことが難しい。リアルだったらホワイトボードにまとめていきますが、これができないので「話がまとまらない」であるだとか、今、人事では非常に注目のキーワード「心理的安全性」の高い会議が難しくなっている。

他にも「資料を共有すると顔が小さくて見えない」「相手に熱量が伝わらない」「反応が見えないから話しづらい」「操作に不慣れ」。そもそも「ベテランがオンライン会議に乗り気じゃない」「上司にオンライン会議は失礼だ」ということで、(リアルで)会いに行かなきゃいけないなど。

意見を集約して「合意形成をしていくことが難しい」。このようなお声をたくさんいただいたかなと思っております。

「心理的安全性の高いチーム」とはどんなチーム?

今、出てきた「心理的安全性」というキーワードは、Google社がプロジェクトアリストテレスという大規模調査を行って出した結果なのですが、生産性が高いチームに共通しているのはどういう項目だろうか? ということを調査したものです。

当初の仮説としては、やはり「リーダーシップが強いリーダーがいるところ」、もしくは「有能な人材がいるチーム」が生産性が高いのではないか、と仮説を立てましたが、結論はまったく違いました。

では、それはどのようなチーム? かと言うと、このチームの中でなら自分の意見を笑われない、拒絶されない、罰せられたりしないという、「少し異端かな」と思うような自分の意見も、安心してどんどんとお互いが出し合えるようなチームほど、生産性が高かったのです。

ですから今、よくマネジメントの方で「心理的安全性の高いチームと言われても」「俺は褒められて来なかったから、そんなマネジメントできない」と仰る方がいますが、あなたの性格や過去の経緯とは関係がないのです。

これで業績が上がることが解明されたわけですから、それはもう仕事なんですね。ですから「心理的安全性の高い会議を作ることこそが業績に直結するから、それはあなたの仕事です」と、管理職の方にしっかりとお伝えいただく。

どんどん意見を言い合えて、意見が率直にぶつかり合うからこそ、化学反応が起きイノベーションにつながります。「心理的安全性」というキーワードを覚えて、実践していっていただければと思います。

「なんだかんだ、オンラインより対面がいい」という風潮

そして今日、オンライン会議について組織の共通認識にしていただきたいことを、こちらに書かせていただきました。先ほど挙げた通り、オンライン会議にはたくさんの課題があります。

「もういい加減顔を見て仕事したい」という気持ちになってきましたよね。人に会いたいんです。それに「家も飽きた」、さらに「冷暖房費も馬鹿にならない」。「やはり対面がベストだよね」「敬意を表しやすい」「最上級の敬意を表すために会いに来ました」など。「低いプレゼン力を熱さでカバーできる」という利点があったりもします。

「なんだかんだ言って、やはりオンラインじゃなく対面がいい」という波が押し寄せていませんか? そうすると、「あの時、オンライン時代って大変で不便だったね」と結論付けられてしまって、「感染者数が減ったらリアルがいいよ。対面がいいよ。出社がいい」というように、どんどん戻っていくことが考えられます。

しかしよく考えてみると、おそらくここから5年くらいはインフルエンザと同じように、冬になったら毎年コロナは猛威を振るうことになると思います。今のように“しのぐ仕事の仕方”をやっていると、毎年オンラインでしのぐことになってしまうわけです。1年の半分ぐらいはしのぐ時期、ということになります。これでは勝てないですよね。

オンラインとオフラインの使い分けで、利益率を上げる

大事なポイントは、オンライン環境での戦い方です。私たちはリアルでの戦い方はずっと熟練してきましたが、オンラインに関してはまだまだ極めて未熟です。

ですので、ついつい慣れ親しんだものを「いい手段だ」としてチョイスしがち。特に年齢層の高い方ほど、「こっちのほうがいい手段なんだ」と考えがちですが、それは未熟なスキルを使いこなしていないだけなのです。

では果たして、この成果を出すには、最上級の敬意を相手に示すため会いに行ったほうがいいのか。それともこれは、サクッと5分でオンラインミーティングをしたほうがいいのか。というように、目的に対する最適な手段を常にチョイスできる組織になることこそが、最大に生産性を高めます。

ちなみに弊社は一昨年と昨年、年度で利益率が倍になりました。私たちの働き方は、徹底的にオンライン化できる状態になっていたのですが、取引先は対面希望が多い中で、どうしても生産性が低くならざるを得ない場面がありました。

もちろん私たちも、ここぞという時には会いに行きますが、「遠いクライアントでも、今日のうちに話したほうがいいいからオンラインで」と、パッと効果的な手段を取り「来週まで待たずに今日話せましたね」というような迅速な対応ができることにより、利益率が倍になったという変化が出てきています。

コロナに関係なく、従来の働き方は限界に達していた

ではコロナがなかったら、働き方は変わらなくてよかったのでしょうか? もう1つグッと視点を上げたいのが、コロナがあろうとなかろうと、実は私たちの働き方はもう限界に達していたのです。人口ボーナス期・オーナス期という観点で、少しお話させていただきたいと思います。ボーナス期・オーナス期という言葉を知っていますでしょうか? 

実はこのボーナス期・オーナス期という考え方は、世界的にはもう常識的ですが、日本でだけは極端に知られていない考え方です。

日本でいうと、1960年代から1990年代が人口ボーナス期でした。このグラフは、右肩に下がって行くのが子どもの比率、右肩に上がっていくのが高齢者の比率、一番上が従属人口指数で、「何人で何人を支える社会なのか」ということを表しています。

子どもがたくさんいて、高齢者が少ない。つまり、生産年齢人口比率が高い、若者がたくさんいる社会。そして高齢者が少ないということは、社会保障費がかさまない社会ですから、余った利益を全部インフラ投資に回すことができます。つまり、爆発的な経済発展ができて当たり前の時期なんです。安い労働力を武器に、世界中の仕事を集めることができる。

一方で、今の日本はすでに人口オーナス期になります。オーナス期は、若者は少ししかいません。高齢者はたくさんいます。生産年齢人口比率が低いことによって、これからたくさんの高齢者を少ない納税で支えなくてはならない。そうすると、インフラ投資もままならない。社会全体の負担が、非常に大きい時期になります。

こうしたボーナス期とオーナス期、まったく背景の違う時期には、当然ですが「勝てるルール」が違います。オーナス期に入ったら、労働生産性を上げるには、いかに労働参画できる人を増やすかが重要になってきます。

かつての日本では「性別役割分担」が経済発展のカギを握っていた

こちらのスライドで整理をしています。上がボーナス期、下がオーナス期ですが、人口ボーナス期には労働力である若者が余っていて、体力勝負の仕事が多い。

こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、ボーナス期はなるべく男性ばかりで働いたほうが経済が発展します。女性は家庭、男性は仕事と性別役割分担を徹底することこそが、国を発展させるルールでした。

2つ目、なるべく長時間働くこと。人件費は安く、同業他社が明日納品なら、うちは残業して今日納品する。つまり、時間は成果に直結する時代でした。

3つ目に、なるべく同じ条件の人を揃えた組織が勝ちます。早く大量に生産してお客さまへ届けることで、そのエリアのシェアを獲得できるわけですから。それならば、組織の中も「右向け右」とビシッと揃った組織を完璧に作り上げ、大量生産を実現することが、お客さまのニーズにフィットしていたのです。

ですので、大変な部署や遠方への転勤を3ヶ所くらい経験させることで、少しだけ昇進させる。こんな仕組みにすると、入社時はバラバラだった社員も、会社の指示に従うようになる。

「長時間労働」「男性ばかりの組織作り」がもたらしたもの

こうして日本は、一律管理しやすい忠誠心の高い組織を作ることによって、人口ボーナス期に爆発的な経済発展をした国なのです。同じボーナス期に、日本は中国が稼いだ額の約3倍は稼いだと言われています。

しかし、日本の人口ボーナス期は1990年代半ばにもう終わりました。そして今やオーナス期です。オーナス期になると、労働力は余っていません。労働力・人材の奪い合い時代に突入したわけです。

ここで1つ注意しなければならないのは、長時間労働をして男性ばかりの組織を作ることは、ボーナス期においては非常に正しい戦略だったということです。ですから、この時期のことを決して否定しないでください。この時期に3つの条件を完璧にやりきったからこそ、現在の貯金とインフラがあるのです。

働き方改革をがんばり過ぎるあまり、役員の方々に「あなたたちは昔から全部間違えてた」と全否定しないであげてくださいね。その時代はそれが大正解だったのですから。

「休息の戦略」が企業の勝敗を分ける

今は人材奪い合い時代です。そうなると、勝てる戦略が一気に真逆になります。下の3つの条件を見てください。オーナス期であれば、なるべく男女共に働ける職場を作ること。労働力は足りないのですから、いかにして男女をフル活用するかが勝負になります。

2つ目に、なるべく短時間で働く組織が勝ちます。人件費が高騰することはもちろんですが、オーナス期の最大の特徴としては、仕事が非常に複雑化します。

例えて言うならば、ボーナス期は「売上を上げろ!」という号令で、みんなが一斉に動きますが、オーナス期は「売上を上げろ! でも同時にSDGsを実現して、コンプライアンスを守りながら、エコでね」と言われます。「いろいろなことを同時に、全部注意しなさい」と。集中力を要する仕事になってきているのです。

こうなると、集中力を担保する睡眠が取れるかどうか、短い時間でいかに高い生産性を出すか、一人ひとりがしっかり休息が取れるかどうかという、休息の戦略も重要になってきます。短時間で成果を出せるような職場環境の投資をどれだけできるかが、職場の勝敗を分けるんですね。

ここのポイントを1つ知っておかないと、「なぜ今、お金を出してそんなツールをうちの職場に入れるんだ」と、情報システムや、いろいろなところから言われます。

今は短い時間で成果を出してしっかり休息をさせることで、ミスなく質の高い仕事をしていくことが業績につながります。だからこの職場環境の投資が必要なんだよ、という背景ごとしっかり話していただければと思います。

「イノベーション」を起こすために、本当に必要なこと

そして3つ目のポイント。なるべく違う条件の人を揃えた組織が勝ちます。というのも、お客さまのニーズが多様になり過ぎて、さらに言うと短サイクルでどんどん飽きてしまうので、多様なものをどんどん出していかなくてはならないフェーズに入ってきます。

この時に難しいのが、みんなで当たり前にやっていたビジネスが、ある日突然通用しなくなることが起きてくることです。よく「イノベーション」と言われますが、いろいろなイノベーションを起こし続け、社会の課題を解決するような、新しい価値を常に創造していないといけない。

では、どうやったらイノベーションが起きるのかという時に、イノベーションって気合いでは起きないんですね。100回言ったから起きる、ということではありません。

様々な書籍で「イノベーションを起こすには、多様な人材が上下ではなくフラットに議論でき、化学反応を起こしてイノベーションが生まれる」ということが、表現こそ違えど書いてあります。

イノベーションが起きるためには、多様な人材がフラットに議論できる場を作ること。ですので今日、みなさんが持って帰るのは、イノベーションが起きやすいチームを作るにはどうしたらいいかということです。今日、持って帰っていただいた会議スタイルで、イノベーションを起こして勝ちに行くのだということを、ぜひイメージしていただけたらと思います。

これまでの会議は「リーダーの独演会」になっていた

組織は今後どうなっていくのかを、スライドに書かせていただきましたが、左側が今までの組織です。

この1本1本のバーが、働いている人をイメージしていますが、誰かの労働時間が少し欠けてしまったなら、その時間は誰かの残業に上乗せすればいい。こういうことを、今までずっと日本の組織ではやってきました。ただ、これはもう限界になってきています。法改正により労働時間の上限もできましたので、これ以上乗せられない状態になっています。

では今、どうなってきているかというと、職場の中は育児時短、介護時短だらけ。そして、6時間勤務や週3勤務、車椅子で在宅勤務など、いろいろな方の力を一億総活躍状態で使って、初めてアウトプットが出る。このように、職場の状態がガラッと変わってきたのではないでしょうか。

「時短じゃない人をフルで揃えたい」とリーダーが言っても、もうそれは贅沢という感じなのです。こうして組織がガラッと変わると、会議はどう変わっていくのでしょうか。見ていきたいと思います。

従来型の組織の中では、同じ場所・同じ時間に出社できる人の集まりであるということを前提に、みんなで1つの正解を探しに行く。意見を正解に揃えていく会議が多かったのではないかなと思います。

ですから、リーダーばかりが一方的に話す「リーダーの独演会」になってしまうのです。それでみんなが「そうかそうか。リーダーはそう思っているのか」と、リーダーの考えに正解を学び、会議が終わったらその方向に走っていく。そのためにやっていたのが、今までの会議でした。

「山の頂上に向かうんだよ」という話をするのですが、頂上に向かう道も、「この道を通れ。このピッケルとこのズボンで行け」というふうに決められる。具体的に言うと「2回訪問するんだぞ。資料はこのフォントとフォーマットで……」と、上司のやり方が正しいとされて、そこをしっかり学んでいく状態が、かつての勝っていくための正解スタイルだったのではと思います。

監視できないリモートワークは、社員のモチベーション頼み

しかし現在は、介護や育児で時間制約を持つ人たちは、同じ時間・場所に集まることは、相当難しいですよね。なんとかオンラインの中で、「この時間帯ならば全員が参加できるね」というところに瞬時に集まり、パッと結果を出していかなくてはならない。

つまり、山の頂上をしっかり確認したら、「どうやって登る? あなたはどうする? 私はこのピッケルとこのズボンで」というように、それぞれが持っているさまざまな武器を確認し合い、「そのやり方いいね。その雛形いいね」と、どんどん共有する。

最後はそれぞれが自力で登っていかないといけませんので、途中でもう1回打ち合わせたり、会ったりできません。ですのでそこで、しっかりといろいろな武器を共有し、見える化して、「あなたもいいじゃない」と、お互いにエールを送り合う。一番大事なことは、各自が「登るぞ!」というモチベーションを高く持ち、解散することです。

オンラインになって実感しますよね。テレワークが進むと、一人ひとりを上司が監視したりはできませんから、「在宅でモチベーション高くやってくれるか」だけが勝負です。つまり、本人の中の内発的な動機で仕事をしてもらう時代になったのです。

そうすると会議では、「お前はどこまでやったんだ。このとおりやったのか」という、締め上げられるような会議ではなく、「いいね。いいね」と褒められて、気分をよくして登りたくなる会議をしないと、いざ解散したらみんなモチベーションが下がり、仕事がはかどらないという状況になりかねません。

ここまでお話させて頂きまして、会議に求められるものがガラッと変わってきたということに、みなさんお気付きになったのではないかと思います。

では実際に、新しいツール(カエル会議オンライン)を使って、アイデアがどんどん出る、モチベーションの上がる会議を体験してみましょう!

(講演パート終了)

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