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阿部広太郎×田中泰延「あれも、これも、それも勝手な決めつけかもよ?」(全5記事)

コロナ禍で求められていたのは、物事を変える「捉え方」 電通コピーライターが説く、幸せになるための「積極的解釈」のススメ

本屋B&Bにて、『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)刊行記念イベントが開催されました。本セッションでは、著者の阿部広太郎氏と、文筆家・田中泰延氏の対談の模様をお届けします。「解釈」の仕方で、考え方や行動を変えることができると説く阿部氏。本記事では、阿部氏が本を作ったきっかけや、本に込めた思いが語られました。

初めて会った時には、もう会社を辞める決断をしていた

司会者:お待たせいたしました。本日は、本屋B&Bのオンラインイベントにご参加いただきありがとうございます。時間となりましたので始めさせていただきます。それでは阿部さん、田中さん、よろしくお願いいたします。

阿部広太郎氏(以下、阿部):よろしくお願いします。

田中泰延氏(以下、田中):よろしくお願いします。

阿部:ご参加いただきありがとうございます。今日は、私コピーライターの阿部広太郎と、文筆家の田中泰延さんと一緒にトークをしていきたいと思います。

泰延さんとイベントをするのはもう4回目ですね。2016年に『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』という、僕の一番最初の書籍を刊行した時に、大阪で泰延さんとお話しさせていただいたんですよね。

待っていても、はじまらない。―潔く前に進め

田中:はい。

阿部:その時に、泰延さんから衝撃的なお話をうかがって。ちょうど会社を辞める決断をされた時でしたよね。

田中:そうそう。阿部さんが「今後ともよろしくお願いします」と言って、「いやごめん。俺、会社辞めるねん」と言ったね。

阿部:(笑)。そうなんですよね。社内にたくさん人がいるのもあって、同じ会社でもなかなか泰延さんとは知り合えていなくて。Twitterのおかげで泰延さんと知り合えて、「これから仲良くいろんなことができるんだ」「同じ会社でうれしいなあ」と思っていたんですけど、泰延さんは会社を出るという。

田中:そうそう。俺が初めて「会社を辞める」と言ったのが阿部さんだから。 

阿部:えーっ!(笑)。

田中:他の人に言っていなかったから。

阿部:(笑)。そんなタイミングで。

「社交辞令にならなかった約束が未来をつくる」という教え

阿部:その時に泰延さんから、「言葉ってすごく大事で、行きたいところや、これから自分が行くところに、言葉が人を連れていくんだよ。社交辞令にならなかった約束が、未来をつくるんだ」というニュアンスの話を教えていただいて。

田中:そう。とにかく社交辞令はダメです。「今度飲もうよ」と言ったら、「いつだよ」となるじゃないですか。何月何日何時だよ!

阿部:ですよね(笑)。

田中:でもそれはすごく大事。だから今日のイベントも「オンラインで」とおっしゃっていただいたんですけれども、「いやいやいや、会いに行かなきゃダメじゃない?」と言って、ここ下北沢まで来たんです。

阿部:ありがとうございます。

田中:下北沢の駅が変わっててビックリしたよね。

阿部:そうですよ。最近下北沢に来られた方はわかると思うんですけど、駅前とか駅の出口も大幅に変わっていますもんね。

田中:そう。南西口とか「●●口」って名前も変わっているから、「何それ?」という。南西口があるということは、東北口もあるのか。

阿部:(笑)。

田中:本屋B&Bさんのトークイベントには何度も出させてもらっていたんだけど、ここ自体も移転して。

阿部:そうですよね。

田中:なんか、すごく今風のかっこいい雰囲気で。なにこれ、みたいな。

阿部:(笑)。

田中:駅前のワヤワヤとしたところの狭い階段を上がって、「俺たちここに来て大丈夫?」みたいな感じじゃなくなったよね。

阿部:そうですね。以前はちょっと大きな道から離れたところにあって、狭い階段を上がっていく感じでしたもんね。

田中:あの狭い階段に大きな鞄を持っていくと、ものすごい嫌やったんやけど、今は大丈夫ですね。

IZ*ONEの解散も「勝手な決めつけかもしれない」

阿部:今みなさんに見ていただいているのは、1年前に泰延さんが『読みたいことを、書けばいい』を刊行された時に、おそらく一番最初にトークイベントを開催させていただいた時の写真です。

読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術

田中:2019年だから、もう2年前じゃない?

阿部:そうだ。2年前ですね。

田中:横浜のBUKATSUDOにお伺いして。

阿部:そうなんです。その時に、初めての本を書き上げた時のお話をたくさん聞かせていただいたんです。

阿部:今日は、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』を10日くらい前に刊行させていただきまして。

それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習

(田中氏、本を掲げる)

阿部:ああ、ありがとうございます。今日はこちらの話を含めて、「解釈」の話をお届けしていきたいなと思います。

田中:付箋がたくさん付いているから。

阿部:本当にたくさん。

田中:嘘の付箋やけど。

阿部:(笑)。

田中:僕はこの本を4分の1くらいは読みました。いい感じです。

阿部:ありがとうございます。

田中:んなわけないやん(笑)。この間、橋口幸生さんと対談した時も「橋口さんの本は3分の1くらい読みました」って。そんなので対談とかできないよね。

阿部:(笑)。泰延さんと話すと、僕もずっと笑顔になりっぱなしなんですけど、今日はどんな話が出てくるのか、とても楽しみにしております。

田中:本当に無口で人見知りするんで、あまりしゃべらないです。

阿部:いやいやいや(笑)。

田中:基本的には、IZ *ONE(アイズワン)が解散して1ヶ月半、これから再結成のために僕たちは何をすべきか、2時間お話しさせていただきたいと思います。

阿部:(笑)。解散も、もしかしたら勝手な決めつけかもしれないですよね。

田中:そうだよ。解釈の問題。

(会場笑)

阿部:そうですよね。

田中:そうです。その通り。

「解釈を変えることによって物事は変わっていく」

阿部:今日は、解釈を変えることによって物事は変わっていくという話をできたらなと思っております。ハッシュタグは「#それ勝手な決めつけかもよ」です。

私の簡単な自己紹介なんですけど、電通でコピーライターとして働いています。2015年から「企画でメシを食っていく」という連続講座を主宰しております。音楽が好きで、最近は作詞にも熱心に取り組んでいます。そして、泰延さんです。

田中:阿部さんと同じ電通で、24年間コピーライターをやっていたんですけど、24年目に「俺、この仕事に向いてない」と気が付いて。

阿部:(笑)。いやいやいやいや。

田中:なんとなく辞めてみたところですね。一応「青年失業家」と名乗っていて、本当に失業保険で食べていました。ブラブラして、そうこうしているうちに、ちょっと書いたりなんかして、本を出したりなんかして。阿部さんに助けていただいて、本が発売された1週間後に、あの横浜に呼んでいただきました。

阿部:そうでしたね。刊行してすぐでしたもんね。

田中:あれから本はまだ1冊しか出していないんですけど、今2冊目を書いています。そして出版社の「ひろのぶと株式会社」を作りました。一応肩書きは代表取締役なんだけど、そういうのが恥ずかしいので、最近は「地球始皇帝」を名乗っております。みなさん、私の前に跪いてください。そんな感じですね。

阿部:(笑)。泰延さんが会社を作られて、いよいよ活動を活発化させて、出版社としてどんな活動されていくのか、ものすごく楽しみです。自分が書くだけじゃなくて、いろんな書き手の人を発掘していくということですよね。

田中:最終的には阿部さんの本の出版社である、ディスカヴァー・トゥエンティワンを吸収合併しようという考えを持っています。

(会場笑)

阿部:(笑)。M&Aというか。

田中:業務ごと買ってしまえばいいんじゃないの? と思っています。

本を作るきっかけは、手書きの手紙を受け取ったこと

阿部:楽しみです。今日は、自己紹介させていただきつつ、この本を作るようになったきっかけの話、そして泰延さんと、仕事とか人間関係で勝手に決めつけてしまうことってあるよねという話を膨らませていきます。

最後に、自分を縛らないためにどんなことを意識しているかという話と、そのあとに、質疑応答の時間も設けています。みなさんよろしければ、ぜひぜひご質問を寄せていただけたらと思います。

田中:質疑応答までがだいたい2分で、あとは全部質疑応答になります。よろしくお願いします。

阿部:めちゃくちゃ高速で話をしていけたらなと思います(笑)。

阿部:この『それ、勝手な決めつけかもよ?』という本を作るきっかけが、ちょっと泰延さんとも似ているんですけれども、手紙をいただいたところから始まっていて。メールでもメッセージとかじゃなくて、便箋の手紙をいただいたところから始まっています。

田中:手書きで?

阿部:手書きです。

田中:それは重いね。

阿部:そうなんですよ。それを受け取った時に「これは!?」という重みがありました。泰延さんが本(『読みたいことを、書けばいい。』)を作ったきっかけは、ダイヤモンド社の今野良介さんからのメールですよね。

田中:あのちょっと狂っているくらい長い、何千字もあるやつ。

阿部:(笑)。そうですよね。情熱と愛情がこもった依頼文ですよね。

田中:うん。

阿部:それをきっかけに泰延さんも本を書かれて。僕も手紙を受け取って、すごく食らったというか、熱量に静かにやられた部分がありました。

講師と生徒の関係から、著者と編集者の関係へ

阿部:僕が年に一度開講している「企画でメシを食っていく」のスピンオフ講座「言葉の企画」に、ディスカヴァー・トゥエンティワンの橋本莉奈さんが参加してくれていて。

当時、営業の仕事をされていたんですけれども、講師と生徒の関係で終わりじゃなくて、次は著者と編集者というか。「この本を作りたい。そこで終わらせるんじゃなくて一緒に作りましょう」と手紙に書いてくれていて。

僕が「言葉の企画」の講座の中で、「手紙やラブレターを書くように企画を提案することが、受け取る人にとってもうれしい」という話をしていたので、まさにそのアンサーを橋本さんが返してくれて始まったという経緯ですね。

田中:ディスカヴァー・トゥエンティワンの橋本さんは、当時は営業だった。

阿部:そうなんですよ。

田中:橋本さんがあそこにいらっしゃるんですけどね。

阿部:来てくれていますね。おそらく泰延さんも、僕の驚きに共感していただけるんじゃないかと思うんですけど、当時橋本さんは営業の仕事をされていると。

もちろん出版社に勤めているんだからどの部署にいても本を企画することはOKだけれども、編集ではなく営業にいる橋本さんが「作りましょう」と言ってくれて。「作れます、作ります、絶対作るぞ」という覚悟のこもった思いで手紙を書いてくれていて、その気持ちを受け取って驚いたんですよね。

田中:そうか。やはり手紙には、熱烈に「やりましょう!」と書いてあったんですか。

阿部:ビックリマークとかは付いていなかったんですけど、静かに熱く、気持ちがヒタヒタと伝わってくるような手紙を受け取ったんですよね。

コロナ禍で求められていたのは「捉え方」だと気づいた

阿部:1冊を作っていくって、すごく時間も気力もかかるし、大変だなと僕も感じるんですけれども、2019年の年末にその手紙をもらって、2020年の頭に「何を書いていきたいか」という打ち合わせをはじめたんです。

でもコロナ禍に突入してすごくあたふたして、楽しみにしていたイベントも中止になっていって。悔しい気持ちがあった中で、歴史を調べるとなにかヒントがあると思って。

今日のイベントの告知ページにも載せたんですけど、17世紀にペストの流行があって。大学が休校になっちゃって、その当時、大学生だったニュートンは「万有引力の法則」という世紀の発見をしたんです。ニュートンがその時のことを振り返って、休校期間のことを「創造的休暇」と捉えていたという話を聞いて、「めっちゃいいじゃん」と思いました。

これはすぐにツイートしなきゃと思いました。当時、泰延さんがリツイートしてくれたのも覚えているんですけど、1万を超える「いいね」が付いて。当時はステイホームの時期で、みんなこんな「捉え方」を求めていたんじゃないかなと思いました。

内容は同じなんですけど、捉え方を変えることによって、すごく視界が開ける。壁だと思っていたものに窓が見つかるような、そういう感覚がいいなと思ったんですね。僕もリアルな場に集って講座をやることを、一度は諦めていたんですけど、みんながライブとかイベントとかを、オンラインでやろうと模索し始めていて。

田中:うんうん。

阿部:オンラインでも勉強したり企画する講座ができるんじゃないかなと。ただ、「オンライン開催」と言うだけじゃなくて、ニュートンと一緒で、捉え方を変えたら自分の気持ちを託せるのかなと。まさに解釈を変えてやってみようと。

「会いたい」という心の渇きに応えた「未来の待ち合わせ」という解釈

阿部:ニュートンが休みの時間を研究に活かして「何かを作れるんだ」と、その先を想像したみたいに、オンライン開催することによって、何が起こるのかと想像してみて。

自分なりに解釈すると、今日もみなさんともつながらせてもらっているように、このオンラインで出会い、つながることによって、いつか「あの時会いましたよね」とか、「あの時参加していましたよ」みたいに、「待ち合わせするための講座」と言えるんじゃないかなと解釈をして。

「未来に待ち合わせするための連続講座」と銘打って告知をしたところ、これまでにない手応えを感じました。先着100名って、こんなに集まるわけないだろうとちょっと高をくくっていた部分もあったんですけど、それが1日足らずでバーッと申し込みがありました。けっこうビックリしたんです。

田中:すごい。

阿部:100名ってなかなかないと思うんですよ。

田中:今日のこのイベントの視聴者は、3人と聞いていますけど。

阿部:(笑)。

(会場笑)

阿部:そうなんです(笑)。「会いたい」という気持ちをみんな思っていて、そういう心の渇きに「未来の待ち合わせ」で応えられていたんじゃないかなと、今では思っています。北から南まで、北海道から……。

田中:北は北海道から、南は南北海道まで。北海道だけやん。

阿部:(笑)。北海道だけですね。

田中:あ、わかった。北は北千住から、南は南千住まで。

阿部:南千住(笑)。北千住と南千住ってけっこう近いんですよね。

田中:千住だけやな。「北海道から沖縄まで」ですね。

阿部:はい、北海道から沖縄までご参加いただいて、僕が講義させてもらいました。参加者の方から「すごく気が楽になった」「肩の荷が下りた」と言ってもらえて、すごくうれしくて。

広告作りでやっていたのは、いいところを大きくする「積極的解釈」

阿部:僕が伝えていたのは広告作りをする時の姿勢でした。書くことも作ることも一緒だと思うんですけど、物事を違う角度で見たり、捉えたりしている、そのやり方を伝えたところ、「心が軽くなった」と言ってもらえて。

その時に思い出していたのは、哲学者のニーチェが「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」という言葉を残していて。この言葉が自分の中にすごく重くあったんです。コロナの厳しい現実とか「いやこれは事実じゃん!」と思っていたんです。

でも、僕が広告作りでしてきたのは、「解釈」だったのかなと思いはじめて。これを「積極的解釈」と言っているんですけど、「ちょっとどうかな?」と思うものだったりとか、「ちょっともったいないな」と思うことの、いいところを探して、広めたり大きくしていくことが大事だなと。

田中:はい。

阿部:2019年に橋本さんから執筆の依頼をいただいて、2020年を過ごしている中で、まさにこの「解釈」について書くモチベーションがすごく湧いてきたんです。人は解釈をした先に進めるから、その解釈について伝えたい。世界のコロナの現状とか、今いろんな人が言い争っている感じとか、すごくもどかしかったりするんですけど、その受け取り方は変えられるんじゃないかと。

「せっかくなら、一人ひとりが幸せになれる受け取り方をしていきたいよね」という提案を込めて書き上げていきました。

「解釈」は、自分を認め、肯定できる「翼」でもある

阿部:ニーチェに対して自分なりにアンサーするとしたら、解釈することは、自分を認めてあげたり、自分を肯定してあげるような、そういう「翼」でもあるなと思っていて。

SNSの強い意見に流されちゃうこともあるんだけど、不安も心配事も柔らかく受け止めつつ、少しずつでも自分らしく生きていける。未来の不安とか過去の後悔も、自分なりの正解に変えていけるんじゃないかな、ということを自分なりに書きたいと思って。

自分自身もクヨクヨしたりモヤモヤしたりします。失敗したこともある自分だからこそ、こういった話をぜひ伝えたいなと思って。諦めちゃうこととか、勝手に自分を決めつけたり、みくびってしまうこともよくあるんですけど、そうじゃなくて。

その解釈を取り払って、1人でも多くの人に「物事をもっと自由に考えられるし、解釈で切り開いていけますよ」ということをお話ししたいです。

これは本なんですけど、ある種の1通の招待状として、手紙を書くように話を書いていって、2021年の5月28日に刊行することができたという経緯になっております。

構成が自分編、現在編、過去編、未来編となっていて、「自分自身をほぐして、解き明かしていく。今ここにいる自分、現在が人生の中心なんだよ。過去に振り回されなくてもいいし、未来に不安になり過ぎる必要もないんだよ」と書いています。

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