2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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小巻亜矢氏:こんにちは、小巻亜矢です。まさか松井秀喜さんの次に話をさせていただくような機会があるなんて、本当に自分でも驚いています。そしてこの後も、仰ぎ見るような方々が登場される中で、ここに立っていることをとても光栄に思います。ありがとうございます。
このセットも素晴らしくてドキドキしております。緊張のあまりお聞き苦しいことが多々あると思いますが、どうぞお許しください。今回はみなさまの貴重なお時間をいただいていますので、ちょっとでも何かのヒントになるお話ができたらと思っております。
さて、2020年も残すところあと1ヶ月ちょっとになりました。みなさんにとってどんな1年だったでしょうか。あと1ヶ月ちょっとありますので、私自身は「終わりよければすべてよし」の1年にしたいと思っています。でも、本当にまさかの年になりましたよね。聞き慣れなかった言葉がずいぶんニュースなどで聞かれるようになりました。
例えば「PCR」とか「クラスター」とか「3密」ですね。聞き慣れない言葉がいっぱいあった中で、まずお話していきたいのは「レジリエンス」という言葉についてです。この言葉も、特にビジネスパーソンのみなさんの中では、多く聞かれるようになった言葉の1つじゃないかなと思います。
例えば会社の指針を伝えられる場面だったり、ピンチの局面に立たされた時に、困難から立ち上がって元に戻す力という意味で使われています。私自身は10年ぐらい前から「切り替え力」といった意味で、レジリエンスという言葉を使ってきました。
もともと、レジリエンスという言葉は、ラテン語の跳ね返すという言葉が語源です。そして英語ではリザイル、復元するという言葉から派生しているようです。まさに今、私たちが欲しい力だなと思いますよね。
そしてこのClimbers 2020という企画、本当に素晴らしい企画で、参加させていただけて嬉しいという気持ちが溢れています。何かを乗り越える時。おそらくみなさんが発揮したり、鍛えられている力があると思います。今日は、跳ね返して復元する意味を持った「レジリエンス」をテーマにしてみました。
まず、これまでいろいろなところで逆境を乗り越えてきた人、というふうに取材をいただくことが多かったんですが、いったい私がどのような人生を過ごしてきたか? というお話をさせていただければと思います。
まず私自身の人生を振り返った時に、「光と影」という言葉が浮かんできました。みなさんは、人生を振り返る時、光景や音や言葉などが浮かぶでしょうか。私の場合は、意外と根暗なので、人生を振り返った時に、楽しくてキラキラしたことがあったはずなんですが、悲しかったり切なかったことをよく思い出します。
みなさんが人生を振り返る時に、多くの方が「何年の何月何日に、東京港区のあそこで起きた出来事が!」というように思い出すのではなく、「すごくうれしかった」とか「すごくつらかった」みたいに、感情の振れ幅が大きかった出来事を思い出されるんじゃないかなと思います。私自身も同じです。心がすごく揺れたこと。それが今の自分につながっているなと振り返りました。
今の自分に影響を与えているなぁと思うことを中心に、自己紹介を兼ねて振り返ってみたいと思います。私は東京港区赤坂に生まれ育ちました。これを言うと多くの方が、「うわー都会のど真ん中ですね!」とおっしゃいます。そうなんです。ビルの中で育ったわけです。
そして、赤坂小学校に進学しまして、中・高はミッションスクール(注:キリスト教主義学校)に進みました。赤坂で育って女子校のミッションスクールに進学したと言うと、キラキラと光に満ちたようなイメージがあるかもしれませんが、それなりに影の部分が自分の中にありました。
例えば、私は小学校の時は野球の選手になりたかったんですね。松井秀喜さん、本当に憧れで、先ほど控え室にいらっしゃるのを拝見して、目がうるうるしていたんですけれども。
なぜかと言いますと、うちの父親が男の子たちを集めて野球チームをやっていたからです。私は女の子だったんですが、みんなで一緒に野球をやるのが楽しみで、もう自分はプロ野球選手になると信じてやまなかった時代がありました。
ところが「女は野球選手になれないよ」と同級生に言われまして。それが人生で思い出す限り最初の挫折だったかなと思います。その他にも、「女だからできない」とか「女はこうだ」みたいなことが、すごく心に残る子どもでした。
例えば、私の家庭においては、「女は家にいろ」という価値観がありました。母は仕事がしたかったと思うんですね。でも、「子どもが帰った時に家にいてやれ」という父の強い言葉で、仕事をすることを諦めていました。
さまざまなシーンで、「女はこうだ」という価値観や言葉を目にしてきましたが、それがすごく心に残りまして、小学校の卒業文集に書いた将来の夢は、「女性を守るために女性を守る仕事をしたい」と書いていました。
たぶん私の中では、力では男性に敵わないので、法律で女性を守るという意識があったことを覚えています。そして弁護士になろうとおぼろげに思っていたんですが、人生はなかなか思ったようにはいかず……その目標は実現しませんでした。
中高の時は、ミッションスクールで心に残るいろいろな出来事がありましたが、学校に入学して思ったのは、「間違ってお嬢様学校に間違って入っちゃったなぁ」という思いでした。本当にうちはサラリーマンの家庭でしたので。
すごく煌びやかな生活の中で、お父様・お母様同士の仲も良くて。うちは父と母がとても不仲だったものですから、「羨ましいな〜」と何度も感じた瞬間がありました。とにかく周りが羨ましくて羨ましくて。今から考えると可愛らしい影ではありますが、自分なりには根暗だと思っていました。
「人間は何のために生きるのかな」「私1人が生きててもエネルギーの無駄じゃないか」中学2年ぐらいの反抗期には、「いつ死のうかな」みたいなところまで思い詰めてしまう子どもでした。
そこから大学に行って、入社を希望していたサンリオという会社に入りました。サンリオに入りたかったのは、もちろんキャラクターは可愛くて大好きですけれど、とにかく株式会社サンリオの理念に惹かれたんですね。
世界中のみんなが仲良くなるために、ちょっとした可愛いものがあれば、「ありがとう」とか「ごめんね」とか「大丈夫?」といったコミュニケーションが取れるようになる。だからサンリオは、「スモールギフト、ビッグスマイル」という気持ちでやっています。
その理念に強烈に惹かれてサンリオに入りましたが、1年半ぐらいで寿退社になっていくわけです。サンリオとの出会いをドラマ風に言うならば、「その出会いがその後の私の人生にそれほど大きな影響を与えるとは、その時の私は思っていなかった……」というわけです。
結婚して退職して子どもにも恵まれて、私は専業主婦で歩んでいくことに何の疑問も持っていなかった。ところが、本当にまさかの30〜40代が待っていたわけです。光と影の、影の部分です。
次男が事故で亡くなったのですが、それをきっかけに……なんて言うんでしょうか。心が閉じてしまった時期がとても長かったんです。そこから立ち直れたのは、いろいろな友達の支えや、息子からの何気ない一言によって、自分も笑顔を取り戻していったんですけれども。
生き直しと言いましょうか。自分がこのまま、生きてていいんだろうか。子どもを亡くす経験をされた方が、おそらく世の中にたくさんいらっしゃると思うんですけれども、私自身も子どもを1人死なせてしまった責任感で溢れてしまって。
なんでしょうね。人生を生き直す必要が自分の中にあったんでしょうね。それで離婚という選択をして、予想もしていなかった第2の人生が始まりました。
まず仕事に復帰するわけですけれども、決して順風満帆だったわけではありませんでした。当時、2人の息子を抱えたシングルマザーにできる仕事は本当に限られていたからです。
まず、復帰して最初に就いた仕事は、化粧品の販売でした。その時は無我夢中でやらせていただいて、セールスの成績はすごく上がっていったんですが、たくさんの女性に会って、「女性の幸せって何だろう」って思わされる出来事がたくさんありました。
まぁ女性のすごく熾烈な戦いの中に、世間知らずの私が飛び込んだわけですから、もう本当に揉まれたわけですね。いろんな怖い目にも遭いましたし、意地悪もされました。今思うとこの経験で世間を知ることができたなと思います。
それまで赤坂で育って、ミッションスクールに行って、周りのお金持ちのお嬢さんを羨やんでいたんですが、世間に出てみると、親の借金を返しているとか、夫の暴力がとか、そういう女性がたくさんいたんですね。いかに自分が恵まれていたかに気付かされました。
そして同時に、女性が輝いて生きることは本当に難しいんだな、ということも痛感しました。化粧品を利用して、表面的に自分をケアすることも素敵なことですが、本当に女性が自分の足で自立して、幸せに生きるためには“精神的にも経済的にも自立をする術”を身に付けることが必要だなと強く感じました。
まぁそんなこんなで、化粧品の知識を身につける必要に駆られて勉強したり、アロマセラピーを学んだり。そして精神的な自立というキーワードが自分の中に生まれて、コーチングだったり心理学を学びたいなと思い始めて。
そうすると今度は次の扉が開いて、自分は化粧品を売ることをやっていきたいわけではないんだなと、気付いたんですね。何かこう……女性を元気にするとか、まさに小学校の時に自分に刻まれた、女性を守り女性のQOLを上げることがやりたいんだと。やはり女性のサポート・エンパワーメントが、自分の心の中に内在していたんですね。
そして、女性のエンパワーメントの仕事をしようと思った矢先、乳がんを罹患し、その後は子宮の病気もしまして、子宮も全摘するという出来事がありました。
この出来事は影の部分かもしれません。子どもを失ったり、乳がんを患ったり、子宮を失う。女性として、とても痛い経験を与えられたんだなと思います。でも、それらが私に次の扉を開けさせてくれました。それがあったから今につながってるなと思えるところがたくさんあります。
影と光って本当に両極端ですけれども、オセロの黒が白に変わるように、切り替えていける。それは自分の心の持ちようと言うか、考え方1つだなという経験を、それらを通してさせてもらったなと思います。
人生を振り返った時は、感情の振れ幅が大きかったことを思い出すんじゃないでしょうか? とお伝えしましたけれども、過去の出来事は良いも悪いもありますよね。
よく「相手と過去は変えられない」って言いますよね。でも私は、過去の事実は変えられませんが、その出来事にどういう色を付けるかについては、変えられるんじゃないかなと、私の人生の経験を通じて思わされてきました。
確かにネガティブな出来事が連続しましたが、今思うと、それらがあったから女性活躍支援を本当に心からやりたいと思いましたし、命の大切さを刻まれたおかげで、これからの人生をどう生きていこうか、と深く考えることもできました。私がサンリオの掲げる「笑顔」というキーワードに強く惹かれるのも、実は根暗だった経験があるからかもしれません。
そして今、ネガティブな出来事が起こった時は、すべてケーススタディだと思うようにしています。すべてはケーススタディで、ここから何を学べるか? という視点も持つことができれば、影の中から光を見ることができるんじゃないかと思っています。
乳がんを患って、子宮も全摘しましたが、女性としての痛みを知った自分だからできることをやっていこう! そう考えるようになって、女性活躍支援の会社を立ち上げたり、NPOを立ち上げることができました。これが2008年のことです。
そして、そういった活動をする中で、いろいろな女性に会ったり、いろいろな課題を持った男性とたくさん会うにつれて、私がワンクッションになってうまくコミュニケーションをとることが、とても大切なんじゃないか? という思いがどんどん強くなっていきました。
それで50歳を過ぎてから、自己理解の分野をアカデミックに勉強したいと思いまして、一念発起して大学院に行ったわけです。大学院では、「自分の心の声と対話する、対話的自己論」を研究材料として選びました。
修士論文を書き終えると、私の残りの人生は、「自分と仲良く。それができてからみんなと仲良く」をライフワークにしていました。
そして、サンリオの掲げている「みんな仲良く」を私なりにやっていこうと思っていた矢先でした。「サンリオエンターテイメントのテーマパーク事業をやってみませんか」という白羽の矢が、刺さってきたわけなんですね。これは本当にびっくりしました。
まさかこんなことが自分の人生に起こると思っていなかった。その話が来た経緯を話すと長くなってしまうので割愛しますが、その時の私の感情を少しお話します。
まず、「思ってもみなかったことがやってきた」と。「いやいや、無理です」と断ってもよかったんですが、「ちょっと考えてみます」とお返事をしました。
それから「私にできると思うか」ということを、同期だったり先輩に聞いたり、「自分として今までやってきた経験がどう生きるんだろう?」とか、「何もエンターテイメントの知識がない私がそこに入っていてお役に立てるんだろうか?」ということで悩みました。
でも、悩んでる時点でノーという選択は自分の中にないんだなと気付きました。それで、2014年からサンリオエンターテイメントの顧問として入りまして、今はサンリオピューロランドと、大分県にありますハーモニーランドというテーマパークの担当をやっているわけです。
(後編に続く…)
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