2024.10.10
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第9回「朝まで亀テレビ!」(全1記事)
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亀山敬司氏(以下、亀山):田原さんに質問ある人〜。はい、じゃああなた。
質問者1:社会人が思考力を鍛えるために何をしたらいいと思いますか?
田原総一朗氏(以下、田原):若い人たちには、まず自分のしたい事を考えて探してほしいです。「自分は一体、何をしたいんだろう」と考える。
下手をすると、自分が何がしたいのか考えないうちに、大企業に入ったことで「この会社でうまくいった方がいいんじゃないか」と考えてしまう。「何がしたいのか」ってことじゃなくて、「うまくいった方がいいんじゃないか」というふうになってくる。
人生って1回しかないんだから、やっぱりやりたいことをやるほうがいいと思う。
亀山:今って、選択肢がありすぎるせいか、「何をしたいか」って聞いても答えられない人が多いですよね。田原さんはそもそも、若いころからジャーナリストをやりたかったんですか?
田原:最初は作家になりたかった。でも、石原慎太郎の『太陽の季節』を立ち読みして「こりゃダメだ」と思った。
亀山:勝てないと思った?
田原:うん。次に大江健三郎が芥川賞を取って、これも読んで。この二つで、もうダメだと思った。挫折です。
亀山:なるほど、田原さんもやりたいことが変わってきたんですね。
田原:そうだね。
亀山:……前半は全然話が噛み合わなかったけど、ちょっと話し合いになってきましたね。うれしい(笑)。
(一同笑)
質問者2:田原さんが政治家などの有名な方々と会えるようになった、最初のきっかけを教えてください。
田原:政治家の家に行って、帰るの待ってればいい。毎日待ってれば、そのうち政治家が会ってくれるよ。
僕が若かったころ、テレビ東京が開局するというので「開局記念番組を作ろう!」という話になった。当時、テレビ東京は科学技術中心の局だったから、僕は開局記念番組で「SFドラマを作ろう」と思ったんです。脚本も、当時日本で一番ノーベル賞に近いと言われた、安部公房に書いてもらおうとした。
企画書を書いてスタッフに見せたら、スタッフの誰もが「安部公房が脚本なんて書きっこない。OKするわけない!」と言った。でも、もし安部公房が書いてくれたらOKだとなったんです。それで安部公房に直接「脚本を書いてほしい」と連絡したら断られた。
それで、翌日の朝8時から安部公房の家の前に行って、夜まで毎日立ってた。少なくとも10日は続けようと思って立ち続けていたら、4日目に安部公房が出てきて、「まぁ、入れ」と言ってくれた。それで企画を説明して説得したら、なんとOKしてくれたんです。
だからまぁ、とりあえずは家に行くわけだ。夜に行って、朝も行って、待ってる。そうしたら会ってくれるよ。
質問者3:「空気を読んでしまって、自分の意見を言えない」っていう日本人の性質や、日本ならでは空気感を抜本的に解決する方法って、なにか思い当たることがありますか?
田原:難しいね。政治家も分かってはいるんだけれど、「それをやると選挙で負けるんですよ」と言う。
亀山:田原さんとしても、「今の日本はこのままじゃまずいよ」と思っているじゃないですか。でも、政治家のような実行者じゃない田原さん自身に、なにができるとお考えですか?
田原:僕にできるのは番組をやることだね。
亀山:でも、やっぱりテレビって「それをテレビで言うのは困ります」みたいなNGがあるんじゃないですか?
田原:そんなもんはない、まったくない。
亀山:いや、それ田原さんだけないんじゃないですか(笑)。 他の人にはあるんじゃないですか?
田原:いや、みんな勝手に「ある」と思ってるんだと思う。新聞社やテレビ局の上の人が勝手に「やめよう」と判断することはあると思う。
亀山:じゃあやっぱり、局の上の人が言えば現場はやらざるを得ないですよね。
田原:僕は反対して、言うことは聞きません。
田原:例えば具体例を挙げると、『朝まで生テレビ!』っていうテレビ討論番組は今年で31年目なんだけど、始めてから2年目に昭和天皇が病気になって、世の中は自粛ムードになった。
僕はそのときのテレビ朝日の編成局長に「今こそ朝生で天皇論をやりたい。天皇の戦争責任までやりたい」と言ったら、「バカ野郎!」と言われた。でも、そのことを一週おきに説得して、4週目に「企画を変えた」と言ったんです。
ちょうどあの年には、韓国のソウルでオリンピックがある。天皇じゃなくて「オリンピックと日本人」ってことでやろうと。局長は「それはいい、ぜひそれでやろう」と言った。
『朝まで生テレビ!』は生番組だから、始まるのが夜中の1時過ぎで、終わるのが朝5時前になる。編成局長は寝てますよね。もし番組が差し変わっていても、編成局長は気がつかない。
新聞の番組欄には『オリンピックと日本人』と書いてあって、最初の3〜40分はオリンピック選手が出ている。それ後、僕は本番中に「今日はこういうことやるんじゃない、天皇問題をやる!」と言って、大島渚とか小田実、野坂昭如にゲストを入れ替えた。
亀山:人を入れ替えたんですか?
田原:入れ替えた。それで番組を続けたら、視聴率が良かった。番組終わってから編成局長のところへ謝りに行ったんです。「申し訳ない」と謝ったら、編成局長が「田原さん、面白いからもう一回やって」って(笑)。
亀山:田原さんはそういう生き方してるから、危険な事もあったんじゃないですか?
田原:もちろん危険ですよ。
亀山:家族から「いい加減にしてくれ」とか、そんな話にはならなかったんですか?
田原:言わない。うちの家族はえらいですよ。
亀山:(同席していた田原氏の娘に向かって)なにか言いたいことはなかった? 「もっと家族のことも考えてよ」と思わなかったんですか。
田原娘:他人に迷惑かけなければ……。
亀山:迷惑かけてなければいいかなって感じ? ……これはたぶん、苦労かけてますよ。
田原:うん、今も苦労かけてるね。
亀山:プライベートでは家族とゆっくりしているんですか?
田原:プライベートとかないね。趣味がまったくないんですよ。人と会うのが趣味で、それが仕事になってるから。寝てるとき以外は全部仕事やってますよ。
亀山:たまにギャンブルしたりとか、お酒を飲んだりすることもない?
田原:ない、まったくない。酒は飲まないし、タバコも吸わない。ギャンブルもやらない。
亀山:家族との団らんは?
田原:しょっちゅう話はしてるよ。
田原娘:……一方的に(笑)。
亀山:一方的にね(笑)。 たしかに今日も一方的にしゃべってましたよね。対談しようと思ったけど、全然話聞いてくれない。
娘さん:後でダメ出ししようと思っています。
亀山:ちょっと忠告しといてください(笑)。
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